この記事で分かること
- 売上高増加の増加理由:生成AI向けチップ(NVIDIA等)の需要が爆発的に継続し、Appleの新型iPhone用などの先端プロセス(3nm・5nm)がフル稼働したことが主因です。
- CoWoSとは:複数のチップを1つのパッケージ内に超高密度で配置するTSMCの先端実装技術です。演算器(GPU)とメモリを最短距離で接続して通信を高速化させるため、NVIDIA等の高性能AIチップの製造に不可欠な技術です。
- CoWoS製造の難しさ:薄くて広いシリコン層(インターポーザー)に微細な穴を開けて接続するため、熱による歪みや破損が起きやすいのが難点です。また、高価なチップを複数合体させるため、一部の接続ミスが全体を廃棄にする高いコストリスクを伴います。
TSMCの第4四半期売上高増加
台湾積体電路製造(TSMC)の第4四半期の売上高は前年同期比で約20%増加し、市場予想を上回る極めて好調な結果となりました。
https://jp.reuters.com/markets/world-indices/UXHEYBSZHFKZVK6BDPEV37P6SE-2026-01-09/
NVIDIA(エヌビディア)をはじめとするAIサーバー向けプロセッサの需要が依然として非常に強いことや、主要顧客であるApple(アップル)の新製品向けプロセッサ出荷が寄与しています。
売り上げUPの理由は
売上高がこれほど大きく伸びた理由は、「生成AIブームの継続」と「先端技術の独占的シェア」にあります。
特に今回の第4四半期(10〜12月)において、具体的にどのような要因がプラスに働いたのかを3つのポイントで解説します。
1. 生成AI向け「特需」の継続
NVIDIA(エヌビディア)などのAIチップメーカーからの注文が、当初の予想を上回るペースで増え続けています。
- AIサーバーの爆発的普及: データセンター向けのAIアクセラレータ(演算装置)には、TSMCの先端プロセスが不可欠です。
- CoWoS(先端パッケージング)技術: チップを積み重ねて性能を上げる高度な組み立て技術においてTSMCが圧倒的な優位性を持っており、これがボトルネック(供給不足)になるほどの人気で単価も上がっています。
2. 「3nm・5nm」プロセスの収益化
TSMCが持つ最も進んだ製造技術(3ナノメートル、5ナノメートル)が、売上の約74%(直近データ)を占めるまでになりました。
- Appleの新型チップ: iPhone 17(2025年モデル)向けの「A19」チップなどの製造が本格化し、売上を押し上げました。
- 製造コストの転嫁: 高度な技術を要するこれらのプロセスは他社が容易に真似できないため、TSMCは強い価格交渉力を持っています。実際に2025年を通じて数%の値上げが行われたことも収益増に寄与しました。
3. スマートフォン市場の回復
一時期低迷していたスマートフォン市場ですが、2025年後半には「AIスマホ」の登場により、高性能なプロセッサへの買い替え需要が発生しました。これにより、AppleだけでなくQualcomm(クアルコム)やMediaTek(メディアテック)といった主要顧客からの発注が安定しました。
なぜTSMCだけが強いのか
競合であるIntel(インテル)やSamsung(サムスン)が先端プロセスの歩留まり(良品率)に苦戦する中、TSMCは「高い歩留まり」と「安定した供給力」を維持しています。
市場では「AI革命における『つるはし(道具)』を作っているのはTSMCである」と言われるほど、AI業界の成長がそのまま同社の売上に直結する構造になっています。

生成AI向けチップ(NVIDIA等)の需要が爆発的に継続し、Appleの新型iPhone用などの先端プロセス(3nm・5nm)がフル稼働したことが主因です。他社を圧倒する高い歩留まりと独占的な技術力が、大幅な増収を支えています。
CoWoS技術とは何か
CoWoS(コワース)とは、「Chip on Wafer on Substrate」の略称で、複数のチップを1つのパッケージ内に超高密度で詰め込むTSMC独自の「先端パッケージング技術」のことです。
従来の「チップを基板に並べる」方法とは異なり、AIの性能を極限まで引き出すために開発されました。
CoWoSの仕組みと凄さ
一言でいうと、「計算用の脳(GPU)」と「記憶用の巨大な倉庫(HBM:高帯域メモリ)」を、最短距離で連結する技術です。
- インターポーザー(中間層): チップと土台(基板)の間に「シリコンインターポーザー」という超微細な配線層を挟みます。
- 超高速通信: この層を介することで、チップ同士を数千本もの配線でつなぎ、データのやり取りを劇的に速くします。
- 小型・省電力: 距離が縮まることで、通信時の電力ロスも減り、システム全体の効率が向上します。
なぜ今、注目されているのか
NVIDIAのAIチップ(H100やB200など)が爆発的に売れている理由は、このCoWoS技術なしには成立しないからです。
- AIには大量のデータが必要: AIの学習には、GPUとメモリの間で膨大なデータを一瞬でやり取りする必要があります。CoWoSはこの「通信の渋滞(ボトルネック)」を解消する唯一無二の手段となっています。
- TSMCの独壇場: この技術を安定して大量生産できるのは、現在世界でTSMCだけです。これが、冒頭の「売上増」に直結している大きな強みです。
主な種類
用途やコストに応じて、以下のようなバリエーションがあります。
| 種類 | 特徴 |
| CoWoS-S | シリコン層を使用する標準版。最高性能。 |
| CoWoS-R | 有機素材の層を使い、コストを抑えた版。 |
| CoWoS-L | LSIチップを埋め込み、さらに巨大なチップを実現する最新版。 |

CoWoSとは、複数のチップを1つのパッケージ内に超高密度で配置するTSMCの先端実装技術です。演算器(GPU)とメモリを最短距離で接続して通信を高速化させるため、NVIDIA等の高性能AIチップの製造に不可欠な「AIの心臓部」を支えるインフラ技術です。
CoWoS技術の製造が難しい理由は何か
CoWoS技術の製造が難しい理由は、主に「巨大で壊れやすい中間層(インターポーザー)の加工」と「高価なチップを複数まとめて扱うリスク」にあります。
1. 「シリコンインターポーザー」の加工難易度
チップと基板を繋ぐ「インターポーザー(中間層)」は、非常に薄く広いシリコンの板です。
- 物理的な脆さ: 面積が大きく極めて薄いため、製造工程でわずかな熱や圧力がかかるだけで「反り」や「ゆがみ」が発生しやすく、破損の原因になります。
- TSV(シリコン貫通電極): この層に数千〜数万個の微細な穴を開けて上下を電気的に繋ぎますが、この穴を均一かつ正確に開ける作業は高度な微細加工技術(前工程に近い技術)を要します。
2. 「一発アウト」の歩留まり(良品率)リスク
CoWoSは、高価なGPUチップ1つに対し、これまた高価なHBM(高帯域メモリ)を4〜8個ほど連結させます。
- 連鎖的なロス: 最後にこれらをパッケージングする際、どれか1つのメモリ接続に失敗するだけで、高価なGPUも含めたパッケージ全体が廃棄になります。
- 検査の複雑さ: 組み立てた後にしか不具合が分からないケースもあり、完成品1個あたりの損失額が従来のチップより圧倒的に大きくなります。
3. 製造装置と工程の特殊性
CoWoSは「前工程(ウェハ製造)」の微細技術と「後工程(組み立て)」の技術を融合させたものです。
- 専用ラインの必要性: 通常の後工程工場(OSAT)にある設備では対応できず、TSMCのような先端ファブリケーションの設備とクリーンルーム環境が必要です。
- プロセスの長時間化: 複数のダイ(チップの破片)を精密に配置し、何段階もの積層・接合・検査を行うため、製造リードタイム(期間)が通常のチップより大幅に長くなります。

CoWoSは、薄くて広いシリコン層(インターポーザー)に微細な穴を開けて接続するため、熱による歪みや破損が起きやすいのが難点です。また、高価なチップを複数合体させるため、一部の接続ミスが全体を廃棄にする高いコストリスクを伴います。
今後の見通しはどうか
TSMCの今後の見通しは、2026年も「AI特需の継続」と「次世代技術(2nm)の独占」によって、非常に強気なシナリオが予想されています。
1. 2nmプロセスの量産開始と独占状態
2025年後半から始まった次世代技術「2nm(ナノメートル)」の量産が、2026年に本格化します。
- Appleが予約済み: iPhone 18(仮称)向けなどの初期生産枠の多くをAppleが確保したと報じられており、安定した収益源となります。
- 技術的優位: 2nmからは構造が「GAA(Gate-All-Around)」に進化し、さらなる省電力・高速化が実現します。競合他社が苦戦する中、TSMCが再び市場を独占する見込みです。
2. AIブームに伴う強気な業績予想
市場アナリスト(モルガン・スタンレーなど)は、2026年の売上高も前年比20%〜30%増という高い成長率を維持すると予測しています。
- 価格改定: 先端プロセスの製造単価を数%引き上げることが顧客に受け入れられており、利益率(粗利率60%前後)も高い水準で推移する見通しです。
- 設備投資の拡大: AI需要に応えるため、2026年の設備投資額は過去最大級の500億米ドル(約7.5兆円)規模に達するとの予測もあります。
3. 地政学リスクと海外拠点の稼働
一方で、リスク管理と供給網の分散も進みます。
- アリゾナ・熊本工場の進展: アメリカのアリゾナ工場や日本の熊本工場の稼働が本格化し、地政学的な不安を和らげる「分散生産体制」が整いつつあります。

2026年は2nmチップの量産本格化とAI需要の継続により、売上高20〜30%増の強気な成長が続く見通しです。独占的な技術力を背景に、過去最大級の設備投資を行いながら、AI時代の絶対的な覇者としての地位を固めると見られます。

コメント