フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」になったのか 岩竹美加子 3分要約

3分要約

フィンランドはなぜ注目されているのか

 教育の質の高さ、ジェンダー平等、デジタル化、幸福度の高さなどのランキングで小国ながらランキング上位となったことで、注目を浴びている。

なぜ様々なランキングで上位になれたのか

 政府がウェルビーイングの向上を重視し、国家のための人ではなく、人のための国家を希求し続けている。

 ウェルビーイングとは身体、精神、経済的な快適さを重視することで国家が国民のウェルビーイング向上のために制度設計をおこなっている。

具体的にはどのような要因が効果的なのか

・労働者の権利保護、公助の手厚さ

・政府を中心としたデジタル化の推進による効率化

・教育の質の高さと貧富の差による不平等性の解消

・出産、子育て、女性の働きやすさの改善

・医療や介護は国家の義務と捉えている

などが挙げられる。変化への対応が早いのは政府が社会の動きに敏感なため。

 また政府自身も学び続けることを約束しており、より良い制度、仕組みを作ろうと常に考えている点が政府への信頼度と質の向上を導いている。

日本が学べる点は何か

 フィンランド政府も常に正しい選択ができるわけではないが、常に学び続ける姿勢があるため、失敗してもすぐに修正ができる。

 日本は変化を嫌い、制度に人を合わせようとする考えが強い。フィンランドも元々は保守的な国家だったが、1960年代以降大きく変化した。

 日本にはフィンランドにとってのキリスト教のような社会を貫く原則がないため難しい部分もあるが、ウェルビーイングに溢れた社会に代わっていくことは可能。

フィンランドはウェルビーイングを尊重し大きな注目を浴びている

フィンランドは人工約553万人が住む北欧の国。小国であるフィンランドが国際的な注目を集めているのはPISA(15歳以下の子供の学習到達度比較)で1位になったこと。

フィンランドの教育は無償で強い平等感を持ち,社会的な格差を減らすことが目的の一つで,その質の高さが評価される結果となった。

それ以外にもジェンダーギャップ指数,デジタル化,幸福度など多くの分野で注目を浴びている。これらを成し遂げたフィンランドの根底にあるのはウェルビーイングを尊重する精神。

ウェルビーイングは幅の広い概念で身体,精神,経済的な快適さを重視すること。国家のための人ではなく,人のための国家を希求することでウェルビーイングを実現している。

筆者のフィンランドでの生活経験から国の制度や歴史的な経緯,その背後にある考えかた、思想に触れていく。

労働者の権利が守られ、効率的に成果を出している

 労働者の権利が強く守られていることは、フィンランドの労働市場の特徴。労働条件が良いだけでなく、働く人に対するケアを重視している。

どんな仕事にも学位が存在し、その仕事に就くためにはが必要な学位を取得する必要がある。ただし学位を取得するための費用は無料であり、学位が誰でも学べる教育システムの一部になっている。

労働時間も短く、休暇も多い。ただし働きたくないわけではなく、労働を義務ととらえてはいないが、勤勉であることが高く評価されてきている。勤勉性=労働時間の長さという考えから効率化し成果を出すことに変わってきている。

政府が社会の動きに敏感で公助が当たり前

変化への対応を可能としているのは、政府が社会の動きに敏感なため。労働人口の高齢化、少子化、労働力不足、ジェンダー不平等など改善点があると改善を行なっている。

 政府も学び続けることを政策として約束しており、このようなスタンスが政府への信頼度の高さの要因になっている。

病気などで収入が減った際の補償なども手厚い。日本では生活保護バッシングなども多いが、フィンランドではさまざまな公助が用意されている。

デジタル化も政府が中心になって進めている

デジタル化でも高い評価を受けているが、政府の学び続ける姿勢からさらに野心的にデジタル化を進めようとしている。

デジタルIDによって個人を識別しさまざまなサービスに紐ついており、さまざまな情報を一元的に管理している。

日本では省庁によって管轄が異なる、戸籍や住民票など同じような目的で複数のシステムを使用していことも見られるがフィンランドではこのような例はほとんどない。

女性差別を無くそうという気持ちも強い

 フィンランドでは夫婦別姓が一般的。以前は同姓だったが、1980年頃から女性差別の撤廃のため法改正がなされた。

日本では依然として夫婦別姓に反対する人は政治家も多い。その理由も憲法や戸籍や家族の一体感がなくなるなどの理由。

テクニカルな面が挙げられることが多く、女性差別を撤廃しようという姿勢が見られない。

教育を重視しその質も非常に高い

教育の質も高く、学校は社会の理不尽に耐える場所ではなく、批判的でイノベーティブに考える場としての機能を持っている。

平等性を重視し、教育に関する費用は無料で貧富の差による教育格差を広げないための政策になっている。

 日本では生活保護世帯の大学進学が許されないなど社会的弱者は排除されても仕方ないという発想が国に制度になってしまっているが,フィンランドでは貧困を再生産しないために無料の教育を国の制度にしている。

 クラスの人数の少なさ,教師は生徒にあった学び方を教える役割を担う,ICT教育が導入,学び方のスキルを身につけることを重視するなどがフィンランドの学校の特徴。

 急速に変化する世界に対応するために,市民の教育レベルを上げる必要があると判断し,高校までを義務教育とするなど教育に大きな力を入れている。

 学力だけでなく,自己肯定感が強いなど教育の効果はさまざまな点で見ることができる.

出産や妊娠もつねに女性のためになるように変わっていく

 出産や妊娠については,金銭的な補助だけでなく女性の権利に配慮した形をとっている。

 避妊などの性教育の実施,中絶や避妊の方法の選択肢を多くすることで,女性の権利を守ることに力をおいており,アフターピルの薬局での販売に慎重で性教育の少ない日本とは大きな違いがある。

 出産も日本とは異なり,麻酔の使用が一般的。いまだに呼吸法で出産を行なっている日本はフィンランドの1960年代と同じレベル。

 母乳については粉ミルクの方が良いと思われた時期もあったが,今では見直されている。

 出産に限らず,常に正しい選択ができるわけではないが,対象となる人のことを考えて常に良い方向に変えていこうという考えが強いのが日本との大きな違い。

機会平等ではなく、結果平等を重視している

 子育てについても金銭的な補助、休暇の多さ、保育の充実などでやりやすいものになっている。

 日本は自治体による婚活などで少子化を解消しようとしているが、フィンランドは子育てをやりやすくすることで結果的に出生率を向上させることを目指している。

 女性の権利の向上にも積極的で不平等を解消してきた。平等への考え方は欧州連合と北欧で異なっている。

 欧州連合は差別の禁止などで機会平等を重視するが、北欧では結果平等を重視する。不利な条件にある人に多くを与え、なるべく結果を平等にすることで個人から責任を取り除くことを目的としている。

医療や介護は国家の義務と考えている

 医療や介護も充実しており、ウェルビーイングを重視しており、国民の健康を守ることは国家の義務という考えが強い。

 成人した子に親を扶養する義務はなく、介護も家族ではなく、社会が行うものという考えが広がっている。

介護離職が問題なる日本との違いが見える部分になっている。

幸福祉高税金ではあるが、自分らしく生きやすい社会

 北欧は幸福思高税金とよく言われる。実際に所得税は24%と高くいが、所得税は累進課税でセーフティーネットを使ってお金がなくてもそこそこ暮らしていける国。

 貯蓄するという考えも希薄で、使ってしまう。住居や保育,教育,労働,休暇,医療など生活全体のクオリティが高く,自分自身の時間を生き,自分らしく生きていける社会になっている。

 政治参加の積極性も高く,政治の透明性も高い。1900年代前半は保守的な国家だったが60年代以降大きく変化した。変化をもたらした原動力の一つにキリスト教の影響があったことは確かで,日本の議論が進まないのも社会を貫く原則がないからかもしれない。

 それでも多くの人が生きやすいウェルビーイングに溢れた社会に変わっていってほしい。

 

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