ジャーニーシフト デジタル社会を生き抜く前提条件 藤井保文 要約

本の概要

日本がデジタル後進国であることが明らかになりつつある中、海外ではスマホによる生活や経済を一変させるような革命が起きています。

インドネシアでは国独自の社会構造や課題をデジタルで解決しようと、Gojekという国民的アプリが誕生しています。

Gojekは配車アプリからスタートし、買い物代行、デリバリーなど都市の生活で必要な様々なことを一つのアプルでドライバーに頼むことができるアプリにです

Gojekはインドネシアの社会問題である交通渋滞を解決していますが、ドライバーの教育や働きぶりに応じた融資を行うなど多くの人に新しい仕事を作り出したことからも画期的なアプリになっています。

インドネシアと日本では社会構造や成熟度が異なるので、日本でも社会問題を明らかにし、人々が九通して実現したいことを解決するアプローチをとることが求められています。

我々が製品やサービスに価値を感じるのは不便なものを便利にする利便性と自分らしさなどを感じる意味性の二つです。

利便性と意味性を分けて考えることは、近年の顧客の求めるものがモノや情報から行動支援へと変化したことで重要性を増しています。

この求めるものの行動支援への変化がジャーニーシフトであり、製品やサービスの品質や安全性ではなく、何が顧客の成功のためのアクションを支援しているのかを考えることが重要になっていきます。

どのような行動支援が必要かを考えることでジャーニーシフトしていくことができます。

この本がおすすめの人

・デジタル社会の変化を知りたい人

・仕事で製品やサービスの品質以外で何が重要か知りたい人

・モノ消費からコト消費への変化の理由を知りたい

本の要約

ジャーニーシフトとは何か

 日本がデジタル後進国であることが明らかになる中で、海外の事例を含み、ビジネスカルチャーの最前線を知ることで新たな世界の潮流や新しい視点を得ることができます。

 世の中の技術進化には「利便性の進歩」と「意味性の進歩」の二つがあり、二つの視点から社会やビジネスを見ることが求められます。

 また、近年顧客に提供する価値は大きく変化しています。

 これまでのモノや情報の提供や道具としての価値からユーザーの行動を支援することへと変化しています。

 この顧客価値の行動支援への変化がジャーニーシフトになります。

顧客に提供する価値がモノや情報、道具から顧客の行動支援へ変化しています。この顧客価値の変化がジャーニーシフトとなります。

特に海外では社会に大きな変化が起きています。

インドネシアではどのような変化が起きているのか

 インドネシアではスマホをベースとした新たなインフレが生活を一変させ、経済も急速に発展しています。

 日本でもスマホは普及し、便利になりましたが、革命と呼べるほどの変化はおきていません。しかしインドネシアは国独自の社会構造と課題に対し、デジタルで解決しようとしています。

 インドネシアで国民的アプルと呼ばれているのがGojekというアプリです。バイクタクシーの配車からスタートし、様々なサービスを提供し都市での生活に欠かせないスーパーアプリとなっています。

 バイクタクシーの配車、フードデリバリー、買い物代行などドライバーに様々なことを頼めるようなアプリになっています。日本ではそれぞれの項目で別のアプリがありますが、Gojekではすべて一つのアプリで行ことができるようになっている点が大きな特徴です。

インドネシアではスマホの普及によって社会問題をデジタルで解決しようという革命が起きています。

配車アプリとしてスタートしたGojekは様々なサービスを提供するスーパーアプリで都市での生活に欠かせないアプリとなっています。

Gojekはどこが革命的なのか

 交通渋滞が社会問題であるジャカルタでは、バイクタクシーの需要が高く、配車アプリも乱立していました。

 Gojekはドライバーの質の向上や口座を持たない人でも利用できる仕組みを作ったのちに、様々なサービスを提供しています。

 Gojekは教育に加え、ドライバーの勤務態度やユーザーの評価をもとに融資をしたり、保険に加入出来たり、手厚い福利厚生、仕事ぶりの評価の工夫などで質の高いドライバー集団を確保することに成功し、サービスを広げることを可能にしました。

 Gojekや同業種であるGrabのような会社はこれまで仕事のない人や銀行口座を開くなど社会貢献を意識しており、実際に社会に大きなインパクトを与えています。

Gojekは様々なサービスを提供しているだけでなく、Gojekはドライバー集団の育成や福利厚生で多くの人に仕事を作り出した点でも画期的な存在になっています。

そのほかにインドネシアでのスマホ革命は何か

 インドネシアのスマホ革命は目に見えない部分でも着々と進んでいます。

 インドネシアには家族や個人でローカルに雑貨店や屋台を経営するパパママストアが数多く存在しています。多くのパパママストアの課題は仕入れになっています。

 規模の小さいパパママストアは規模の大きいパパママストアや中間業者から商品を仕入れていますが、その流通網は何重にもなり、複雑となって全体を把握することができず、仕入れ価格がフェアであるかを確認するすべもありませんでした。

 この問題を解決するために、スマホのアプリで簡単に発注ができたり、中間業者を省くことを可能にするサービスも多く見られています。

 物品の発注だけでなく、売上や勤務態度をアプリを通じて得た企業がパパママストアの経営者に融資の提案をするなど幅広いサービスを提供しています。

ローカル商店であるパパママストアの仕入れの不透明さと中間業者を省くことでの効率化にも貢献しています。

インドネシアの事例を日本ではどう生かすべきか

 インドネシアと日本では社会構造も成熟度も大きく異なり、インドネシアの事例をそのまま持ち込んだり、単純な比較はできませんが、社会課題解決にフォーカスした進化を観察することで新たな学びを抽出することができます。

 重要なことは社会課題=社会ペイン(人々の生活に存在する痛み、ペインポイント)が日本とインドネシアでは異なるため、日本の社会ペインを明らかにしてアプローチする必要があります。

 インドネシアでは交通渋滞という社会ペインを解決する手段であったためGojekなどのスーパーアプリが生まれています。

インドネシアは交通渋滞という社会課題があったため配車アプリであるGojekがスーパーアプリとなっています。

インドネシアと日本では社会構造も成熟度も大きく異なるため、日本でも社会課題を明らかにし、解決するアプローチが必要となります。

これらのビジネスで重要なことはなにか

 ビジネスなどでは競争領域と協調領域が存在し、協調領域では、いったんオープン化して、利便性を重視しみんなが使えるようにして市場を大きくした後に、競争領域となり、各企業で競い合うほうが効率的な場合があります。

 現金の使用という社会ペインのある領域では、協調領域で先行することが求められます。実際にQRコード決済の会社の乱立は競争領域を優先したため、ユーザーや販売店に負担を強いています。

 社会の多様な人々が共通して実現したいゴール=ジョイントビジョンを提示することが企業に求められまています。

 自社の技術をどう生かすか?や顧客が何を求めているのか?ではなくジョイントビジョンを掲げて、協調領域で共助し、実現していくことが求められるようになっています。

ビジネスには競争と協調領域が存在し、ある程度協調し市場を広げた後に企業間で競争したほうが効果的な場合があります。

また、技術や顧客の要求にこたえるのではなく、人々が共通して実現したいことを提供することが求められるようになっています。

なぜ協調することが重要なのか

 社会貢献を中心に据え、協調領域で共助することは利益という観点から見てもインパクトをもたらします。

 オープン化による利用者の増加は市場の拡大につながり、共助やリソースの共有によるコストダウンや機会損失の低減をもたらすため、利益という観点から見てもとても有益なものになるはずです。

協調は市場拡大、リソースの共有によるコストダウンなど利益という観点からも有益です。

我々はサービスの何に価値を感じるのか

 我々が価値を感じるサービスには「利便性」と「意味性」の二つがあり。この二つを意識することはとても重要です。

 利便性は不便を便利にするもので、合理的な指標があり、わかりやすい反面、競争になりやすいという特徴があります。

 一方の意味性は自分らしさや好きなど人によって異なる基準や尺度を持つものが対象となります。

一般的には成熟度の低い国では利便性が、成熟しわかりやすい社会的なペインがない場合には意味性が求められます。

我々は不便なものを便利する利便性と自分らしさなどを感じる意味性の二つの価値を感じてます。

利便性は合理的な指標がある反面競争になりやすく、意味性は尺度がないもののわかりやすい不便がない場合に求められます。

利便性と意味性それぞれの特徴は何か

 利便性は共有され、意味性は所有されるという特性の違いを持っています。

 なるべくオープンで、多くの人を巻き込み、共有、連携、協力することで利便性がさらに向上するため、利便性は共有方向に進んでいきます。

 一方、意味性は所有など特別感を持つ方向に進むことで価値をどんどん大きくしていきます。そのためなるべくクローズドで限られたコミュニティにとどめることが意味性を保つ方法になります。

 利便性と意味性を混ぜてしまうとコンセプトが相反し、うまくいきません。

 高級車のシェアが流行らないのは高級車には利便性ではなく、意味性を求める人が多いですが、車のシェアがそもそも利便性を追求したもののため、コンセプトが相反しうまくいかなくなってしまいます。

利便性は共有され、意味性は所有される特性があり、二つのコンセプトを混ぜるとうまくいきません。

Webの世界はどう変化していくか

 Webの世界はこれまで利便性を追求してきた面が強かったのですが、Web3、NFT、メタバースなどは意味性を追求することを可能にします。

 ブロックチェーン技術によってコピーされない本物のデータであれば所有という感覚が生まれ、Webにおける意味性を高めることができます。

 意味性の付与はコミュニティの世界観をより大きくすることを可能にします。コミュニティの結びつきが強くなるとコミュニティの中で貢献する人が出てきます。

 ブロックチェーン技術ではこの貢献に対し、トークンと呼ばれるインセンティブを付与することができます。トークンはプラットフォームが付与するのではなく、分散的な仕組みから評価されることになるため管理者なしでコミュニティが成り立つことになります。

Webの世界はこれまで利便性を追求してきましたが、ブロックチェーン技術によって意味性を持たせる方向にシフトしています。

なぜ、意味性と利便性を分けることは何を意味するのか

 利便性と意味性を使い分ける必要性は顧客への提供する価値が変化したことを示しています。

 顧客提供価値はモノや情報の提供や道具としての価値から、ありたい成功状態を実現させる行動支援に変化しています。この顧客提供価値の変化こそがジャーニーシフトです。

意味性と利便性を使い分ける必要性は、顧客に提供する価値がモノや情報から行動支援へと変化していることを意味しています。

行動支援を行う上で重要なことは何か

企業の競争の焦点が製品から体験へと変化するうえでUX(ユーザーエクスペリエンス)がより重要になっていきます。

 行動支援をおこなうためには顧客の行動などの様々なデータを取得し顧客理解の解像度を上げ、最適なタイミングで最適なコンテンツやコミュニケーションを提供するためにUXの向上が欠かせません。

 また、行動支援を行うにはユーザーの行動を横断的に支援することが必要です。ぶつ切りのサービス提供では行動支援は難しいため、横断的なサービスを提供するUXを用意する必要もあります。

 利便性であれ、意味性であれ顧客の行動支援を可能にするサービスだけが評価されるようになっています。

適切な行動支援を行うためには顧客理解の解像度を上げることが必要となります。

顧客理解の解像度を上げるにはUXの質の向上と横断的サービスを提供可能なUXが必要です。

自社がどのような顧客の行動支援を行うか決める際に気をつけることは何か

 意味性と利便性のバランスを取り、ジャーニーを作っていくことで顧客の行動支援を行うことができるようになります。

 顧客があなたの会社やサービスとつながり続ける理由を問い直したり、社会に存在するペインを解消できるかを考える必要があります。

 顧客がつながりたいと思うのは、品質や安全性ではなく、顧客の成功のためのアクションを支援してくれていると感じたときです。

 時代の環境変化に合わせて、自社固有の価値を見出すことで、今とは異なる形につながていきます。提供価値を再定義し、自分たちの強みは生かした行動支援の定義が行うことで、ジャーニーシフトが可能になります。

顧客が自社とつながりたいと思う理由を問い直すことが重要です。品質や安全性ではなく何が顧客の成功のためのアクションを支援しているかを考えることが大事です。

日本の強みと課題は何か

 日本は目標を設定してガバナンスをするというやり方が苦手なため、DXでも手段が目的化してしまうようなことが多くみられます。

 決まった枠内での磨きこみや利便性を改善は得意ですが、視野を広げ、これまでの枠組みを外すことを苦手としています。 

 一方で、プロセスや細部への強いこだわりを持っているため意味性に関しては非常に強い部分となっています。

 新しい枠組みを決めるためには、自身の業界や会社が何ができるかではなく、顧客の成功体験を実現する行動支援という枠から考えることで、これまでの枠組みから外れた考えをすることが可能になります。

 社会ペインの発見や利便性と意味性のバランスを考え、顧客の行動支援を行う姿勢を持つことでジャーニーシフトしていくことができます。

日本の強みは利便性の改善と、プロセスや細部へのこだわりによる意味性の分野です。

一方で、目標を設定することが苦手で、手段が目的するようなケースもあります。

業界や会社がなにができるかではなく、どのような行動支援が必要か考えることで、ジャーニーシフトしていくことができるようになります。

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