この記事で分かること
- 化学品データベースとは:数千万種に及ぶ化学物質の名称、物性、安全性、法規制情報などを集約したデジタル基盤です。研究開発の効率化や、複雑な法令遵守(コンプライアンス)、災害・事故防止のために欠かせない「化学産業の共通辞書」としての役割を担っています。
- なぜ高額の資金調達を行えたのか:「30兆円規模の化学市場におけるDXの遅れ」を、法令管理や素材検索を統合した独自のデータ基盤で解決できる点が高く評価されました。特に、脱炭素や環境規制への対応に不可欠な「産業インフラ」としての将来性が、10億円規模の投資を呼び込みました。
- 調達した資金で何を開発するのか:AIによる配合提案やCFP(二酸化炭素排出量)算出機能などの開発に充てられています。また、既存のDB、法令管理、工程管理の各機能を統合し、化学産業全体のデータを繋ぐ「循環型プラットフォーム」の構築を加速させています。
Sotasの化学品データベース
Sotas(ソタス)株式会社は、2022年設立のスタートアップながら、化学業界特有の複雑なサプライチェーンを支える化学品データベースによる産業データ基盤の構築を急ピッチで進めています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC170TQ0X10C26A2000000/
同社は、単なる管理ツールの提供にとどまらず、複数のプロダクトから得られるデータを統合させることで、業界全体のデジタル化(DX)を牽引しようとしており、2025年以降、SotasはシリーズAラウンドなどを通じて累計で数十億円規模の資金調達を実施しています。
化学品データベースとは何か
化学品DB(化学品データベース)とは、世界中に数千万種類あると言われる化学物質の「戸籍」や「カルテ」を集めたデジタル辞書のようなものです。
研究開発、製造、輸出入、廃棄といったあらゆるフェーズで、その物質が「何であるか」「安全か」「法律で規制されているか」を瞬時に判断するために活用されます。
1. データベースに含まれる主な情報
化学品DBには、主に以下の4つのカテゴリーの情報が集約されています。
- 基本属性(身分証明):名称(一般名・商品名)、化学式、CAS番号(世界共通の識別番号)、分子量など。
- 物性・化学的特性:融点、沸点、溶解度、引火点、粘度などの物理的なデータ。
- 安全性・毒性(カルテ):人体への影響(発がん性、刺激性)、環境への影響、火災時の危険性など。
- 法規制情報:化審法、安衛法、毒劇法、あるいは海外の規制(REACH等)に該当するかどうか。
2. なぜ化学品DBが必要なのか
化学業界には、他の産業にはない「命に関わる複雑さ」があるため、DBの重要性が極めて高いのが特徴です。
- コンプライアンスの遵守:法律は頻繁にアップデートされます。DBを使わずに手作業でチェックすると、気づかないうちに違法な輸入や製造をしてしまうリスクがあります。
- 事故の防止:「混ぜるな危険」や「引火の危険」を正確に把握し、現場の安全を守るために必須です。
- 開発の効率化:新しい製品を作る際、必要な特性(例:耐熱性が高い、水に溶けにくい等)を持つ素材を、数万件のデータから瞬時に絞り込むことができます。
3. 主な化学品DBの例
用途によって、国や公的機関が提供するものと、民間企業が提供するものに分かれます。
| 運営主体 | 名称(例) | 特徴 |
| 公的機関 | NITE-CHRIP (日本) | 日本国内の法規制情報に強く、無料で利用可能。 |
| 公的機関 | ECHA (欧州) | 欧州の厳しい化学物質規制(REACH)の基準データ。 |
| 民間・商用 | CAS SciFinder | 世界最大の化学論文・特許情報。研究者向け。 |
| 民間・商用 | Sotas / 各種SDS管理ソフト | 業務効率化やサプライチェーン管理に特化。 |
現代において、化学品DBは単なる検索ツールではなく、「化学物質のDX(デジタルトランスフォーメーション)」の基盤となっています
。最近では、AIを使ってDB内の数値から新しい材料の性質を予測する「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」などの高度な活用も進んでいます。

化学品DB(データベース)とは、数千万種に及ぶ化学物質の名称、物性、安全性、法規制情報などを集約したデジタル基盤です。研究開発の効率化や、複雑な法令遵守(コンプライアンス)、災害・事故防止のために欠かせない「化学産業の共通辞書」としての役割を担っています。
Sotasのデータベースの特徴は何か
Sotasデータベースの最大の特徴は、単なる「情報の閲覧」にとどまらず、「実務(調達・開発・管理)に直結する動的なプラットフォーム」である点です。
従来の公的データベースが「辞書」だとすれば、Sotasは「営業・開発・法務を繋ぐSNS型の産業基盤」といえます。主な特徴は以下の3点です。
1. 国内最大級の「素材・企業」マッチング機能
化学メーカーや商社が、自社の製品(樹脂、添加剤、試薬など)を登録しています。
- 多角的な検索: CAS番号だけでなく、用途、形状、物性値、さらには「環境配慮型(バイオマス、リサイクル)」などのタグで絞り込みが可能です。
- 比較資料の自動生成: 気になる複数の素材を選択するだけで、スペックの比較表を自動で作成し、検討時間を大幅に短縮します。
2. 「Sotas化学調査」との強力な連携
これがSotas独自の強みです。データベースと管理ソフトが一体化しています。
- 法令判定の自動化: データベース内の成分情報に基づき、安衛法、毒劇法、化審法などの該否を瞬時に判定します。
- SDS(安全データシート)の自動連携: サプライヤーから提供された最新のSDSデータを、自社の管理画面でリアルタイムに同期・閲覧できます。
3. サプライチェーンの可視化とデータ統合
「誰が、どこから、何を買い、何を作っているか」というデータを一気通貫で管理することを目指しています。
- 情報の非対称性の解消: 従来、営業担当者の頭の中にしかなかった「どの会社がどの素材を扱えるか」という情報を組織知化します。
- 産業データ基盤の構築: 生産管理システム(Sotas工程管理)と連携することで、在庫状況と化学品情報を紐付け、BCP(事業継続計画)対策にも活用できます。
| 項目 | 従来の業務 | Sotas導入後 |
| 素材探し | カタログ請求や電話確認 | DBで即座に比較・サンプル依頼 |
| 法令チェック | 専門家が分厚い法規集を確認 | システムが自動でアラート |
| データ更新 | PDFや紙の管理で風化 | クラウド上で常に最新状態 |

Sotasデータベースは、国内最大級の素材・企業情報を集約した「動的な産業基盤」です。単なる検索に留まらず、法令判定の自動化や比較資料の作成、生産管理システムとの連携により、調達から管理までを一気通貫でデジタル化できるのが最大の特徴です。
なぜ10億円規模の資金調達できたのか
Sotasが2025年から2026年にかけて大型の資金調達に成功した理由は、単なる「便利なソフト」ではなく、「日本の基幹産業である化学業界のOS(基盤)」になり得ると評価されたからです。
投資家が注目した主なポイントは以下の3点に集約されます。
1. 「バーティカルSaaS」としての圧倒的な専門性
化学業界は市場規模が巨大(約30兆円)ですが、商慣習が古く、FAXや紙、Excelでの管理が根強く残っています。
- 業界特化の深さ: 汎用的な管理ソフトでは対応できない「毒劇法」「安衛法」などの複雑な法令管理や、配合(レシピ)管理に特化した機能を開発。
- 高い継続率: 一度データ基盤として導入されると、他社への切り替えが難しいため、安定した収益が見込めます。
2. 「データの網羅性」によるネットワーク効果
「Sotasデータベース」に登録される企業や素材が増えるほど、その価値が指数関数的に高まる構造を持っています。
- 情報のハブ化: 買い手(メーカー)と売り手(商社)の双方が集まるプラットフォームになったことで、業界のデファクトスタンダード(事実上の標準)になる可能性が示されました。
3. 社会課題(GX・サステナビリティ)への対応力
現在、製造業には「製品が環境にどれだけ負荷を与えているか(CFP:カーボンフットプリント)」の可視化が強く求められています。
- トレーサビリティの実現: 原料から製品、廃棄に至るまでのデータを一気通貫で管理できるSotasの基盤は、脱炭素社会における「環境対応のインフラ」として不可欠だと判断されました。
資金調達の背景とインパクト
| 評価ポイント | 投資家が期待する未来 |
| 市場性 | 30兆円規模の巨大市場のDX |
| 拡張性 | 日本発の化学データ基盤としてのアジア展開 |
| 公共性 | 経済産業省が進める化学物質管理のデジタル化への合致 |

「30兆円規模の化学市場におけるDXの遅れ」を、法令管理や素材検索を統合した独自のデータ基盤で解決できる点が高く評価されました。特に、脱炭素や環境規制への対応に不可欠な「産業インフラ」としての将来性が、10億円規模の投資を呼び込みました。
調達した資金で何を行うのか
Sotasが調達した10億円規模の資金は、主に「プロダクトの多機能化」「AI活用」「業界標準への対応」の3点に集約して投入されています。
1. 「Sotasコンパウンド」構想の実現
複数の独立していた機能を統合し、データがシームレスに繋がる基盤を構築しています。
- 垂直統合: 原料の選定(DB)→ 法令チェック(調査)→ 製造(工程管理)→ 在庫・出荷を一気通貫で管理。
- ERP連携: SAPなどの基幹システムとAPIで連携し、大企業の既存システムとも共存できる開発を強化しています。
2. AI・マテリアルズ・インフォマティクス(MI)への投資
蓄積された膨大な物性データを活用し、開発を加速させるAI機能を実装しています。
- 自動提案AI: 過去の配合データとDBを照合し、目標の物性を満たす代替原料をAIが提案。
- 法令判定の高度化: 複雑な海外の規制文書をAIが解析し、該否判定の精度を極限まで高めます。
3. GX(グリーントランスフォーメーション)対応
脱炭素社会において、製品ごとの排出量計算が義務化されつつある流れに対応します。
- CFP(カーボンフットプリント)の自動計算: DB内の各素材の排出係数を基に、製品1個あたりのCO2排出量を自動算出する機能を開発。
- リサイクル材のトレーサビリティ: 廃プラスチックなどがどこで回収され、どう再資源化されたかの履歴を証明する仕組みを構築。
資金投入によるロードマップ
| 開発フェーズ | 主なアップデート内容 | 狙い |
| 短期(2025-26) | 海外法規制DBの拡充 | 化学商社の輸出業務のDX |
| 中期(2026-) | AIによる配合最適化 | 研究開発期間の50%短縮 |
| 長期(2027-) | グローバルデータ連携基盤 | 日本発の化学ITプラットフォームとして世界標準へ |

調達資金は、AIによる配合提案やCFP(二酸化炭素排出量)算出機能などの開発に充てられています。また、既存のDB、法令管理、工程管理の各機能を統合し、化学産業全体のデータを繋ぐ「循環型プラットフォーム」の構築を加速させています。

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