NFTの教科書 天羽健介 3分要約

3分要約

NFTとはなにか

 ノン・ファンジブル・トークンの略称でノン・ファンジブルは代替不可能という意味。これまでのデジタル資産はすべて代替可能(例えば1ビットコインは全ての人にとって同じもので交換が可能)だったが、ブロックチェーン技術によってデジタル資産に固有の識別サインがあることで、他の資産と区別できるようになった。

NFTで何ができるのか

 デジタル資産が唯一無二であることを証明できるため、デジタル=複製が可能という欠点を克服し、希少性という概念を持たせることができる。

 デジタルでも所有できるという点や、仮想空間内でのデータが現実でも価値を持つようになることなどがこれまでデジタル資産との大きな違い。

 作者や持ち主を証明できるようになるため、

・デジタルアートの普及

・二次流通時の作者への利益分配を可能にする

・実物所有欲がデジタルな所有欲に変化することによる環境負荷の低減

 などが期待されている。経済の中心が製品などの有形資産から、ブランドやデータなど無形資産に向かう変化にも適応しやすく、今後の経済インフレとなることが期待されている。

NFTの現在は

  トレーディングカードのデジタル化やファンにトークン配布し、トークンを持っている人だけが参加できるイベントを開催するなどスポーツでの浸透は早くから進んでいる。

NFTの課題は

 人類は形あるものを所有する喜びになれているため、どこまで多くの人に理解されかは不透明。また現行の法律では判断できない部分も多く対応が必要。

 NFTを目的とせず、手段として利用することができれば、大きな可能性を秘めている。

NFTへの注目が大きくなっている

NFT(ノン・ファンジブル・トークン)はさまざまな分野で拡大し,ブームは続いている。他方でNFTとは何か,NFTにできること,できないことといった実情はあまり知られていない。

筆者は弁護士として,NFTにまつわる種々の法的論点と向き合う中で,NFTの現在地を知ることから始めようという動機から出発している。

NFTは代替不可能なデジタル資産

 NFTはコンテンツや権利の流通革命と言われており,相性の良いとされる分野で大きく広がっている。今後,仮想空間でのVR/AR技術の普及で一層加速するものと見られている。

 NFTはノンファジブル・トークンの略で,ノンファンジブルとは,代替不可能という意味で分かりやすくいうと世界でひとつだけのデジタル資産。

 現在多く流通しているデジタル資産と言えばビットコインが挙げられるがどの1ビットコインも同じ価値であり,代替可能と言える。

 NFTもブロックチェーンの技術を利用してはいるが、ブロックチェーンの中に識別サインがあり,デジタル資産がそれぞれで固有となっており,代替が不可能なもの。

ブロックチェーンを利用することでNFTの希少性を証明できる

ブロックチェーンは管理者が存在しない台帳のことで改ざんやコピーができないこと,資産の移転が容易であること,追跡が可能で誰でも閲覧できるという特徴がある。追跡可能はインターネットにもない技術でインターネットの上をいく技術と言われている。

日本にはポケモンや遊戯王などの世界トップクラスの版権,コンテンツがありこれらの要素はNFTと相性が良く成長が期待されている。アート,ゲーム,スポーツなどの領域で世界中で注目されている。

NFTビジネスは唯一無二の権利などを証明できるNFTの特性とブロックチェーンの特性の組み合わせによって成り立っている。市場拡大のスピードに法律がおいてついていない部分もあるが,今後の成長には大きな期待が集まっている。

NFTは目的ではなく、手段と捉えるべき

NFTは2021年を境に大きく取引量が増加している。コレクティブル,スポーツ,アート,ゲームなどの分野の取引量が多い。

NFTは黎明期で価格の乱高下による冬季的なニュースが目立つが,NFTは目的ではなくて,手段。NFTを通じてどのような体験価値を提供できるかが本質的な部分。

デジタルの持つ複製可能という欠点をNFTは克服できる

デジタルアートはNFTと相性が良い。代替不可能なためデジタルアートを保有することができる点が親和性の高さ理由。

ブロックチェーンの追跡性からデジタルアートを発行したか=作者や持ち主が証明されている。このようにデジタルでありながら,所有できる点や本物であることが証明できる点が最大の魅力となる。

複製可能なデジタルデータの判別が可能になり,現実の物質に近くなったことで仮想空間のものであっても希少性という概念が生まれ,実質的な価値を持つようになった。

仮想世界でのデータもNFT化で現実世界で価値を持つようになる

 メタバースとNFTによって現実空間と仮想空間の共存がもたらされる。メタバースは仮想の3D空間でアバターなどを用いて接する環境であり,完全仮想としてはどうぶつの森が,現実内包型としてはポケモンGOが知られている。仮想空間内でもNFTによって価値と希少性がもたらされれば,仮想空間のデジタルデータが現実世界でも価値を持つことができるようになる。

メタバース内の土地を所有したり,アバターのファッションの売買や貸しだしを行う事もできるようになる。

デジタル世界でも作成者と所有者の特定が可能になった

NFTゲームはアナログのトレーディングカードに例えられる。デジタルでも世界に○枚しかないという有限であることをブロックチェーンで証明できるようになったことは大きな特徴。アナログのカードを交換したり,売買することがあるがデジタルでも可能になった。

ゲーム中のアイテムの作成者と所有者を特定可能にしたことで,資産やサービスが評価され取引されるデジタル経済がスタートした。ゲームのクリエイターとゲーマーの両方が新しい収入源を得ることができるようになった。

形あるものを所有することになれているため、どこまでNFTが浸透するかは不透明

スポーツ業界では,トレーディングカードのNFT化を筆頭に世界のファンに新しい価値を与えている。スポーツのトレーディングカードの歴史は古く,多くのファンにコレクションされてきた。

カードだけでなく,ファントークンを発行し,保有している人だけにイベントや人気投票に参加できるシステムなどもある。ブロックチェーンを用いることでインターネットを用いた時に比べ人気投票や意見収集の透明性の実現に成功している。

 将来的に、仮想現実空間でのスポーツ観戦が一般的になれば、チケット年間パスといったものにNFTを利用することも考えられる。

 人類は形あるものを所有したり、投資することに価値を見いだしてきたため、NFTの希少性や保有価値が多くの人に理解されるかは不透明。安全性の向上やNFTによる今までにない経験や体験を受けることができるサービスの提供とブランド価値が大きな課題、焦点となる。

 トレーディングカードのNFT化では権利者側にもメリットがある。これまでは中古等の2次流通からロイヤリティーを得ることができなかったが、NFTであれば利用者間の取引からロイヤリティを得ることができる。

NFTは環境負荷低減、二次流通ビジネスにも貢献できる

 ファッション業界は石油産業についで、CO2排出や排水の多さなど環境負荷が大きいとわれており、ファッションのデジタル化は環境負荷低減でも注目されている。

 また、多様な表現が可能、NFTによって希少性の証明が可能になったこともファッション業界でNFTが注目される理由。

ファッションブランドの世界観を表現したアート作品、メダバース上のアバターや自身の写真に所有するファッションを着用させるなどが話題になっている。

 音楽業界ではサブスクによる音楽視聴が一般化し、CDなど所有する音楽の利上げは減少傾向。しかしNFTによってデジタルでありながら数量を限定できる仕組みで再び、所有するビジネスモデルが活性化し音楽市場全体を底上げできる可能性も有る。

 限定曲の配信や二次流通での利益をアーティストに還元可能、偽造チケットの予防、アーティストとファンの交流への利用などが期待されている。

技術的な問題は残っている

 NFTには技術的な課題もある。ブロックチェーン上に画像データなどを保存すると手数料が高くなるため、URLのみを保存し、画像データは別のストレージに保存されているようなときもある。そのような場合、ストレージが利用できないとデータの取得ができなくなる。NFT上に画像データを保存出来れば所有している状態といえる。

 コンピュータの計算量が大きく電力の消費量が多い、共通のインターフェースがなく、NFTの互換性がなく、あるサービスのNFTを別のサービスでも使えるようにするのが難しい、手数料の増大なども課題として挙げられている。

NFTは新しく特定の法律で運用できるわけではない

NFT自体が新しいものであるため、特定の法律が適用されるわけではなく,その機能や取引実態に応じてどの法律を適用するか考えていかなければならない。

民法で所有権として認めているのは有体物のみで無対物であるデータは所有権の対象になっていない。他人によるNFT化や受け渡しが活発化すれば,著作権の取り扱いも難しくなる。

 NFTは仮想通貨とは異なり,決済手段としては用いられないが,類似したNFTが多数発行されている様な場合、NFTを用いた決済が可能となり暗号資産と認識される可能性もある。金融、会計面でもNFTを前提にしたルールではなく,十分な実務慣行も成立していないため不透明な部分が大きい。

他にも賭博罪や景品表示法などもNFTを想定されていない。

経済の中心が無形資産に移る中で、NFTは大きな可能性がある

世界経済は有形資産から無形資産による支配へと変化している。無形資産とはブランドや商標権、データ,ソフトウェア,人的資産の持つ技術やノウハウのことでGAFAの台頭も、ものを売る企業から無形資産を扱う企業へ経済の中心が移ったことの象徴である。

NFTは様々無形資産をデジタル上で特定可能にし,希少性を与え,金融価値をつけ、流動化させることができることから、現在の経済変化に適しており、今後の経済インフラとして伸びていくことが期待されている。

ITビジネスで最も価値のあるものはデータ。しかし現状データの所有者や作成者への見返りは少なく、プラットフォームが利益を独占している。GooleやFacebookなどは独占、閉鎖的にデータを加工してコントロールすることで利益を独占している。NFTはオープン性と捕捉可能で独占を防ぐことができる可能性がある。

メタバース、VR、AR、5Gのテクノロジーが融合することで現実世界と仮想世界の融合は進んでいく。仮想世界の経済権が発展していく中でNFTがデジタルデータの限定化、可視化によって現実と同じ経済的価値を持たせることができれば仮想世界の経済が大きく発展することになる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました