住友ファーマの上方修正 上方修正の理由は?オルゴビクスやマイフェンブリーとは何か?

この記事で分かること

上方修正の理由:主力製品の売上回復、コスト削減、主力製品の特許切れの影響が収束したことなどで、売り上げや利益が増加しています。

オルゴビクスとは:前立腺がんにおける男性ホルモン(テストステロン)抑制療法として使用される治療薬です。

マイフェンブリーとは:マイフェンブリー(Myfembree)は、テストステロンやエストロゲンの産生低下、エストロゲンの作用抑制などの効果があり、前立腺がんや子宮筋腫の治療に利用されます。

住友ファーマの上方修正

 住友ファーマは、2025年3月期の最終損益を従来の赤字から黒字に転換し、最終的に236億円の黒字を見込むと上方修正しました。

 https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20250428-2.html

 これは、2024年3月期に約3149億円の最終赤字を計上した後の大幅な改善であり、同社の経営再建の進展を示しています。

上方修正の主な要因

主力製品の売上回復

 オルゴビクス(前立腺がん治療薬)やマイフェンブリー(子宮内膜症治療薬)など、米国市場での販売が順調に推移し、売上が回復しました。特に、オルゴビクスは米国での販売が好調であり、売上が増加しました。

コスト削減の徹底

 研究開発費や販管費の削減を進め、効率的な経営が実現しました。特に、開発中の新薬の中止や延期により、開発費の削減が進みました。

特許切れによる影響の収束

 主力製品であった抗精神病薬「ラツーダ」の特許切れによる売上減少が一巡し、影響が収束しました。これにより、収益基盤が安定しました。

主力製品の売上回復、コスト削減、主力製品の特許切れの影響が収束したことなどで、売り上げや利益が増加しています。

オルゴビクスとは何か

 オルゴビクス(商品名:Orgovyx)は、レルゴリクス(Relugolix)という有効成分を含む経口のGnRH受容体拮抗薬です。主に以下のような用途で使用されます:

主な用途

  • 前立腺がんの治療
    オルゴビクスは、前立腺がんにおける男性ホルモン(テストステロン)抑制療法として使用されます。GnRH受容体を阻害することで、脳からの性腺刺激ホルモン(LHおよびFSH)の分泌を抑え、結果として精巣からのテストステロン分泌を低下させます。

特徴

  • 注射剤ではなく経口剤である点が大きな利点。
  • 従来のGnRHアゴニスト(例:リュープロリド)よりもテストステロン抑制の速さと可逆性に優れるとされています。
  • 米国では2020年にFDAの承認を受け、住友ファーマ(旧・住友ファーマ/住友製薬)が開発・販売。

オルゴビクスは前立腺がんにおける男性ホルモン(テストステロン)抑制療法として使用されます。

テストステロンの抑制が必要な理由

 テストステロンの抑制が必要なのは、一部のがん(特に前立腺がん)や疾患の進行に、テストステロンが関与しているためです。

前立腺がんにおける理由

  • 前立腺がん細胞はテストステロン(男性ホルモン)によって成長・増殖します。
  • よって、テストステロンを抑制することで、がん細胞の増殖を抑えたり、がんの進行を遅らせたりする治療戦略が「ホルモン療法(アンドロゲン除去療法、ADT)」です。
  • オルゴビクスのようなGnRH拮抗薬は、脳下垂体のGnRH受容体を阻害することで、LH(黄体形成ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌を抑え、結果として精巣からのテストステロン産生を減らします

テストステロン抑制が使われる主な疾患

  • 前立腺がん
  • 性同一性障害(性別適合治療の一環)
  • 一部のホルモン依存性の疾患(例:子宮筋腫、子宮内膜症などにおけるGnRH関連治療)

テストステロンは健康な男性にとって重要なホルモンですが、ホルモン依存性のがんなどではむしろ病気を進行させる要因となるため、その抑制が治療に有効です。

マイフェンブリーとは何か

 ​マイフェンブリー(Myfembree)は、住友ファーマが開発した経口薬で、前立腺がんや子宮筋腫の治療に使用されます。​


主な成分と作用機序

  • レルゴリクス(Relugolix):​GnRH受容体拮抗薬で、性腺刺激ホルモン(LHおよびFSH)の分泌を抑制し、テストステロンやエストロゲンの産生を低下させます。
  • エストラジオール(Estradiol):​エストロゲン製剤で、骨密度の低下を防ぐために配合されています。
  • 酢酸ノルエチンドロン(Norethindrone acetate):​プロゲスチン製剤で、エストロゲンの作用を抑制し、子宮内膜の過形成を防ぎます。​

 これらの成分が組み合わさることで、ホルモン依存性の疾患に対して効果を発揮します。​


使用目的と適応症

  • 前立腺がん:​ホルモン療法として、テストステロンの抑制によりがん細胞の成長を抑えます。
  • 子宮筋腫:​エストロゲンの作用を抑制し、筋腫の縮小や過多月経の改善が期待されます。
  • 子宮内膜症:​子宮内膜症に伴う中等度から重度の痛みに対する適応追加申請が、米国食品医薬品局(FDA)によって受理されました。

マイフェンブリー(Myfembree)は、前立腺がんや子宮筋腫の治療に利用されます。

テストステロンやエストロゲンの産生低下、エストロゲンの作用抑制などで治療効果を得ています。

テストステロンやエストロゲンの産生を低下させる理由

 テストステロンやエストロゲンの産生を低下させるのは、これらのホルモンが一部の疾患、特に「ホルモン依存性疾患」の進行や症状に深く関与しているためです。


1. テストステロンの抑制が必要な理由(例:前立腺がん)

  • 前立腺がんは、多くの場合「アンドロゲン依存性(テストステロン依存性)」です。
  • テストステロンは前立腺がん細胞の増殖を促進します。
  • よって、治療では「テストステロンを抑えてがんの進行を抑える=アンドロゲン除去療法(ADT)」が基本になります。
  • GnRH拮抗薬(オルゴビクスなど)により、脳下垂体からのLH分泌を抑え、テストステロンの産生を止めます。

2. エストロゲンの抑制が必要な理由(例:子宮筋腫・子宮内膜症)

  • 子宮筋腫や子宮内膜症は、「エストロゲン依存性疾患」で、女性ホルモン(特にエストロゲン)が筋腫や内膜の異常増殖を促進します。
  • エストロゲンの産生を抑えることで、以下のような効果があります:
    • 子宮筋腫の縮小
    • 月経過多や痛みの改善
    • 子宮内膜症による炎症や癒着の軽減
  • ただし、エストロゲンを完全に抑えると更年期障害に似た副作用(ホットフラッシュ、骨密度低下など)が起きるため、マイフェンブリーのような薬では「ホルモン補充(アドバック療法)」も併用されます。

テストステロンもエストロゲンも、本来は身体にとって重要なホルモンですが、「過剰」または「異常に作用」すると病気の原因になるため、治療として一時的に抑制する必要があります。

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