TPPグループによるスター精密の公開買い付け スター精密はどんな企業なのか?買い付けを行う理由は何か?

この記事で分かること

  • スター精密とは:CNC自動旋盤(工作機械)と小型プリンター(特機)を主力とする日本の精密機器メーカーです。精密加工技術をコアとし、グローバルニッチ戦略で高い世界シェアを持っています。
  • CNC自動旋盤とは:コンピュータ数値制御(CNC)に基づき、回転する長い棒材(バー材)を自動供給し、高精度な小型精密部品を連続・大量生産する工作機械です。
  • 買い付けを行い理由:スター精密の企業価値の更なる向上と、中期経営計画の確実な推進を目的としています。エンゲージメント投資家として、事業戦略や資本配分政策の高度化を支援するため、TOBを実施します。

TPPグループによるスター精密の公開買い付け

 アメリカのファンドであるタイヨウ・パシフィック・パートナーズ(TPP)グループが、スター精密に対して公開買い付け(TOB)を実施すると発表しました。

TPPグループ、スター精密にTOB 1株2210円
スター精密は12日、米国のファンド、タイヨウ・パシフィック・パートナーズ(TPP)グループが同社株を公開買い付け(TOB)すると発表した。買い付け価格は1株2210円で、買い付け期間は13日から12月25日まで。買い付け予定数の下限は148...

 TPPグループはスター精密の長年の株主であり、経営支援体制の強化や企業価値向上を目指すものとされています。

スター精密とはどんな企業か

 スター精密株式会社は、静岡県静岡市に本社を置く日本の電子機器・工作機械メーカーです。長年にわたる精密加工技術を基盤とし、主に以下の2つの事業を展開しています。

1. 工作機械事業 (CNC自動旋盤など)

  • 主力製品: CNC(コンピュータ数値制御)自動旋盤
    • 時計や自動車、医療(歯科用部品など)、デジタル機器といった様々な分野の小型精密部品を高精度に、かつ大量に加工するための「マザーマシン」を提供しています。
    • 特に、小さな部品加工に適したスイス型CNC自動旋盤で高い世界シェアを誇っています。
  • 特徴: グローバルニッチ戦略を基本とし、ニッチな市場で高いシェアを確保しています。

2. 特機事業 (小型プリンター、カードリーダーライターなど)

  • 主力製品: 業務用小型プリンター
    • 主にPOS(販売時点情報管理)システムやKIOSK(情報端末)などに使われる、レシート印刷用の小型プリンターなどを製造・販売しています。
    • タブレットPOSシステムとの連動性に優れており、飲食店のオーダーセルフレジキャッシュレス決済といった店舗DX(デジタルトランスフォーメーション)分野で活用されています。
  • 特徴: 独自のプリント技術に加え、ソフトウェアやクラウドを活用した高付加価値製品の開発に注力しています。

  • グローバル展開: 創業者の時代から海外生産・販売に積極的で、売上高の約9割を海外での営業売上が占めるなど、グローバル企業としての側面が非常に強い企業です(2023年12月期実績)。

 タイヨウ・パシフィック・パートナーズ(TPP)グループによるTOBは、このような高い技術力とグローバルな事業展開を持つスター精密の企業価値向上を目指すものとされています。

スター精密は、CNC自動旋盤(工作機械)小型プリンター(特機)を主力とする日本の精密機器メーカーです。精密加工技術をコアとし、グローバルニッチ戦略で高い世界シェアを持ち、売上の約9割を海外で占めています。

CNC自動旋盤とは何か

 CNC自動旋盤とは、回転する棒状の材料(バー材)を、コンピュータ数値制御(CNC)によってプログラム通りに自動で切削加工する工作機械です。

主な特徴と機能

  • CNC(Computerized Numerical Control): 加工物の形状や寸法をあらかじめプログラムすることで、高い精度と再現性をもって自動運転が可能です。
  • 自動化・量産性:
    • 長い棒材(バー材)を自動供給し、部品を一つ加工して切り落とすサイクルを連続で繰り返すため、無人での長時間稼働や大量生産に非常に優れています。
    • これにより、自動車、時計、医療機器などに使われる小型・精密部品の製造を効率化できます。
  • 複合加工: 旋削(削る)、穴あけ、ねじ切りなど、複数の加工工程を一台で連続して行うことができ、工程集約と生産性向上に貢献します。

スター精密の主力製品:スイス型CNC自動旋盤

 スター精密が特に得意とするのは、「スイス型(主軸台移動型)CNC自動旋盤」です。

  • ガイドブッシュ: ワーク(材料)をガイドブッシュと呼ばれる装置で切削点のすぐそばで支えながら、主軸ごと材料を移動させて加工します。
  • 高精度: これにより、細く長い材料でもたわみを抑え、ミクロン単位の超精密な加工を実現できます。
  • 歴史: 元々はスイスで時計部品の精密加工用に発明された経緯を持ちます。

この種の機械は、特に高い精度が求められる小型の精密部品の量産に不可欠な存在です。

CNC自動旋盤は、コンピュータ数値制御(CNC)に基づき、回転する長い棒材(バー材)を自動供給し、高精度な小型精密部品を連続・大量生産する工作機械です。スター精密はこれで高いシェアを誇ります。

TPPグループが、買い付けを行う理由は何か

 タイヨウ・パシフィック・パートナーズ(TPP)グループがスター精密に対してTOB(公開買い付け)を行う主な理由は、スター精密の企業価値の更なる向上と、そのための強固な経営基盤の構築を目指すためです。

 TPPグループは、スター精密の長年の株主であり、以下のような協力関係を通じて企業価値の最大化を図ることを目的としています。

  • 経営支援の強化: TPPグループは「エンゲージメント投資家」として知られ、日本企業への支援実績が豊富です。TOBを通じてより強固なパートナーシップを築き、経営レベルでのサポートを強化します。
  • 戦略・資本政策の高度化:
    • 事業投資戦略の強化:中長期的な事業戦略オプションを客観的に検討し、成長のための投資戦略を強化します。
    • 資本配分政策の高度化:効率的かつ株主にとって最適な資本配分(配当、自社株買い、投資など)の実現を支援します。
  • グローバルネットワークの活用: TPPグループが持つグローバルな知見やネットワークを活用し、スター精密の海外事業展開や成長を後押しします。

 TPPグループは単なる株主としてだけでなく、経営パートナーとして深く関与することで、スター精密の掲げる中期経営計画(「変革の推進」)の達成と、さらなる成長を支援することがTOBの目的です。

TPPグループは、スター精密の企業価値の更なる向上と、中期経営計画の確実な推進を目的としています。エンゲージメント投資家として、事業戦略資本配分政策の高度化を支援するため、TOBを実施します。

CNC自動旋盤の用途にはどのようなものがあるのか

 CNC自動旋盤の用途は、主に小型・精密部品の大量生産が求められるあらゆる産業に及びます。特に、スター精密が得意とする「スイス型CNC自動旋盤」は、細くて小さな部品の高精度な加工を可能にするため、以下の分野で不可欠な役割を果たしています。

主要な用途分野

  • 自動車産業
    • エンジン部品、シャフト、ギア、ボルト・ナット
    • ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)などのブレーキ部品
  • デジタル・電子機器
    • スマートフォンやカメラなどの電子部品
    • 半導体関連の精密部品
  • 医療機器・ヘルスケア
    • 歯科用部品
    • 手術器具やインプラントなどの小型精密医療部品
  • 精密機器
    • 時計部品(元々スイスでこの用途から発展)
    • ベアリング部品

CNC自動旋盤の利用メリット

 CNC自動旋盤がこれらの分野で重宝される理由は、その高い能力にあります。

  • 高い生産性: 長い棒材(バー材)から部品を連続で削り出し、自動で切り離すため、無人での長時間稼働月産数千〜数万個の量産が可能です。
  • 高精度・安定性: コンピュータ制御により、作業者の熟練度や疲労に左右されず、均一で高い品質の部品を繰り返し製造できます。
  • 複雑な加工: 旋削、ねじ切り、穴あけ、フライス加工など、複数の工程を一台で自動的に行う複合加工にも対応し、複雑な形状の部品も効率よく加工できます。

 CNC自動旋盤は、現代の工業製品の小型化・高機能化を支える重要な「マザーマシン」と言えます。

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