LIFE SPAN 老いなき世界 デビット・A・シンクレア 要約

本の概要

近年の研究から自然なプロセスではなく、老化は疾患の一つであるという考えが広がっています。

遺伝子の発現には遺伝子のDNAだけでなく、どのように発現するかを決めるエピジェネティックの重要性が知られてきましたが、老化の進行にもこのエピジェネティックが大きくかかわっています。

エピジェネティックを調整するサーチェン遺伝子を活発化させることで、寿命や運動能力が延びる可能性も示唆されています。

現在、老化の仕組みは完全にはわかっていませんが、適度なストレスが寿命を伸ばすことがわかってきています。そのため、適度なストレスを与える薬が開発されれば老化を防ぐことができる可能性を秘めています。

寿命が延びることのデメリットも指摘されていますが、健康年齢が上がることで得られるメリットも多くあり、より人間らしく生きることができるようになるためにも老化を防ぐことが求められています。

この本がおすすめの人

・老化研究の現状を知りたい人

・老化を防ぐ方法を知りたい人

・多くの人の寿命が伸びたときに起こることを知りたい人

同じく老化がテーマの寿命ハックの要約はこちら

本の要約

遺伝子はどのように生まれたのか

 現在のすべての生物の祖先は、遺伝子メカニズムを発達させることで他の生物に比べ優位に立つことができました。

 初期の遺伝子メカニズムは単純で、分裂を止める遺伝子Aと遺伝子Aを抑制する遺伝子Bの組み合わせでした。環境の状況が良くなるとBが働き、子孫の生き残る可能性が高いときに分裂することができます。現在の生物は多少の違いはあったもすべてこの回路を持っています。

すべての生物の子孫は遺伝的のメカニズムを発達させることで、優位になり、そのメカニズムが後世につたわってきました。

遺伝情報はどのように伝わるのか

 遺伝情報を伝える仕組みにはDNAによるデジタルな方式とアナログで伝わるエピゲノムとがあります。

 ヒストンと呼ばれるタンパク質がDNAに巻き付くと読み取りがされなくなり、タンパク質の合成がされなくなります。 

 遺伝子Bの末裔であるサーチェイン遺伝子はヒストンの巻きつく力を調整する脱アセチル化酵素を作り出す遺伝子であり、遺伝子の発現をアナログなやり方でコントロールしています。

 このようなアナログなコントロールをエピジェネティクスと呼び、DNAの持つ情報をどのように発現させるか=エピジェネティクスが極めて重要となっています。

DNAの配列によってどのようなタンパク質が合成されるかが決まります。一方でタンパク質を合成するかどうかはヒストンを利用しコントロールしています。

DNA情報をどのように発現させるか=エピジェネティックスが極めて重要になっています。

老化はなぜ起こるのか

 サーチェイン遺伝子の働きが弱くなると老齢に特有な病気を発症しやすくなる一方で、活性化するとDNAを修復し老化に伴う病気を防ぎことができます。

 DNAの損傷が起こるとサーチェイン遺伝子はDNAの損傷を治すこと優先してしまうため、エピゲノムの調整ができなくなってしまい、老化が速くなってしまいます。

 実際にマウスのサーチェイン遺伝子を活性化すると、運動能力が向上した例もあります。

 エピゲノムの調整ができなくなると細胞が持つ本来の機能を発現できなくなり、老化につながっていきます。 

エピゲノムの調整ができなくなると細胞が持つ本来の機能を発現できなくなり、老化につながってしまいます。

老化に対する考え方はどう変化しているのか

 研究結果からは老化が1個の疾患であるとする考えが広まっています。

 細かい病気を治すことに注力している現代医療は、老化を根本の病気として治療することを目指していないため、高齢者は1つの病気を治してもすぐに別の病気になってしまいます。

老化を自然なプロセスではなく、病気として治療可能になれば健康に大きく影響します。

 これまで不可能と思われていた死に至る病気を克服したことと同じように、克服できる可能性はあります。

 まだ根本原因を取り除く技術は開発中ですが、現在、長寿遺伝子を働かせる方法として知られているのは、適度のストレス(運動や寒さ)と食事(量を減らす、空腹を感じる)となります。煙草などもストレスではありますが、過度なストレスとなるため寿命を縮めてしまいます。

 老化を治療することは人間として自然ではないという声もあります。しかし、自然でないのはワクチンや骨折の治療も同じことです。

 健康寿命が伸びれば、より人間らしく生きるようになる可能性は高いです。

老化を自然な現象ではなく、疾患の一つととらえる考えが広がっています。

将来的には老化を治療できるようになる可能性があります。

具体的な老化の治療法は何か

 長寿遺伝子を働かせる方法として知られているのは、適度のストレス(運動や寒さ)と食事(量を減らす、空腹を感じる)となります。

 そのためサーチェイン遺伝子を活発化させるような適度のストレスを作り出すことを薬でおこなうことができれば、老化を防ぐことができる可能性があります。

 寿命を延ばす方法は他にもあり、薬や免疫を利用した老化細胞の破壊、細胞のリプログラミングなどがあります。

サーチェイン遺伝子を活発化させることのできる薬ができれば老化を防ぐことができる可能性があります。

医療はどのように進化しているのか

 現代の医療はほとんどの人に効果のある医療をメインに行われていますが、DNA解析などを組み合わせることで、オーダーメイドの治療が実現可能となります。

 また、治療だけでなく、どんな病気にかかりやすいか、何を食べるべきか、腸内や皮膚にどんな微生物が必要かなどを知ることも学べるようになっています。

DNA解析の技術の進歩によって個人個人に合わせ、治療や病気を防ぐ方法をしることができるようになっていきます。

寿命の延びは社会にどのような影響を与えるのか

 控えめに計算しても、寿命は33年ほど伸びる可能性があります。

 寿命が伸びることのデメリットには以下のようなものがあります。

・人口の増大、大量消費

・世代交代が起きなくなる

・金持ちだけが老化対策が可能となれば、さらなる格差拡大がおこる可能性もあります

 一方で、過去100年の生活環境の改善は人口増によって起きた面も否定できません。また、健康寿命が伸びれば高齢者からの納税が増え、医療費の削減が可能となり、全体のパイが増えるため若者の仕事がなくなるわけではないという声もあります。

 人間は未来を他人事と思う傾向が強いため、今では孫の代を心配する程度です。寿命が伸びれば、より先の代に目を向けることができるようになるかもしれません。

寿命が延びることのデメリットも想定されていますが、近年の生活環境の拡大は人口増加で起きた面も否定できません。

また、寿命が延びることで、今より先の世代に目を向けることができるようになる可能性もあります。

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