日本の経済政策 「失われた30年」をいかに克服するか 小林慶一郎 要約

本の要点

要点1

バブル崩壊後、日本の経済は30年という長期にわたって停滞してきました。

なぜ、これほど経済が停滞してしまったのか、本当に必要だった対策を知ることは今後の日本経済の成長のためにも不可欠です。

バブル崩壊後の経済停滞の大きな要因は、右肩上がりに成長してきたことから来る楽観論による対策の遅れ、不良債権処理の先送りなどの政策の失敗でした。

要点2

当時、不良債権処理は借り手にとっては不良債権の処理=倒産、銀行側では不良債権処理=債務放棄=銀行員失格を意味したため、追い貸しでの誤魔化しなどで不良債権処理は先送りにされました。

しかし、不良債権処理の先送りは企業の生産性向上を阻害するものであり、最終的には銀行危機を起こし、経済を収縮させデフレ状態に陥る要因となりました。

政策面では、金融緩和と財政政策で打つ手がなかったこともあり、インフレを長期目標に掲げ、貨幣供給量を増やせば、国民もインフレになることを信じ、いずれはインフレを達成できるというインフレターゲット論が注目を集めます。

インフレターゲット論は国民が政府を信じる必要がありましたが、実際には、国民は経済状況によって貨幣供給量を減らしたり、減税するのでは?と考えたり、恒常化した金融緩和が財政への将来不安につながったこともあり、大きな効果とはなりませんでした。

要点3

日本の長期停滞の背景に人口減少とは高齢化がありますが、政策の失敗がさらに経済状況を悪化させてきました。

不良債権処理や金融財政政策以外にも非正規雇用の増加は格差拡大や人的資本の劣化を招いてしまいました。

今、求められているのは、セーフティネットの拡充や政府から独立した組織による財政評価の実施による国民の不安の解消です。

また、インフレターゲット論のような国民の期待に働きかける手法の根本には、政府や為政者と比較し、国民が劣っており、導く必要があるという考えにありますが、国民は政府の思惑をしっかりと感じ行動します。

対等な立場であるという認識に基づいた政策議論と意思決定が重要です。

この本や記事で分かること

・なぜ、日本経済が30年に渡って停滞しているのか

・バブル崩壊後日本はどうすべきだったのか

・今後日本経済が復活するために必要なことは何か

今、日本経済に必要なことは何か

バブル崩壊後の経済停滞の要因と本当に必要だった対策を知ることで、今後の日本経済成長につなげることができます。

バブル崩壊の影響はなぜ、これほど長く残ってしまったのか

戦後の高度経済成長もあり、右肩上がりに経済が成長することに疑問を持つ人はほとんどいませんでした。そのため、土地や株価が暴落しても楽観論を持ち、対策が遅れてしまいました。

バブル崩壊後の一番の反省は何か

当時の政策で最も問題であったのは、不良債権処理の先送りでした。

不良債権処理の先送りは何をもたらしたのか

不良債権処理の先送りは企業の生産性向上を妨げてしまう要因となりました。

もしも。不良債権を損失として、処理したり、一部を減免し借り手=企業の生産性向上を促していれば結果はまた違ったものとなったはずです。

不良債権処理の先送りは最終的に何をもたらしたのか

不良債権処理の先送りや追い貸しは最終的に銀行の破綻へとつながり、大きの銀行が破綻する銀行危機がおきてしまいます。

銀行危機の結果貸し渋りが起き、経済は収縮し、デフレに陥ってしまいました。

バブル崩壊後どのような経済政策がとられたのか

経済を活性化するにあh、金融緩和か財政政策が求められましたが、どちらも手詰まりだったため、インフレターゲット論に注目が集まります。

インフレターゲット論とは何か

政府、日銀がインフレターゲットを定め、貨幣供給量を増やし続ければ、いずれはインフレを達成できるとするのがインフレターゲット論です。

インフレを達成するにが、国民が政府、日銀が貨幣供給量を増やし続けると信じる必要があります。しかし、実際には国民は貨幣供給量を減らしたり、増税する可能性を考慮し、貯蓄を増やすなどしたためうまく機能しませんでした。

日本以外の国は経済危機にどう対応したのか

リーマンショックによる経済後退では、日本の事例を各国が参考にし、素早い不良債権処理うあ公的資金注入を行ったことで、素早い回復を実現しました。

リーマンショックはどんな教訓を残したのか

景気回復は素早かったものの、後から考えればサブプライムローンは非常にリスクが高いものでした、

サブプライムローンのように本当はリスクが高い商品でも、それぞれの担当者ではリスクに気づけない縦割り思考が日本だけではないことやバブル崩壊後に伴う長期停滞はどの国でも起こりうることを示す結果となりました。

なぜ、日本の経済は長く停滞したのか

日本の長期停滞の背景には、人口減少と高齢化がありますあが、政策の失敗がそれをより悪化させました。

不良債権処理の失敗、恒常化した金融緩和、非正規雇用の増加は人的資本の劣化、国民不安の増加、格差拡大へとつながり、長期停滞を招きました。

日本の経済成長のために必要なことは何か

今、政府がとるべき政策はセーフティネットの拡充や独立機関による財政評価での国民の不安解消です。

また、インフレターゲット論のような国民の期待を利用する政策の根本には、国民が劣っているため、政府が導く必要があるという考えがあります。

対等な立場であるという認識を持ち、政策議論、意思決定を行うことが重要です。

本の要約

要約1

バブル崩壊後、30年間にもわたり、日本の経済は停滞してきました。日本の経済成長のためにもその要因は何だったのか、どのような対策が必要であったのかを振り返ることが重要です。

90年代初頭、戦後の目覚ましい経済成長の経験から日本経済には問題がなく、今後も右肩上がりで成長するものとされてきました。

地価は上がり続けるものと考える土地神話はその象徴でした。そのため、土地価格の急上昇が起こってもそれがバブルだと考えることはありませんでした。

そのこともあり、実際に株価や土地の価格が暴落し、経済が冷え込んでも政策当局の反応は危機感に乏しく、大規模な政策も行われませんでした。

バブル崩壊後の最大の経済課題は不良債権処理でした。しかし、当時は借り手は不良債権の処理=倒産、銀行側では不良債権処理=債務放棄=銀行員失格というイメージがあったため、債務放棄はあってはならないものとされました。

そのため、追い貸しなどで資金をさらに貸付けることで、不良債権を優良に見せかけるなどの行為も行われました。また、地価や株価もまた上昇するに違いないという根拠のない自信も問題を先送りにさせました。

不良債権処理の先送りは
・生産性の低い企業を生き延びさせる
・利益をすべて銀行に取られてしまうため、新しい業務に取り組まない
・生産性の高い企業が融資を受けにくくなる
・取引先の債務状況が分かりにくくなり、相互不安から分業が停滞し、生産性が下がる

もし、不良債権をただちに損失として認識し、処理したり、一部を減免し借り手の生産性向上を促しておけば被害は少なかったものと思われます。

要約2

1998年にピークを迎えた銀行危機による破綻が続く中で、あらゆる産業で貸し渋りが発生すると、
日本経済は急激に収縮し、物価下落するデフレ状態に陥ります。

すでに、金利はほぼゼロになっていたため、金融緩和に行うことはできませんでした。財政政策についても、限界まで行ったとの認識もあり、打つ手のない状況でした。

そこで、インフレターゲットを定めて、インフレを長期目標に掲げ、貨幣供給量を増やせば、いずれはインフレを達成できるというインフレターゲット論が注目を集めます。

日銀がインフレを目標としている以上、インフレになる前に貨幣供給量を少なくすることはなく、将来的には物価が上がると国民が信じればインフレを実現できるとされましたが、実際には国民は経済状況によって、貨幣供給量を減らす可能性があるという考えたり、将来の増税に備え、貯蓄を増やしたこともあり、効果は大きくありませんでした。

国民の期待を操作することの難しさを示したものといえます。

要約3

アメリカもリーマンショックで大きな景気後退を経験しますが、日本の事例を研究していたこともあり、連邦政府は不良資産を金融機関から買い取り、公的資金の注入も迅速に行いました。

迅速な対応もあり、大きな景気後退にもかかわらず、素早い回復することができました。

一方で、サブプライムローンのような後から考えれば、リスクの高い商品であっても、それぞれの担当者はそのリスクに気づきにくくなる縦割り思考は日本だけでなくどこにでも見られ、バブル崩壊→不良債権問題→長期停滞という流れがどこでも起こりうることをあらわにもしました。

また、リーマンショックが行るまでは経済モデルは、完成に近く、安定した経済を実現できるのでは?期待されてきました。しかし、実際には極めて複雑なモデルをつくり、これまでのデータと整合性をとっているだけに過ぎないことも明らかにしました。

要約4

日本の長期停滞の背景には人口減少と高齢化がありますが、政策の失敗がさらに経済状況を悪化させてきました。

不良債権処理の失敗は、処理を長期化させ、不良債権の後始末という後ろ向きの仕事で人的資本の劣化を招きました。恒常化した金融緩和は財政への国民の将来不安につながり、効果は大きくありませんでした。
非正規雇用の増加などによる格差拡大や人的資本の劣化につながったことも経済状況を悪化させた要因でした。

今政府に求められているのは以下のようなものです。
・セーフティーネットの拡充

・政府から独立した組織が財政を評価するなどして、長期的な持続性を確保し、国民の不安を解消する

財政の問題では、現在世代が自身の負担を嫌い、先送りにしてしまうことが問題なることもありますが自分が将来の人になったと仮定し、議論するだけで、先送りを防ぐことができたというデータもあります。

また、インフレターゲットの設定のように国民の期待に働きかえるようなやり方もうまくいきません。これらの考えの根本には、国民は政府や為政者と比較して、劣っているため導く必要があると、導けるいう考えがあります。

しかし、国民は政府の思惑をしっかりと感じ、対応します。あくまでも、国民を対等に扱うことが必要です。

対等な立場であるという認識から対話的な思考に基づいた政策議論と意思決定を行うことが何よりも重要になっています。

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