電子部品:可変抵抗器 抵抗値を変化させる方法は何か?どのような物質が使用されるのか?

この記事で分かること

  • 可変抵抗器とは:抵抗値を変化させることができる電子部品です。つまみやスライドを操作することで、回路に流れる電流や電圧を自由に調整できます。
  • どうやって抵抗値を変化させるのか:可動接点が移動することで、電流が流れる抵抗体の長さが変わります。抵抗は、物質の長さに比例して大きくなるため、可動接点の位置を変えることで抵抗値が調整されます。
  • 使用される物質:抵抗体には、稼働接点には炭素皮膜、サーメット、導電性プラスチックが、稼働接点には、リン青銅やステンレス、ニッケル合金などの金属が使用されます。

可変抵抗器

 日本の電子部品メーカーは、半導体製造分野では後れを取っているものの、コンデンサやセンサーなどの部品分野では、長年にわたり世界市場で強い競争力を保ち続けており、台湾企業による買収も報じられています。

 https://news.yahoo.co.jp/articles/7c65f370b3f25f662f603f1b6f59d590fba4cd46

 日本の電子部品メーカーは、長年にわたって培ってきた高い技術力、品質へのこだわり、そして特定のニッチ分野での圧倒的な強みにより、世界市場でその地位を確固たるものにしています。

今回は受動部品である抵抗器、特に可変抵抗器についての記事となります。

 抵抗器は、電流の流れを妨げる電子部品です。この「流れにくさ」を示すのが抵抗値(単位:Ω)で、回路内の電流を制限したり、電圧を調整したりする役割があります。過剰な電流から他の部品を保護するためや、信号の調整などに使われます。

可変抵抗器とは何か

 可変抵抗器は、抵抗値を変化させることができる電子部品です。固定された抵抗値を持つ通常の抵抗器とは異なり、手動で操作することで抵抗値を自由に変えられます。これにより、回路に流れる電流や電圧を調整できます。

仕組み

 可変抵抗器は、通常、「抵抗体」と抵抗体上を移動する「可動接点(摺動子)」で構成されています。つまみを回したりスライドさせたりすることで可動接点が抵抗体の上を移動し、電流が通る経路の長さを変えることで抵抗値が変化する仕組みです。

 可動接点が抵抗体の上を移動すると電気の流れる経路が変わるのは、電流が流れる抵抗体の長さが変わるためです。電気抵抗は、物質の長さが長くなるほど大きくなるという性質に基づいています。


抵抗と長さの関係

 抵抗(R)は、抵抗体の長さ(L)、断面積(A)、そして物質固有の抵抗率(ρ)によって決まります。この関係は以下の式で表されます。

 R=ρAL​

 この式が示すように、抵抗率と断面積が一定の場合、抵抗体の長さが長くなれば抵抗は大きくなり、短くなれば抵抗は小さくなります

可変抵抗器における経路の変化

  1. 可変抵抗器の端子Aと端子Bの間には、一定の長さを持つ抵抗体が配置されています。
  2. 可動接点(スライダー)は、この抵抗体の上を滑らかに移動します。
  3. 電流は、一方の端子から入り、抵抗体を通って、可動接点から取り出されます。
  4. 可動接点を動かすと、電流が流れる抵抗体の部分の長さが変わります。
  5. 例えば、可動接点を端子Aに近づけると、電流が流れる抵抗体の長さが短くなり、全体の抵抗値は小さくなります。
  6. 逆に、可動接点を端子Bに近づけると、電流が流れる抵抗体の長さが長くなり、全体の抵抗値は大きくなります。

 このように、可動接点の位置を変えることで、抵抗体の有効な長さを調整し、抵抗値を連続的に変化させています。

主な種類

  • 半固定抵抗器(トリマ): 回路基板に実装され、一度設定したらあまり動かさない、回路の微調整などに使用されます。
  • ポテンショメータ(ボリューム): オーディオ機器の音量調整や、照明の明るさ調整など、頻繁に抵抗値を変更する用途に使われます。回転させるロータリタイプと、スライドさせるスライドタイプがあります。

可変抵抗器は、抵抗値を変化させることができる電子部品です。つまみやスライドを操作することで、回路に流れる電流や電圧を自由に調整できます。音量調整や照明の明るさ調整などに使われます。

抵抗体にはどんな物質が使用されるのか

 抵抗体には、主に炭素皮膜サーメット導電性プラスチックなどの物質が使用されます。

各物質の特徴

  • 炭素皮膜 (カーボンフィルム):最も一般的に使用される素材で、比較的安価です。炭素を基材に焼き付けて抵抗体としており、幅広い抵抗値に対応できます。オーディオ機器のボリュームなど、多くの用途で使われています。
  • サーメット: 金属とセラミックスを混合して作られた複合材料です。炭素皮膜よりも耐熱性や耐久性に優れており、高い精度が求められる半固定抵抗器などに利用されます。
  • 導電性プラスチック: 炭素粉などを混ぜたプラスチックで、なめらかな抵抗値変化が得やすいのが特徴です。摩擦による摩耗に強く、長寿命が求められる精密機器や産業用ポテンショメータに使用されます。

これらの素材は、可変抵抗器の用途(耐久性、精度、コスト)に応じて使い分けられます。

サーメットはなぜ、耐熱性や耐久性に優れるのか

 サーメットが優れた耐熱性や耐久性を持つのは、セラミックスの硬さと金属の靭性を組み合わせた複合材料だからです。

複合材料としての特徴

 サーメット(cermet)は、セラミックス(ceramic)金属(metal)を組み合わせた造語です。この名前が示す通り、サーメットは硬くて熱に強いセラミックスの粒子を、粘り強さを持つ金属の結合材で固めて作られています。

材料の特性セラミックス金属
硬度・耐摩耗性非常に高い比較的低い
耐熱性非常に高い比較的低い
靭性(粘り強さ)脆い(割れやすい)高い(欠けにくい)

 サーメットはこの二つの材料の「いいとこ取り」をすることで、それぞれの弱点を補っています。

  • 耐熱性:セラミックスは高温でも硬度や化学的安定性を保つため、サーメットも高い温度に耐えられます。
  • 耐久性:セラミックスの硬さで摩耗を防ぎつつ、金属の靭性で衝撃による脆さを補うため、欠けにくく長持ちします。

 これにより、可変抵抗器の抵抗体として、炭素皮膜よりも高い精度と耐久性が求められる用途に適しています。サーメットは、切削工具や高温環境で使用される部品など、過酷な条件で使われる製品にも広く利用されています。

サーメットは、硬くて熱に強いセラミックスと、粘り強い金属を混ぜ合わせた複合材料だからです。セラミックスの耐熱性・硬度と、金属の靭性を兼ね備えることで、優れた耐熱性と耐久性を実現します。

可動接点にはどんな物質が使用されるのか

 可変抵抗器の可動接点(スライダー)には、リン青銅ステンレスニッケル合金などの金属が使用されます。これらの素材が選ばれる主な理由は、以下の通りです。

  • 耐摩耗性: 抵抗体上を繰り返し摺動するため、摩擦に強く、摩耗しにくい素材が求められます。
  • 電気的特性: 抵抗体との間で安定した電気的接触を保つため、導電性が高く、接触抵抗が低いことが重要です。
  • 弾力性: 抵抗体との接触を適切に維持するために、バネとしての特性(弾力性)が求められます。

 これらの材料は、可変抵抗器の用途や耐久性に応じて使い分けられます。例えば、より高い耐久性が必要な製品ではステンレスが使われることがあります。


可動接点と抵抗体の組み合わせ

 可動接点の素材は、抵抗体の素材と組み合わせて設計されます。

  • 抵抗体: カーボン(炭素皮膜)、サーメット、導電性プラスチックなどが使われます。
  • 可動接点: 抵抗体の種類に合わせて、上記のような金属素材が選ばれます。

 両者の組み合わせにより、抵抗値の変化特性(リニア、対数など)や、耐久性、ノイズ特性などが決まります。

可動接点には、リン青銅ステンレスニッケル合金などの金属が使われます。これらは、抵抗体上をスムーズに動くための耐摩耗性と、安定した電気的接触を保つための導電性、そして適切な接触圧を維持する弾力性が求められるためです。

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