本の概要
リスキリングなど言葉をよく聞きように学ぶことの重要性が世間でも大きく取り上げられています。
学ぶことを感がるときには、何を学ぶのかやどこで学ぶのかといった議論になりがちです。しかし、学ぶ上で重要なことはどうやって学ぶのかということです。
同じ内容からでも、学ぶを得て行動を変える人から、何を学んだか覚えていない人まで様々なようにどうやって学ぶかは学ぶことを感上げるうえで非常に重要なことです。
本書では、学びの本質はなにか、学びを行う上で必要な能力とは何か、自分の学びを言語化、可視化する方法を通じて自分だけのオリジナルな知の体系を独学の地図として作る方法が書かれています。
この本がおすすめの人
・独学の方法を知りたい人
・自分が何を学ぶべきかわからない人
・自分が学んできたことを客観視、言語化する方法が知りたい人
本の要約
同じ内容からでも、学びを得て行動を変える人から何を学んだかを覚えていない人まで様々です。
学びの本質は経験前後の差分であり、経験をする前の自分とした後の差分こそが学びの正体です。
経験による差分は微々たるものですが、蓄積されることで徐々に大きくなっていきます。
学びは人によって大きく異なるため、自分自身の差分に着目し、自分自身の独学の地図をつくることがとても重要なことになります。
独学の地図を作るためには地図を作り「行為」、独学を行うための「能力」と「土台」が必要になります。
学びを行う上で必要な「行為」は「疑問」の発見、疑問の答えを探すことで得た「差分」、「他者」との共有となります。
疑問、差分、他者の行為から学びを得るとは以下のような考え方です。
・効率的な知識の取得ではなく、内から湧き出る興味、疑問から問いを作り、調べてみる
・経験から得た差分をアウトプットしそれっぽい一般論を排除し、自分だけの具体論に変換する
・理解したから、他者に語るのではなく、他者に語ることで理解できるものと考える
疑問の発見→答えを見つけるために動く→差分を抽出する→他者と共有する→新しい疑問が生まれるというサイクルを回すことで、学びが高まっていきます。
独学を実践したり、継続するために必要な「能力」が独学です。独学筋はいくつになっても、学びを繰り貸すことで筋肉のように鍛えることができます。
自己批判筋:自己批判を行うことで、考えが深くなる
保留筋:判断をあえて宙ぶらりんにし、時間をかけて学びを行う
抽象化筋:抽象化することで物事の本質を捉える
具体化筋:些細な違いから、微妙な差分を捉える
表現筋:内面で考えたことを表現する
バランスよく独学筋を鍛えることで、学びから得る差分を得やすく、継続しやすくなっていきます。
これまでのビジネス状の学びでは、あるべきキャリアと現状の能力の差から学ぶことを決めることが一般的でした。
しかし、あるべきキャリアが変わりやすい現在では、長期間で変えたい能力を補うという考えはリアリティを失っています。
そこで重要になっているのは、自分の興味から疑問を持ち、その経験から得た学びを絵具を置くパレットのように配置していく、ラーニングパレットの概念です。
学びを2軸、4領域等からなるパレットに配置していくことで、自分の学びを可視化することで、解像度の高低や学び同士の関係性を意識しやすくし、学びの新しい組み合わせに気づきやすくなるなどの効果ができます。
ラーニングパレットの領域を広げたり、解像度を高めることで、徐々に独学の地図が出来上がっていきます。
学びの効果の大きい人と小さい人の違いは何か
筆者は大学やビジネススクールの場で講師として活動しているが、人によって学びの結果に大きな差があることを感じています。
同じ内容でも、何を学んだかすら記憶に残っていない人がいれば、その場をきっかけに新たな行動に移していく人もいます。
一回の学びによる差は微々たるものでも、差が積み重なれば大きな差となっていきます。
また、同じ人生を歩んだ人など一人もいないため、学びは個々人によって大きく異なりますし、学びは自分の世界に取り込むことで行うものです。
独自にオリジナルな知の体系を作り出す「独学の地図」こそが学びにおいてとても重要なこととなります。
学ぶことのできる人は、小さい学びを積み重なねることで大きな差を作っていきます。
学びは自分の世界に取り込むことで行うため、独学の地図を持つことが重要です。
どのように学びを行うべきか
独学や学びというと資格の取得のように効率的に知識を取得することを想像しがちですが、既存の知識を効率的に取得することは、必ずしも良い結びに結びつくわけではありません。
学ぶ目標や理由を明確にし、最短で学ぶことも必要なことではありますが、それ以上に重要になるのは自分の内から湧き出る問いに答えるために学ぶことです。
学校などの勉強では先生が問題を用意し、回答する形が多いため、自分の内から出てきたもので問いを立てることは難しいことです。
まずは、いろいろなことをする中で、自分の内から出た素朴な疑問に耳を傾け、興味がわくことを問いにすればOKです。
疑問に意味や価値を求めずに、自分が知りたいから調べることほど幸せな勉強経験はありません。
効率的な知識を取得する学びが良い学びに結びつくわけではありません。
自分の内から出てきた興味から、問いを立て、自分が知りたいから調べることほど幸せな勉強体験はありません。
そもそも学びとは何か
学びの本質は経験前後の差分です。ある経験をする前の自分とした後の差分こそが学びの正体です。
差分について考える際には、それっぽい一般論からなるべく遠ざかることが大事です。
個々それぞれは同じ経験からも感じるかや背景も異なります。そのためそれっぽい一般論はその人独自の差分=学びに蓋をしてしまう可能性があります。
日々の差分はそれほど大きいものではないため、簡単に埋もれてしまうものなため、以下のような3ステップで掘り起こしていく必要があります。
1.素直に感じたことをアウトプットする
2.それっぽい一般論がないかチェックする
3.自分だけでの具体論に変換する
自分だけの具体論は前提条件が付いたり、キャッチーな言葉でない武骨なものになりますが、それでも問題ありません。
学びの本質はある経験をする前と後の自分の差分にあります。
個々経験も背景も異なるため、それっぽい一般論ではなく、自分だけの具体論とすることで差分を発見しやすくなっていきます。
学びに他者はどう関係してくるのか
学びは独学で行うものですが、他者との関係はとても重要です。
先に人に説明する場を設けることで、時間の制限をかけ、説明によって自分の理解を深めることも可能になります。
理解したから他者に語るのではなく、他者に語ることで理解することができると考える必要があります。
日々の小さいところにあるものから学びの種を見つけ、他者と共有する過程で、その種を育てていくことで大きな学ぶになっていきます。
学ぶを行ううえで下記のようなサイクルを回すことができれば、学びは高まっていきます。
日常の中で疑問を見つける
↓
その疑問に答えるために動く
↓
動きによる差分を抽出する
↓
差分を他者と共有する
↓
新しい疑問が生まれる
学びに他者との関係は欠かせず、理解したから他者に語るのではなく、他者に語ることで理解することができると考える必要があります。
日々の小さいところにあるものから学びの種を見つけ、他者と共有する過程で、その種を育てていくことで大きな学ぶになっていきます。
独学をするために必要な能力は何か
独学の概念が理解できても、その実践や継続するためには、独学筋が必要です。独学筋は意識して反復トレーニングすることで筋力と同じように力が伸びていきます。
独学行為にフィットした体になるためには以下のような独学筋を鍛える必要があります。
種類 | 目的、効果 | 鍛える方法 |
自己批判筋 | 自己批判を行うことで、考えが深くなる | 自分の中に他人を飼う |
保留筋 | 判断をあえて宙ぶらりんにし、時間をかけて学びを行う | 複雑で意味不明なものに向きあう |
抽象化筋 | 抽象化することで物事の本質を捉える | 目についたものの共通項を探す |
具体化筋 | 些細な違いから、微妙な差分を捉える | 似ているものの違いを探す |
表現筋 | 内面で考えたことを表現する | 他者の優れた表現をストックする |
独学筋は誰でも鍛えることができ、トレーニングを行うのに遅いということはありません。何歳でも独学筋を鍛えることができます。
学びを行うには、自己批判、保留、抽象化、具体化、表現の能力が欠かせません。
これらの能力はトレーニングすることで筋肉のように鍛えることができます。
独学筋以外に必要なことは何か
独学に必要な行為とそれに必要な能力=独学筋に加えて、中長期的な視点で整備していく、土台となるラーニングパレットの概念です。
これまで特にビジネスの学びでは、あるべきキャリアと現状の能力の差から学ぶことを決めることが一般的でした。
しかし、変化の大きい世界では、あるべきキャリアもどんどん変わっていくため、変えたい能力を長い時間かけて補っていくという考えはリアリティを失っています。
足りないものを補うのではなく、自分の経験から得た学びをパレットのように配置していくという考えがラーニングパレットになります。
組織の立ち位置や肩書のような名詞ではなく、実際の自分の経験=動詞から得た学びをパレットに配置していくことで、それぞれのパレットを作り出すことができるようになります。
必要な学びを決め、長期間身に着ける能力を補うという考えでは、変化の大きい時代に対応できません。
自分の経験から得た学びをパレットのように配置していく、ラーニングパレットの概念が重要になります。
ラーニングパレットを作るメリットは何か
ラーニングパレットを作り出す際には2つの軸からなる4つの項目を考えることから始めるとわかりやすくなります。
今と未来を一つの軸に、自分の業務とやりたい業務をもう一つの軸にするなどしていきます。
それぞれの領域の項目を設定したら、その項目をさらに細かく分類していきます。細かく分類が可能な領域ほど自分がその項目を解像度高く理解していることになります。
また、細かい分類ができない場合はその項目に対する認識が荒いことがわかります。
ラーニングパレットで独学の内容を整理、可視化することで、自分の学んできたことを意識しやすくなる、学びの組み合わせのアイデアが生まれやすくなるなどの利点があります。
ラーニングパレットによってこれまでの学びを可視化することができ、新たなアイデアが生まれやすくなることもあります。
学びを継続するために必要なことはなにか
パレットのように整理することで、より解像度を高める=深化型学習で行くのか、新しい色を探す=探索型学習で行くのかという問いが新たに生まれてきます。
どちらを先に行うのかに答えはありませんが、頭で考えた学ぶべきことではなく、心が求める学びたいことに焦点を合わせうことが大事です。
実用性を重視した学びは学び疲れを起きやすくさせますが、好奇心を駆動させることで、学ぶ疲れが起きにくく、より深い学びに到達できる可能性も秘めています。
必要性のある学びに対応しなければならない場面もあり、それらに真摯に対応しても、それがすべてだとは思わず、時間をかけて何を学びたいのかを考えることが重要です。
独学には最初から地図があるわけではなく、ラーニングパレットの領域を広げたり、深くすることで徐々に作られていくものになっています。
頭で考えた学びではなく、好奇心で駆動する、心が求める学びを行うことで学びを継続することができます。
ラーニングパレットの領域を広げたり、解像度を高めることで、徐々に独学の地図が出来上がっていきます。
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