ニッケの自動車向け不織布原反のアメリカでの販売 不織布減反とは何か?、なぜ自動車で必要な素材なのか?

この記事で分かること

不織布減反とは:不織布メーカーが製造ラインで生産した、まだ裁断や最終加工が施されていない、大きなロール状の不織布製品じのことです。

自動車で必要な素材である理由:「軽量化」「快適性」「安全性」「コスト削減」「環境性能」といった主要な開発目標に直接貢献な素材であるため、自動車製造において不可欠となっています。

ニッケの自動車向け不織布原反のアメリカでの販売

 日本毛織(ニッケ)は、自動車向け不織布を製造・販売しており、その海外展開、特に米国市場への販売にも力を入れています。

 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00749971

 今回、アメリカ向けに不織布原反の販売を始めることがニュースになっています。

不織布原反とは何か

 「不織布原反(ふしょくふげんたん)」とは、加工前の不織布をロール状に巻いた状態のものを指します。

1. 不織布とは?

 不織布(Non-woven fabric)は、「織らない布」と書くように、繊維を織ったり編んだりせずにシート状にしたものです。

 一般的な布(織物や編物)は、糸を規則的に交差させたりループさせたりして作られますが、不織布は、繊維を物理的、化学的、または熱的な方法で結合させて作られます。

 主な製造方法には、以下のようなものがあります。

  • スパンボンド法: 樹脂を溶かして直接繊維にし、それをシート状にして熱で結合させる。強度が高い。
  • スパンレース法(水流交絡法): 繊維に高圧の水流を当てて繊維同士を絡み合わせる。柔らかく、ドレープ性がある。
  • ニードルパンチ法: 針で繊維を突き刺して機械的に絡み合わせる。厚みがあり、強度がある。
  • メルトブローン法: 溶融した樹脂を高速の熱風で吹き付けて超極細繊維にし、それをシート状にする。フィルター性能が高い。
  • ケミカルボンド法: 接着剤(バインダー)を用いて繊維を結合させる。

 不織布の原料には、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成繊維や、綿(コットン)、レーヨン、パルプなどの天然繊維・再生繊維など、様々なものが用いられます。

2. 原反とは?

 「原反」とは、加工する前の紙、生地、フィルムなどの薄くて長い素材を、通常はロール状に巻いた状態を指す業界用語です。

 例えば、印刷会社であれば印刷する前の大きなロール紙が原反ですし、アパレル業界であれば服を作る前の大きな反物の生地が原反にあたります。

不織布原反とは、不織布メーカーが製造ラインで生産した、まだ裁断や最終加工が施されていない、大きなロール状の不織布製品じのことです。

原反を、自動車部品メーカーや医療品メーカー、衛生用品メーカーなどが購入し、それぞれの用途に合わせて裁断したり、さらに加工を施したりして、最終製品としています。

不織布は車ではどのように利用されるのか

 不織布は、その多様な特性(軽量性、吸音性、断熱性、フィルター性能、加工性、コスト効率など)から、以下のように自動車の様々な箇所で幅広く利用されています。

1. 内装材

  • カーペット・フロアマット基布: 車内の床に敷かれるカーペットやフロアマットの基材として使われます。耐久性、耐摩耗性が求められます。
  • 天井材: 車両の天井の内張りに使用され、吸音性や断熱性、デザイン性が重視されます。
  • ドアトリム・ピラー・サンバイザー: ドアの内張りや窓枠を覆うピラー、日よけのサンバイザーなどの表面材や補強材、吸音材として使用されます。
  • シート材: シートの表皮材や、内部のウレタンフォームと骨格の間の緩衝材、補強材として使用され、異音防止や座り心地の向上に貢献します。
  • トランク・ラゲージルーム材: トランクや荷室の裏地、デッキボードなどに使用され、防音性や耐久性、見た目の向上に役立ちます。
  • コンソール・ベンチレーター・ドリンクホルダーなどの裏側: プラスチック部品同士が接触する部分に貼り付けられ、走行時の振動によるビビリ音や軋み音を抑え、静かな車内空間を作ります。

2. 吸音・遮音・断熱材

  • 吸音材・遮音材: エンジンルーム、車体フロア、ドア内部、トランクなど、様々な箇所に配置され、ロードノイズやエンジン音、風切り音などを吸収・遮断し、車内の静粛性を高めます。
  • 断熱材: 夏場の熱や冬場の冷気を遮断し、車内の温度を快適に保つために利用されます。

3. フィルター類

  • エアフィルター(エンジン用): エンジンに吸入される空気に含まれるホコリや微粒子を除去し、エンジンの性能維持と寿命延長に貢献します。
  • キャビンフィルター(エアコンフィルター): 車内の空気を浄化し、花粉、PM2.5、排ガス中の粒子などを除去することで、乗員の快適性や健康を守ります。
  • オイルフィルター・燃料フィルター: エンジンオイルや燃料中の不純物を取り除き、エンジンの保護に役立ちます。

4. 緩衝材・補強材

  • 部品間の緩衝材: 各種部品(金属、プラスチックなど)の接触部に挟まれ、振動による異音の発生を防ぎ、部品の摩耗を抑えます。
  • 補強材: 樹脂部品や他の素材の裏打ちとして、強度や形状安定性を向上させるために使用されます。
  • ブレーキ用摩擦材: 金属繊維や樹脂などと混ぜ合わせて、ブレーキパッドの材料の一部としても使用されることがあります。

5. 外装・その他

  • フェンダーライナー・アンダーカバー: ホイールハウスの内側や車体下部を覆うカバーとして、泥や水、飛び石などから車体を保護し、防音性にも寄与します。
  • 配線・ハーネスの保護材: 電線などを束ねたり保護したりするためのテープやスリーブとして使用されます。
  • 自動車カバー: 車を屋外に保管する際に、埃、汚れ、傷、紫外線、酸性雨などからボディを保護するために不織布製のカバーが利用されます。

不織布は自動車の軽量化、静粛性向上、快適性向上、安全性向上、環境性能向上など、多岐にわたる面で重要な役割を担っています。

車用途での不織布のメリット何か

 不織布を自動車用途で利用する際の具体的なメリットは、不織布全般のメリットに加え、自動車特有の要件と結びつくことでより明確になります。

1. 軽量化への貢献

  • 燃費向上・CO2排出量削減: 不織布は同じ体積の金属や多くのプラスチック材料に比べて非常に軽量です。自動車の軽量化は、燃費の向上やCO2排出量の削減に直結し、環境規制が厳しくなる現代において非常に重要な要素です。
  • EV(電気自動車)の航続距離延長: EVではバッテリー重量が大きいため、他の部分での軽量化が航続距離の延長に大きく貢献します。不織布は、内装部品や吸音材など、様々な箇所で軽量化を実現します。

2. 静粛性の向上

  • 優れた吸音・遮音性能: 不織布は、繊維がランダムに絡み合った多孔質構造をしており、音のエネルギーを吸収・拡散する能力に優れています。これにより、エンジン音、ロードノイズ、風切り音などの車外からの音や、車内の振動によるビビリ音などを効果的に低減し、静かで快適な車内空間を実現します。
  • 振動吸収: 部品間の緩衝材として使用することで、走行時の振動による異音の発生を防ぎます。

3. 快適性の向上

  • 断熱性能: 繊維間に空気を含むため、優れた断熱材として機能します。これにより、夏場の車外からの熱や冬場の冷気を遮断し、車内の温度を快適に保ち、エアコンの負荷軽減にも貢献します。
  • 肌触り・質感が良い: シートの裏地や内装材として使用される不織布は、柔らかい風合いを持つものが多く、乗員に快適な肌触りを提供します。

4. コスト効率と加工性

  • 生産性の向上: 不織布は連続的に大量生産が可能であり、織物や編物よりも製造工程がシンプルでコストを抑えられます。
  • 加工の容易さ: ほつれにくい特性があるため、複雑な形状への裁断や打ち抜き加工が容易です。これにより、部品の製造工程が効率化され、生産コストの削減に貢献します。
  • 部品点数削減の可能性: 吸音と断熱を兼ねるなど、多機能性を持たせることで、複数の部品を不織布一つで代替できる可能性があり、部品点数の削減につながります。

5. 安全性・耐久性・機能性の付与

  • フィルター性能: 車内の空気を清浄化するエアコンフィルターや、エンジンを守るエアフィルターとして、高効率なろ過性能を発揮します。
  • 難燃性: 難燃加工を施すことで、万が一の火災時にも燃え広がりにくく、安全性を高めることができます。
  • 耐久性・耐摩耗性: カーペットの基材など、高い耐久性や耐摩耗性が求められる箇所にも、適した不織布が開発・使用されています。
  • デザイン性: 内装材として、多様な色、柄、エンボス加工などを施すことができ、車内のデザイン性を高めることにも寄与します。

不織布は「軽量化」「快適性」「安全性」「コスト削減」「環境性能」といった主要な開発目標に直接貢献な素材であり、自動車製造において不可欠となっています。

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