寿命ハック 死なない細胞、老いない身体 ニクラス・ブレンボー 要約

本の要約

老化を避けることはできていませんが、研究が進み少しづつ老化のメカニズムと避ける方法がわかりつつあります。

体に悪いものを除去することで、寿命を伸ばす試みも行われてきましたが、適量のストレスは身体を強くし、寿命を伸ばすことがわかっています。

細胞のオートファジーを活性化させることや有益な腸内細菌の存在が寿命を延ばす可能性も示唆されています。また、iPs細胞を利用し、細胞を初期化し体内の細胞や器官を新しくするなどの方法も検討されています。

今は技術的な進歩による知見が少しづつたまっているところで画期的に寿命を延ばす方法はまだ見つかっていません。

現状大きな効果があるのは、社会的なつながりを持ち、適度な運動を行うことやカロリー制限などです。

食事内容については様々な研究がありますが、特定の栄養素が長寿に結びつくエビデンスは少ないです。例外としてニンニクと食物繊維の健康効果は確かとされています。

老化に関する研究は始まったばかりですが、徐々に成果が増え、いつかは老化を克服できるはずです。

この本がおすすめの人

・老化の研究の現状を知りたい人

・長寿につながる食事や行動が何か知りたい人

・自分の健康法が本当に効果があるのか知りたい人

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本の要約

老化の研究はどれくらい進んでいるのか

 不老不死や老化を避ける試みは昔から行われていますが、いまだに実現できていません。

 しかし、自然界には人間よりもはるかに長生きするものや、死ぬ直前まで老化しないもの、若返りをするものなど様々な生物が存在しています。

 これらの自然界から得たアイデアや人間の社会の中に存在する健康な老化や長寿の人の多いブルーゾーンを研究することで、徐々に老化のメカニズムが分かってきています。

 本書から最新の老化研究から老化をハックする(=コントロール)する方法を学ぶことができます。

老化を避ける試みは実現できていませんが、徐々にメカニズムが明らかになり、コントロールでき始めています。

寿命に遺伝の影響を強く受けるのか

 健康や寿命には環境と生まれ(遺伝)の影響を受けますが、人間の双子の寿命を調べた研究では寿命の影響は25%ほどで、想像以上に寿命以外の影響が大きいことがわかっています。

 繁殖期や若いころに有利になるものの、年を取ってから不利になるような性質は子孫を残しやすい性質となるため、次世代に伝わっていきます。

 老化も遺伝的にプログラミングされたものとするという考えもありますが、それだけでは説明できない部分も多くあります。

寿命に対する遺伝の影響は25%ほどと小さくなっています。また、老化を遺伝的にプログラミングされたものとする見方もありますが、それだけでは説明がつきません。

抗酸化作用のサプリで長生きはできるのか

 反応性の高い、フリーラジカルの発生は細胞を傷つけるため、老化の原因と考えられてきました。そこでフリーラジカルの発生を少なくするために抗酸化作用のあるサプリメントの摂取が老化を予防できるのではという研究が以前から行われてきました。

 しかし、実際には抗酸化作用のあるサプリメントに老化や加齢性疾患を防ぐ力はなく、むしろ早く死んでしまうことが明らかになっています。

 生物にはある程度のストレスがあるほうが強くなります。

 逆境が生物を強くする現象はホルミシスと呼ばれ、運動などの短期的な身体ストレスが長期的には生物を強くする例は多く見られます。程よい酸化ストレスはホルミシスとして働き寿命を延ばすため、抗酸化作用のあるサプリメントがマイナスになったと考えられます。

 ポリフェノールの健康作用も抗酸化作用ではなく、若干の毒性を持つため、人間に程よいストレスを与えることで健康作用を与えていたことが明らかになっています。

 高地に住む人々やサウナで高温を経験している人が健康であることもホルミシスで説明できます。

酸化ストレスが寿命を短くするため、抗酸化作用が長寿に重要と考えられてきましたが、効果がないばかりか逆効果であることが明らかになっています。

短期的な身体ストレスが長期的に生物を強くするホルミシスの効果が寿命を伸ばすために重要であることが分かってきています。

成長ホルモンが少ないほど長生きできるのか

 ラロン症候群は両親から変異した遺伝子を受け継いだ場合にのみ発症し、成長ホルモンの受容体が欠陥があり、身長が小さくなっていまいます。

 しかし、ラロン症候群の患者は加齢に伴う病気になりにくいという特徴をもっています。

 成長ホルモンは肝臓でインスリン様成長因子と呼ばれるホルモンを作ることで人間を成長させています。ラロン症候群の患者はインスリン様成長因子の値が低く、インスリン様成長因子の低いマウスほど長生きであることも研究で分かっている。 

 しかし、インスリン様成長因子を摂取すると筋肉量を上げたり、免疫機能を増加させるなどのプラスの面もあるなど多くのはたらきを持つため、一概に悪とは言い切れません。

成長ホルモンはインスリン様成長因子というホルモンを作り、人間を成長させています。インスリン様成長因子が少ないほど長生きである可能性はあるが、免疫や筋肉量の増加などプラスの面もあるため、一概に悪いものとは言えません。

なぜ、インスリン様成長因子が少ないと長生きできるのか

 インスリン様成長因子が細胞の受容体と結合するとmTORと呼ばれるたんぱく質を作り出します。

 mTORが始動するとたんぱく質の合成や栄養の取り込みなど細胞の成長が始まりますが、mTORのはたらきを阻害するラパマイシンを投与すると寿命が延びる可能性も示唆されており、研究が進んでいます。

 mTORは細胞内のごみ収集システムであるオートファジーを阻害してしまうため、ラパマイシンでmTORのはたらきを阻害することでオートファジーを活発にすることができることも分かっています。

 マウスのオートファジーを強化すると健康で長生きすることが分かっており、人間のオートファジーを活発化させる物質の探索も続いています。

細胞内のごみ収集システムであるオートファジーを活発化させることで健康で長生きできる可能性があります。

インスリン様成長因子が細胞の受容体と結合するとできるmTORというたんぱく質はオートファジーを阻害してしまうため、mTORを阻害することでオートファジーを活発化させることができます。

細胞にはなぜ寿命があるのか

 人間の細胞は培養液の中で育てることはできませんが、1951年にがんで死亡した女性の細胞は今でも生きており、ヒーラー細胞と呼ばれています。

 一般的に細胞内の染色体の端にはテロメアと呼ばれる箇所があり、分裂の度に短くなりテロメアを失ってしまうとDNAがダメージを受け、機能できなくなってしまいます。

 ヒーラー細胞ではテロメアが短くならないため分裂し続けることができます。その一方で女性がなくなったようにがん細胞も分裂し続けることができるため、単純にテロメア長くするだけでは老化を防ぐことができません。

 がんにならない程度にテロメアを伸ばすことができるかはまだ明らかになっていません。

細胞が分裂するたびに末端のテロメアが短くなっていき、徐々にDNAがダメージを受けやすくなります。テロメアが短くならない細胞は分裂し続けることができますが、がん細胞も分裂し続けてしまいます。がんにならない程度テロメアを伸ばすことができるかはまだ明らかになっていません。

老化をどのように測定しているのか

 ある事柄が老化を防いでいるかを確かめるために人々の寿命を調べるのでは、時間がかかりすぎてしまいます。

 そのため、生物学的な年齢を判別する方法も多く研究されています。

 テロメアの長さや遺伝子の発現をつかさどるコントロールシステムであるエピジェネティックの機能によって生物学的な年齢を判別する方法などが知られています。

遺伝子の発現を司るエピジェネティックの機能を測定することで生物学的な年齢を判別することも検討されています。

幹細胞とは何か、長寿にどのように利用されるのか

 細胞は初期段階ではどんな器官にもなることのできる幹細胞として生まれますが、その後それぞれの器官にのみなるようになっていきます。 

 幹細胞の能力も徐々に衰えていきますが、iPS細胞は細胞を初期化し、幹細胞とすることで再び、どんな器官にもなることのできる状態に戻すことができます。

 幹細胞から新しい臓器を作ったり、幹細胞を入れ替えて再生能力を高めるなど様々な応用が検討されています。

幹細胞はどのような器官にもなれる細胞であり、幹細胞を作ることができれば、新しい臓器を作る、幹細胞を入れ替えるなどの応用が検討されています。

体内の細菌はどのように寿命を延ばすのか

 以前は人間の身体は無菌状態で、細菌やウイルスは完全な異物であり、これらに感染すると必ず病気になると考えられてきました。

 しかし、現在では人間の中には無数の微生物や菌が存在し、皮膚や口の中、腸内などあらゆる場所に住んでいることがわかっています。

 住みついている微生物には、役に立つもの、影響のないもの、いないほうが良いものなど様々ですが、有益なものにはオートファジーを促進するものやほかの微生物から守ってくれるものも存在しています。

 有害な腸内細菌を除去することが長寿に結びつくことや有益な腸内細菌が寿命を伸ばすことはメダカによって明らかになっており、腸内細菌は寿命に影響を与える可能性はある。

 ただ、人間で有害な腸内細菌を狙い撃ちにする方法はまだ確立できてないため、有益な細菌を支援することを考えたほうが良い。

 メダカで延命効果がみられた腸内細菌の多くは食物繊維を餌とし、健康効果のある酪酸を作りだすことが知られています。

人の体内には様々な微生物が住んでおり、中にはオートファジーを促進したり、有害な微生物から守ってくれるものなど寿命を延ばす可能性が十分にあります。

有害な微生物を除去する方法もあるが、狙い撃ちにする方法は確立できていないため、今のところ有益な細菌を支援する方法を考えるほうが有益です。

カロリー制限は寿命を伸ばすのか

 絶食やカロリー制限は免疫向上などによって寿命が延びる可能性がある。マウスでの研究では同じ量を食べても食事と食事の間が長いほうが寿命を延ばすという研究もあり、絶食が一種のホルミシスとなり、身体を強くしている可能性もあります。

 カロリー制限が長生きに有効でも、我々は何かを食べなければならず、何を食べるかが重要になります。

 しかし、栄養についての研究は矛盾や相関関係と因果関係の取り違いなど多くの問題があります。実際に対照群と比較群に分け評価すると、想定されていた程の効果がなかった栄養素や食材は多く見られます(ビタミンD、魚類など)。

カロリー制限や絶食は一種のホルミシスであり身体を強くしている可能性がある。

ただし、何を食べるかも重要となります。

健康的な食事や習慣は何か

 牛乳に含まれるラクトースを分解できるアミラーゼは以前は乳幼児のみが持つものでしたが、牛乳の栄養価が高いため、大人になってもアミラーゼを持つ人の遺伝子が徐々に拡散しています。

 しかし、アミラーゼを持つ人の分布にはムラがあり、牛乳を飲むと下痢になる人も多く見られます。

 このように一般的に健康とされるものでも、自分の持つ遺伝子との相性が悪い場合もあるため、自身の遺伝子と適合する食事や習慣を行うべきですが、まだ大規模なデータは不足しています。

 現在、自身の状態を測定できるバイオマーカーとして利用できるデータの研究も進んでおり、実際の食事や習慣が自身の状態にどう影響しているのか測定できつつあります。

一般的に健康と思われていても、自分の遺伝的と相性が悪い場合もあります。

自身の状態を測定するバイオマーカーの研究も進み、食事や習慣がどう影響しているのか測定できるようになり始めています。

健康的な食事や習慣はあるのか

 食事については個人差、研究の偏りなどもあり、特定の食材や栄養素が健康につながるという例は極めて少ない。

 現在、例外となりそうなのは食物繊維とニンニク。これらの健康効果はかなり信頼性が高いものといえます。

 また運動や筋トレには高血圧を防ぐなど有用な効果があることも分かっています。

 また、偽薬を飲んだだけでも病気が改善するブラセボ効果があるように、気持ちが健康に与える効果も非常に大きなものがあります。

 孤独は寿命を短くし、社会的な関係を持つことは健康にも大きなメリットがあります。

 老化の研究は始まったばかりですが、多くの重要な進歩がなされています。医学の進歩とともに雪だるま式に成果は増え、老化を克服できるはずです。

得敵の食材や栄養素が健康につながる例は少なく、例外は食物繊維とニンニクくらいのものです。

運動や筋トレには大きな効果があること、気持ちが健康に与える影響も大きいこともわかっています。

老化に関する研究は始まったばかりですが、進歩がみられています。徐々に成果が増え、克服できるはずです。

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