この記事で分かること
- TOWAの製造装置:半導体の最終工程でチップを樹脂で包む「封止(モールディング)装置」の世界最大手メーカーです。独自開発の「コンプレッション方式」に強みがあり、生成AI用メモリ(HBM)製造に不可欠な存在です。
- コンプレッション方式の利点:樹脂のプールにチップを沈めて固めるため、樹脂の流れによる断線や変形が起きず、積層メモリ(HBM)等の繊細な構造に最適です。また、樹脂の通り道が不要で材料を使い切るため、廃棄物ゼロの環境性能も誇ります。
半導体製造装置のTOWAの新研究開発拠点
半導体製造装置のTOWAは、関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)に研究開発拠点を設けると発表しています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF227330S5A221C2000000/
TOWAは、生成AI向けメモリ(HBM:高帯域幅メモリ)の製造に不可欠な「モールディング装置(樹脂封止装置)」で世界シェアトップを誇る企業です。現在、京都府内での研究開発体制の強化が非常に注目されています。
TOWAはどんな装置メーカなのか
TOWAを一言で表現すると、「半導体の後工程(仕上げ)」において、世界シェアトップの技術を持つ京都の超精密装置メーカーです。
特に、ICチップを保護するために樹脂で固める「モールディング(封止)」という工程で、世界シェア約6割を誇る圧倒的なリーディングカンパニーです。
1. 主な製品
TOWAの主力製品は、大きく分けて以下の3つです。
- モールディング装置(樹脂封止装置)
- 役割: 繊細なICチップを、熱や衝撃、湿気から守るためにプラスチック樹脂でパッケージングする装置です。
- 地位: 世界シェアNo.1。これがないと、スマホやPC、生成AI用メモリなどの半導体は完成しません。
- シンギュレーション装置
- 役割: 樹脂で固められた大きな基板を、一つひとつの小さなチップに高速・精密に切り分ける装置です。
- 超精密金型
- 役割: 樹脂を流し込むための「型」です。ミクロン単位の精度が要求される、TOWAの技術の源泉です。
2. 独自の強み
TOWAが世界的に評価されている理由は、「コンプレッション方式」という画期的な技術にあります。
- 従来の方式(トランスファ方式): 狭い隙間にドロドロの樹脂を「流し込む」ため、中の細いワイヤーが断線したり、チップが傷ついたりするリスクがありました。
- TOWAのコンプレッション方式: 樹脂をプールのように溜めた中にチップをそっと「沈め込む」方式です。
- メリット: チップに負担がかからないため、生成AI用の積層メモリ(HBM)や超薄型チップなど、最先端の壊れやすい半導体に不可欠な技術となっています。
- 環境への配慮: 樹脂を使い切ることができるため、無駄な廃棄物が出ず、SDGsの観点からも支持されています。
3. 市場での立ち位置
- 生成AIブームの影の立役者: 最近では、ChatGPTなどのAIを支える高性能メモリ(HBM)の製造に、TOWAのコンプレッション装置が必須と言われており、投資家からも非常に高い注目を集めています。
- 京都発のグローバル企業: 海外売上比率が80%以上に達しており、世界中の主要な半導体メーカー(インテル、サムスン、SKハイニックスなど)がTOWAの顧客です。

TOWAは、半導体の最終工程でチップを樹脂で包む「封止(モールディング)装置」の世界最大手メーカーです。独自開発の「コンプレッション方式」に強みがあり、生成AI用メモリ(HBM)製造に不可欠な存在です。
モールディング装置とは何か
モールディング装置(樹脂封止装置)とは、繊細な半導体チップを、プラスチック(樹脂)でカプセル化して守る機械」です。
半導体は、回路が描かれただけの状態では非常に脆く、そのままでは指で触れたり空気に触れたりするだけで壊れてしまいます。これを製品として使える状態にする「後工程」の主役がこの装置です。
1. 主な3つの役割
- ガード(保護): 衝撃、ほこり、湿気からチップを守ります。
- 絶縁: 電気的なショートを防ぎます。
- 放熱: チップが発生する熱を逃がしやすくします。
2. どうやって固めるのか?(2つの方式)
モールディング装置には大きく分けて2つのやり方があります。
| 方式 | 仕組み | 特徴 |
| トランスファ方式 | 溶けた樹脂を注射器のように「流し込む」 | 従来からの主流。安価で大量生産向き。 |
| コンプレッション方式 | 樹脂のプールにチップを「沈め込む」 | TOWAの得意技。チップに負担がかからず、最先端のAIチップ等に必須。 |
3. なぜ「コンプレッション方式」が重要なのか
最近のAI(ChatGPTなど)に使われる半導体は、チップを何枚も縦に積み重ねる非常に複雑な構造(HBMなど)をしています。
従来の「流し込む方式」では、樹脂の勢いで中の細かい配線が切れてしまうことがありますが、TOWAの「沈め込む方式(コンプレッション)」なら、ダメージを与えずに優しく包み込めるため、世界中で引っ張りだこになっています。

半導体チップを熱や衝撃、湿気から守るために樹脂で包み込む「封止」を行う装置です。特にTOWAの装置は、チップを樹脂に沈める独自の「コンプレッション方式」により、断線を防ぎ、生成AI向けなどの高度な半導体を精密に保護できます。
新施設ではどのような開発が行われるのか
TOWAが直近(2025年12月22日発表)で発表した「けいはんな学研都市(京都府)」の新拠点、および近年稼働した「京都東事業所」の新棟で行われる開発内容は、主に以下の通りです。
けいはんな」の新拠点は、単なる工場ではなく「次世代技術の創造」と「人財育成」に特化している点が特徴です。
1. けいはんな学研都市の新拠点(最新計画)
2025年12月に用地確保が発表されたこの拠点では、中長期的な競争力を高めるための「攻め」の開発が行われます。
- 次世代プロセス技術の研究:
- 現行の延長線上ではない、5年〜10年先を見据えた「未知の封止技術」や新材料の共同研究。
- 人財育成と共創:
- 社内エンジニアの教育だけでなく、大学や研究機関が集まる学研都市の利点を活かし、外部とのオープンイノベーション(共同開発)を加速させます。
- デジタルツイン・AI活用:
- 装置の稼働データを解析し、故障予兆や最適な成形条件をAIが導き出す「スマート装置」のソフトウェア開発。
2. 京都東事業所「第4棟」(2022年〜稼働中)
宇治田原町にあるこの新施設では、より「製品」に近い実用的な開発・生産が行われています。
- 超精密切削工具(エンドミル・ドリル)の開発:
- 金型を作るための「道具」そのものを自社開発。1ミクロンを争う精度の工具を内製化し、金型の品質を極限まで高めています。
- 受託加工ビジネスの拡大:
- 自社装置で培った技術を使い、自動車部品や医療機器などの精密加工を請け負う新事業の開発拠点となっています。
- 工場のスマート化(DX):
- 自動化ラインやIoTを導入した「スマートファクトリー」のモデルルームとしての役割。
拠点の役割分担
| 拠点 | 主な開発・目的 |
| 本社(南区) | 現行主力製品(HBM向け装置など)の改良・設計 |
| 京都東(宇治田原) | 金型・工具の高度化、受託加工という「モノづくり」の深化 |
| けいはんな(新拠点) | 次世代技術の基礎研究、外部連携、高度IT・AI人財の育成 |

けいはんな学研都市の新拠点では、主に以下の開発が行われます。
- 新技術・製品開発:半導体製造装置や金型に関する次世代のコア技術、およびそれらを活用した新分野の製品開発。
- 人財育成(TOWAアカデミー):企業文化の醸成や、世界トップシェアを支える高度な技術・技能の伝承。
これまでの生産・改良拠点とは異なり、「5年〜10年先の未来を作る研究」と「技術者の育成」に特化した、TOWAの持続的成長の要となる施設です。稼働開始は2029年度上期を予定しています。

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