化学.36 アルケンへのカルベン付加

この本や記事で分かること

・カルベンとは何か

・アルケンとカルベンの反応とその機構

・ハロゲンを含まないシクロプロパン環の合成方法

カルベンとは何か

 カルベンとは、R2C:という構造をもち、炭素が6個しか価電子を持っていない中性の化合物です。価電子数が6個しかないため、反応性が高く、単離できず反応中間体としてか発生することはありません。

 カルベンを価電子がオクテット側よりも少ないため、電子欠乏基であり、アルケンの電子豊富な二重結合と付加反応を起こします。

 カルベンとアルケンが反応させると、シクロプロパンを生成することが可能です。

カルベンはどのように生成されるのか

 カルベンを作り出す方法としては、クロロホルム(CHCl3)を強塩基で処理する方法があります。

 水酸化カリウム(KOH)とクロロホルムを反応させると、OHがクロロホルムの水素を引きぬきます。C-H結合の電子は炭素上に残りトリクロロメタニドアニオン(Cl3C:)が生成します。

 トリクロロメタニドアニオンから塩化物イオン(Cl)が遊離することで、C-Cl結合の電子が失われ中世の字クロロカルベンが生成します。

カルベンの構造からアルケンとはどのように反応すると考えられるのか

 ジクロロカルベンの炭素は2つの塩素との結合と非共有電子対をもっており、炭素と二つの塩素は同一平面上に存在しています。

 その同一平面から上下に空のp軌道が伸びた構造をしており、その構造はカルボカチオンと類似しています。 

 ジクロロカルベンとアルケンの反応は、電子豊富なアルケンの二重結合がカルベンの空のp軌道を攻撃し、結合を生成することで、シクロプロパン環を形成します。

アルケンとカルベンの反応で立体配置は変化するのか

 置換基を持ち、立体異性体を持つアルケンとジクロロカルベンの反応では、生成物は元のアルケンの立体配置を維持したシクロプロパン環を持つ化合物が生成されます。

 シス-2-ブテンとジクロロカルベンが反応する際には、シス型のシクロプロパンのみが生成します。

 元のアルケンがシス体であれば、シス二置換シクロプロパンがトランスであれば、トランス二置換シクロプロパンのみが生成することとなります。

ハロゲンを含まないシクロプロパン環を生成するにはどうすれば良いのか

 カルベンのアルケンへの付加によってシクプロパンを形成することができますが、シクロプロパン間には必ずカルベンに由来したハロゲンが結合しています。

 ハロゲンを含まないシクロプロパンを合成する方法としては、カルベノイドを利用する方法があります。

 カルベノイドとは、ジヨードメタン(CH2I2)と塩化亜鉛銅合金(Zn(Cu))の反応生成物であるヨウ化(ヨードメチル)亜鉛(ICH2ZnI)のことで、アルケンが存在すると、カルベノイドのCH2基が二重結合部に移動し、シクロプロパン環を形成することができます。

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