この記事で分かること
- DRAM市場の市況:AI需要に伴うHBM生産の優先により、汎用DRAMが供給不足となり価格が急騰しています。サムスンが首位を奪還し、2026年も深刻な「売り手市場」が継続します。在庫は完売状態で、価格上昇は当面続く見通しです。
- サムスンが首位となった理由:汎用DRAMの価格高騰を圧倒的な生産力で収益に繋げたこと、HBM3Eの供給を本格化させAI需要を捉えたことが主な要因です。次世代1c nmプロセスの導入や、設計から製造まで完結する垂直統合モデルの強みも寄与しました。
サムスンDRAM市場での売り上げシェア首位奪還
DRAM2025年第1四半期に、サムスンは1992年以来33年間守り続けてきた売上シェア1位の座を一時的にSK hynixに明け渡していましたが、2025年後半(第3・第4四半期)にかけて再びトップに返り咲きました。
https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2601/13/news104.html
王座を奪還したサムスンですが、SK hynixも手を緩めておらず、今後も激しい争いが続くものと思われます。
DRAM市場全体の市況はどうか
DRAM市場全体の市況は、現在「AIバブルを超えた供給不足」と「極端な価格高騰」の局面にあります。単なる回復期ではなく、AI需要が既存の市場構造を塗り替えている極めて特異な状況です。
1. 市場全体のトレンド:供給不足と価格高騰
現在、DRAM市場は歴史的な「売り手市場」に突入しています。
- 価格の急騰: 2025年第4四半期から価格上昇が加速し、平均価格は前年同期比で50%〜55%上昇しました。一部のチップでは、サムスンが12月に最大60%の値上げを断行した例もあります。
- 在庫の枯渇: 主要メーカー(サムスン、SK hynix)の2026年分までの生産枠は、すでにAI関連の注文でほぼ完売しています。
- HBMへのリソース集中: 各社が利益率の高いAI向け「HBM(広帯域幅メモリ)」の生産を最優先しているため、パソコン(PC)やスマートフォン向けの汎用DRAMの生産ラインが削られ、供給が追いついていません。
2. 消費者・他業界への波及(パニック買いの発生)
AIサーバー向けの需要が、一般消費者の手元に届くデバイスの価格にも直撃しています。
- スマホ・PCの値上がり: メモリの仕入れ価格上昇に伴い、2026年中にスマホやPCの製品価格が最大20%程度上昇すると予測されています。
- 調達の困難: 自動車メーカーや家電メーカーなどの「非AI部門」でもDRAMが確保できず、一部では「いくら払ってでも確保したい」というパニック買いに近い状況が見られます。
3. 主要メーカーの戦略的転換
この激変を受け、各社はビジネスモデルを大胆に変えています。
| メーカー | 2026年初頭の動向 |
| Samsung | 汎用DRAMの価格引き上げと、HBM3E/HBM4の量産体制を最大化。首位のプライドをかけ物量で市場を圧倒。 |
| SK hynix | HBMでの先行利益を背景に、さらに高度なAI専用メモリへ特化。TSMCとの連携を強化。 |
| Micron | 衝撃的な方針転換。 2025年末に消費者向けブランド(Crucial)などの一部撤退を示唆し、リソースをデータセンター事業へ完全シフト。 |
2026年の見通し
現在のDRAM市場は「AI向けメモリをどれだけ作れるか」がメーカーの収益を決め、その影で「一般向けメモリが極端に不足する」という歪な構造になっています。
この「メモリ飢餓」の状態は、各社の増設ラインが本格稼働する2026年後半まで続く可能性が高いと見られています。

AI需要に伴うHBM生産の優先により、汎用DRAMが供給不足となり価格が急騰しています。サムスンが首位を奪還し、2026年も深刻な「売り手市場」が継続します。在庫は完売状態で、価格上昇は当面続く見通しです。
サムスンが首位となった理由は何か
サムスン電子が2025年第4四半期にDRAM市場で王座を奪還した背景には、「汎用DRAMの価格高騰」と「AI向けHBMでの追撃成功」などがあります。
1. 汎用DRAMの価格高騰と圧倒的な供給力
2025年後半、AIサーバー需要の爆発により業界全体でHBM(広帯域幅メモリ)の生産が優先され、PCや一般サーバー用の汎用DRAM(DDR5など)が深刻な供給不足に陥りました。
- 規模の経済: 世界最大の生産能力を持つサムスンは、この「売り手市場」で値上がりした汎用製品を大量に供給し、記録的な利益を上げました。
- 価格戦略: 一部製品で50%以上の値上げを断行するなど、需給逼迫を収益に直結させました。
2. HBM3Eの品質認証と供給開始
最大の懸案事項だったHBM3E(第5世代HBM)において、NVIDIAなどの主要顧客による品質テストに合格し、本格的な供給を開始したことが決定打となりました。
- 先行していたSK hynixとの技術格差を急速に縮め、AIメモリ市場でもシェアを奪い返した形です。
3. 次世代プロセス「1c nm」の先行導入
業 界最小レベルの1c nm(10ナノ級・第6世代)プロセスの量産を軌道に乗せ、生産効率を大幅に高めました。
- これにより、同じ面積のウェハからより多くのチップを製造できるようになり、他社を上回るコスト競争力を確保しました。
4. メモリとファウンドリの「垂直統合」の強み
サムスンは自社でチップの製造(ファウンドリ)とメモリ製造の両方を行える唯一の企業です。
- 次世代のHBM4ではメモリと演算ロジックの融合が進むため、この「ワンストップ体制」が顧客(NVIDIAやAMDなど)から高く評価され、先行受注に繋がりました。
SK hynixがAI特化型で先行したのに対し、サムスンは「汎用製品での圧倒的な物量作戦」と「AI製品での技術的な巻き返し」を同時に成功させたことが首位奪還の理由です。

汎用DRAMの価格高騰を圧倒的な生産力で収益に繋げたこと、HBM3Eの供給を本格化させAI需要を捉えたことが主な要因です。次世代1c nmプロセスの導入や、設計から製造まで完結する垂直統合モデルの強みも寄与しました。
1c nmプロセスとは何か
1c nmとは、DRAM(メモリ)の製造プロセスにおける「第6世代の10nm級(10ナノメートル級)」技術のことです。
メモリ業界では、回路の線幅を細かく(微細化)して性能を高めますが、10nm台に突入してからは「10.0nm」というピンポイントな数字ではなく、1x、1y、1z、1a、1b、1cという記号で世代を表しています。
1. 進化の系譜
DRAMの微細化は以下のように進んでいます。右に行くほど新しく、回路が細かくなります。
- 1x(第1世代):約18nm
- 1y(第2世代):約17nm
- 1z(第3世代):約15nm
- 1a(第4世代):約14nm(EUV露光の導入開始)
- 1b(第5世代):約12nm
- 1c(第6世代):11nm台(現在の最先端)
2. 1c nmの主な特徴
サムスンなどが2025年に量産を開始した1c nmには、主に3つのメリットがあります。
- 生産性の向上: 回路がより細かくなったことで、1枚のシリコンウェハから取れるチップの数が増えました。これにより、大量生産時のコストを抑えられます。
- 電力効率の改善: 1b nm(第5世代)と比較して、電力効率が約30%向上しています。これは消費電力が膨大なデータセンターやAIサーバーにとって非常に重要なポイントです。
- 高精度のEUV活用: 極端紫外線(EUV)露光技術をさらに高度に活用することで、複雑な回路をより正確に刻めるようになりました。
3. なぜ今「1c nm」が話題なのか
サムスンがSK hynixを抜いて首位を奪還できた大きな要因の一つが、この1c nmでの先行量産です。
1c nmプロセスで製造されたDRAM(DDR5やLPDDR5Xなど)は、AI PCや最新スマホ、サーバー市場で「最も高性能で省エネなメモリ」として引っ張りだこになっており、サムスンの収益を大きく押し上げました。
「1c nm」は、現在世界で最も細かく、高性能なメモリを作るための最新の製造ルールのことです。

10nm級DRAMの第6世代(約11nm)を指す製造プロセス技術です。回路を微細化することで、前世代より生産性が向上し、電力効率も約30%改善。AIサーバーや最新スマホに不可欠な最先端メモリの製造規格です。

コメント