品川リフラのファインセラミックスの生産強化 ファインセラミックスとは何か?なぜ生産増強を行うのか?

この記事で分かること

  • ファインセラミックスとは:高純度に精製された人工原料を用い、化学組成や微細構造を精密に制御して製造された高性能セラミックスです。硬度、耐熱性、電気特性などに優れ、半導体や航空宇宙、医療など幅広い先端分野で不可欠な素材となっています。
  • AI・半導体装置での用途:半導体回路を刻む際のプラズマに耐える「チャンバー内部品」や、ナノ単位の精度でウェハを固定する「静電チャック」、超高温の炉内でウェハを支える「ボート」等に使用され、装置の精度と耐久性を支えています。
  • なぜ生産増強を行うのか:半導体やAI、航空宇宙分野での需要急増に対応するためです。特に加工難易度の高い精密部品を自社で一貫生産する体制を整え、供給スピードの向上とコスト競争力の強化を図り、2030年の売上高2.5倍超を目指しています。

品川リフラのファインセラミックスの生産強化

 品川リフラ(品川リフラクトリーズ)は、岡山県瀬戸内市にファインセラミックスの生産を強化するための新拠点「瀬戸内工場」を建設し、2026年2月13日に竣工式を行いました。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC1668O0W6A210C2000000/

 この新工場の稼働により、同社は成長分野である半導体製造装置や航空宇宙産業向けの需要を確実に取り込む狙いです。

ファインセラミックスとは何か

 ファインセラミックスは極限まで純度を高めた原料を使い、精密なプロセスで作られたハイテク陶磁器のことです。

 私たちが日常で使う「セラミックス(陶磁器やガラス)」が天然の土や石を原料にするのに対し、ファインセラミックスは化学的に精製された人工原料を使用します。これにより、従来の焼き物のイメージを覆すような「超能力」を持たせることができます。


1. 普通のセラミックスとの違い

項目普通のセラミックス(土器・磁器)ファインセラミックス
原料天然の粘土、長石、珪砂など高純度な人工原料(酸化アルミ、炭化ケイ素等)
作り方職人の勘や経験による調合・焼成コンピューター制御による精密な配合・焼成
精度多少の歪みや気泡があるミクロン(1000分の1mm)単位の精度

2. 代表的な性能

 ファインセラミックスは、素材の組み合わせによって驚くべき性質を発揮します。

  • カミソリより硬い(耐摩耗性): ダイヤモンドに匹敵する硬さを持つものがあり、切削工具やベアリングに使われます。
  • 1000℃でも耐える(耐熱性): 金属が溶けてしまうような高温下でも形や強度を保てるため、宇宙船の耐熱タイルやエンジン部品に不可欠です。
  • 電気を通したり、遮断したり(電気的特性): 絶縁体としての役割はもちろん、逆に電気を蓄える(コンデンサ)性質を持たせることもでき、電子機器の心臓部を支えています。
  • 体になじむ(生体適合性): 骨や歯と成分が近いため、人工関節や人工歯根(インプラント)としても活躍しています。

3. なぜ今、品川リフラが注目しているのか

 先ほどのニュースにあったように、特に半導体製造装置での需要が爆発しています。

 半導体を作る工程では、強力な薬品やプラズマ、超高温が使われます。金属だとすぐにボロボロになり、不純物が混じってしまいますが、「熱に強く、薬品に侵されず、極めて硬い」ファインセラミックスこそが、精密な半導体を作るための「唯一無二の器」として選ばれているのです。


ファインセラミックスとは、高純度に精製された人工原料を用い、化学組成や微細構造を精密に制御して製造された高性能セラミックスです。硬度、耐熱性、電気特性などに優れ、半導体や航空宇宙、医療など幅広い先端分野で不可欠な素材となっています。

ファインセラミックスはなぜ硬いのか

 ファインセラミックスが非常に硬い理由は、原子同士の結びつき(化学結合)が極めて強いためです。


1. 非常に強い「結合エネルギー」

 ファインセラミックスの多くは、「共有結合」「イオン結合」という非常に強固な力で原子同士がつながっています。

  • 共有結合: 原子同士が電子を共有してガッチリ手を組む結合(ダイヤモンドと同じ結合様式)。
  • イオン結合: プラスとマイナスの電気が引き合う強い力。

 これらは金属結合(電子が自由に動き回る結合)に比べて、原子の位置を動かすのに膨大なエネルギーを必要とするため、外からの力(傷や変形)に対して非常に強い抵抗力を示します。

2. 「ズレ」を許さない結晶構造

 金属の場合、強い力を加えると原子の層が滑るように移動(塑性変形)するため、曲がったり凹んだりします。

 しかし、ファインセラミックスは結晶構造が複雑で強固なため、原子の層が滑る(ズレる)ことがほとんどありません。

3. 不純物のない「高純度」

 冒頭で「人工原料」と説明した通り、ファインセラミックスは不純物を極限まで取り除いています。

 天然の石や土に含まれる「もろい部分」がないため、素材全体の密度が均一に高まり、どこを突いても硬いという特性を実現しています。


 ただし「硬さ」は最強ですが、一方で「脆性(ぜいせい)」という弱点もあります。

  • 金属: 叩くと凹む(衝撃を逃がす)。
  • ファインセラミックス: 凹まない代わりに、限界を超えると一気に「割れる」。

 この「硬いが割れやすい」という性質を克服するために、品川リフラのようなメーカーは、材料を混ぜ合わせる高度な技術を駆使しています。

原子同士が「共有結合」や「イオン結合」という非常に強い力で結びついているためです。金属のように原子の層がずれて変形することがほとんどなく、高純度な成分が緻密に詰まっているため、外部からの力に対して極めて高い抵抗力を発揮します。

なぜ耐熱性に優れるのか

 ファインセラミックスが熱に強い理由は、原子同士の結びつきが非常に強く、高温になってもバラバラになりにくいためです。


1. 強固な「化学結合」

 前述の通り、ファインセラミックスは「共有結合」「イオン結合」という非常にエネルギーの高い結合でできています。

  • 金属の場合: 高温になると原子を繋いでいる「自由電子」の動きが激しくなり、結合が弱まって比較的低い温度(鉄なら約1538℃)で溶け始めます。
  • セラミックスの場合: 原子同士がガッチリと固定されているため、熱による激しい振動(熱振動)が起きても、結合を断ち切るのに膨大なエネルギーを必要とします。そのため、2000℃を超えるような超高温でも固体としての形を保てます。

2. 酸化しにくい(「燃えかす」に近い状態)

 多くのファインセラミックス(酸化物系)は、アルミニウムやケイ素がすでに酸素と結びついた「酸化物」の状態です。

  • いわば「すでに燃え尽きた後の状態」であるため、これ以上酸素と反応して燃えたり、ボロボロに劣化したりすることがほとんどありません。これが、高温の酸素にさらされるエンジン内部や宇宙船の外壁で重宝される理由です。

3. 低い熱膨張率

 熱を加えてもサイズが変わりにくいため、高温環境下でも部品同士が干渉したり、歪んだりしにくい性質を持っています。


 品川リフラが元々得意としていた「耐火レンガ」の技術は、この耐熱性の極致を追求したものです。

原子同士の結合力が極めて強く、熱振動を受けても構造が壊れにくいためです。すでに酸素と結びついた「酸化物」の状態が多く、高温下でもこれ以上燃えたり酸化劣化したりせず、安定した形状を維持できるのが特徴です。

ファインセラミックスはAI・半導体装置でどのように利用されるのか

 AI・半導体製造装置において、ファインセラミックスは「過酷な環境に耐える唯一の素材」として、主に以下の3つの重要パーツに使用されています。


1. ウェハを保持する「ステージ・チャック」

 半導体の基板(ウェハ)を固定し、超高速・高精度で移動させる土台です。

  • 役割: 熱で膨張せず、回路を焼き付ける際の「ナノ単位」のズレを防ぎます。
  • 素材: 剛性が高く、熱変形が極めて少ない炭化ケイ素(SiC)などが使われます。

2. プラズマにさらされる「チャンバー内壁・部品」

 回路を刻む「エッチング工程」では、強力なプラズマや腐食性ガスが充満します。

  • 役割: 金属だとボロボロに溶けて不純物(コンタミ)が出てしまいますが、セラミックスなら耐えられます。
  • 素材: 耐食性に優れた酸化イットリウム(イットリア)やアルミナが主流です。

3. 超高温で焼く「拡散・成膜装置用部材」

 ウェハに膜を張ったり、不純物を拡散させたりする1000℃以上の炉の中で使われます。

  • 役割: 高温下でも曲がらず、ウェハを汚染しないクリーンな「棚(ボート)」や「チューブ」として機能します。
  • 素材: 高純度な石英や炭化ケイ素(SiC)が使われます。

 品川リフラの新工場には、これらをミクロン単位で削る最新設備や、不純物を除去する「自動洗浄ライン」が備わっています。

主に半導体回路を刻む際のプラズマに耐える「チャンバー内部品」や、ナノ単位の精度でウェハを固定する「静電チャック」、超高温の炉内でウェハを支える「ボート」等に使用され、装置の精度と耐久性を支えています。

なぜ生産能力の拡大をするのか

 品川リフラが約30億円を投じて瀬戸内工場を建設し、生産能力を拡大する理由は、主に「市場の爆発的成長」「製品の高度化」に対応するためです。


1. 半導体・AI市場の急拡大

 現在、生成AIや自動運転技術の普及により、世界中で半導体の需要が急増しています。

  • 製造装置の「心臓部」: 半導体を作る装置には、超高温や腐食性の強いガスに耐えるファインセラミックス製品が不可欠です。
  • 供給責任: 世界的な半導体不足を背景に、装置メーカーから「もっと早く、大量に供給してほしい」という強い要請があるためです。

2. 航空宇宙・エネルギー分野の成長

 脱炭素社会に向けた「航空機エンジンの軽量化」や「次世代エネルギー(水素など)」の分野でも、金属に代わる耐熱素材として注目されています。

  • これまでニッチだった市場が、本格的な量産フェーズに入りつつあります。

3. 「後工程(加工)」の内製化による競争力強化

 ファインセラミックスは非常に硬いため、焼き上げた後の「削る・磨く」という工程に膨大な時間がかかります。

  • リードタイムの短縮: これまで外部に委託していた精密加工を自社(新工場)で行うことで、納期を大幅に短縮します。
  • 付加価値の向上: 単なる「素材」ではなく、ミクロン単位の精度に仕上げた「完成部品」として出荷することで、利益率を高める狙いがあります。

 ちなみに、今回の新工場には「クリーンルーム」も完備されています。これは半導体向けの部品に「ゴミ一つ許されない」という厳しい品質要求があるからなのですが、

半導体やAI、航空宇宙分野での需要急増に対応するためです。特に加工難易度の高い精密部品を自社で一貫生産する体制を整え、供給スピードの向上とコスト競争力の強化を図り、2030年の売上高2.5倍超を目指しています。

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