この記事で分かること
- 日本エイアンドエルとは:住友化学と三井化学の技術シナジーを活かし、ABS樹脂やラテックス製品の分野で高品質な製品を提供している企業です。
- ラテックスとは:弾性を持つ高分子を水に分散させたコロイド状の液体であり、合成ラテックスは紙加工や建築材、リチウムイオン電池用バインダーとして使用されています。
- バインダーとは:リチウムイオン電池のバインダーは電極材の結着・集電体への固定を行うもので、柔軟性・密着性・化学的安定性などの利点をもつラテックスが利用されています。
双日による日本エイアンドエルの株式取得
双日がBRラテックスならびにABS樹脂の製造・販売・研究開発を行う日本エイアンドエル株式会社株式売買契約を締結したことを発表しています。
https://www.sojitz.com/jp/news/article/20250515.html
日本エイアンドエルはリチウムイオン電池(LiB)の負極バインダー用SBRラテックスや自動車や家電に使用されるABS樹脂で
日本エイアンドエルについて
日本エイアンドエル株式会社(NIPPON A&L INC.)は、住友化学株式会社と三井化学株式会社の共同出資により1999年7月1日に設立された化学メーカーです。社名の「A&L」は、主力製品であるABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene)とラテックス(Latex)を意味しています 。
基本情報
- 本社所在地:大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号(住友ビル)
- 資本金:60億円(住友化学85%、三井化学15%)
- 代表者:阪本 聡司(代表取締役社長)
- 従業員数:約350名
- 事業内容:ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SBRラテックス、NBRラテックスなどの製造・販売・研究開発 。
生産・研究拠点
日本国内に以下の工場・研究所を展開しています:
- 愛媛工場(新居浜市):ABS樹脂の製造および研究開発
- 大阪工場(高石市):三井化学大阪工場内に所在
- 千葉工場(袖ケ浦市):住友化学千葉工場内に所在
- ラテックス研究グループ:大阪市此花区の住友化学大阪研究所内 。
また、海外にも中国(上海)、北米、タイ、インドに拠点を持ち、グローバルに事業を展開しています。
財務状況(2024年3月期)
- 売上高:528億8,400万円
- 純利益:38億6,100万円
- 総資産:384億4,300万円
- 利益剰余金:109億5,600万円 。

日本エイアンドエルは、住友化学と三井化学の技術シナジーを活かし、ABS樹脂やラテックス製品の分野で高品質な製品を提供している企業です。
ラテックスとは何か
ラテックス(latex)とは、ゴムのような弾性をもつ高分子(ポリマー)を水に分散させたコロイド状の液体です。天然由来のものと合成されたものがあり、以下の2つに大別されます:
1. 天然ラテックス(Natural Latex)
- 原料:パラゴムノキの樹液(天然ゴム乳)
- 用途:医療用手袋、コンドーム、風船、寝具(マットレス)など
- 特徴:
- 柔軟性が高く、弾力性に優れる
- アレルギーを起こすことがある(ラテックスアレルギー)
2. 合成ラテックス(Synthetic Latex)
- 原料:スチレン-ブタジエン(SBR)、アクリル、NBR(ニトリル)などの合成樹脂
- 用途:塗料、接着剤、紙加工、建築材料、バッテリーバインダーなど
- 特徴:
- 用途に応じて物性(耐熱性、耐油性、耐候性など)を調整できる
- 天然ラテックスに比べてアレルギーリスクが低い
ラテックスの主な機能とメリット
- 高い柔軟性と伸縮性
- 表面に均一な膜を形成可能(コーティングに最適)
- 速乾性や接着性が高いものもある
- 環境負荷が比較的少ない(水分散型)

ラテックスは弾性を持つ高分子を水に分散させたコロイド状の液体であり、日本アイアンドエルは合成ラテックスを扱っています、
合成ラテックスは合成樹脂や、紙加工や建築材、リチウムイオン電池用バインダーとして使用されています。
リチウムイオン電池のバインダーとは何か、どのようなラテックスが利用されるのか
チウムイオン電池(LiB)のバインダー(binder)とは、電極材料(活物質)と導電材を固めて、電極基板(集電体)に定着させるための接着剤の役割を果たす高分子材料です。
【バインダーの役割】
- 活物質粒子同士を結合し、電極構造を形成
- 集電体(金属箔)と電極材を密着させ、剥離を防止
- 充放電時の体積変化に耐える柔軟性・耐久性の確保
- 電解液との化学的安定性の維持
【利用されるラテックス系バインダー】
ラテックスバインダーは、水分散型の合成樹脂で、環境対応型(NMPなどの有機溶剤を使用しない)として注目されています。
1. SBR(スチレン・ブタジエンゴム)ラテックス
- 主に負極(アノード)用
- 炭素系活物質(例:黒鉛)との相性が良い
- 柔軟性があり、体積変化を吸収しやすい
- 水系スラリー対応が可能(環境負荷低減)
2. アクリル系ラテックス(PVDFの代替)
- アノードにもカソードにも使用される
- 成膜性・接着性・耐薬品性に優れる
- 水系に対応する設計の製品も増加中
3. NBR(ニトリルブタジエンゴム)系ラテックス
- 耐油性・耐薬品性に優れ、特殊用途で利用

リチウムイオン電池のバインダーは電極材の結着・集電体への固定を行うもので、柔軟性・密着性・化学的安定性などの利点をもつラテックスが利用されています。
紙加工業にはどんなラテックスが使用されるのか
紙加工業に使われるラテックスは、紙の機能性や強度、印刷適性を高めるための結合材やコーティング材として用いられます。主に合成ラテックス(水分散型の合成高分子)が使用され、さまざまな用途に応じて分子構造が設計されています。
【紙加工用ラテックスの主な用途】
1. コーティング剤(表面処理)
- 紙の平滑性・光沢性・印刷適性(オフセット印刷・インクジェット対応など)を向上
- 使用例:アート紙、コート紙、写真用紙、パッケージング用紙
2. バインダー(結着材)
- 顔料(クレー、炭酸カルシウムなど)と紙繊維を結合させる
- 紙に耐水性・耐摩耗性・寸法安定性を与える
3. 含浸材・強化剤
- ティッシュ、フィルター紙、工業用紙などに耐久性・柔軟性・撥水性を付加
【使われる主なラテックスの種類】
種類 | 特徴 | 用途例 |
---|---|---|
SBR(スチレン・ブタジエン)ラテックス | 柔軟性・耐水性に優れる | 一般的な紙コーティング、包装紙 |
アクリル系ラテックス | 耐候性・耐薬品性が高く透明性も良い | 写真用紙、高級印刷紙、特殊フィルター |
VAE(酢酸ビニル・エチレン)系 | 接着性と柔軟性が高い | ティッシュ、工業用紙 |
NBR(ニトリル)系 | 耐油・耐薬品性に優れる | フィルター紙など特殊用途 |
【紙加工でのラテックスの利点】
- 水分散型:環境にやさしくVOCを含まない
- 高い成膜性と接着性:印刷・加工に適した表面形成が可能
- 物性調整が容易:分子構造の設計により、柔軟性・硬度・耐水性などを制御可能

紙加工業でのラテックスは柔軟性・硬度・耐水性に付与のような紙の機能性や強度、印刷適性を高めるための結合材やコーティング材として、利用されています。
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