化学.42 5大エンジニアリングプラスチック

この本や記事で分かること

・エンジニアリングプラスチックと汎用プラスチックの違い

・5大エンジニアリングプラスチックとその特徴

汎用プラスチックとは何か

 ポリエチレンは、耐薬品性、防水性、絶縁特性が高いという特徴から、様々な物質の保管に利用されています。灯油や洗剤、消毒液など様々な物質の保管容器として使用されています。

 ポリプロピレンも比重の軽さや加工のしやすさ、高い強度を持ち、透明度が高いなどの特徴から各種の透明容器など幅広く利用されています。

 ポリエチレンやポリプロピレンは大量に生産、消費されています。ポリ塩化ビニルやポリスチレンなどと合わせ、使用量、製造量の多いプラスチックは汎用プラスチックと呼ばれ、プラスチック製造の大半を占めています。

エンジニアリングプラスチックとは何か

 大量には製造されないものの、特に耐熱性や機械特性に優れたプラスチックはエンジニアリングプラスチックと呼ばれています。

 エンジニアリングプラスチックの中でも生産量の多いプラスチックは「5大エンジニアリングプラスチック」と呼ばれています。

 5大エンジニアリングプラスチックには以下のようなプラスチックがあります。

・ポリカーボネート(PC)

・ナイロン6、ポリアミド(PA6)

・ポリアセタール(POM)

・ポリブチレンテレフタレート(PBT)

・変性ポリフェニレンエーテル

ポリカーボネートとは何か

 ポリカーボネート(PC)はビスフェノールAと塩化カルボニルやジフェニルカーボネートを重合させることで生成することができます。

 カーボネート基(-O-(C=O)-O-)を有しているため、ポリカーボネートと呼ばれます。

 高温だけでなく、プラスチックの中でも特に衝撃に強いという特徴をもっています。また、透明性にも優れていることから航空機の窓や軍用機のコクピットにも使用されています。

 一方で、耐薬品性が低く、一部の有機溶剤やアルカリに弱い、 表面に傷がつきやすいなどの欠点もあります。

ナイロン6とは何か

 ナイロン6は環状化合物であるカプロラクタムの重合によって、生成します。環が開環することで重合が進行するため、開環重合と呼ばれます。

 ナイロン6は、その優れた弾性、強度、耐摩耗性、染色性から、衣料品、カーペット、漁網、ロープなど、幅広い繊維製品に使用されています。

 繊維だけでなく、自動車部品、電気・電子部品、機械部品など、高い強度や耐熱性が求められる工業製品にも広く使用されています。

ポリアセタールとは何か

 ポリアセタール(POM)はホルムアルデヒドが重合したホモポリマーやホルムアルデヒドとオキシエチレン(oxyethylene, −CH2CH2O−)をわずかに含むコポリマーがあります。

 コポリマーは 1,3,5-トリオキサンとエチレンオキシドなどの重合物から得られます。

 ポリアセタールも強度、耐熱性、有機溶剤に対する耐薬品性などにも優れていますが、特に耐摩耗性、低い摩擦係数を持つという点も特徴的です。

 その特性からギア、カム、ベアリング、シフトレバーなど、動作する機械部品や摩耗の多い部品に使用されています。

 一方で、分子構造からポリアセタールは強酸(塩酸、硫酸など)や強アルカリに対しては分解や劣化が起こりやすいです。

ポリブチレンテレフタレートとは何か

 ポリブチレンテレフタレート(PBT)は機械的性質や耐熱性、電気的性質に優れているほか、成形もしやすいことから特に電気部品や自動車部品での使用が多くなっています。

 PBTはテレフタル酸と,1,4-ブタンジオールとの重合で生成します。重合は水を副生物とする重縮合によって進行します。

 PBTは比較的、分子構造の規則性、柔軟性が高い、結晶性の高い構造を持っており、優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性、電気特性の要因になっています。

変形ポリフェニレンエーテルとは何か

 変形ポリフェニレンエーテルはポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂と他の樹脂を混合したポリマーアロイの総称です。

 ポリマーアロイとは複数の種類のポリマーを混合し、それぞれのポリマーが持つ特性を組み合わせることで、新しい特性を持つ材料を作り出す技術、またはそのようにして作られた材料のことを指します。

 PPEは2,6-キシレノールの重合によって、生成されます。PPEは粘度が高い、融解温度が高いなどの点で加工性に劣るため、ポリスチレンやポリアミンとポリマーアロイを形成し、加工性を向上させています。

 電気絶縁性、耐熱性、難燃性を兼ね備えているため、コネクタ、スイッチ、基板などの電気・電子部品に広く使用されています。

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