電子部品:スイッチ スイッチの役割は?スイッチにはどんな種類があるのか?

この記事で分かること

  • スイッチの役割:回路の接続や切断を物理的に切り替える受動部品です。電流の経路を制御することで、機器のオンオフや機能の切り替えを行います。エネルギーを消費したり増幅したりする機能はなく、単純に電気の流れを制御する役割を担います。
  • スイッチの種類:スイッチの種類は、その形状や操作方法によって分類されます。代表的なものに、押している間だけONになるタクトスイッチ、レバーを倒して状態を保持するトグルスイッチ、横にスライドさせて切り替えるスライドスイッチ、ノブを回して選択するロータリスイッチなどがあります

スイッチ

 日本の電子部品メーカーは、半導体製造分野では後れを取っているものの、コンデンサやセンサーなどの部品分野では、長年にわたり世界市場で強い競争力を保ち続けており、台湾企業による買収も報じられています。

 https://news.yahoo.co.jp/articles/7c65f370b3f25f662f603f1b6f59d590fba4cd46

 日本の電子部品メーカーは、長年にわたって培ってきた高い技術力、品質へのこだわり、そして特定のニッチ分野での圧倒的な強みにより、世界市場でその地位を確固たるものにしています。

 今回は受動部品であるスイッチについての記事となります。

スイッチとは何か

 スイッチとは、回路のオンオフを切り替えたり、信号の経路を切り替えたりするための受動部品です。


主な機能と役割

 スイッチの主要な機能は以下の2つです。

  1. 回路の接続/切断: 電気回路の導通状態を物理的に操作し、回路のオンオフを切り替えます。電灯のスイッチや、機器の電源ボタンなどがこれにあたります。
  2. 信号経路の切り替え: 複数の回路や信号源の中から、特定の経路を選択して接続します。例えば、オーディオ機器の入力切り替えスイッチなどがこれに該当します。

スイッチの種類

 スイッチには様々な種類があり、用途に応じて使い分けられます。

  • トグルスイッチ: レバーを倒すことでオンオフを切り替えるタイプ。
  • タクトスイッチ: 押している間だけ回路が閉じる(オンになる)タイプ。キーボードやリモコンなどに使われます。
  • スライドスイッチ: スライドすることで回路を切り替えるタイプ。
  • ロータリスイッチ: ノブを回転させることで、複数の接点の中から選択するタイプ。

受動部品としての特徴

 スイッチは、回路にエネルギーを供給せず、ただ電気信号の経路を制御するだけという点で受動部品に分類されます。これに対し、トランジスタのように信号を増幅する機能を持つ部品は能動部品と呼ばれます。

スイッチとは、回路の接続や切断を物理的に切り替える受動部品です。電流の経路を制御することで、機器のオンオフや機能の切り替えを行います。エネルギーを消費したり増幅したりする機能はなく、単純に電気の流れを制御する役割を担います。

トグルスイッチの仕組みは

 トグルスイッチの仕組みは、てこの原理を利用したシンプルな構造です。レバーを上下または左右に倒すことで、内部の可動接点が移動し、固定接点に接触したり離れたりすることで電気回路のオン・オフを切り替えます。


仕組みの要点

 トグルスイッチは、主に以下の部品で構成されています。

  • レバー: 指で操作する部分。このレバーを動かすことで内部の機構が連動します。
  • 可動片(可動接点): レバーの動きと連動して動く導電性の部品。
  • 固定接点: ケースに固定された導電性の部品。
  • バネ: レバーを倒した位置で固定したり、操作感を良くしたりする役割を担います。

動作原理

 レバーを倒すと、レバーの先端に取り付けられた可動片がシーソーのように動きます。この可動片が、ケースに固定されている固定接点に接触することで、回路が繋がり(ON)、電流が流れます。逆に、レバーを反対に倒すと、可動片が固定接点から離れ、回路が切断されます(OFF)。

 このシンプルで確実な動作原理により、トグルスイッチは多くの電気機器で広く利用されています。操作した状態を物理的に保持する「オルタネイト型」と、指を離すと元の位置に戻る「モメンタリ型」の2種類があり、用途に応じて使い分けられます。

トグルスイッチは、レバーを倒すことで内部の可動接点がシーソーのように動き、固定接点と接触または離れることで回路をオン・オフします。てこの原理を利用したシンプルで確実な機械的構造により、操作した状態を物理的に保持します。

タクトスイッチの仕組みは

 タクトスイッチは、内部のドーム状の金属板(接点)が変形することで、回路をON/OFFする仕組みです。押している間だけ回路が繋がり、指を離すと元の状態に戻る「モーメンタリ動作」が特徴です。


仕組みの要点

 タクトスイッチは、非常にシンプルな構造で構成されています。

  1. プランジャ(またはボタン): ユーザーが指で押す部分です。この部品が、内部のドーム状の金属板に力を伝えます。
  2. ドーム状の金属板(可動接点): 通常、逆さまの皿のような形状をしています。圧力を加えると「カチッ」という感触とともに平らになり、下の固定接点に接触します。
  3. 固定接点: 基板に固定されている2つの電極で、ドーム状の金属板がこの2つを繋ぐことで回路が閉じます。

動作原理

  1. 押す: ユーザーがスイッチを押すと、プランジャが内部のドーム状の金属板を押し込みます
  2. 接触: 一定の力が加わると、金属板が「カチッ」という感触とともに反転して平らになり、2つの固定接点を結びつけます。これにより回路が繋がり、電流が流れます。
  3. 離す: 指を離すと、金属板がバネのように元のドーム状に戻り、固定接点から離れます。これにより回路が切断され、電流が止まります。

 この仕組みによって、タクトスイッチは確実なクリック感を生み出し、ユーザーがスイッチを押したことを明確に認識できるフィードバックを提供します。リモコンや電子機器のボタンなど、多くの製品で採用されているのは、このシンプルな動作と信頼性のためです。

タクトスイッチは、ドーム状の金属板を指で押して変形させることで、基板上の接点と接触させ回路を閉じます。指を離すと金属板が元の形に戻り回路が開く、押している間だけオンになる仕組みです。

スライドスイッチの仕組みは

 スライドスイッチは、ツマミを直線的に動かすことで、内部の可動接点が複数の固定接点の上を滑り、回路の接続を切り替える仕組みです。


仕組みの要点

 スライドスイッチは、主に以下のシンプルな部品で構成されています。

  • ツマミ(スライダー): ユーザーが指で操作する部分。これを横に動かすと、内部の可動接点が連動して動きます。
  • 可動接点: ツマミと一体になった導電性の金属片。ツマミの動きに合わせて、固定接点の上をスライドします。
  • 固定接点: スイッチの本体に固定された、複数の電極。可動接点がこれらのうちのどれかと接触することで、電流の経路が変わります。

動作原理

  ツマミをスライドさせると、ツマミに連動する可動接点が固定接点の上を滑るように移動します。この際、可動接点がどの固定接点に位置するかによって、回路のオン・オフや、電流の流れる経路が変わります。

 この仕組みは、シンプルでありながら信頼性が高く、ラジオの電源ON/OFFや音量調整、おもちゃのモード切り替えなど、さまざまな用途で使われます。

 特に注目すべきは、可動接点が固定接点の上を「こする」ように動くため、接点に付着したほこりや酸化膜を削り取るセルフクリーニング効果があることです。これにより、長期間の使用でも接触不良が起こりにくいという利点があります。

スライドスイッチは、ツマミをスライドさせることで、内部の可動接点が複数の固定接点の上を滑り、回路の接続先を切り替えます。ツマミの位置を物理的に保持するため、電源のオンオフや機能の切り替えなどに使われます。

ロータリスイッチの仕組みは

 ロータリスイッチは、ノブを回転させることで、内部の可動接点が複数の固定接点の上を移動し、電気回路の接続先を切り替える仕組みです。


仕組みの要点

 ロータリスイッチの内部構造は、主に以下の3つの要素で構成されています。

  • 回転軸(シャフト): ノブに接続されており、これを回すことで内部の機構が動作します。
  • 可動接点: 回転軸に連動して円形に動き、固定接点の上を摺動します。この可動接点が、どの固定接点と接触するかによって電流の経路が決まります。
  • 固定接点: スイッチ本体の円周上に複数配置された電極です。各固定接点は異なる回路や機能に繋がっています。

動作原理

 ノブを回すと、回転軸と一体になった可動接点が、円周状に配置された複数の固定接点の上を滑るように移動します。

  1. 共通端子(コモン端子): ロータリスイッチには通常、可動接点に繋がった共通端子があり、これが全ての固定接点と切り替えて接続されます。
  2. 切り替え: ノブを特定の角度まで回すと、可動接点が目的の固定接点に接触し、共通端子とその固定接点との間で回路が接続されます。
  3. クリック感: 多くのロータリスイッチには、ツマミを回したときに「カチッ」という感触(ディテント機構)があります。これは、可動接点が各固定接点に確実な位置で停止し、誤操作を防ぐためのものです。

 この仕組みにより、1つのノブ操作で複数の回路を順番に切り替えることが可能です。ラジオのチャンネル選択、アンプの入力切り替え、扇風機の風量調整など、複数の設定を段階的に選択する用途に広く使われています。また、複数のスイッチを段状に重ねることで、より多くの回路を同時に制御できる多段構造の製品もあります。

ロータリスイッチは、ノブを回転させることで、内部の可動接点が円周状に並んだ固定接点の上を移動し、回路の接続先を切り替える仕組みです。複数の回路を段階的に選択できます。

スイッチの有力メーカーは

 スイッチの種類や用途は多岐にわたるため、一概に「有力」と呼べるメーカーは分野によって異なります。以下に、主要なスイッチメーカーをいくつかご紹介します。

日本の主要メーカー

  • オムロン株式会社: 制御機器や電子部品で世界的にも知られる大手メーカー。産業用から一般民生品まで、幅広い種類のスイッチを扱っています。特にマイクロスイッチやリレーは有名です。
  • アルプスアルパイン株式会社: スマートフォンや車載機器などに使われる小型の電子部品に強みを持つメーカーです。タクトスイッチやスライドスイッチ、ロータリスイッチなど、多種多様なスイッチを提供しています。
  • NKKスイッチズ株式会社: 産業用スイッチの専門メーカーとして、高品質で信頼性の高いスイッチを多数開発・製造しています。トグルスイッチや押ボタンスイッチなど、幅広いラインナップが特徴です。

海外の主要メーカー

  • TE Connectivity: アメリカに本社を置く世界的なコネクタ・センサーメーカー。スイッチも幅広く扱っており、特に車載用や産業機器用の製品に強みがあります。
  • Eaton (イートン): アメリカの電力管理会社。産業用、民生用の幅広いスイッチ製品を扱っており、信頼性の高い製品を提供しています。
  • Cisco Systems (シスコシステムズ): 主にネットワーク機器の分野で知られる企業ですが、ITインフラを支えるLANスイッチなどのネットワークスイッチ市場で大きなシェアを誇っています。

 これらのメーカー以外にも、特定の分野に特化した中小規模の専門メーカーが多数存在します。

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