この記事で分かること
・ヤシ油とは:ヤシ油はココナッツから抽出された植物油で、主成分は中鎖脂肪酸で、とくにラウリン酸が多く含まれています。
・主な利用法:調理油、マーガリンなどの食品用途や化粧、医療品、洗剤やバイオ燃料の原料として利用されています
・不作の要因:気候変動、病害虫被害、人手不足、土地利用の変化(農地減少や他作物への転換)
ヤシ油の価格上昇
ヤシ油(ココナッツオイル)の国内卸売価格が、近年上昇傾向であることがニュースになっています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB028480S5A400C2000000/
価格上昇の主な要因として、主要生産国であるフィリピンでの生産減少が挙げられます。2024年8月のフィリピンにおけるヤシ油生産量は前年同期比で約19%減少しており、これは前年の干ばつの影響で原料となるコプラの供給が減少したためと考えられています。
ヤシ油とは何か
ヤシ油(ココナッツオイル)は、ココヤシ(Cocos nucifera)の種子(ココナッツ)から抽出される植物油です。主に食用や化粧品、医薬品、工業用途などで利用されます。
特徴
- 成分
- 主成分は 中鎖脂肪酸(MCT:Medium Chain Triglycerides) で、特に ラウリン酸(C12:0) が多く含まれています。
- 常温(約25℃以下)では固体になり、白い見た目をしています。
- 健康効果(とされるもの)
- エネルギーになりやすい:MCTは消化吸収が速く、すぐにエネルギーとして利用されやすい。
- 抗菌・抗ウイルス作用:ラウリン酸が細菌中鎖やウイルスに対する抑制効果を持つとされる。
- ケトン体の生成促進:低糖質・高脂肪食(ケトジェニックダイエット)で利用される。
- 用途
- 食品:調理油、マーガリン、菓子、粉ミルクなど。
- 化粧品:スキンケア、ヘアケア製品の原料。
- 医薬品:栄養補助食品、消化吸収しやすいエネルギー源として病院食などに使用。
- 工業用:洗剤、石けん、バイオ燃料の原料。

ヤシ油はココナッツから抽出された植物油です。主成分は中鎖脂肪酸で、食品、化粧、医療品、洗剤やバイオ燃料の原料として利用されています。
中鎖脂肪酸とは何か
中鎖脂肪酸(MCT:Medium Chain Triglycerides)は、炭素数が6~12の脂肪酸のことを指します。通常の長鎖脂肪酸(LCT:Long Chain Triglycerides)に比べて、消化・吸収が速く、エネルギーとして素早く利用されるのが特徴です。
主な中鎖脂肪酸
名称 | 炭素数 | 主な食品 |
---|---|---|
カプロン酸(Caproic acid) | C6 | ココナッツオイル、母乳 |
カプリル酸(Caprylic acid) | C8 | ココナッツオイル、パーム核油 |
カプリン酸(Capric acid) | C10 | ココナッツオイル、パーム核油 |
ラウリン酸(Lauric acid) | C12 | ココナッツオイル、母乳、パーム核油 |
特にラウリン酸(C12)がココナッツオイルに多く含まれ、抗菌・抗ウイルス作用があるとされています。
中鎖脂肪酸の特徴
- 吸収が速い
- 通常の長鎖脂肪酸はリンパ管を経由して吸収されるのに対し、中鎖脂肪酸は 直接肝臓に運ばれ、素早くエネルギーに変換 される。
- そのため、運動時や疲労時のエネルギー源として利用されることが多い。
- 脂肪になりにくい
- 体内での代謝が早いため、脂肪として蓄積されにくい。
- ダイエットやスポーツの分野で注目されている。
- ケトン体の生成を促進
- 中鎖脂肪酸は肝臓でケトン体に変換されやすい。
- 低糖質・高脂肪食(ケトジェニックダイエット)に適しており、認知症の予防やエネルギー不足時の代替エネルギーとして利用される。
- 抗菌・抗ウイルス作用
- ラウリン酸(C12)は体内でモノラウリンに変換され、ウイルスや細菌の増殖を抑える。
- 母乳にも含まれ、乳児の免疫力向上に貢献している。
中鎖脂肪酸が含まれる食品
- ココナッツオイル(約60%がMCT)
- パーム核油
- 母乳
- バター
- MCTオイル(中鎖脂肪酸を精製したオイル)
MCTオイルは特にC8・C10の中鎖脂肪酸を濃縮したもので、素早いエネルギー補給に使われます。
中鎖脂肪酸の活用例
- ダイエット・運動時のエネルギー補給
- 認知症予防(ケトン体を利用する脳のエネルギー補給)
- 持久力向上(スポーツ選手が利用)
- 病院食(脂肪の消化吸収が難しい患者向け)
近年、健康志向の高まりとともに、中鎖脂肪酸を活用した食品やサプリメントが増えています。

中鎖脂肪酸は、炭素数が6~12の脂肪酸であり、消化・吸収が速く、エネルギーとして素早く利用されるのが特徴です。
不作の原因は何か
ヤシ油(ココナッツオイル)の供給減少につながる不作の原因には、気候変動、病害虫被害、人手不足、土地利用の変化などがあります。特に、2024年のフィリピンやインドネシアの生産減少には以下の要因が関係しています。
1. 気候変動(異常気象)
① エルニーニョ現象による干ばつ
- 2023~2024年にかけてエルニーニョ現象が発生し、東南アジア地域で深刻な干ばつが発生。
- ココヤシの生育に必要な降水量が不足し、ココナッツの収穫量が減少。
- 2024年のフィリピンのヤシ油生産量は 前年同期比19%減少。
② 台風や暴風雨の影響
- 近年、フィリピンやインドネシアでは大型台風の発生頻度が増加。
- 2023年には強力な台風がココヤシ農園を直撃し、多くの木が倒され、生産に大きな影響。
2. 病害虫被害
- 「ココナッツスケール(Aspidiotus rigidus)」という害虫が、フィリピンでココナッツ農園に広がる被害が発生。
- 真菌感染症(例:ココナッツの根腐れ病)も発生し、木の健康状態が悪化。
- 病害虫対策の農薬コストも上昇し、小規模農家への負担が増大。
3. 労働力不足
- ココナッツ農業は収穫・加工に多くの人手を必要とするが、若者の農業離れが進行。
- フィリピンやインドネシアでは都市部への移住が進み、農村での労働力が不足。
- 労働力確保のコストが上昇し、生産量減少に拍車をかける。
4. 土地利用の変化(ヤシ農園の減少)
- パーム油や他の作物(バナナ、カカオなど)への転換
- 近年、ココナッツよりも収益性の高いパーム油生産やアボカド・カカオの栽培へシフトする農家が増加。
- ココナッツ農園の減少が続き、長期的な供給不足の懸念がある。
- 都市開発やインフラ整備による農地減少
5. 国際情勢と輸送コストの上昇
- 国際物流の混乱(紅海危機、パナマ運河の干ばつ)により輸送コストが増加し、ヤシ油の流通に影響。
- 原油価格の上昇により、肥料や農薬の価格が高騰。

気候変動、病害虫被害、人手不足、土地利用の変化などが要因となって不足が続いています。
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