揮発性メモリとは何か?RAMとDRAMの違いは?

この記事で分かること

  • 揮発性メモリとは:電源の供給がなくなると、保持していたデータが失われる性質を持つメモリです。読み書きが非常に高速なためCPUの作業領域として利用されます。
  • DRAMとは:1つのトランジスタとキャパシタで1ビットを記録する、最も一般的な揮発性メモリです。 構造が単純で大容量化しやすいため、PC等のメインメモリに採用されています。
  • RAMとDRAMの違い:RAMはメモリの総称で、DRAMはその中の一種です。 現在のPCやスマホのメインメモリには、安価で大容量化しやすいDRAMが主に採用されているため、一般的には「RAM=DRAM」として扱われることが多いです。

揮発性メモリ

 半導体チップは、「産業のコメ」と呼ばれるほど現代社会の基盤となっています。AIの普及やデジタル化の加速などのもあり、AIそのますます重要性が増しています。

 ただ、一口に半導体チップといっても、その中には様々な種類が存在します。今回は半導体チップにはどのような種類があるのかの記事となります。

 今回は、メモリ半導体の揮発性メモリに関する記事となります。

揮発性メモリとは何か

 揮発性メモリとは、「電源を切ると、記録していたデータが消えてしまうメモリ」のことです。「揮発」という言葉の通り、電気がなくなるとデータが蒸発するように失われる性質を指します。

コンピュータの「メインメモリ(RAM)」がその代表例です。


1. なぜデータが消えるのか(仕組み)

 揮発性メモリの代表であるDRAMは、微細なコップ(キャパシタ)に電気を貯めることで「0」と「1」を記録しています。

  • 通電中: 漏れ出す電気を高速で補充(リフレッシュ)し続け、記憶を維持します。
  • 電源OFF: 補充が止まるため、一瞬で電気が漏れ出し、空っぽ(データなし)の状態に戻ります。

2. なぜ「消える」メモリを使うのか

 電源を切っても消えない「不揮発性メモリ(SSDなど)」があるのに、なぜ消えるメモリを使うのか。それは圧倒的に高速だからです。

  • 揮発性メモリ(RAM): 読み書きが非常に速いため、CPUの「作業机」として使われます。
  • 不揮発性メモリ(SSD/HDD): 読み書きは遅いですが、データを長期間保存する「本棚」として使われます。

電源の供給がなくなると、保持していたデータが失われる性質を持つメモリです。 代表的なDRAMは、電気を一時的に蓄える仕組み上、常に電力を必要としますが、読み書きが非常に高速なためCPUの作業領域として利用されます。

RAMとは何か

 RAM(Random Access Memory)とは、コンピュータやスマートフォンにおいて、「現在行っている作業」を一時的に保存しておくための高速なメモリのことです。

1. 役割:作業用の「机」

 よく例えられるのが、「CPU=頭脳」「SSD/HDD=本棚」「RAM=机」という関係です。

  • 本棚(SSD)がどれだけ大きくても、作業をするための机(RAM)が狭いと、一度に多くの資料を広げられず、作業効率(動作速度)が落ちてしまいます。
  • 机が広ければ、複数のアプリを同時に開いたり、重いゲームを快適に動かしたりできるようになります。

2. 特徴:速いけれど消えやすい

  • 読み書きが超高速: データの保存先であるSSDやHDDに比べて、圧倒的に速く読み書きができます。
  • 揮発性(きはつせい): 前述の通り、電源を切ると中のデータはすべて消えてしまいます。

3. RAM不足で起きること

 スマホやPCの動作がカクついたり、アプリが勝手に終了したりする場合、この「机(RAM)」が作業データでいっぱいになっている可能性が高いです。


RAMはCPUが処理するデータを一時的に置く、高速な「作業用メモリ」です。 よく「机の広さ」に例えられ、容量が大きいほど多くのアプリを同時にスムーズに動かせますが、電源を切るとデータが消える性質を持ちます。

DRAMとは何か

 DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)とは、コンピュータやスマホの「メインメモリ(主記憶装置)」として使われる、最も一般的な揮発性メモリのことです。

1. 仕組み:電気を溜める「コップ」

 DRAMの内部には、「トランジスタ(スイッチ)」「キャパシタ(電気を溜めるコップ)」のペアが数十億個も並んでいます。

  • 1ビットの記憶: コップに電気が溜まっていれば「1」、空なら「0」とみなします。
  • 動的(Dynamic)な理由: このコップは非常に小さいため、時間が経つと電気が漏れてしまいます。そのため、1秒間に何十回も電気を補充(リフレッシュ)し続けなければならず、この「動的な(絶えず動く)」動作が名前の由来です。

2. なぜDRAMが主流なのか

 メモリには「SRAM(キャッシュ用)」や「NANDフラッシュ(保存用)」などもありますが、DRAMには以下の強みがあります。

  • 低コスト・大容量: 構造が非常にシンプル(部品が少ない)なため、同じ面積に大量の記憶素子を詰め込むことができ、大容量のメモリを安く作れます。
  • ちょうど良い速さ: SSDより圧倒的に速く、CPUの作業を止めることなくデータを供給できます。

1つのトランジスタとキャパシタで1ビットを記録する、最も一般的な揮発性メモリです。 構造が単純で大容量化しやすいため、PC等のメインメモリに採用されています。電気が漏れやすいため、絶えず充電を繰り返す「リフレッシュ動作」が必要なのが特徴です。

DRAMとRAMの違いは何か

 DRAMとRAMの関係は、一言で言うと「RAMという大きなグループの中に、DRAMという種類がある」という親子関係です。

1. 根本的な違い

  • RAM(ラム): 「読み書きが自由に行えるメモリ」という総称です。
  • DRAM(ディーラム): RAMの中で、電気を溜める「キャパシタ」を使い、定期的な充電(リフレッシュ)が必要な具体的な方式です。

2. RAMには他に何がある?

 RAMにはDRAMのほかに、SRAM(エスラム)という種類があります。

特徴DRAM (Dynamic RAM)SRAM (Static RAM)
主な用途パソコンのメインメモリCPU内のキャッシュメモリ
速度速いさらに速い
価格安い(大容量にしやすい)高い(大容量に不向き)
仕組み定期的な充電が必要通電中は充電不要

3. なぜ混同されるのか

 現在、パソコンやスマホの「メインメモリ(RAM)」として使われているのは、ほぼ100%がDRAM(正確にはその進化系のSDRAM)です。そのため、日常会話やスペック表では「RAM」と「DRAM」が同じ意味で使われることがよくあります。


RAMはメモリの総称で、DRAMはその中の一種です。 現在のPCやスマホのメインメモリには、安価で大容量化しやすいDRAMが主に採用されているため、一般的には「RAM=DRAM」として扱われることが多いです。

DRAMの有力メーカーはどこか

 DRAM市場は、韓国の2社と米国の1社で世界シェアの約9割以上を占める「3強体制」となっています。特に2025年に入り、AI向けの超高速メモリ(HBM)の需要爆発により、勢力図に大きな変化が起きています。

1. DRAMの主要メーカー(3強)

 2025年現在の動向を含めた主要メーカーは以下の通りです。

メーカー特徴・最近の動向
SK Hynix韓国現在最も勢いがあるメーカー。 AIに不可欠な「HBM」で圧倒的優位に立ち、2025年Q1・Q2には売上シェアで初めて世界首位に浮上。
Samsung電子韓国長年世界シェア1位に君臨してきた巨人。 汎用品では依然として強い供給力を持ちますが、最先端のHBM開発ではSK Hynixを追う展開となっています。
Micron Technology米国米国唯一の有力メーカー。 日本(広島)にも重要な製造拠点を持ち、最新規格のDDR5やHBMで韓国勢に激しく対抗しています。

 上記3社以外では、台湾のNanya TechnologyWinbondなどが中堅として存在しますが、最先端プロセスでは上位3社が圧倒的です。



2. 日本の現状について

かつては東芝、日立、NECなどがDRAMで世界を席巻していましたが、現在は日本資本のDRAM専業メーカーは存在しません。

しかし、マイクロンが旧エルピーダメモリの広島工場を継承しており、「日本国内で最先端DRAMが生産されている」という重要な役割を担っています。

韓国のSK HynixとSamsung電子、米国のMicron Technologyが世界シェアの約9割以上を占める「3強」です。 特に2025年はAI需要を受け、HBMで先行するSK Hynixが売上首位に立つなど競争が激化しています。

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