化学.17-6 イオン濃淡電池

この本や記事で分かること

・イオン濃淡電池とは何か

・生体内の情報伝達でイオン濃淡電池はどのように利用されているのか

イオン濃淡電池とは何か

 電池は化学反応によるエネルギーを電気エネルギーに変換することで電気を起こしています。

 イオン濃淡電池は化学反応を伴わずに、溶液の濃淡の差を利用して電気を起こすことのできる電池です。水溶液としては、硝酸銀(AgNo3)などが利用されています。

 イオン濃淡電池は素焼き板のようなイオンを通すことができる板で仕切られた構造をもっています。 

 それぞれの容器には、どちらも硝酸銀の水溶液が入っており、片方には濃厚水溶液がもう片方には、希薄水溶液が入っています。

 電極には両方の容器とも銀板が用いられています。

イオン濃淡電池はどのように電流を起こしているのか

 硝酸銀水溶液に銀電極を挿入すると銀の溶解反応が発生します。

 銀の溶解はどちらの容器でも発生しますが、濃厚水溶液の容器はすでに溶液の濃度が濃いため、あまり溶解が進まず、希薄溶液では溶解が良く進みます。

 Ag → Ag+ + e

 銀の溶解が進行しやすい希薄溶液では、電子が豊富に存在することとなります。この電子は導線を通じて、濃厚溶液の側に移動し、電流が流れることとなります。

 電子を放出する希薄溶液側の銀電極が負極、電子を受け取る濃厚溶液側が正極となります。

イオン濃淡電池を使い続けるとどうなるのか

 反応が進行すると、希薄溶液では、銀イオンが徐々に増加していきます。

 すると希薄溶液側では、対イオンである硝酸イオン(NO3)が不足することとなります。

 そこで、濃厚溶液側の硝酸イオンが素焼き板を通過して、希薄溶液側に移動していきます。

 反応が進むにつれ、希薄溶液と濃厚溶液の濃度差は徐々に少なくなっていき、濃度差がなくなった時点で電子とイオンの移動が停止し、電流が停止してしまいます。

イオン濃淡電池は生体内でどのように利用されているのか

 イオン濃淡電池は、生体内の情報伝達で重要な役割を果たしています。

 生体内では、神経細胞を通じて、情報伝達が行われています。神経細胞は核を持つ細胞体とそこから伸びている軸索で構成されています。

 神経細胞の末端には樹状突起と呼ばれる部位があり、軸索は隣の神経細胞の樹状突起に情報を伝達しており、この連なりによって、神経細胞は生体内全体で無数のつながりを形成し、情報の伝達を行っています。

イオン濃淡電池はどのように情報伝達を行っているのか

 細胞体の受け取った情報を軸索で伝達する際に、イオン濃淡電池が利用されています。

 軸索には、カリウムイオンチャネルとナトリウムイオンチャネルという2種類の穴が無数に空いています。

 情報を受け取とった軸索内では、カリウムイオンチャネルではカリウムイオンが内部から外部に放出され、ナトリウムイオンチャネルではナトリウムイオンが軸索の中に移動します。

 軸索の内外でカリウムとナトリウムの濃度差が発生すると電位の変化が起き、情報を伝えることが可能になります。

 情報が通過した後は、ナトリウムイオンとカリウムイオンが入れ変わることで元に戻っています。生体内ではカリウムイオンとナトリウムによるイオン濃淡電池で情報の伝達が行われています。

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