この記事で分かること
- エネルギーマネジメント技術とは:エネルギーの効率的な利用を実現するためのあらゆる技術や取り組み、具体的にはエネルギーの使用状況を把握・分析し、「見える化」することで、無駄をなくし、最適なエネルギー運用を行うことです。
- どのような方法があるのか:電力需給が逼迫した際に、需要家側の電力消費を抑制する「デマンドレスポンス」や電力消費のピーク時間帯を避けてエネルギーを使用したり、蓄電池に貯めてピーク時に放電したりする「ピークカット・ピークシフト」などの方法があります。
エネルギーマネジメント技術
電子情報技術産業協会(JEITA)は「第11版 電子部品技術ロードマップ」を3月末に発刊しました。
このロードマップは、日本のエレクトロニクス産業が2050年を見据えてどのような技術的進展や社会的課題に対応していくかを示したものになっています。
今回はJEITAが推進する分野の一つであるエネルギーマネジメント技術についての解説となります。
エネルギーマネジメント技術とは何か
エネルギーマネジメント技術とは、エネルギーの効率的な利用を実現するためのあらゆる技術や取り組みを指します。
具体的には、エネルギーの使用状況を把握・分析し、「見える化」することで、無駄をなくし、最適なエネルギー運用を行うことを目的としており、以下のような要素が含まれます。
省エネルギー機器・システムの導入
高効率な設備や機器を導入することで、エネルギー消費量を根本的に削減する取り組み。
エネルギーの計測・監視
電力、ガス、水道などの使用量をリアルタイムに計測し、データを収集・記録する技術。スマートメーターや各種センサーなどが活用されます。
エネルギーの分析・診断
収集したデータを分析し、エネルギー消費のパターンや無駄な部分、改善点などを特定する技術。AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)を活用したシステムも登場しています。
エネルギーの制御・最適化
分析結果に基づいて、空調、照明、製造設備などのエネルギー消費機器を自動的または手動で制御し、エネルギー効率を向上させる技術。
エネルギーの予測、貯蔵
需要予測や発電量予測を行い、効率的なエネルギー需給計画を立てるための技術うあ蓄電池などを活用し、電力需要のピークカットや再生可能エネルギーの有効活用を図る技術。

エネルギーマネジメント技術とは、エネルギーの効率的な利用を実現するためのあらゆる技術や取り組み、具体的にはエネルギーの使用状況を把握・分析し、「見える化」することで、無駄をなくし、最適なエネルギー運用を行うことです。
エネルギーマネジメント技術の具体例
エネルギーマネジメント技術には以下のような具体例があります。
デマンドレスポンス(DR)
電力需給が逼迫した際に、需要家側の電力消費を抑制する仕組み。
ピークカット・ピークシフト
電力消費のピーク時間帯を避けてエネルギーを使用したり、蓄電池に貯めてピーク時に放電したりする運用。
太陽光発電の自家消費
太陽光発電システムで発電した電力を、施設内で直接利用する。
コージェネレーションシステム
電気と熱を同時に生成し、エネルギー利用効率を高めるシステム。
スマートライティング
人感センサーや照度センサーを活用し、必要な時だけ、必要な明るさで照明を点灯するシステム。
スマート空調
室温や湿度をセンサーで検知し、AIが最適な空調制御を行うシステム。

エネルギーマネジメント技術は、省エネルギーによるコスト削減、温室効果ガス排出量の削減、電力系統の安定化など、多岐にわたる効果が期待されています。
需要家側の電力消費を減らす方法にはどんなものがあるのか
需要家側の電力消費を抑制することは、電力需給の安定化やコスト削減、環境負荷低減に繋がる重要な取り組みです。主な方法としては、以下のものが挙げられます。
1. デマンドレスポンス(DR: Demand Response)
- 電力会社やアグリゲーター(需要家と電力系統を仲介する事業者)からの要請に応じて、電力消費を抑制する仕組みです。
- インセンティブ型: 電力抑制量に応じて、電気料金の割引や金銭的な報酬が提供されます。
- 料金連動型: 電力需給が逼迫した時間帯に電気料金を高く設定することで、消費者の自主的な抑制を促します。
- 具体的な行動:
- 空調の設定温度を調整する(夏は高めに、冬は低めに)。
- 照明をこまめに消す、不要な照明を減らす。
- 電気機器の使用時間をずらす(ピーク時を避ける)。
- 生産設備の稼働時間を調整する。
- 蓄電池に貯めた電力を放電する。
2. エネルギーマネジメントシステム(EMS: Energy Management System)の活用
- IT技術を活用して、電力使用状況を「見える化」し、効率的な制御を行うシステムです。
- HEMS(Home Energy Management System): 家庭向け。家電機器の制御、太陽光発電・蓄電池との連携など。
- BEMS(Building Energy Management System): 業務用ビル向け。空調、照明、エレベーターなどの最適制御。
- FEMS(Factory Energy Management System): 工場向け。生産設備のエネルギー効率化、ピークカットなど。
- 具体的な機能:
- 電力使用量のリアルタイム監視と記録。
- 過去のデータ分析による省エネ診断。
- 設定温度や照明の自動制御。
- デマンド監視によるピーク抑制制御。
3. 省エネ行動の実施
- 日々の生活や業務の中で、無理なくできる節電行動を習慣化することが重要です。
- 照明: LED照明への交換、こまめな消灯、昼光の活用。
- 空調: 適切な温度設定、フィルター清掃、扇風機との併用。
- 家電製品: 省エネ性能の高い製品の選択、待機電力の削減(コンセントを抜くなど)、まとめ洗い・まとめ炊き。
- その他: 断熱対策、太陽光発電の導入検討。
4. ピークシフト・ピークカット
- 電力消費のピーク時間帯を避けて電気を使用したり、ピーク時の使用量を抑制したりする取り組みです。
- ピークシフト: 電気料金の安い夜間などに洗濯や食器洗いなどの高負荷な家電を使用する。電気自動車の充電時間を調整する。
- ピークカット: 電力使用量の多い時間帯に、一時的に使用しない機器の電源を切る。蓄電池に貯めた電力を活用する。
5. スマートグリッドを活用した制御
- 情報通信技術を活用し、電力の流れを最適化する次世代の電力網であるスマートグリッドの機能を利用します。
- 電力会社からの需給状況に応じた制御信号に基づき、需要家側の機器を自動的に制御する仕組みなどが検討されています。

これらの方法を組み合わせることで、需要家は効果的に電力消費を抑制し、電力系統全体の安定化にも貢献できます。
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