この記事で分かること
- 後工程とは:前工程で製造された半導体チップを切り出し、配線やパッケージングを行い、最終的な製品として完成させるプロセスです。
- 後工程の重要性が増加している理由:導体の微細化が物理的限界に達したため、従来の「前工程」での性能向上が難しくなったため、後工程の進化に注目が集まっています。
半導体後工程の重要性増加
チップの微細化による性能向上の限界が見え始めていることから、半導体製造において前工程から後工程へと性能向上開発の主戦場が移り始めています。
複数のチップを効率的に組み合わせて性能を引き出す「後工程」の重要性が増しています。
後工程とは何か
後工程とは、半導体チップの製造プロセスにおいて、回路形成後の組み立てと検査を行う工程のことです。
具体的には、前工程でウェハー上に形成された多数のチップを一つひとつ切り出し(ダイシング)、配線基板に接続し、樹脂などでパッケージングし、最終的な製品として完成させます。
後工程の主要なプロセス
後工程は、主に以下のステップで構成されます。
- ダイシング(Dicing): ウェハー上に格子状に並んだ個々のチップを、ダイヤモンドブレードなどで切り離し、単一のチップ(ダイ)にします。
- ダイボンディング(Die Bonding): 切り出されたチップを、リードフレームやプリント基板などのパッケージの台座に接着します。
- ワイヤーボンディング(Wire Bonding): チップ上の電極と、パッケージの外部端子を、金やアルミニウムなどの細い金属線(ワイヤー)で接続します。これにより、チップが外部と電気的に接続されます。
- モールディング(Molding): チップとワイヤーを保護するために、樹脂などで全体を覆い固めます。これにより、外部の衝撃や湿気からチップを守ります。
- 検査(Testing): 完成した半導体製品が、仕様通りに機能するかどうかを検査します。不良品を特定し、最終製品として出荷できるかを確認します。
これらの工程は、チップの性能や信頼性を大きく左右するため、特に最新のAI半導体においては、3D積層技術やチップレット技術の導入により、その重要性が増しています。

後工程とは、前工程で製造された半導体チップを切り出し、配線やパッケージングを行い、最終的な製品として完成させるプロセスです。複数のチップを統合する技術も含まれ、AI半導体では性能向上の鍵を握っています。
なぜ後工程が主戦場となるのか
後工程が主戦場となっているのは、以下に示すように、半導体の微細化が物理的な限界に近づいているためです。これまでの性能向上は、回路の幅をより細かくする「前工程」が中心でしたが、原子レベルに達し、これ以上のコストをかけても効果が得られにくくなりました。
そこで、複数のチップを組み合わせて性能を高める「後工程」の技術が重要視されるようになりました。
1. 微細化の限界
半導体の性能を向上させるため、回路の線幅を縮める微細化が追求されてきましたが、ナノメートル(10−9m)のレベルに達し、物理的な限界に直面しています。これ以上の微細化は製造コストが爆発的に増加する一方で、得られる性能向上が見合わなくなってきました。
2. チップレット技術の活用
AI半導体は、演算処理を行うコア、高速メモリなど、複数の異なる機能を一つのパッケージに統合する必要があります。これらの機能をそれぞれ最適な製造プロセスで作り、後から組み立てるチップレット技術が効率的です。
この技術によって、全体を一つの巨大なチップとして作るよりも、開発期間とコストを削減しつつ、高性能な半導体を製造できるようになりました。
3. 3D積層技術による性能向上
複数のチップを積み重ねて接続する3D積層技術は、チップ間のデータ通信距離を劇的に短縮します。これにより、データ転送速度が向上し、消費電力も削減できます。
これは、大量のデータ処理が求められるAI半導体にとって不可欠な技術であり、後工程の技術力が直接的な性能差に繋がります。
4. 特定用途向け半導体の需要
AIの用途が多様化するにつれて、汎用的な半導体よりも特定の用途に特化したASIC(特定用途向け集積回路)の需要が増えています。後工程の技術を用いることで、顧客の要求に合わせて異なるチップを組み合わせてカスタマイズすることが容易になり、市場への迅速な対応が可能になります。

半導体の微細化が物理的限界に達したため、従来の「前工程」での性能向上が難しくなりました。そこで、複数のチップを組み合わせて性能を高めるチップレット技術や3D積層技術といった「後工程」の重要性が増し、主戦場となっています。
ASICとは何か
ASICは「Application Specific Integrated Circuit」の略で、日本語では「特定用途向け集積回路」と呼ばれます。その名の通り、特定の機能や用途に特化して設計・製造された半導体チップです。
ASICの主な特徴
ASICは、汎用的なCPUやGPUと異なり、特定のタスクを最も効率良く実行できるように最適化されています。その主な特徴は以下の通りです。
1. 高い性能と電力効率
特定の機能に特化しているため、不要な回路がありません。これにより、同じタスクを実行する汎用チップに比べて、高速で低消費電力での動作が可能です。例えば、AIの推論処理、暗号通貨のマイニング、自動車の運転支援システムなど、特定の計算をひたすら繰り返すタスクに最適です。
2. カスタマイズ性とコスト
ASICは顧客のニーズに合わせてフルオーダーメイドで設計されることが多いです。そのため、開発初期のコストは高くなりますが、一度設計して大量生産に入ると、チップ1個あたりの単価は非常に安くなります。
3. 設計変更の難しさ
ASICは特定のタスクのためにハードウェアが固定されているため、一度製造すると、後から機能を変更したりアップデートしたりすることはできません。
この点が、プログラムを書き換えて機能を変更できるFPGA(Field-Programmable Gate Array)との大きな違いです。
4. 応用分野
スマートフォン、ゲーム機、データセンターの通信機器、自動車、医療機器など、特定の機能が求められる多岐にわたる分野でASICが活用されています。

ASICは、特定の機能に特化して設計された半導体チップです。AI推論や暗号通貨のマイニングなど、特定のタスクを効率良く、低消費電力で実行できますが、汎用性はなく、設計変更が難しいという特徴があります。
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