絶滅動物は甦らせるべきか ブリット・レイ 双葉社 要約

本の概要

近年の技術、特に遺伝子技術は著しく進歩しています。

 遺伝子技術の進歩によって絶滅動物を蘇らせるディ・エクスティンクション(逆絶滅)が現実味を帯びています。

 ディ・エクスティンクションによって、永遠に戻らないと思われていた人類の手で絶滅させてしまった種を甦らせれば、保全生物学の運動を一変させることになります。

 一方で、ディ・エクステンションよりも絶滅危惧種を救うために技術を使用することを優先すべきする声もあります。

 技術をどのように用い、何を行うかは、一般の人々の参加と監視が重要となります。多くの人が絶滅動物の復元について考える助けになるため知識を得ることのできる本になっています。

この本がおすすめの人

・絶滅動物をどうやってよみがえらせるのか知りたい人

・絶滅動物をよみがえらせるべきか知りたい人

こうして絶滅種復活は現実になるの要約はこちら

本の要約

ディ・エクスティンクションとは何か

 ディ・エクスティンクションとは絶滅動物を蘇られようとすることで、逆絶滅ともいわれます。

 現在、絶滅種のDNAを近縁種に取り込むことで絶滅種をよみがえらせる計画がなされています。このような方法ではオリジナルと全く同じ種が再現されるわけではありません。

絶滅種のDNAを近縁種に取り込むことで甦らせる=ディ・エクスティンクションの研究が進んでいます。

どのように絶滅動物を蘇らせるのか

 絶滅動物をよみがえらせる方法はいくつか存在します。

1.選択的交配(品種改良)

 犬の家畜は望ましい特徴を備えたオオカミをつがいにすることで、その特徴を次代で際立たせることで行っています。その逆を行うことで元の種を復元する方法です。 

 シマウマの亜種であるクアッガは1880年代に絶滅していますが、シマウマの中でもクアッガに外見が近いものを交配させることで、クアッガに非常による似た種が生まれています。

2.クローン技術

 クローン作製は複製する生物の細胞核を別の生物の卵細胞に移すことで行われます。絶滅動物の場合、近縁種を代理母とするため、オリジナルと同じにはなりません。

3.遺伝子工学

 クリスパーによる遺伝子編集はその正確性、使いやすさ、コストで他を圧倒する遺伝子編集技術となっっています。

 クリスパーは遺伝物質の切断と挿入を行うことができるため、絶滅種のDNA編集を行い、近縁種に注入することが可能となります。

4.合成ゲノム

 絶滅種のゲノムを1から合成し近縁種の卵細胞に移植する方法です。ゲノムの合成は難しくディ・エクスティンクションにはまだ利用されていません。

 どの手法であれ、交配以外の手法はDNAが入手できなければ、復元は不可能です。現在採取できたDNAで最も古いものは70万年前のウマのもので、最も絶滅の遅い恐竜でも7000万年前のためジュラシックパークのように恐竜を復元するのは不可能となります。

様々な方法がありますが、基本的には絶滅動物のDNAを入手する必要があります。

なぜディ・エクスティンクションは必要か

 地球では過去5度の大量絶滅が発生しており、現代は6度目の大量絶滅を迎えているという見方もあります。 

 今回の大量絶滅は人類1種が引き起こしている点がこれまでとの違いになっています。そのため下記のような点から絶滅種を復元すべきという意見があります。

 ・人類が絶滅させてしまった道義的責任を果たすべき

 ・絶滅種が果たしていた役割を再構築することは地球環境にもプラスとなる

 ・興味を引くことで、人々の行動を変えたり、環境保全のための資金調達が容易になる(もしマンモスが蘇えれば、見学に来る人が大勢いるだけでなく、もう絶滅させてはならないという気持ちを強くすることもできるかもしれません。)

現在地球でも見られている大量絶滅は人間が引き起こしており、これ以上の絶滅を防ぐためやこれまで絶滅させた動物を復活させることに意義があるため、ディ・エクスティンクションが検討されています。

どのような種が復元されようとしているのか

1.マンモス

 マンモスの再生であれば、一般の目を引くこともでき、動物園で展示することができれば、大きな商売になります。そのため絶滅種の復元の象徴的な存在とされています。絶滅種の再生には大きなコストがかかるため、商売とする必要があるという見方もあります。

 ケナガマンモスの再生で得られる利益には、絶滅の危機に接しているゾウの生息範囲を広げることができる、永久凍土を踏み固め、凍土に含まれる炭素を閉じ込めることで温暖化防止になるなども挙げられてます。

 マンモスのDNAは純度100%で入手できるわけではないため、クローン技術を使用できません。断片化したDNAを近縁種のゲノムを参考にして、つなぎ合わせていく方法が検討されています。

 マンモスの特徴を表す(毛の長さ、寒さへの強さ)遺伝子発現をゾウで発生させる研究や初期化した体細胞(=iPS細胞)をゲノム編集しマンモスの特徴をもつゾウを誕生させるもおこなわれています。

2.リョコウバト

リョコウバトは900~1600万年前に近縁種であるオビオバトから進化しました。

 リョコウバトは食糧などにする目的で人間に乱獲され、生息していた期間の1000分の1%に過ぎない時間で絶滅してしまいました。

 リョコウバトとオビオバトのDNAの比較結果で一致率が97%であり、異なる部分を探したのち、オビオバトのDNA編集でリョコウバトに特徴的な遺伝子を組み込むことで復元を目指しています。ただし鳥類は子宮を持たず、産卵した時点で胚がかなり発達しているなど独特の難しさがあります。

マンモスやリョコウバトなどの種の復活が研究されています。

種の復元にリスクはあるのか

 復元は技術的にも困難であるが、達成できた時のリスクもあります。

再生種が侵略的な外来種となり、在来種の遺伝的特徴が失われる可能性があります。

絶滅種が生きていた環境が理解できていないため、再生種が今の環境に合うかは不明です。

復元できるのであれば、絶滅させても問題ないというモラルハザードが起きる可能性があります。

復元種は近縁種の子供ととして生まれるため、孤独になってしまう危険があります。

もし復元種が人間を襲えば、実際以上に恐怖を与えてしまいます。

 ディ・エクスティンクションの究極の課題は技術ではなく、どうやって人間に受け入れられるか、なのかもしれません。

ディ・エクスティンクションにはリスクもあります。究極の課題はどうやって人間がディ・エクスティンクションを受け入れるかとも言えます。

他にディ・エクステンションへの反対はあるのか

  また、ディ・エクステンションの技術は絶滅危惧種を救うためにも使用できます。

 絶滅危惧種は数の減少によって個体群のDNAの多様性が弱体化することがあります。急激な環境変化や感染症の流行が起こると、特定の特徴を持つ個体しか生き残れないことがあり、遺伝的多様性が失われてしまいます。

 ゾウも遺伝的多様性が失われているため、ゾウの遺伝子をケナガマンモスに近くする編集によって、多様性を増加させ、生息域を広げることができます。

 遺伝子ドライブを用いると遺伝子の改変を100%子孫に伝えることが可能にあるため、生物に特定の感染症へ耐性を持たせることも可能となります。

 このような例からディ・エクステンションよりも絶滅危惧種を救うために技術を使用することを優先すべきする声もあります。

絶滅危惧種を救う技術とディ・エクステンションの技術は似ているため、絶滅危惧種を救うことを優先すべきという声もあります。

絶滅種の復元にどう立ち向かうべきか

 危険な知識というテーマは我々の傲慢さを戒めるために、数々の物語で語られています。危険な知識をテーマにした有名なものがフランケンシュタインやジュラシックパークです。

 フランケンシュタインではフランケンシュタインを作り出したことでなく、作り出したものに責任を持たなかったことに原因があります。

 つまり生み出したものをケアし、持続可能なものとする責任を持つことが重要となります。

 技術の進歩によって人が積極的に自然に介入するのであれば、介入による結果への責任が重くなることを自覚することが重要です。

 研究者たちはディ・エクステンションによって世界に有益な変化がおき、種や生態系の助けになると信じていいます。

技術が進歩し、自然に介入する場合責任はこれまで以上に大きくなることを自覚することが重要です。研究者たちはディ・エクステンションによって世界に有益な変化がおき、種や生態系の助けになると考えています。

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