半導体立国ニッポンの逆襲 久保田龍之介 要約

本の概要

半導体のニュースが相次ぐ中でも、ラピダスの設立には特に大きな注目が集まっています。

中国の台頭や地政学リスクの増加、台湾有事に備え、アメリカとしては台湾以外での友好国での半導体の生産量を上げることや友好国内でサプライチェーンを構築することを考えており、日本にとっては大きなチャンスです。

また、異種チップ集積の開発には日本の強みである半導体材料やすり合わせ技術が有利に働く可能性もあります。

一方で、ファウンダリーの重要性を理解しつつも、先端半導体の開発から離脱して20~30年経つ日本に勝ち目があるのか?と考える人も少なくありません。

半導体を取り巻く情勢や過去の半導体の凋落、及びその後の半導体支援の失敗、ラピダスに求められるものを知ることができる本になっています。

この本や記事で分かること

・半導体を取り巻く情勢

・半導体業界の現状、日本の強み、ラピダスの意義

・過去の半導体政策の失敗と成功のために求められるもの

半導体については以下の本も要約しています。

半導体超進化論 世界を制する技術の未来 黒田忠広 要約

半導体有事 湯之上隆 要約

本書はラピダスの設立に中立的な目線ですが、前者(半導体超進化論)はラピダスに好意的、後者(半導体有事)は懐疑的な目線をもっています。

本の要約

要約1

半導体のニュースが相次ぐ中でも、ラピダスの設立には特に大きな注目が集まっています。

日本が半導体開発レースの最前線から離脱してから20~30年経つ中で、最先端を目指す会社が発足するという報道は大きな衝撃を与えました。

背景には半導体の重要性が経済だけでなく、軍事面にも広がっていることでサプライチェーンの見直しを図っていることや台頭する中国を警戒するアメリカの意向が強く影響しています。

長らくファウンダリーがほぼ不在だった日本で、最先端の半導体の開発、量産を目指すラピダスがうまくいくには過去の半導体産業支援の失敗の教訓を生かし、アメリカの思惑を上手く利用する必要があります。

要約2

以下の理由から、今は日本が半導体復権を目指すラストチャンスといわれています。

・異種チップ集積など大きく構造が変化する技術変革の時期である

・世界一だった日本の半導体業界の知識を持つ60~70代からの技術伝承を行うギリギリのタイミング

・先端半導体が不足すると経済や日々の生活に大きな影響があるため先端半導体の製造拠点が必要

・製品をどこで作るのかの重要性が増し、アメリカが友好国での生産を増やしたいと考えている

これらの歯車があったことで日本の半導体再起動の試みが開始されています。実際に、政府の支援もあってTMSCの進出など、熊本に多くの半導体関連企業の進出が続いています。

要約3

米中対立と台湾有事への備えという地政学的なリスクからも国内でファウンダリーを作り、周囲に関連企業を集める必要性は増しています。

また、ラピダスの設立には日本の強みである半導体装置や材料を援助したり、日本国内にとどめる意味も持っています。

材料に強みがあることは異種チップ集積への転換でも有利に働く可能性があります。

異種チップ集積には適切な材料とその特性によって微調整を行うことが必要であり、材料分野で存在感があり、すり合わせが得意な日本にとっては大きなチャンスです。

要約4

過去の日本は時代の変化に適応できず、半導体のシェアを大きく落としてしまいました。また、その後何度も政府主導の半導体戦略が立てられましたが、内部競争や海外企業との連携不足などがの理由もあり、復権には至っていません。

ラピダスでは時流を超えた柔軟な経営、市場分析によるユーザー獲得などが求められてます。

実際に、半導体の復権が可能かどうかはから離れてしまった人材を再び、惹きつけ、日本全体がもう一度世界に旗を立ててやろうという気持ちになれるかどうかにかかっています。

なぜ、いま半導体が注目されているのか

 2022年のラピダス設立は、大きな注目を浴びました。

 日本が半導体開発レースの最前線から離脱してから20~30年たつ中で、この状況を一変させ、国内で最先端を目指す会社が発足するという報道は大きな衝撃を与えました。

 その背景には、先端半導体が日本のみならず様々な国の命運を左右するまでに変化していることがあります。

 半導体は経済だけでなく、兵器にも使われるため軍事的にも非常に重要な反面、その工程は複雑で世界的なサプライチェーンによって構成されており、各国の協力なしでは作ることができません。

 特にアメリカは台頭する中国に先端半導体を使用させないようにしつつ、半導体製造の中核を担う台湾、韓国の中国との関係、地政学的なリスクから自国や日本での生産を増やした意向があり、ラピダスの設立を後押ししいます。

 これまでの半導体戦略はことごとく失敗しています。日本はアメリカの思惑をうまく利用し、過去の失敗を教訓にしながら、半導体復権を実現する必要があります。

半導体経済的に重要なだけでなく、軍事的にも重要なため、大きな注目を浴びています。

これほど重要な半導体ですが、世界的なサプライチェーンが構築されており、地政学的なリスクが大きくなっています。

特にアメリカは台頭する中国に先端半導体を使用させないようにしつつ、自国と友好国での製造を増やしたいと考えています。

ラピダスとは何か

 ラピダスは経産省の産業育成という思いから、生まれた国策の半導体製造専門企業、ファウンダリーです。

 ファウンダリーは先端半導体の研究開発と製造を担う役割ですが、日本には長らくファウンダリーはほぼ不在の状態でした。

 ラピダスは最先端の半導体の研究開発、設計、製造まで担うことで世界中から半導体技術者を集め、人材不足が深刻な半導体産業の将来につなげる意味も持っています。

 IBMのような海外企業やimecのような研究機関に自社のエンジニアを派遣し、世界初となる2nmの量産を目標としています。

ラピダスは半先端半導体の研究開発と製造を担うファウンダリーとなる予定です。

これまで日本にはファウンダリーはほぼ不在でしたが、最先端の半導体の開発、量産を目指しています。

なぜ今半導体復権を目指しているのか

 以下の理由から、今は日本が半導体復権を目指すラストチャンスといわれています。

・異種チップ集積など大きく構造が変化する技術変革の時期である

・世界一だった日本の半導体業界の知識を持つ60~70代からの技術伝承を行うギリギリのタイミング

・先端半導体が不足すると経済や日々の生活に大きな影響があるため先端半導体の製造拠点が必要

 これらの歯車があったことで日本の半導体再起動の試みが開始されています。実際に、政府の支援もあってTMSCの進出など、熊本に多くの半導体関連企業の進出が続いています。

 九州はもともと半導体産業に必要な水、土地、交通の便の良さなどからシリコンアイランドと呼ばれ、日本の半導体製造の大部分を担ってきましたが、さらに熊本へ6社、九州全体で11社の企業が拠点の強化を行っています。

以下の理由から、今は日本が半導体復権を目指すラストチャンスといわれています。

・異種チップ集積など大きく構造が変化する技術変革の時期である

・世界一だった日本の半導体業界の知識を持つ60~70代からの技術伝承を行うギリギリのタイミング

・先端半導体が不足すると経済や日々の生活に大きな影響があるため先端半導体の製造拠点が必要

実際に、九州には多くの企業の進出が相次いでいます。

政府が半導体復権を後押しする意義は何か

 安全保障の観点から世界で技術開発の摩擦が激しくなり、製品をどこで作ってよかった状況から、どこで作っているかが重要になっています。

 その中で半導体技術や製造拠点を国内に置く必要があるのではという話が進んでいます。

 経産省は半導体復権に向け、3つのプロセスを提示しています。

1.半導体国内工場の整備強化

2.次世代半導体プロセス技術の開発促進

3.光電融合などの将来技術の研究開発の実施

 経産省幹部の出世のため、メディア、国民に聞こえの良い計画を立てているだけではという懸念もありますが法律を変えて半導体戦略を組み込むなど、これまでの半導体支援以上の意思を持っていることは確かです。

 2nmなどの最先端半導体は日本に利用する企業がないのでは?という疑問もありますが、半導体関連企業の育成にためにも、先端ファウンダリーは不可欠と考えています。

 日本には半導体装置や材料という強みがあり、世界から必要とされています。先端ファウンダリーができれば周囲に関連企業が集まります。

 今後もこの強みが海外に流出せずに維持するためにも、先端ファウンダリーが必要になってきます。

反グローバル化により、製品をどこで作ってよかった状況から、どこで作っているかが重要になっているため、国内に半導体製造工場を設置することの意義は増しています。

日本の強みである半導体装置や材料といった半導体関連企業の育成と海外流出を防ぐ狙いも持っています。

ファウンダリーの利点は何か

 先端半導体を製造できるのは世界の限られた企業のみになっています。7nm以降の半導体を製造できているのはインテル、TSMC、サムスンの3社のみです。

 パソコンが半導体の微細化を牽引して以降、技術が進歩したことで高性能な半導体製造装置が不可欠となり、多額のコストが必要になってしまいました。

 ファウンダリーに量産委託を行うことで、設備投資のコストを抑えることができるため、ファウンダリーが大きく発展し、現在、TSMCがファウンダリで世界一になっています。

半導体の微細化が進み、技術が進歩したことで高性能な半導体製造装置が不可欠となり、多額のコストが必要になってしまいました。

ファウンダリーに量産委託を行うことで、設備投資のコストを抑えることができるため、ファウンダリーが大きく発展しました。

TSMCの日本進出にはどんな意味があるのか

 TSMCを有する台湾は先端半導体の量産で世界の9割を占めています。台湾有事が起きれば、世界の半導体サプライチェーンが数年間寸断されてしまう可能性もあります。

 そのリスクを回避するために、TSMCはアメリカからの要請と各国の補助金を受けて、アメリカや日本に半導体製造工場を建設しています。

 熊本工場設立の背後にもアメリカ政府の信頼できる国で半導体を量産し、自国内で消費するサプライチェーンを形成したいという考えがあります。

 先端半導体の流通や開発拠点を制限することで、中国、ロシア、北朝鮮などへの技術流出を防ぐことも可能になります。

 半導体の重要性の高まりを受けて、サプライチェーンがグローバル化したことのリスクが大きくなりすぎたため、グローバル化からの振り戻しが起きています。

TSMCを有する台湾は先端半導体の量産で世界の9割を占めています。台湾有事が起きれば、世界の半導体サプライチェーンが数年間寸断されてしまう可能性もあります。

アメリカは信頼できる国で半導体を量産し、自国内で消費するサプライチェーンを形成したいという考えがあり、日本への移転を後押ししています。

先端半導体で日本に勝ち目はあるのか

 半導体製造における日本の強みの一つが材料にあります。

 今後の半導体で必要とされる異種チップ集積では、ICチップ同士を接続することになります。ICチップ同士の接続では、これまでよりも微細な配線でつなぐことが求められるため、材料メーカーに注目が集まっています。

 また、異種チップ集積にはいくつもの装置が材料が必要であり、それぞれの特性を考慮し、微調整する必要があります。

 このようなすり合わせは日本の得意とするところでもあることもあり、材料での強みが大きなプラスになっていきます。

半導体製造における日本の強みの一つが材料です。今、最先端の半導体では異種チップ集積が注目されていますが、異種チップ集積には適切な材料とその特性によって微調整を行うことが必要です。

すり合わせは日本の得意とするところでもあることもあり、材料での強みが大きなプラスになっていきます。

これまでの失敗からラピダスで求められるものは何か

 1988年にシェア50%を誇っていた日本の半導体は2021年にはわずか6%になっています。

 パソコンの普及で、安価な製品が求められている中で、高品質にこだわりすぎたため、低価格な製品を作る韓国企業などに大きくシェアを奪われてしまいました。

 時代の転換期では、これまでの戦略構図が消え去り、新たな構図が生まれるようになります。この構図にうまく適応することが企業には求められていますが、日本企業は適応することができませんでした。

 また、その後何度も政府主導の半導体戦略が立てられ、数十~数百億の予算が投じられましたが、現在に至るまで半導体復権を果たすことはできませんでした。

 ラピダスと同じような政府主導によるファウンダリーの設立もみられましたが、国内メーカをまとめられず内部競争が起きたり、日本だけで完結することにこだわりすぎ海外企業や政府との連携で積極的でなかったこともあり、うまくいきませんでした。

 ラピダスの設立では、過去の経験、失敗を生かし、時流を超えた柔軟な経営、市場分析によるユーザー獲得などが求められています。

過去の日本は時代の変化に適応できず、半導体のシェアを大きく落としてしまいました。また、その後何度も政府主導の半導体戦略が立てられましたが、内部競争や海外企業との連携不足などがの理由もあり、復権には至っていません。

ラピダスでは時流を超えた柔軟な経営、市場分析によるユーザー獲得などが求められています。

半導体復権に重要なことはなにか

 先端半導体で国際連携が求められるなかで、日本は重要なプレイヤーの一極として位置づけられています。

 経済産業省の半導体戦略はかなり野心的であり、成功すれば半導体のみならず、半導体を使う分野、AIや6Gなどにも産業のすそ野が広がっていきます。

 半導体から離れてしまった人材を再び、惹きつけ、日本全体がもう一度世界に旗を立ててやろうという気持ちになれるかどうかが半導体復権で最も重要です。

半導体の復権に成功すれば半導体のみならず、半導体を使う分野、AIや6Gなどにも産業のすそ野が広がっていきます。

半導体復権が可能かどうかは、半導体から離れてしまった人材を再び、惹きつけ、日本全体がもう一度世界に旗を立ててやろうという気持ちになれるかどうかにかかっています。

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