商業的に成功を収める=ヒットに規則性があるのかに迫る
飛びぬけた人気を獲得し、商業的に成功を収める物にはどのようなルールがあるのか。人が何かを好きになる心理、アイディアが広まる社会的ネットワーク、カルチャー市場の経済学などから「ヒット」がどのように生まれたのかに迫っていく。
・人々が好むものを作る秘訣はなにか?
・同じアイディアなのになぜ、大当たりするものとそうでないものがあるのか?
この二つが本書の疑問の核となっている。
この二つに答えるためなぜ、コンテンツを好きになるのか?そしてそのコンテンツが多くの人々にどのように広がるのか?を考えている。
人は多くみたものを好むため、なじみ感はヒットに欠かせない
人が何かを好むときに、その内容よりも多くみたものを好む傾向がある。先祖の時代は危険も多く、見たことがある=以前自分を殺さなかったものとして認識するためともいわれている。
そのため、多く露出することがヒットするための条件となる。なじみのあるものは脳での認識が容易で、脳への負担も小さいため、脳はそのような流暢性を持つものを好む。
人はなじみ感の中にわずかな驚きがあるものを特に好む
Most Advanced Yet Acceptable(先進的でありながら、受け入れ可能なもの)はヒットするコンテンツに欠かせない。
人間はなじみ勘を感じる心地よさを好むが、驚きを与えられたい気持ちもあり、その二つがせめぎあっている。
なじみ感の中にわずかな驚きがある状態はアハ効果と呼ばれ、最も人々に好まれるコンテンツとなる。
研究テーマ、TV番組、ニュース、音楽など多くのもので、なじみ感が強すぎるものは飽きられてしまい、驚きが強すぎるものは受け入れられない。
ヒットする音楽やスピーチは繰り返しが重要
音楽で人を引き付けるには繰り返しの力が必要なため、曲のさびで同じメロディが繰り返され、サビ自体も複数回繰り返される。
一方で繰り返しに慣れてしまうと(馴化)、飽きてしまう。馴化を避けるためには基本メロディ・基本メロディー・サビ・基本メロディ・サビ・別のメロディという構造が有効で、多くのヒット曲でこのような構造が見られる。
繰り返しが有効なのは音楽だけではない。スピーチでも繰り返しを用いた多くの技法がある。
テーマを繰り返すものや、リンカーンの人民の人民による人民のための政治などのように繰り返しを使ったスピーチは人々の心に残りやすい。
物語でもなじみ感と驚きのバランスがヒットに重要
多くの人に長く愛される物語は
・人を鼓舞する
・感情移入できる
・サスペンス
の3つの要素を持っている。
さらに、基本的なストーリになじみ感があり、少しの驚きがあるものがヒットにつながる。
ハリウッドでは当たっているジャンルの要素を25個考えて、そのうち一つだけを逆転させることで新しい映画を作ることもある。
スターウォーズも宇宙の西部劇と呼ばれるように様々なジャンルの組み合わせでできている。
物語は大きな力を持つため、多くの人の心に残り、それが悪影響になることもある。
映画でセリフのある女性は30%ほどしか登場せず、そのタイプも可憐な恋人、口うるさい母親
などに限られている。
これらの事実が女性差別の一因になっている可能性も有る。また、観客もステレオタイプ
な男女像を好むようになり、男女問わずステレオタイプから外れた人物を好まない傾向にある。
子供の名前はヒットの原因を探りやすい 適度に個性的な名前を選択したいため人気の変動が起きる
コンテンツのヒットは、選択肢、経済的状況、マーケティングの威力を常に受けるため
ヒットの原因を 絞ることは困難。これら3つの影響が小さいのは子供につける名前になる。
名前は状況による選択肢の変化や経済的状況の影響を受けないが、その人気は他のコンテンツ同様変化をする。
人は人気度の好みを持っており、項目ごとにどのくらいの人気度を好むかがことなる。人気が高く流行しているものが良い分野とそうでない分野が混在することがおおい。
名前の場合、多くの人は中程度の人気度の好みを持っており、適度に個性的な名前を選択したい気持ちがある。そのため人気のありすぎる名前は徐々に人気がなくなってき、人気の変動が起きる。
偶然性
ロック・アラウンド・ザ・クロックは非常に人気のあるロックンロールだが、そのヒットは偶然性が高かった。
はじめに発表したときにはヒットしなかったが、たまたま買った少年の親が映画の撮影に関わっており、少年が渡したレコードの中にロック・アラウンド・ザ・クロックが含まれていた。
映画そのものもそこまで大きくヒットしたわけではないが、映画に使用されたことでロック・アラウンド・ザ・クロックは大ヒットとなった。
何かがヒットすると成功したものが持つ特徴はなにかを考え、その特徴が特別なものと考えがちになるが実際には偶然に左右されることがほとんどといってよい。
バイラルな拡散でヒットが生まれることは少ない
バイラルとはウイルス性を意味する疫学で使用される用語。一人の罹患者が2人以上にうつすことで病気が指数関数的に広がることを意味する。
ヒットコンテンツもバイラルに広がったという表現をされることがよくあるが、実際にはほとんどのコンテンツは、一つの情報源から多くの人に広がるブロードキャスト拡散をしている。
SNSの普及などで口コミが拡がりヒットするイメージもあるが、大流行を起こすにはインフルエンサーやメディアによる1:100万の拡がりが必須になっている。
人々は商品と一緒に人気を買っている
ランキングはヒットの増強剤で、ランキングを加えるとヒットしたものはさらにヒットする。さらに嘘でもランキングで下位のものを上位にするとヒットするようになる。
人々は商品が優れているからではなく、人気を一緒に買っている。
強いネットワーク内でシェアされることがヒットにつながる
人は何かに影響されるだけでなく、自己顕示を示すためにものを買うこともある。自分が買ったものをシェアすることで、他人に自分の買ったものを見てほしいという願望を
かなえている。
人間は同質性の高いグループに属したがる傾向にある。その人の属するネットワークはその人に似ていき、ヒトも属するネットワークに似ていくようになる。
同質性の高い、強い結びつきを持つネットワークでシェアされるとヒットにつながりやすい。
ヒットは偶然性が高く予測は困難
iPhoneは発表当初ヒットしないと思われていたし、ハリーポッターは数社の出版社から出版を断られている。
その業界に詳しくてもヒットは本質的に偶然性が高く、消費者自身もなにが欲しいかを完全に理解しるわけではないたま、予測することは難しい。
インターネットの登場によってコンテンツの選択肢と個人に発信力が増加した。
メディアは新聞→ラジオ→TV→インタネットと変化してきた。
インターネットでは読者が読みたいものと読んでいるものの差が明らかになった。きちんとしたニュースを読みたいと語っていても、簡単なニュースしか読んでいないことが多い。
インターネットによってコンテンツの選択肢が膨大に増えたことで注目を集めることの重要性はより増している。
ただし、テクノロジーの変化は人間の変化より早いため、新しい技術が古い技術をすべて
置き換えるわけでもない。
ヒットはある意味を持った表現が1つのネットワークから別のネットワークに伝わることで起きる。これはインターネットの普及でも変わらない。インターネットによって変わったのは個人が発信する力が増加したこと。
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