本の概要
生物にとって、死は進化する上で必要なことであり、すべての生物に共通してみられるものが、死の前に訪れる老い生物に不可欠なものではなく、ヒト以外の生物ではほとんど老いは見られません。
老いには一見何のメリットもありませんが、生物の持つ特性はすべて進化の結果できたものであり、老いにも生物学的な意味やメリットが存在しているはずです。
ベストセラーでもある生物はなぜ死ぬのかの筆者によって、遺伝の仕組みやその意味からヒトだけが老いる理由はなんなのか、現在の高齢化社会で求められているシニアの役割などを知ることができる本になっています。
この本や記事で分かること
・ヒトが老いる理由
・高齢者の持つべき役割
・高齢化社会に適応した制度や仕組み作りに必要な考え方
老いについて書かれた本の要約はこちら
本の要約
生物にとって、死は進化する上で必要なことであり、すべての生物に共通してみられるものです。
しかし、死の前に訪れる老い生物に不可欠なものではなく、ヒト以外の生物ではほとんど老いは見られません。
老いには一見何のメリットもありませんが、生物の持つ特性はすべて進化の結果できたものであり、老いにも生物学的な意味やメリットが存在しています。
地球上のすべての生物は単一の祖先がおり、その単一の祖先はRNAやアミノ酸といった有機物から生まれています。
RNAは
・自己複製
・自己編集
・こわれやすい
という遺伝子に必要な特性をもっており、変化を生み出し、自己増殖可能なRNAが生命の種となり、進化のプログラムが動き出しした。
良い変化を保持しやすいDNAが生まれ、膜によって物質を囲い込むことで、細胞が生まれることとなりました。
老化とは細胞、個体レベルで回復できずに時間とともに衰えていくことを指します。動物では死ぬ直前まで通常通りの活動ができることが多く、人間のように老化することはあまりありません。
老化はDNAに傷がたまっていくことで、細胞が老化する→細胞が構成する組織や臓器の働きが悪くなる→個体全体が衰えるという過程をたどっていきます。
ヒトは体の大きさの割に例外的に寿命が長い動物であり、老化した状態で生きる唯一の陸上の哺乳動物です。老化した状態で生きる理由が以下のようなものがあります。
・これまで築いてきた社会によって、他の生き物に食べられたり飢え死にすることが少ない
・ヒトの赤ちゃんは手がかかるため、おばあちゃんの手を借りた方が有利
・年長者≒シニアの知識、技術、経験や集団をまとめる力が社会を安定化し、子供を増やした
これらの理由により、長寿につながる遺伝子を持った人が子孫を残しやすくなったため、長寿化が進んだものと考えられます。
太古の社会ではごく少数だったシニアは大幅に数を増やし現在の日本では、5人に1人を占めるようになっています。
シニア世代には次世代のことを考慮した行動が求められますが、次世代のために尽くすだけでなく、働ける限りは働くことも重要です。
知識と経験豊富なシニアが公共的な行動を行うことで、社会の基盤を支えるベース部分で重要な役割を担い、若者が活躍するクリエイティブ層を支えるという2層構造が理想的です。
シニアが元気に活躍できるように制度的な制約をなくし、老いをネガティブでなく変化と捉えて、精神的、肉体的にも老いずに生きることができれば素晴らしいことです。
死や老いは生物にとってどのようなものなのか
私たちは最初から死ぬべきものとして生まれてきます。死ぬことは進化するうえで必要であり、死ぬものだけが進化することができました。死ぬことは他者を生かすことにつながっています。
一方で、死の前に訪れる老いは生物に不可欠なものでなく、ヒト以外の生物ではほとんど見られません。
老いには一見して何のメリットもありません。しかし、生物が持つ特性はすべて進化の結果できたと考えられるため、ヒトに特有の老いにも生物学的な意味があるはずです。
死は他者を活かすために必要で、すべての生物にみられるものですが、老いはヒト以外の動物ではほとんど見られません。
生物が持つ特性はすべて進化の結果できたと考えられるため、ヒトに特有の老いにも生物学的な意味があります。
生物はどのように生まれ、進化してきたのか
現在地球上のすべての動植物は一つの共通の祖先に行き着くと考えられています。共通の祖先である最初の生命は、RNAやアミノ酸といった有機物から生まれています。
RNAは4つの塩基からなる遺伝物質、アミノ酸は生物の体を構成するタンパク質の原料となります。RNAには自身を複製して子孫に継承する自己複製能、塩基の長さや順序を変える自己編集能、壊れやすさという遺伝子に必要な3つの特性を持っています。
地球上の生命は、はじめ、RNAやアミノ酸といった有機物から生まれています。
RNAは
・自己複製
・自己編集
・こわれやすい
という遺伝子に必要な特性をもっていました。
生物はRNAを利用しどのように進化してきたのか
変化を生み出し、自己増殖可能なRNAが生命の種となり、進化のプログラムが動き出します。RNAは化学反応の触媒となることも多く、アミノ酸をつなげポリペプチドやタンパク質を生み出しました。
タンパク質はRNAの複製反応を助けたり、分解を促進し材料供給を増やすなどして互いに補完的に機能するようになっていきました。
RNAの一部が変化してできたDNAは触媒としての機能はRNAより劣る反面、現状維持能力に長けています。RNAは変化しやすく、せっかく獲得した特性を容易に失ってしまう可能性が高いため、DNAに情報をストックし、DNAを写し取ったRNAでタンパク質の合成を行うシステムを完成させました。
はじめはDNA、RNA、タンパク質が混ざった状態でしたが、膜によって物質を囲い込むようになっていきます。
膜は以下のような変化をもたらしました。
・材料の囲い込みによって効率化
・膜の外となかでの濃度勾配によるエネルギーの生産
・遺伝物質の隔離による良い変化の広がりやすくなる
ここまでくれば、多様化と分解を繰り返し、増えやすいものが増え、他は死んで壊れて材料になっていくことができるようになり、細胞へと進化していきました。
RNAは化学反応の触媒となることも多く、アミノ酸をつなげ、様々な機能を持つポリペプチドやタンパク質を生み出しました。
一方で、RNAは変化しやすいため、せっかく良い特性を獲得しても失ってしまいやすいため、より現状維持能力の高いDNAに遺伝情報を保存するようになりました。
これらの遺伝物質を膜で囲むようになり、細胞が誕生しました。
老化とは何か、なぜ起きるのか
老化とは細胞、個体レベルで回復できずに時間とともに衰えていくことを指します。
サケが川を上り、産卵、放精した後すぐに死んでしまうように、動物では死ぬ直前まで通常通りの活動ができることが多く、人間のように老化することはあまりありません。
老化は細胞が老化する→細胞が構成する組織や臓器の働きが悪くなる→個体全体が衰えるという過程をたどっていきます。
細胞の老化は、DNAに徐々に傷がたまっていくことで機能が低下することが原因と考えられています。細胞の劣化が新しい細胞を供給する幹細胞や細胞の入れ替わらない脳や心臓で起きることで、個体としての衰えが起きることとなります。
DNAに傷がたまっていくことで、細胞が老化する→細胞が構成する組織や臓器の働きが悪くなる→個体全体が衰えるという過程をたどることで老化が進んでいきます。
ヒトの老化にはどんな意味があるのか
体の大きさと寿命には相関がみられますが、ヒトは体の大きさの割に例外的に寿命が長い動物です。ヒトはほかの動物に比べ、DNAが壊れにくいため例外的に寿命が長くなっています。
多くの動物は機能が衰えれば、他の生き物に食べられたり、食べ物を取ることができないため、老化した状態で生きることはほとんどありません。
長い老後は陸上の哺乳類ではヒトでしか見られず、以下のようなヒトに特有な事情があって老後が生じています。
・これまで築いてきた社会によって、他の生き物に食べられたり飢え死にすることが少ない
・ヒトの赤ちゃんは手がかかるため、おばあちゃんの手を借りた方が有利
・年長者≒シニアの知識、技術、経験や集団をまとめる力が社会を安定化し、子供を増やした
これらの要因によって、長寿につながる遺伝子を持った人が子孫を残しやすくなり、長寿化が進んだものと考えられます。
ヒトは体の大きさの割に例外的に寿命が長い動物であり、老化した状態で生きる唯一の陸上の哺乳動物です。
・これまで築いてきた社会によって、他の生き物に食べられたり飢え死にすることが少ない
・ヒトの赤ちゃんは手がかかるため、おばあちゃんの手を借りた方が有利
・年長者≒シニアの知識、技術、経験や集団をまとめる力が社会を安定化し、子供を増やした
これらの理由により、長寿が子孫を残しやすくしたため、長寿化が進んだものと考えられます。
現在のシニア世代に求められているものはなにか
太古の社会ではごく少数だったシニアは大幅に数を増やし現在の日本では、5人に1人を占めるようになっています。
シニアが次世代が使用する環境を破壊し資源を枯渇させたり、変化を拒み古い価値観を押し付けることは避けなければなりません。
しかし、シニアが増えて、健康寿命が長くなった現代では、次世代のために尽くすだけではなく、労働力も減少しているため、働ける限りは働き、地位にしがみつくことも程度によっては望まれることです。
次世代の子供のためにも、知識と経験豊富なシニアが公共的な行動をすることで日本の未来は明るくなります。長寿化を牽引したおばあちゃん仮説の延長でもあり、今後の高齢化社会で望まれることです。
シニアが社会の基盤を支えるベース部分で重要な役割を担い、若者が活躍するクリエイティブ層を支えるという2層構造が理想的です。
シニア世代には次世代のことを考慮した行動が求められますが、次世代のために尽くすだけでなく、働ける限りは働くことも重要です。
知識と経験豊富なシニアが公共的な行動を行うことで、社会の基盤を支えるベース部分で重要な役割を担い、若者が活躍するクリエイティブ層を支えるという2層構造が理想的です。
老化とどのように向きあっていくべきか
現代のシニアは若者の気持ちを代弁したり、高齢者にかかる社会保険料を減らすことも求められています。
老化による病気を減らし、死ぬ時まで元気にいて、元気な余生を少しでも公共のことに使ってもらえれば良い方向につながります。
世界では、DNAの傷を防ぐ免疫の強化や細胞死を彦起こすことで老化細胞を除去するなどで、老化を防ぐ研究が進んでいます。
老化を防ぐだけが死ぬ間際まで元気で過ごす方法ではありません。ヒトは社会性の動物であり、社会の中で役割を担うことで活力を得ることも重要なことです。
教育現場など社会の中でシニアの活躍の場を造ることで、多くの子供たちの居場所を作りだすことにつながります。
シニアが元気に活躍できるように制度的な制約をなくし、老いをネガティブでなく変化と捉えて、精神的、肉体的にも老いずに生きることができれば素晴らしいことです。
ヒトは社会性の動物であり、社会の中で役割を担うことで活力を得ることで死ぬまで元気過ごす方法の一つです。
教育現場など社会の中でシニアの活躍の場を造ることで、多くの子供たちの居場所を作りだすことも活躍の一つです。
シニアが元気に活躍できるように制度的な制約をなくし、老いをネガティブでなく変化と捉えて、精神的、肉体的にも老いずに生きることができれば素晴らしいことです。
老いを受け入れることでどんな心理状態になるのか
老いることには何もいいことがないように見えますが、85歳を超える超高齢者の研究では、その心理状況に以下のような変化があります。
・欲が支配する世界から変化する
・他社に支えられている認識から感謝の念を抱く
・自己中心から他者を大切にする利他の姿勢
・肯定的な自己評価やポジティブな感情を持つ
これらの心理的な特徴は老年的超越と呼ばれ、あるがままを受け入れ、ただ楽しい気持ちでいられる死に近づいた人だけに与えられた特権のようなものです。
死んでいく当人のとっては死への恐怖心から解放される一つの方法であり、周囲の人も本人が安らかな気持ちで死ねたことが他方の励ましになります。
老年的超越をすべての人が目指すことは難しいですが、社会との絆を大事にし、公共の精神で人のためと思って生きていくことが理想的なことです。
老いることには何もいいことがないように見えますが、85歳を超える超高齢者の研究では、老年的超越と呼ばれるあるがままを受け入れ、ただ楽しい気持ちでいることのできる状態になることができるともいわれています。
老年的超越をすべての人が目指すことは難しいですが、社会との絆を大事にし、公共の精神で人のためと思って生きていくことが理想的なことです。
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