ザ・キルスコア ヤコブ・トーメ 要約

本の概要

誰もが環境保護の重要性、必要性を認識していますが、その対策が十分に取られているわけではありません。

その大きな理由の一つに環境保護の活動や意見が一般の人に伝わりにくいことにあります。

数値化をせずに感情だけに訴えってしまったり、逆に実感を得ることのできない複雑な数値を指標にしてしまうことも少なくありません。

本書では、実感を持てる数値としてキルスコア、つまりは我々の普段の生活での選択がどれくらいの人を死に追いやっているかを数値化したものが提唱されています。

日々の行動や生活がどれくらいの影響を具体的に知ることができれば、多くの人が日々の生活を変え、小さな変化が大きな動きになっていくはずです。

動き出すきっかけとしてなぜキルスコアが必要なのかを知ることができる本になっています。

この本や記事で分かること

・環境保護はなぜ進まないのか

・多くの人が環境保護を行うために必要なことは何か

・私たちの行動や選択がどのような影響を持っているのか、何をすべきなのか

科学と資本主義に関係について書かれた「科学と資本主義の未来」の要約はこちら

本の要約

要約1

誰もが環境保護の重要性、必要性を認識していますが、その対策が十分に取られているわけではありません。

その理由の一つにこれまでの環境保護の訴えが一般の人に伝わっていないことが挙げれらます。

これまでの環境保護活動はツリーハガーとビーンカウンターの2種類の人によって行われてきました。

ツリーハガーは木を抱く人という意味で、社会や経済を否定し、感情にしか訴えていないため、多くの人の賛同を得られていません。

ビーンカウンターは自然や生命などであっても経済価値、達成目標、評価指標などに変換してしまいます。一般の人には理解できないような複雑な数値であり実感を得ることができず、理解が進んでいません。

要約2

数値化は重要ですが、その数値に実感が持てなければ、多くの人の心をつかむ事はできません。

そのような問題に取り組んだ結果生まれたのがキルスコアという概念です。

持続不可能な消費、生産、投資を選択することで私たちは多くの人を死に追いやっています。我々の選択がどれほどの人を死に追いやっているのかその影響の大きさを測定したものがキルスコアです。

キルスコアを利用することで、我々の選択がどれほど自然や社会構図を破壊し、多くの人に影響を与え、未来の人を死に追いやっているのかを実感を持って感じることができます。 

要約3

我々の選択中で特に大きなキルスコアを持っているのは以下のカテゴリとなります。

1.気候変動:温暖化などで今世紀末には1000万人が死亡する可能性あり

2.廃棄物:微粒子、プラスチックなどによる健康被害

3.労働:労働災害だけでなく長時間労働による健康被害

4.匿名消費:健康を損なう孤独につながる

5.暴力、戦争、紛争

自分たちの選択でもたらされる影響の大きさを知り、事態を変える姿勢を持つことが求められています。

責任を負っているのは、消費者、企業、金融機関などです。

要約4

キルスコアを持つ選択そのものが、直接的に人をしに追いやっているわけではありませんが、どのような影響を与えているか理解し、影響を少なくすることが求められています。

ただし、キルスコアを0にするなどの原理主義に陥ってしまうと、事態は膠着化してしまいます。

簡単なことでもキルスコアを減らすことができるため、まず小さなことから始めたり、投票の際にサステナビリティという観点を持つことも重要です。

日々の小さな選択が如何に人を死に追いやっているかを知ることで、行動を変えることができればその変化は希望のさざ波となり広がっていきます。

一番重要なことは動き出すことです。

これまでの環境保護の問題点は何か

 誰もが環境保護の重要性、必要性を認識していますが、環境保護活動家をツリーハガーと揶揄することも少なくありません。

 ツリーハガーとは、木を抱く人という意味であり、多くの人は心の中でサステナビリティなど甘い考えで、環境保護活動家など経済や社会を否定している夢想家にすぎないと感じています。

 サステナビリティの世界では、ツリーハガーとは別にビーンカウンター呼ばれる人も多く存在します。

 ビーンカウンター=豆を数える人とは計算おたくのことであり、自然や生命などであっても経済価値、達成目標、評価指標などに変換してしまいます。

 ツリーハガーとビーンカウンターどちらもサステナビリティを語る二つのパターンの縮図であり、どちらも極端で片方は自然界に、もう片方は数字の世界に生きています。

環境保護活動が経済や社会を否定するツリーハガーと一般の人には理解できないような数値での議論を繰り返すビーンカウンターの2種類の人々で行われてきたため、環境保護はうまくいっていません。

なぜ、ビーンカウンターとツリーハガーでは環境保護はうまくいかないのか

 どちらもサステナビリティについて語っていますが、一般の人の心をつかむ事ができていません。

 ビーンカウンターは一般の人にはとても理解できない方法で、数値を算出していますが、複雑で感情に訴えるものもなく、実生活とかけ離れたものであり相手に理解してもらうことができてきませんでした。

 また、分かりにくい数値化は時に、企業の本質的でない環境保護をアピールする利用されてもいます。

 多くの人を説得するには数値化することは欠かせません。ツリーハガーのように感情だけに訴えるだけでは伝わりません。

 しかしその数値化に実感が持てなければ一般の人の心をつかむ事はできません。このような問題に取り組んだ結果うまれたのがキルスコアという概念です。

ビーンカウンターは一般の人にはとても理解できない方法で、数値を算出しているため、ツリーハガーは感情だけでに訴えているため、一般の人に理解されていません。

多くの人を説得するには数値化は欠かせませんが、一般の人にも伝わりやすいい数値化が必要であり、その問題を解決するのがキルスコアという概念です。

キルスコアとは何か

 持続不可能な消費、生産、投資を選択することで私たちは多くの人を死に追いやっています。我々の選択がどれほどの人を死に追いやっているのかその影響の大きさを測定したものがキルスコアです。

 キルスコアを利用することで、我々の選択がどれほど多くの人に影響を与えるのかを実感を持って感じることができます。 

 測定法や統計の発展で我々の死の要因を知ることができるようになっています。

 古代の人々の死の要因の多くは病気や環境の変化、出産などの自然でした。これらに対応し、ワクチン、抗生物質、帝王切開などの医療、テクノロジーでこれらの要因による死は大きく減少しました。

 現代の私たちの死に至る要因は喫煙、不健康な食事、運動不足などライフスタイルによるものが多くなっています。

日々の我々の消費、生産、投資がどのくらいの人をしに追いやっているかを数値化したものがキルスコアとなります。

我々のどのような選択が人を死に追いやっているのか

 我々の死に至る要因には変化がみられていますが、私たちの日々の選択は自分自身を死に近づけるだけでなく、自然や社会構造をも破壊しています。

 自然や社会構造の破壊は未来の人々を死に追いやることになっており、この影響を測定したものがキルスコアとなります。

 本書では、以下の5つのカテゴリーついて、どれほどのキルスコアを持っているのかを確認していきます。

1.気候変動

2.廃棄物

3.労働

4.匿名消費

5.暴力、戦争、紛争

 5つのカテゴリーで今世紀末までに奪われる命を合計すると10憶にも上る可能性があります。自分たちの選択によってもたらされる影響の大きさを知り、事態を変えようとする姿勢を持つことが求められています。

 世界は複雑で、ある現象の要因がなんであるか完全に把握することは簡単ではありませんが、アトリビューション研究の発展で複数の要因による因果関係やその影響量を測定することが徐々にでき利用になっています。

私たちの日々と選択は自然や社会構図を破壊し、未来の人々を死に追いやっています。

特に以下の5つのカテゴリーが多くのキルスコアを持っています。

1.気候変動

2.廃棄物

3.労働

4.匿名消費

5.暴力、戦争、紛争

自分たちの選択によってもたらされる影響の大きさを知り、事態を変える姿勢を持つことが求められています。

気候変動はどのような影響を持っているのか

 気候変動に関連した死亡者数は今後20年で年間100万人に達し、今世紀末には1000万人になるともいわれています。

 この人数は亡くなる人の10人に1人が気候変動で亡くなることになります。楽観的なシナリオでも2%の人々が気候変動によって死亡するとされており、その影響力は非常に大きいものになっています。

 温室効果ガスを1000トン排出すると一人の人が亡くなるとする計算結果もあり、人一人が排出する温室効果ガスはおおよそ1000トン排出といわれています。

 つまり、生涯にわたる消費行動の選択を通じて、気候変動に加担し、人一人を死なせていることになります。

 温室効果ガス排出のおよそ半分はインフラ、暖房、食糧、照明などの基本的なニーズで行われています。

 20%が移動、残りの30%が購入するその他の物品によって排出されています。

人一人が生涯に排出する温室効果ガスによって、一人の人がなくなる計算になっています。

企業や投資の気候変動への責任はどれくらいなのか

 企業の排出する温室効果ガスの特定は困難ですが、一部の企業が多くの温室効果ガスを排出していることは確かです。

 人間の活動による総炭素排出量の3分の1は世界のわずか20社が、3分の2を90社が排出しているというデータもあります。

 ただし、企業は消費者の需要にこたえているという面もあるので、責任の所在のすべてが企業の活動にあるわけではありません。

 もう一つの責任として投資を行う金融機関の責任も数値化されています。各金融機関の投資がどのくらい温室効果ガスを排出したのかを数値化してます。

 多くの個人は年金や預金を行っているため、金融機関を通じても気候変動を助長しています。個人差もありますが、投資によって概ね一人の人を死に追いやっています。

人間の総炭素排出量の3分の1を世界のわずか20社が排出しています。

ただし、企業は消費者の需要に応えている面もあり、責任が全て企業にあるわけではありません。

また、これらの企業に投資することでも気候変動に影響を与えています。

廃棄物はどのように人を死に追いやっているのか

 廃棄物も多くの人の死の要因になっています。

 ライフサイクルの副産物として、プラスチックのようなものから大気を汚染する粒子状物資まで多くのものを廃棄しています。

 プラスチックは燃やすと有害な物質が排出されるほか、ごく小さなマイクロプラスチックが健康へ影響が与える可能性も示唆されています。

 排ガスや工場などからは粒子状物質が排出され、体内に入ることで悪影響を及ぼします。粒子状物質は大気汚染などの要因となり、世界の死因の第6位になっています。

 大気汚染はEU都市部の消費者で生涯で0.25人のキルスコアになっています。

 プラスチックは生産大手100社を合計すると年間4万5000人の死者を出しています。これらの企業に投資している金融機関の責任も小さいものではありません。

プラスチック燃焼時の有害物質や大気汚染などの廃棄物も人々を死に追いやっています。

生産企業やこれらの企業に投資する金融機関の責任も小さいものではありません。

労働とはどのように人を死に導いているのか

 労働関連の死というと鉱山のような危険な現場での不幸な事故を思い浮かべがちですが、それだけではなく、過重労働によってなくなる人も多くいます。

 過重労働で亡くなる人は年間74万5000人とみられており、世界の年間の死者の1%を占めています。

 労働による死因としては、過重労働以外にも、空気汚染への暴露、事故、アスベストなどが多くなっいます。

 ただし、病気で亡くなった場合、過重労働が原因でその病気になったとしても過重労働とはカウントされないことも多く、実際にはもっと多くの死が過重労働によるものである可能性もあります。

 また、週5日、1日11時間程度の労働でも健康に大きな害を与えることが分かっていますし、長時間労働は飲酒、喫煙、ストレス、運動不足といった要因を増加させています。

 労働関連に関するキルスコアは消費者は生涯の消費を通じて、0.1人となっています。企業や投資家の責任の追及は透明性の確保が進んでいないことや違法労働の多さもあり、発展途上ですが徐々に進んでいることも確かです。

労働による死は鉱山の事故のような直接的なものだけでなく、長時間労働による健康被害も含まれます。

違法労働で生産されたものを購入すれば、消費者もキルスコアに寄与したことになります。

匿名消費は社会に何をもたらしたのか

 孤独も人を死に追いやる要因であり、孤独は死亡リスクを3割も増加させており、1日15本のたばこを吸うのと同程度に体に悪いことも分かっています。

 私たちは現在、消費行動を匿名化したことで便利になっている反面、孤独に陥りやすくなっており、今後孤独による死は増加する可能性があります。

 オンラインショッピング、セルフレジ、セルフオーダーなど日々の買い物から人間的な要素を排除し、スマートフォンやネットの普及で、娯楽も個人化、匿名化が進んだことも孤独を助長しています。

 これらの使用は個人が使うかどうか選べるものであり、消費者の責任が大きいものですが、企業にも問題はあります。

 SNSなどのプラットフォーム企業は人々がのめり込みやすいような手法を用いている点やタバコなどと違って危険性の警告や年齢制限がない点が問題といえます。

 孤独によるキルスコアを算出することは困難ですが、ヨーロッパでは大気汚染による死者を上回って年間50万に近くが孤独によって亡くなっているという計算もあります。

普段の消費活動の匿名化は便利な反面、孤独に繋がってしまっています。

孤独の健康被害は大きいものであり、計算が難しいものの大気汚染以上の死者を生み出しているという計算もなされています。

SNSなどはその害に関わらず、年齢制限や危険性の警告がないなども問題点になっています。

暴力、戦争、紛争はわたしたちにどれほど責任があるのか

 暴力や戦争、紛争も多くの人を死にもたらしています。ただし、気候変動や廃棄物などとは違い、私たちの直接の関与はありません。

 ロシアの石油を買うことは確かに戦争を行う国を助ける行為ともいえますが、その責任を消費者、清生産者、投資家に負わせることは度を越えています。  

 ただし、暴力や戦争、紛争が気候変動、廃棄物、労働、匿名消費における私たちキルスコアを上昇させる傾向にあることも事実です。

戦争などの影響は気候変動などと違い、わたしたちに直接的な関与はありませんが、戦争などの影響で、他の項目のキルスコアを上昇させることはあります

キルスコアとどのように向き合うべきか

 多くの要因が未来や他の人々を死に追いやっています。

 消費者、企業、金融機関すべてに責任がありますが、我々は消費、生産、投資を行う際に直接人を死に導いているわけではありません。

 それでも、私たちが自分たちの行動がどのような影響を与えており、影響を少なくするために変わる必要があります。我々は殺人者ではありませんが、注意義務を負っているといえます。

キルスコアを持つ選択そのものが、直接的に人を死に追いやっているわけではありませんが、どのような影響を与えているか理解し、影響を少なくすることが求められています。

我々は殺人者ではありませんが、注意義務を負っている状態と言えます。

我々の持つ注意義務を果たすにはどう刷れば良いのか

 消費者、企業、金融機関のすべてが注意義務を負っています。

 我々は常により多くを望むように条件付けられてきたため、注意義務を果たすことは後回しにされがちです。

 サステナビリティを果たすためにキルスコアを0にするなどのような原理主義、絶対主義に陥れば事態を膠着化させてしまいます。

 小さなことでもサステナビリティには効果があります。

・ネットフリックスの画質を高画質化から標準に変える

・食事のフットプリントの3~4割りを占める牛肉やラム肉を控える

・移動手段を飛行機から電車に変える

 また、個人でできないことは政治などに任せることも重要です。投票の際にサステナビリティという観点から候補者を見ることも重要です。

キルスコアを0にするなどの原理主義に陥ってしまうと、事態は膠着化してしまいます。

簡単なことでもキルスコアを減らすことができるため、まず小さなことから始めたり、投票の際にサステナビリティという観点を持つことも重要です。

サステナビリティを実現するにはどうすれば良いのか

 どのような行動や変化がサステナビリティにつながるかを多くの人は頭では理解しています。

 しかし、多くの場合サステナビリティの観点から正しいことは、より多くの労力を必要とします。このような取引コストを低減していくことは効果的なサステナビリティ戦略を策定する上でも欠かすことができません。

 日々の小さな選択が如何に人を死に追いやっているかを知ることで、行動を変えることができればその変化は希望のさざ波となり広がっていきます。

 実行しない限り善は存在しません。一番肝心なことは動き出すことです。

日々の小さな選択がいかに人を死に追いやってるかを知り、行動を変えることで変化は広がっていきます。

1番肝心なことは動き出すことです。

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