この記事で分かること
- ビーガン化粧品とは:動物由来成分を一切使用せず、製造過程でも動物実験を行わない(クルエルティフリー)化粧品です。倫理的・環境的な配慮から注目され、植物由来成分などで作られています。
- 使用される顔料:ビーガン化粧品には、動物由来成分を含まない無機顔料(酸化チタン、酸化鉄、マイカなど)や、昆虫由来のカルミンを含まない植物由来(藻類、根菜など)や微生物由来の色素が使われます。
- 課題:カルミン不使用による鮮やかな赤色の発色難、植物由来色素の退色しやすさや安定性の低さ、そして質感や多様な色合いの再現性にあります。
サンケミカルのビーガン化粧品用の顔料
サンケミカルは、ビーガン化粧品を含む美容業界の持続可能性と天然成分への高まるニーズに応えるため、新しい顔料を積極的に開発・投入しています。
https://www.dic-global.com/ja/news/2025/products/20250709111741.html
同社は革新的な顔料と持続可能なソリューションを通じて、美容業界に貢献していく方針であり、特に、ビーガンや天然由来成分へのシフトという消費者のニーズに応える製品開発に注力していることが伺えます。
ビーガン化粧品とは何か
ビーガン化粧品(ヴィーガンコスメ)とは、以下の2つの原則を満たす化粧品を指します。
動物由来成分を一切使用しないこと
一般的な化粧品には、動物性の成分が含まれていることがあります。例えば、
- ミツロウ、ハチミツ、プロポリス、ローヤルゼリー(蜂由来)
- ラノリン(羊毛由来)
- コラーゲン、ケラチン(動物の結合組織や毛髪由来)
- グリセリン(動物性脂肪由来の場合がある)
- カルミン(コチニールという昆虫由来の赤色顔料)
- シルク(蚕由来)
- スクワラン(サメ由来の場合がある)
ビーガン化粧品は、これらの成分を一切使用せず、植物由来の成分や合成成分で代替しています。
製造過程で動物実験を一切行わないこと(クルエルティフリー)
製品の成分だけでなく、製品開発のどの段階においても動物に対しての実験を行っていません。これは、動物の命や尊厳を尊重する「動物福祉」の考えに基づいています。
なぜビーガン化粧品が注目されているのか?
- 倫理的な観点: 動物愛護や動物の権利を重視する消費者の増加。
- 環境への配慮: 動物由来成分の生産が環境に与える負荷を減らしたいという意識。
- 肌への優しさ: 植物由来の成分が多く配合されているため、敏感肌やアレルギー体質の人にも肌に優しいという認識。
- 持続可能性への貢献: サステナブルな社会を目指す動きの中で、倫理的かつ環境に配慮した選択として注目されています。
ビーガン認証について
ビーガン化粧品であるかどうかは、消費者が成分表示だけで判断するのは難しい場合があります。そのため、「ヴィーガン認証」を取得している製品が信頼の目安となります。これらの認証は、第三者機関が厳格な基準(動物由来成分の不使用、動物実験の不実施など)を満たしていることを保証するものです。
このように、ビーガン化粧品は、美しさだけでなく、動物や地球環境、そして倫理的な価値観を考慮した、現代の美容トレンドを象徴する製品と言えるでしょう。

ビーガン化粧品は、動物由来成分を一切使用せず、製造過程でも動物実験を行わない(クルエルティフリー)化粧品です。倫理的・環境的な配慮から注目され、植物由来成分などで作られています。
動物由来の化粧品成分にはどのようなものがあるのか
動物由来の化粧品成分は、その起源となる動物の持つ特定の機能や構造に由来する効果を発揮します。植物由来成分では得られにくい、あるいは特性の異なる効果を持つものもあります。代表的な動物由来の化粧品成分とその効果としては、以下のようなものが挙げられます。
- コラーゲン、エラスチン:
- 効果: 保湿、肌のハリ・弾力維持、アンチエイジング。肌の構造を支えるタンパク質であり、保湿力に優れています。牛、豚、魚などから抽出されます。
- ヒアルロン酸:
- 効果: 非常に高い保水力。肌の水分量を保持し、潤いを与えることで、乾燥を防ぎ、なめらかな肌に導きます。鶏のトサカ由来のものと、微生物の発酵によって得られるものがあります。
- プラセンタ:
- 効果: 細胞賦活作用、保湿、美白、抗炎症作用など多岐にわたる効果。哺乳動物の胎盤から抽出され、豊富なアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどを含みます。
- スクワラン:
- 効果: 肌へのなじみが良く、保湿、エモリエント(肌を柔らかく保つ)効果。深海鮫の肝油由来のものと、オリーブ油など植物由来のものがあります。
- ミツロウ、ハチミツ、プロポリス、ローヤルゼリー:
- 効果:
- ミツロウ: 保湿、エモリエント、肌の保護。バリア機能をサポートし、化粧品のテクスチャー調整にも使われます。
- ハチミツ: 保湿、抗菌、抗炎症作用。ビタミンやミネラルも豊富です。
- プロポリス: 抗菌、抗炎症、抗酸化作用。
- ローヤルゼリー: 保湿、肌細胞の活性化、栄養補給。
- 効果:
- ラノリン:
- 効果: 高い保湿力とエモリエント効果。羊毛から採取される油性成分で、肌の保護膜を作り、水分蒸発を防ぎます。
- カルミン(コチニール色素):
- 効果: 鮮やかな赤色の着色。口紅やチークなどのメイクアップ製品に用いられます。コチニールという昆虫から得られる天然の色素です。
- キトサン、コンドロイチン:
- 効果: 保湿、皮膜形成、ヘアケア製品ではセット剤として使用されることもあります。甲殻類の殻や魚の軟骨などから抽出されます。
これらの動物由来成分は、その構造や組成が人間の肌の成分と類似していることがあり、肌へのなじみやすさや、特定の機能性において優れた効果を発揮するとされてきました。
しかし、近年では、倫理的、環境的な懸念から、これらの動物由来成分を代替する、同等以上の効果を持つ植物由来成分や合成成分の研究開発が進められています。

動物由来成分は、コラーゲンやヒアルロン酸のように高い保湿力やハリ・弾力を与えるもの、プラセンタのように細胞活性化を促すものなど、肌への優れた効果が期待できます。
ビーガン化粧品にはどんな顔料が使われるのか
ビーガン化粧品に使われる顔料は、動物由来の成分を一切含まないことが絶対条件です。そのため、主に以下の種類の顔料が選ばれます。
- 無機顔料:
- 酸化チタン: 白色顔料として広く使われ、日焼け止め効果も兼ねます。
- 酸化鉄: 赤、黄、黒、茶色などの色を出すために使用されます。天然由来であり、土から採れるため、ビーガン化粧品で非常に一般的です。
- マイカ(雲母): 体質顔料として使われたり、真珠光沢顔料としてキラキラとした輝きを与えたりします。天然鉱物です。
- ウルトラマリン(群青): 青色顔料として使われます。
- 群青、酸化クロム: 緑色顔料として使われます。
- 植物由来の天然色素:
- カロテノイド: ニンジン、トマト、パプリカ、藻類などから抽出され、黄色からオレンジ、赤色を出します。
- クチナシ色素: 黄色から青色の色素として使われます。
- ビートルート(赤カブ)色素: 赤色を出します。
- スピルリナ: 藻類由来の青色色素です。
- クロロフィル(葉緑素): 緑色を出します。
- ウコン色素(クルクミン): 黄色を出します。
- 微生物由来の色素:
- 植物由来と同様に、微生物の発酵などによって得られる色素も使用されます。
避けるべき顔料(ビーガン化粧品の場合):
- カルミン(コチニール色素): 鮮やかな赤色を出すために使われますが、コチニールという昆虫由来のため、ビーガン化粧品では使用されません。
近年、サンケミカルのように、カルミンを使わずに鮮やかな赤色を再現できる無機顔料や、安定性が高く発色の良い植物由来・微生物由来の色素の開発が進んでいます。これにより、ビーガン化粧品でも豊富なカラーバリエーションが実現可能になっています。

ビーガン化粧品には、動物由来成分を含まない無機顔料(酸化チタン、酸化鉄、マイカなど)や、昆虫由来のカルミンを含まない植物由来(藻類、根菜など)や微生物由来の色素が使われます。
ビーガン化粧品には使われる顔料の課題は何か
ビーガン化粧品に使われる顔料には、主に以下の課題があります。
- 発色の限界と代替の難しさ:
- 鮮やかな赤色の課題: 最も大きな課題の一つは、鮮やかで安定した赤色を出すことです。一般的な化粧品では、コチニールという昆虫由来の「カルミン」が広く使われてきましたが、これは動物由来のためビーガン化粧品では使用できません。代替となる植物由来の赤色色素は、発色や安定性がカルミンに劣ることが多く、求める色を出すのが難しい場合があります。
- 一部の鮮やかな色(青、緑など): 天然由来の色素では、合成色素のような多様で鮮やかな色合いを出すのが難しい場合があります。特に青や緑など、安定した発色を保つことが課題となることがあります。
- 顔料の安定性と持続性:
- 退色や変色: 植物由来の天然色素は、光や熱、酸化に弱く、退色したり変色したりしやすい傾向があります。製品の品質を長期間維持するためには、安定性を高める技術開発が不可欠です。
- ロットごとの色のばらつき: 天然由来の原料は、収穫時期や産地によって色味にばらつきが生じることがあり、均一な製品を提供することが難しい場合があります。
- 使用感や機能性の課題:
- パール感やラメの代替: ビーガン化粧品では、貝殻由来のグアニンや、魚の鱗由来の成分など、動物由来のパール剤やラメが使えません。代替となる合成マイカや植物由来の微粒子を使うことで、同じような輝きを出すのが難しい場合があります。
- 肌への密着性や持続性: 一部の動物由来成分(例:ミツロウ)は、化粧品のテクスチャーや肌への密着性を高める効果がありますが、ビーガン処方ではこれらを植物由来成分で代替する必要があります。この代替が、使用感や化粧持ちに影響を与える可能性があります。
- コストと入手経路:
- 高コスト: 特定の機能を持つ植物由来顔料や、安定化処理を施した顔料は、通常の無機顔料や合成色素に比べて開発・製造コストが高くなる傾向があります。
- 安定供給の確保: 天然由来の原料は、天候や収穫量に左右されることがあり、安定した供給ルートを確保することが課題となる場合があります。
これらの課題に対し、顔料メーカーは、既存の無機顔料の配合技術の向上や、より高性能な植物由来・微生物由来の色素の開発、そしてそれらの安定性を高める技術研究に力を入れています。

ビーガン化粧品顔料の課題は、カルミン不使用による鮮やかな赤色の発色難、植物由来色素の退色しやすさや安定性の低さ、そして質感や多様な色合いの再現性にあります。
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