この記事で分かること
MODEの特徴
元Googleエンジニアがシリコンバレーで創業したIoT・AI企業です。現場データを統合・構造化するプラットフォーム「BizStack」を提供し、生成AIを活用することで、建設や製造現場のDXを迅速に支援しています。
BizStackのデータ統合手法
多様なセンサーや既存システムの異なる規格を、専用ゲートウェイやAPIで接続します。収集したデータを共通形式に整える「構造化」を行い、クラウド上で一元管理することで、AIが分析・回答可能な状態へ統合します。
現場で収集するデータ
建設は作業員のバイタルや位置情報で安全を、製造は設備の振動や温度で故障予兆や稼働状況を、物流はRFIDや温湿度で在庫の動きや輸送品質を計測します。これらをカメラ画像と共に収集し、現場を可視化します。
ソフトバンクが提携する理由
通信・生成AIとMODEの現場データ統合技術を掛け合わせ、実世界でAIが判断・支援する「フィジカルAI」を早期実現するためです。国内の安全なクラウド環境で現場DXを加速させ、法人顧客の拡大を狙います。
ソフトバンクとMODE, Incの提携
ソフトバンクは4月28日、シリコンバレー発のIoTスタートアップであるMODE, Inc.(以下、MODE)との資本・業務提携を発表しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC283IJ0Y6A420C2000000/
この提携は、建設や製造といった「現場」に眠る膨大なデータを、生成AIとIoTを組み合わせて活用することで、意思決定の高度化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させることを目的としています。
MODE,Incはどんな企業か
MODE, Inc.は、GoogleやTwitterの元エンジニアがシリコンバレーで創業した、「現場(アナログ)×IoT×AI」を専門とするテクノロジー企業です。
工事現場や工場などの物理的な場所を、インターネットの世界(デジタル)のようにデータで見える化し、AIで自動化することを得意としています。
1. 創業者と背景
経営陣が非常に強力な技術バックグラウンドを持っています。
- CEO 上田 学 氏: 元Google、Twitterのエンジニアリングディレクター。Googleマップの日本版立ち上げをリードした人物です。
- CTO イーサン・カン 氏: Yahoo! Groupsのテックリードなどを歴任。
- 創業: 2014年、米国カリフォルニア州サンマテオ。
2. 主力製品:BizStack(ビズスタック)
同社の核となる製品で、「AI-driven IoTプラットフォーム」です。
- データの統合: 建設現場や工場のセンサー、カメラ、車両のGPS、作業員のウェアラブルデバイスなど、バラバラだったデータを1つにまとめます。
- AIによる対話: 最近では生成AIを統合しており、現場の状況をAIに聞くと「今のクレーンの稼働率は?」「昨日の作業報告をまとめて」といった質問に自然言語で答えてくれる機能を提供しています。
3. MODEの強みと特徴
- 「現場」へのこだわり: デスクワークのDXではなく、建設・製造・物流といった「泥臭い現場」にセンサーを設置し、リアルなデータを吸い上げることに特化しています。
- 日米のハイブリッド: シリコンバレーの最新技術(AI)と、日本のものづくり現場のニーズを組み合わせるグローバルな体制。
- 高速な実装: 従来は何ヶ月もかかったIoTシステムの導入を、汎用的なプラットフォーム(BizStack)を使うことで短期間で実現します。

元Googleエンジニアがシリコンバレーで創業したIoT・AIスタートアップです。現場データを統合・構造化するプラットフォーム「BizStack」を提供し、生成AIを活用して建設や製造現場のDXを支援しています。
BizStackはどのようにしてデータを統合するのか
MODEのプラットフォーム「BizStack」がデータを統合する仕組みは、主に以下の3つのステップで構成されています。
1. 多様なゲートウェイによる接続
現場にはメーカーや規格が異なる古い機械、最新のセンサー、GPS端末などが混在していますが、BizStackはこれらを「つなぐ」ための入り口を幅広く備えています。
- ハードウェアを問わない接続: 専用のゲートウェイ(通信機器)やエージェントソフトを介して、Bluetooth、Wi-Fi、LPWA、有線LANなど、あらゆる通信規格のデータを取り込みます。
- 既存システムとの連携: 現場のセンサーだけでなく、既に導入されている業務システムやデータベースともAPIを通じて連携可能です。
2. データの構造化(正規化)
そのままの状態ではバラバラな形式(数値、テキスト、ログなど)のデータを、クラウド上で解析しやすい形に整えます。
- プロトコル変換: 各種センサー特有の言語をBizStack共通のデータ形式に変換します。
- コンテキスト付与: 単なる数値に「どの現場の」「どの重機の」「どの項目の」データであるかという属性情報(メタデータ)を紐付け、意味のあるデータへと変換します。
3. クラウドでの一元管理
構造化されたデータは、BizStackの時系列データベースに蓄積されます。
- リアルタイム処理: 送られてきたデータは即座に処理され、ダッシュボードへの表示や、異常検知時のアラート通知に活用されます。
- AIへの橋渡し: 統合されたデータは生成AIが読み取れる形になっているため、「現在の作業進捗を教えて」といった問いに対して、AIが全てのデータを横断的に参照して回答できるようになります。
このように、「入り口の広さ(接続性)」と「データの整理整頓(構造化)」を自動化することで、専門知識がなくても現場のデジタル化を実現できるのがBizStackの特徴です。

多様なセンサーや既存システムの異なる規格を、専用のゲートウェイやAPIで接続します。収集したデータを共通形式に整える「構造化」を行い、クラウド上で一元管理することで、AIが分析・回答可能な状態へ統合します。
建設・製造・物流ではどんなデータをセンサーで収集するのか
建設・製造・物流の各現場では、業務効率化や安全管理のために、多種多様なセンサーから以下のようなデータを収集しています。
1. 建設現場
「安全管理」と「進捗管理」を主眼にデータを収集します。
- 作業員のバイタル: スマートウォッチ等で心拍数や体温を計測し、熱中症の兆候を検知。
- 位置情報(GNSS/ビーコン): 重機や作業員の現在地を把握し、接触事故を防止。
- 環境データ: 気温、湿度、騒音、振動、風速などを計測し、周辺環境への配慮や作業可否を判断。
- 建材の傾き・歪み: 構造物に取り付けた傾斜センサーで、施工ミスや地盤沈下を監視。
2. 製造現場(工場)
「稼働率の向上」と「予防保全(故障予兆)」が中心です。
- 稼働・停止信号: 設備の通電状態を監視し、正確な稼働率を算出。
- モーターの振動・異音: 振動センサー(加速度計)で、機械が故障する前の微細な変化をキャッチ。
- 温度・圧力: 炉やボイラーなどの動作状況をモニタリングし、製品品質を一定に保持。
- 画像データ: カメラによる外観検査で、製品の傷や異物の混入をAIが自動判別。
3. 物流現場(倉庫・輸送)
「在庫の動き」と「輸送品質」の可視化を行います。
- 荷動き(RFID): タグを読み取り、いつ・どこに・何があるかをリアルタイムで把握。
- 温湿度(ロガー): 冷蔵・冷凍食品や医薬品の輸送中に適切な温度が保たれているかを記録。
- 衝撃・加速度: 輸送中に荷物が落下したり、乱暴に扱われたりしていないかを監視。
- トラックの挙動: 急ブレーキや急旋回などの運転特性を収集し、安全運転指導に活用。
これらのデータが「BizStack」のようなプラットフォームに集約されることで、これまで人間が巡回して確認していた状況が、PCやスマホから一目で把握できるようになります。

建設は作業員のバイタルや位置情報で安全を、製造は設備の振動や温度で故障予兆や稼働状況を、物流はRFIDや温湿度で在庫の動きや輸送品質を計測します。これらをカメラ画像と共に収集し、現場の可視化を図ります。
なぜソフトバンクが提携するのか
ソフトバンクがMODEと提携した主な理由は、「AIを画面の中(デジタル)だけでなく、現実の現場(フィジカル)で動かす」という戦略を加速させるためです。
1. 「フィジカルAI」の実現
ソフトバンクは2026年を「フィジカルAI(実世界で活動するAI)」の社会実装の年と位置づけています。
- 課題: 生成AIは得意でも、工事現場や工場の「生のデータ」をリアルタイムでAIに読み込ませる仕組みが不足していました。
- 解決: MODEの「BizStack」は、現場のセンサーデータをAIが理解できる形に整理(構造化)するのが得意です。この技術を取り込むことで、AIが現場の状況を把握して指示を出す仕組みが完成します。
2. 「ラストワンマイル」の確保
通信網やクラウド(インフラ)を持っていても、現場にセンサーを置いてデータを吸い上げる作業は非常に手間がかかります。
- MODEはシリコンバレー流の高速な実装力と、日本の現場に特化したノウハウを持っています。ソフトバンクにとって、自社のAIを現場に届けるための「最後の接点」としてMODEが最適でした。
3. 国内データ主権(ソブリンAI)の強化
- 現場の機密データを海外クラウドに送ることを嫌う企業は多いです。
- 今回の提携では、MODEの技術をソフトバンク自前のセキュアな国内クラウド上で動かすことで、建設や製造といった重要インフラ企業の需要を囲い込む狙いがあります。

ソフトバンクの通信・生成AIと、MODEの現場データ統合技術を掛け合わせ、実世界でAIが判断・支援する「フィジカルAI」を早期実現するためです。国内の安全なクラウド環境で現場DXを加速させ、法人顧客の獲得を狙います。

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