危機と人類(下)ジャレドダイアモンド 要約

本の概要

たいていの人が一生の内に何度か個人的な機器や変化を経験し、それを乗り越えるために自分を変えようと試みて、成功することもあれば、失敗することもあります。

個人が危機を乗り越えるために必要なことは様々な研究から明らかになり始めています。

国家も同じように危機に見舞われ、それを乗り越えようとしますが、個人と同じように失敗することもあります。

下巻ではドイツやオーストラリアなどが乗り越えてきた危機についてしるだけでなく、現在日本やアメリカが直面している危機を乗り越えるために必要なことはなにか、世界規模の問題の解決がなぜ難しいのか、歴史を学びことの意義などを知ることができます。

この本や記事で分かること

・国家が直面する危機からの脱し方

・日本の直面している危機から脱するために必要なこと

・歴史を学ぶ意義、世界規模の問題の解決に必要なもの

上巻の要約はこちら

本の要約

要約1

ドイツは第二次世界大戦後、戦争被害、経済の混乱、極度の権威主義などナチスの悪影響を大きく受けていましたが、現在では、経済的に大きく成功し、根底にあるドイツの価値観を変えることなく、権威主義と女性の地位を変化させることにも成功しています。

ドイツは4方で国境を接しているという地政学的なリスクが大きい反面、ナショナルアイデンティティが強くなりやすい、危機に瀕することが多いため、忍耐力や成功体験を得やすいなどプラスもあり、これらの要因によって危機を脱することができました。

要約2

オーストラリアは、イギリスの流刑地として移住したことが始まりで、イギリスから多くの人が移住しています。原住民は数も少なかったため、白人至上主義をとり、アイデンティティの中心はイギリスにありました。

しかし、イギリスにオーストラリアを守る気がないことに気づくと徐々にイギリスに感じていた絆は弱り、非イギリス民が増加し、イギリスと距離を置くようになっています。

イギリスから距離をとることで環境が変化した中で、どのようなアイデンティティを感じるべきなのかという点は今でも議論が続いています。

要約3

過去の国家の危機を乗り越えるために必要なことを知ることができれば、現在の危機に対応に必要なことを知ることもできます。

日本の現在の問題は巨額な国債、女性の地位の低さ、少子高齢化、移民の少なさ、戦争責任への言及の少なさによる中韓との軋轢を招いている点などが問題です。

危機への経験、地理的要因、強いアイデンティティ、他国の見本の多さなどのプラスはあるものの、公正で現実的な自己認識は欠如しているため、時代に合わなくなった価値観を捨て、新しい価値観をとりいれることが求められています。

アメリカは世界一の経済規模、他国から侵略されにくい地理的状況、民主主義の長い歴史、移民の多さによる多様性などの利点を持っていますが、二極化が進行している点や社会的資本の減少、格差の拡大、固定などの問題を抱えています。

危機を迎えているという共通意識や公正な自国評価のなさ、自国の責任を受け入れていないといないため、アメリカが瀕している危機を認識し対策することが求められています。

要約4

気候変動や核兵器など地球規模で取り組む必要のある問題も多くありますが、国家の危機からの奪取に比べても、下記の要因から難しくなっています。

・人類で共通するようなアイデンティティがない

・手本としたり、支援を期待できる他の惑星がない

・地球全体で過去の危機を乗り越えた経験がない

・世界全体で危機の共通認識を持ちにくく、公正な自己判断ができない

ただしこれまでも複数の国家で協力し、危機を脱した例はあります。また地球上でこれほど識字率が向上したことはありません。

多くの人が本を読み、知識を付け、歴史を私たちの導き手にすることで、世界規模での問題に取り組みやすくなっていきます。

ドイツの危機はどのようなものか

 ドイツは第二次世界大戦敗戦後、戦争被害、経済の混乱、極度の権威主義などナチスの悪影響などにより国家は大きな危機に瀕していました。 

 しかし、今のドイツは自由民主主義、世界第4位の経済大国として、ヨーロッパで最大の力を持つ国家になるなど大きく変化しています。
 
 ドイツは敗戦後、東西に分かれ、西を連合国側が東をソ連が統治してました。

 当初、第二次世界大戦のきっかけを作ったドイツを工業国として発展させることを脅威に思っていた西側諸国でしたが、当面の脅威がソ連であると認識すると、西ドイツに共産諸国の防波堤となってもらうためにも、力を取り戻させようとします。

 このよう狙いもあり、西ドイツは大きく経済的に発展することができました。

ドイツは第二次世界大戦後、戦争被害、経済の混乱、極度の権威主義などナチスの悪影響を大きく受けていました。

西側諸国の脅威がドイツからソ連に移ったこともあり、ドイツを共産主義への防波堤としたい思惑もあり、工業国として発展し、今では世界第4位の経済大国になっています。

ドイツが危機を脱することができた要因は何か

 ドイツの危機は指導者の役割と公正な自国評価の重要性を示す顕著な例となっています。指導者としてのヒトラーによる悪影響は大きな被害をもたらしました。公正な自国評価を行えなかったヒトラーはイギリス、ソ連に加え、アメリカにも一方的に宣戦布告して、敗戦しています。
 
 戦後の改善は西側諸国の影響もありましたが、国家としてのドイツにも危機を脱する要因が多くありました。
 選択的変化では、ドイツの持つ価値観を変えることなく、権威主義と女性の地位を変化させることに成功しています。

 危険な指導者による悪影響を受けやすい、近隣諸国との争いが絶えない状況でした。4方を近隣諸国に囲まれているためトラーのような指導者が出た際に世界に大きな影響を及ぼすというマイナスもありますが、ナショナリズムアイデンティティが強くなりやすい、危機に瀕することが多いため、忍耐力、危機からの脱却の成功から自信を得ることができるなどの利点もあります。

 また、ドイツは第二次世界大戦でのナチスの行いに真摯に向き合い、謝罪などを行ってきました。このことも大きな復活の要因になっています。

ドイツは4方で国境を接しているという地政学的なリスクが大きい反面、ナショナルアイデンティティが強くなりやすい、危機に瀕することが多いため、忍耐力や成功体験を得やすいなどプラスもあります。

また、根底にあるドイツの価値観を変えることなく、権威主義と女性の地位を変化させることにも成功しています。

オーストラリアの危機はどのようなものか

 オーストラリアは、イギリスの流刑地として移住したことが始まりで、イギリスから多くの人が移住しています。原住民は数も少なかったため、白人至上主義をとっていました。

 また、オーストラリア人のアイデンティティに中心はイギリスであり続け、オーストラリアの国益に関係ないイギリスの戦争に加わるほどでした。

 しかし、第二次世界大戦でオーストラリア周辺が危機にある時に、イギリスがオーストラリアを防衛する動きは見られませんでした。
 
 このこともあり、徐々にイギリスに感じていた絆は弱まっていき、非イギリス民が増加、その後はアジア系にも移民の扉を広くようになりました。
 
 オーストラリアは地理的な位置と民族構成、文化がゆがんだ状態でしたが、徐々にイギリスと距離を置くようになっていきます。

オーストラリアは、イギリスの流刑地として移住したことが始まりで、イギリスから多くの人が移住しています。原住民は数も少なかったため、白人至上主義をとり、アイデンティティの中心はイギリスにありました。

しかし、イギリスにオーストラリアを守る気がないことに気づくと徐々にイギリスに感じていた絆は弱り、非イギリス民が増加し、イギリスと距離を置くようになっています。

オーストラリアは今後どのように危機と向き合っていくのか

 オーストラリアの中心的な問題はナショナル・アイデンティティと基本的価値観になります。

 イギリス人としてのアイデンティティを持っていましたが、イギリスから距離をとることで環境が変化した中で、どのようなアイデンティティを感じるべきなのかという点は今でも議論が続いています。

 現在アジア系の移民は増加しており、今も残っているイギリスのアイデンティティ(国家元首がイギリス女王であることやイギリス国旗に基づいた国旗の使用など)に不自然に感じ、さらなる変化をしていく可能性もあります。

オーストラリアの中心的な問題はナショナル・アイデンティティと基本的価値観になります。イギリスから距離をとることで環境が変化した中で、どのようなアイデンティティを感じるべきなのかという点は今でも議論が続いています。

日本が現在直面している危機は何か

 現在の、日本は経済、人口の多さ、良好な健康状態、教育の高さなどの優位点をもっています。

 一方で、巨額な国債、女性の地位の低さ、少子高齢化、移民の少なさなどの問題も抱えています。

 また、ドイツと比較した際に戦争責任への言及の少なさは中韓との軋轢を招いている点や、資源の輸出への依存度が高い反面、持続可能な資源利用に積極的でない点も長期的な問題になる可能性がありあます。

 日本は明治期、戦後と大きな危機を脱した経験がある点、忍耐力や他国と国境を接していない、地政学的な優位性、強いナショナルアイデンティティ、多くの国からの支援を受けることが可能、手本となる他国の存在などは危機を乗り越えるうえでプラスになります。

 一方で、公正で現実的な自己認識は欠如しています。時代に合わなくなった価値観を捨て、意味あるものだけを維持し、新しい価値観をとりいれることが求められています。

日本は巨額な国債、女性の地位の低さ、少子高齢化、移民の少なさ、戦争責任への言及の少なさによる中韓との軋轢を招いている点などが問題です。

危機への経験、地理的要因、強いアイデンティティ、他国の見本の多さなどのプラスはあるものの、公正で現実的な自己認識は欠如しています。

時代に合わなくなった価値観を捨て、意味あるものだけを維持し、新しい価値観をとりいれることが求められています。

アメリカの直面している危機は何か

 アメリカは世界一の経済規模、他国から侵略されにくい地理的状況、民主主義の長い歴史、移民の多さによる多様性などの利点を持っています。

 一方で、政治的な妥協がなくなり、政治の二極化が進行している点は大きな問題になっています。妥協のなさ、二極化、不寛容、暴力的な言動は政治以外の分野でも見られています。

 チリやインドネシアも政治的な妥協がなくなったことで軍事政権を招くなどの問題が発生しています。

 二極化、不寛容の要因には、個人間の信頼、様々な集団に属することなどで得られる社会的資本の減少が挙げられています。

 Webの発展で同じ思考の人ばかりと交流を深めてしまう、スクリーン上では相手への思いやりが減少するなどの傾向が見られます。

 アメリカはWebの発展、facebookをはじめとしたアプリを開発した国でその恩恵を最初に受けたことでこのような問題が表面化しやすかった可能性があります。

アメリカは政治的な妥協がなくなり、政治の二極化が進行している点や社会的資本の減少という危機に直面しています。

アメリカはどのように危機に対応していくべきか

 そのほかのアメリカの問題としては、格差と停滞が挙げられます。

 かつては、格差はあっても、アメリカンドリームに象徴される社会的な流動性がありましたが、近年では格差が広がっているだけでなく、格差が固定化されてしまってもいます。

 公共投資を社会主義的であると否定し、教育への補助が少ない、州ごとのばらつきが多いなどの理由が格差の拡大、固定を招く要因になっています。

 アメリカには地理的な要因、強いナショナルアイデンティティ、高い柔軟性などの危機に対応する利点を持っています。

 一方で、危機を迎えているという共通意識のなさ、何がうまくいって、何がうまくいっていないのかの公正な自国評価ができていない、自国の責任を受け入れていないなどのマイナスもあります。

 アメリカが瀕している危機を認識し対策しなければ、多くのメリットを無駄使いし、徐々に危機が増大してしまいます。

アメリカの問題には格差の拡大と固定も挙げられます。

地理的な要因、強いナショナルアイデンティティ、高い柔軟性などの危機に対応する利点を持っていますが、危機を迎えているという共通意識や公正な自国評価のなさ、自国の責任を受け入れていないというマイナス面もあります。

アメリカが瀕している危機を認識し対策することが求められています。

世界規模の問題はなぜ解決しにくいのか

 これまで見てきた国家内での問題だけでなく、下記のような世界全体での問題も存在します。

・核兵器

・気候変動

・化石燃料、レアメタルなどの鉱物、肥沃な土壌、真水などの自然資源の有限性

・格差

 これらの問題を解決するにあたっても、国家的な危機と同じ要素は重要になりますが、以下に示すように国家と比較してもネガティブな面が目立ちます。

・人類で共通するようなアイデンティティがない

・手本としたり、支援を期待できる他の惑星がない

・地球全体で過去の危機を乗り越えた経験がない

・世界全体で危機の共通認識を持にくく、公正な自己判断ができない

それでも地球全体ではなくとも、複数の国家間で協力し、危機を脱した例はあります。(牛痘のような域内の病気の撲滅の経験、EUの樹立など)

 グローバル化は問題も招きますが、問題解決の促進にもなります。世界が相互依存関係にあり、成功も失敗も一蓮托生であると捉え、世界的な問題の解決に寄与する要因を拡散できれば、解決に向かう可能性もあります。

気候変動や核兵器など地球規模で取り組む必要のある問題も多くありますが、国家の危機からの奪取に比べても、以下の要因から危機からの脱却は難しくなっています。

・人類で共通するようなアイデンティティがない

・手本としたり、支援を期待できる他の惑星がない

・地球全体で過去の危機を乗り越えた経験がない

・世界全体で危機の共通認識を持ちにくく、公正な自己判断ができない

ただしこれまでも複数の国家で協力し、危機を脱した例はあります。グローバル化で世界が依存関係であることを理解することが解決につながる可能性もあります。

歴史を知ることにどんな意味があるのか

 未来の予測は不可能ですが、国家の過去を理解することでその国が将来とりうる行動を予測しやすくなります。

 また、危機を脱するために必要な要因を知ることでは、世界規模の危機にどう対応していくかを考えるうえでも重要なことです。

 公正な自己評価や他の国を参考するなどは一見当たり前のことですが、当たり前のことが無視されてしまうことも少なくありません。

 本では無知な人は変えられないという悲観論もありますが、世界史上においてこれほど識字率が向上したことはなく、多くの人が本を読むことで知識を得ることができます。

 民主主義国家も増加しており、多くの人が歴史から学び、知識を付けることで歴史は私たちの導き手になっていきます。

歴史から危機を脱するために必要な要因を知ることでは、世界規模の危機にどう対応していくかを考えるうえでも重要なことです。

世界史上においてこれほど識字率が向上したことはなく、多くの人が本を読み、知識を付けることができれば、歴史を私たちの導き手へとすることができます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました