世界のDXはどこまで進んでいるのか　雨宮寛二　要約

本の概要

この本や記事で分かること

DXでの改革に重要となる再教育について書かれた「リスキリングは経営課題」の要約はこちら

本の要約

企業のデジタル化はどのように進んでいるのか

　インターネットは顧客へのリーチ効果が大きく、新たな販売チャネルとして、注目され、オフライン事業者の大いなる脅威になっています。

　こうした動きの中で、既存のオフライン事業者もデジタル技術を経営に取り入れて、事業の再構築を図っています。

　企業のデジタル化は以下の3つの対象を対象に行われます。

・製品

・サービス

・業務

　３つの対象に対してデジタル技術で以下を施すことで新たな価値を創出していくことができます。

・自動化

・高機能化

・インテリジェント化

なぜ、デジタル化が必要なのか

　デジタル化やIT化は新たな競争原理を作り出し、産業全体を大きく変容させる潜在力を秘めており、ＤＸだけでなく、コーポレートトランスフォーメーション（ＣＸ：企業組織全体の改革）やインダストリアルトランスフォーメーション（ＩＸ：産業全体の改革）にもつながっていきます。

　デジタルにより企業経営に決定的な変化を起こすことで、価値を生み出すことや業界の仕組みを再構築する流れが一つの潮流になっています。

　GAFAをはじめとしたIT企業は産業や業種の垣根を越えて、新たな分野へ進出しています。既存の事業者は既存事業でデジタル化を進め、スケールアウト（事業拡大や成長）につなげるか、デジタルテクノロジーを取り入れ、新たな新規事業を生むかという対応が必要です。

　どちらの場合でもあるべき姿に向けて、事業そのものをデジタルの力でコントロールして、全体最適化を図ることができるかにかかっています。

これまでデジタル化はどのように進んできたのか

　現在のDX潮流はデジタル化3.0と捉えることができます。

　デジタル化1.0ではペーパレス化のようなアナログのデジタルへの置き換えが起きました。

　デジタル化2.0では特定業務プロセスのデジタル化、デジタル化による業務の部分最適化が起きました。

　デジタル化3.0では、個別の業務にとどまらず、企業組織全体をデジタル化する、産業や業界の仕組みを再構築することが起きています。

　デジタルテクノロジーの使用によって、企業組織そのものを変化や競争に耐えることができるように柔軟に変化できる姿に変革することがDXの本質といえます。

デジタル化にはどんなものがあるのか、必要なものは何か

　幅広い業種でデジタル化は進んでいますが、その用途は以下の3つに集約することができます。

・業務の効率化、合理化：タスクの自動化

・予測による対応の適正化：人工知能による高度な解析、予測の活用

・判断支援：経営や事業における判断の最適化

　DXを推進していくためには以下の3つの要因が重要となります。

・ビックデータ

・プラットフォームの構築：顧客と企業を結び付ける場所の構築

・ケイパビリティ：組織的な能力、全社的なデータ、デジタルスキルの取得

　スターバックスはプラットフォームの構築、抜本的な改革によるケイパビリティの向上を経て、多くのビックデータを集め、改善し続けています。

　一方で、多くの企業でDXへの投資は増えていますが、データ主導型の経営やAIの普及などはまだ限定的になっています。

デジタルツインとは何か

　DX推進に必要な概念として、デジタルツインが挙げられます。

　デジタルツインとは、現実の世界を再現し、分析やシミュレーションによる結果を現実世界へフィードバックすることで、将来起こりうる変化に一早く対応するためのものです。

　デジタルツインの導入によって、コストの削減や時間の短縮、効率化、品質向上など様々な利点を得ることができます。

　DXを進めるうえではデータを集めるだけでなく、データを統合し一元的に管理することが求められます。　

　企業の経営資源は従来、人、物、金の3つでしたが、4つ目として情報が加わったことを強く意識する必要があります。　

企業のDXはどれくらい成功しているのか、成功するために必要なことは何か

　Iot機器などからのデータ取得でビックテックの活用が可能になったことで、企業は自社を取り巻く環境や変化を捉えることができるようになっています。

　これらのビックデータをAIで解析し、重要かつ核心的な特徴量を見極めることができれば、企業は製品開発や事業戦略に生かすことができるようになります。

　しかし、企業でDXに取り組み、成果を上げたと実感しているのは5社あたり2社程度と少なくなっています。特に小規模企業になるにしたがって成果を上げることは難しくなっています。

　DXによる成果を上げるには明確なビジョンの策定と戦略的なアプローチが必要です。

　顧客体験の最適化、データ主導による意思決定、社員のスキルアップ、アジャイル開発の導入などが戦略的なアプローチとして挙げられます。

　DXの効果を分かりやすく示すことや給与など社員のインセンティブも組織にDXが浸透するために必要なこととなります。

DXの本質は何か、成功企業にはどのような企業があるのか

　DXの本質は自社のビジネスモデルを全体最適化し、いかに持続的な競争優位を構築するかにあります。

　単なる技術導入や業務改善ではなく、自社のビジネスの再構築を行い、競合が着手していない分野を開拓することが求められています。

　デジタル変革による全体最適化は極めて難しいことですが、以下に示す企業は起業の時点もしくはビジネスの変革を行っています。

テスラ

　電気自動車にいち早く取り組む。

　デジタル技術の利用による完全受注生産、生産性の高いスマートファクトリ、競合の参入を促し市場を活性化、完全自動運転への取り組みなど従来の自動車業界とは異なる視点を持ち込んでいます。

ウーバー

　ドライバーと乗客を結び付けるライドシェアのシステムを構築しています。

　過去のデータ蓄積とリアルタイムで収集されるデータの活用によって、需要と供給のバランスの最適化やウーバーイーツのような新授業への進出を可能にしています。

ウォルマート

　小売業でありながら、3度にわたるデジタル変革で、自社のミッションを再定義し、世界の流通業界を根本的に変えてきました。

　1970年代のPOSシステムによるデータ収集、その後のECサイトの構築にも成功、近年のDXでも顧客の要求を見抜き、ECサイトで購入したものの店舗でのピックアップの導入するなど変革を実現しています。

　世界一の小売企業という強みを否定することなく、最大限に生かし、デジタル化を進め価値を高めら事が成功の要因です。

アリババ

　中国市場でECサイトの標準となっている企業です。

　EC領域で小売り企業と消費者をつなげる事業を行ってきましたが、近年では産業全体のデジタルシフトを後押しするために医療、ヘルス業界に変革をもたらす事業も行っています。

ネットフリックス

　ビデオレンタル店舗→DVDの配送→コンテンツ配信のストリーミング配信→オリジナルコンテンツの作成と大きな変革を3度成し遂げ大きな成功を収めています。

　レコメンド機能や人工知能を利用したコンテンツ作成など、技術を積極的に活用しています。

マイクロソフト

　ワードやエクセル、パワーポイントなどのOfficeで圧倒的なシェアを持っています。2000年代にはGAFAの台頭で低迷しましたが、サブスクリプションの導入で復活しています。

　現在は、複合現実、MRや人口知能の開発にも力を入れています。

DXによる全体最適化を成功させる鍵は何か

　企業の成功例においても、DXによる全体最適化ができるかどうかが鍵になっています。

　全体最適化を行うためには、顧客体験の最適化、データ主導による意思決定、社員のスキルアップ、アジャイル開発の導入が必要です。

　また、これらを導入するために必要なことは以下の4つです。

1．あるべき姿の明確化

2．障壁となる企業文化の変革

3．セキュリティの強化によるリスクの低減

4．自社ですべてを行うことは難しいため、他社などとのパートナーシップ構築

　企業が長期的視野に立ち、あるべき姿を見据え、変革を実施することは企業が成長を成し遂げるうえで極めて重要な行動になります。

　自社の現状とあるべき姿のギャップを埋めるために、DXを活用し、変革していくことが求められています。