この記事で分かること
- 統合を検討する理由:銅の確保が最大の狙いです。鉄鉱石依存からの脱却を目指すリオティントと、強力な商社機能を持つグレンコアが組むことで、世界最大の資源メジャーとして業界の主導権を握る狙いがあります。
- 銅が統合の検討を促すわけ:銅鉱山の新規開発には時間がかかるため、巨大な銅権益を持つ他社と統合することで、即座に供給力とシェアを確保する狙いがあります。
リオティントとグレンコアの統合協議
資源大手のリオティントと、スイスの資源・商社大手グレンコアの間で、2026年1月に入り統合に向けた予備的な協議が開始されたことが公式に発表されました。
https://jp.reuters.com/markets/global-markets/OC7TSSF5WJMWHPL76UMSYHM33I-2026-01-08/
実現すれば、時価総額が約2,000億ドル(約30兆円超)規模に達し、BHPグループを抜いて世界最大の資源・鉱山企業が誕生することになります。
協議の内容は
2026年1月に発表された、リオティントとグレンコアによる統合協議の主な内容は以下の通りです。
1. 統合の形式と規模
- 買収の主体: リオティントがグレンコアを買収する形での協議です。
- 手法: 現金ではなく、両社の株式を交換する「全株式交換」による合併案が中心となっています。
- 規模: 実現すれば時価総額は約2,070億ドル(約31兆円)に達し、BHPグループを抜いて世界最大の資源メジャーが誕生します。
2. 協議の対象範囲
- 「全部または一部」の統合: グレンコアの全事業を飲み込む形だけでなく、一部の特定事業(特に銅部門など)のみを統合する可能性も含まれています。
- 資産の再編: 銅・ベースメタル: 両社の優良な銅鉱山を統合し、世界シェア1位を狙うことが核心です。
- 石炭事業の分離: 脱炭素を優先するリオティントに対し、グレンコアは依然として石炭事業を抱えています。この石炭部門を「切り離して別会社にする」のか、「買収に含めるのか」が最も重要な交渉ポイントとなっています。
3. 今後の期限
- 2026年2月5日(ロンドン時間 午後5時): 英国の買収規定に基づき、リオティントはこの日までに「正式な買収提案を行う」か「断念する」かを明確にしなければなりません。
現在、両社は「予備的な協議段階」にあるとしており、必ずしも合意に至る保証はないと強調しています。
統合を協議する理由は何か
リオティントとグレンコアが統合協議を行っている背景には、「脱炭素とデジタル化による銅需要の爆発的増加」と「資源業界の覇権争い」という2つの大きな動きがあります。
1. 「銅」の確保:脱炭素・AI時代への対応
現在、世界的に銅の価値が急騰しています。銅は電気自動車(EV)や再生可能エネルギー、さらにはAI用データセンターの送電網に不可欠な「戦略物資」です。
- 圧倒的なシェア: 両社が統合すれば、世界全体の銅供給の約8〜9%(年間約200万トン規模)を占めることになり、業界リーダーであるBHPやチリのコデルコに並ぶ、あるいは凌駕する規模になります。
- 供給不足への備え: 2040年までに銅が1,000万トン不足すると予測される中、新規開発よりも既存の巨大権益を持つ企業を統合する方が、確実かつ迅速に資源を確保できます。
2. 脱「鉄鉱石」とポートフォリオの多角化
リオティントにとって、収益の柱である鉄鉱石への過度な依存を脱却することが長年の課題でした。
- 中国市場への不安: 鉄鉱石の主要顧客である中国の建設・不動産需要が鈍化しているため、成長分野であるエネルギー移行金属(銅、ニッケル、リチウムなど)へ収益源をシフトさせたい狙いがあります。
3. 業界の再編競争(規模の経済)
資源業界では近年、生き残りをかけた巨大合併(M&A)が加速しています。
- domino効果: 2025年にアングロ・アメリカンとテック・リソーシズの大型合併が成立したことで、業界内の力関係が変化しました。これに対抗し、資本力を高めて投資・開発を有利に進めるためには、さらなる規模の拡大が必要だと判断されています。
- 相乗効果: グレンコアが持つ世界最強クラスの「商社機能(トレーディング部門)」と、リオティントの「優良な鉱山資産」を組み合わせることで、生産から流通までを支配する強力な垂直統合モデルが完成します。
4. 経営陣と戦略の変化
- 新CEOの意向: 2025年8月に就任したリオティントのサイモン・トロットCEOは、前任者よりも大規模な買収に積極的であると見られています。
- グレンコアの姿勢: グレンコアもまた、銅の増産計画を掲げており、自社の企業価値を最大化するタイミングを計っていました。
今後の懸念点
一方で、これまで統合を阻んできた「石炭事業の扱い」が依然として壁となっています。リオティントは脱炭素を掲げて石炭から撤退済みですが、グレンコアは依然として大量の石炭資産を保有しています。
これらを「切り離して統合するのか、あるいは維持するのか」が、今後の交渉の最大の焦点です。

脱炭素に不可欠な銅の確保が最大の狙いです。鉄鉱石依存からの脱却を目指すリオティントと、強力な商社機能を持つグレンコアが組むことで、世界最大の資源メジャーとして業界の主導権を握る狙いがあります。
銅の重要性増加で統合を検討するのはなぜか
銅の重要性が急増している背景には、「脱炭素」と「AI・デジタル化」という2つの歴史的な潮流があります。資源大手が統合を急ぐのは、自社でゼロから新しい鉱山を見つけるよりも、既存の巨大権益を持つ他社と組む方が、この爆発的な需要に素早く対応できるからです。
1. 「脱炭素社会」の基幹物資(電化の推進)
脱炭素とは、社会のあらゆるエネルギーを「電気」に変えるプロセスです。銅は銀に次ぐ高い導電性を持ち、加工もしやすいため、電化には欠かせません。
- 電気自動車(EV): ガソリン車の約3〜4倍の銅を使用します。
- 再生可能エネルギー: 太陽光や風力発電は、従来の火力発電に比べ、発電容量あたり約5倍の銅を必要とします。
2. 「AI・データセンター」の急拡大
膨大な計算を行うAIデータセンターは「電力の塊」であり、銅の新たな巨大消費地となっています。
- 送電と冷却: 大電力を流すための太い配線や、サーバーを冷やすための冷却システム(ヒートシンクなど)に大量の銅が使われます。
- AI専用の需要: AIデータセンターは、従来のセンターに比べて1平方メートルあたり2〜3倍の銅を消費すると言われています。
3. 「供給不足」への危機感
銅の需要は2040年までに現在より50%増加し、年間1,000万トンの不足が生じると予測されています。
- 新規開発の限界: 新しい銅鉱山を探して生産を開始するには、通常10〜15年の歳月と巨額の資金が必要です。
- 統合による即戦力: リオティントは鉄鉱石に偏った収益構造を改善したい一方、グレンコアは世界屈指の銅資産を持っています。両者が組めば、世界シェアの約1割を握る「銅のガリバー」として、価格支配力と安定供給能力を一気に手に入れられます。

脱炭素(EV・再エネ)やAIデータセンターの拡大で、電気を通す「銅」の需要が爆発的に増えており、銅鉱山の新規開発には時間がかかるため、巨大な銅権益を持つ他社と統合し、即座に供給力とシェアを確保する狙いがあります。

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