本の概要
プラスチックは軽い、便利、安価な様々な利点があり、身の回りにあふれている。
その一方でプラスチックごみの処理が追いつかず世界中でも問題になっている。
特に海洋プラスチックは魚が食べることで食物連鎖に乗り、生物の体内を循環するため注目されている。
近年、沖縄に流れ着くごみは大きく増加し、プラスチックを含んでいるものがほとんど。
プラスチックゴムは紫外線である程度小さくなるが、微生物による分解ができるほど小さくはならないため、地球の物質循環に入り込めず、異物としてあふれてしまう。
生分解性プラスチックやバイオプラスチックではすべてを解決できるわけではない。
一人一人の力は小さいが、プラスにはなる。海洋のごみ広いが盛んになった時期に流れ着くごみの量は増えているものの、確認されたごみの量は頭打ちになっている。
また、専門家が研究に利用するデータを集めるシチズンサイエンスでも貢献も注目が集まっている。
科学ではプラスチックを生き物が食べたときの影響を調べることはできるが、価値観や判断に関する領域に答えを出すことはできない。プラスチックの削減と温暖化対策のどちらを優先すべきかなどを決めることはできない。
本で学べること
- プラスチックごみの現状と、どのように環境に悪いのか
- 海洋プラスチックについて何がわかっていて、何が不明なのか
- プラスチックごみを減らす対策とその効果、世界の取り組みについて
はじめに
プラスチックは軽くて丈夫、色や形も自在、柔らかくも固くもでき、安い等、とにかく便利なため、身の回りにプラスチックはあふれている。
プラスチックごみは処理が追いつかず、世界中で問題になっている。
海のプラスチックが5mm以下とマイクロ化した場合、それを魚などが食べ、食物連鎖を通じて地球上の生物の体内を巡るため特に注目されている。
脱プラスチックをあおるでも、あきらめるでもなく、事実に基づいて整理するために書かれた本である。
第一章 世界の海はプラスチックだらけ
1998年から2013年の間に沖縄の海に流れ着くごみの量は10倍に増加している。海外のごみ特に中国初のごみは27倍にもなっている。
流れ着くごみのトップ10すべてがプラスチックを含んでいる製品
プラスチックを海や陸で放置した際にどのように、どのくらい分解されるかは科学的には判明していない。ただ、数十年の単位では分解されないことはたしか。
プラスチックの生産量は1950年の200万tから2015年には3億8100万tと大幅に増加している。
包装や容器のように使い捨てされるものが45%と多い、
1年間に海に流れ込むプラスチックごみは800万tにもなる。
自国のごみが他国に流れ着くため、各国が足並みをそろえて対策する必要がある。
海洋プラスチックの生き物への影響には
・絡みつくことで自由を奪う
・誤植による被害
の2点
プラスチックごみには酸化防止剤、難燃剤、可塑剤等の添加剤が含まれており、これらの流出も心配されている。
海に存在するはずのプラスチックごみの計算値と実測値には大きな差がある。
実際値が大幅に少ない。なぜなのかは仮説はあるものの、研究が進んでいない
2018年には国連でプラスチックごみを減らす憲章が始まった。0にするのではなく、持続可能な使用法を検討する。
具体的には
- 2030年までにすべてのプラスチック製品をリユース、リサイクル可能にする。
- リサイクル原料の利用率を50%増加させる。
- 容器包装用を55%リサイクル、リユースする
等の目標を掲げている。
レジ袋はごみの総量に占める割合は小さい。有料化はプラスチックごみの減少そのものよりも社会意識変化への意義が大きい。
中国がプラスチック原料製造のために輸入していたプラスチックごみの輸入をやめている。これによってさらに行き場がなくなるごみが増えるとされている。
第二章 プラスチックごみは地球の異物
プラスチックは地球の物質循環に入り込めないため、ごみとしてあふれてしまう。
炭素鎖がつながったポリエチレンなどを基本構造としている。紫外線によって炭素鎖が切れ。低分子化する。ただし、この低分子化した状態でも自然界では分解できない。
生分解性プラスチックも全てを解決できるわけではない。生分解性プラスチックは熱などによってある程度低分子化する。この低分子化したものを微生物が食べることができるため、生物による分解が可能。
ポリ乳酸などが代表的だが、どのような環境でも分解可能ではない。
- 価格が高い
- 性質に様々制約がある
- 全てのプラスチックが代替可能なわけではない
- などの欠点がある。
バイオプラスチックは生物由来の原料を使用し製造したプラスチック。必ずしも生分解性を持つとは限らないが、焼却しても植物が吸収したCO2のみ排出するため焼却によるCO2の増加が0となり、CO2抑制には効果がある。
第三章 マイクロプラスチックを生き物が食べる
マイクロプラスチックが生物の食物連鎖を通って、動物、人間の体内に取り込まれている。
マイクロプラスチックは大きさ5mm以下のプラスチックで紫外線によって分解され生成する。
2060年には北太平洋でのマイクロプラスチック量は現在の4倍に増加するという試算もある。この量になると生物に影響が出る可能性が高くなる。
研究は極端な濃度、条件で影響を見るため、ごみの量が増えた際の影響とはずれがある可能性もある。
第四章 私たちの力は小さいのか?
海洋のごみ拾いが盛んになった時期とごみの総量が頭打ちになった時期は一致している。→清掃の効果はある。
清掃以外ではシチズンサイエンスでの貢献も可能。シチズンサイエンスはプロの科学者が論文を書く際のデータ取得を市民が行うこと。科学の幅を広げ、意思決定に市民の知を加えることができる。
プラスチックごみの削減と石油の使用削減は分けて考える必要がある。
科学には価値観や判断に関する領域に答えることは出来ない。プラスチックがどのようにマイクロ化するかや生き物が食べたときの影響を調べることは出来るが、焼却とリサイクルどちらを優性するかやプラスチック削減と温暖化どちらの対策を優先するかには応えられない。
科学の知識が増えれば、解決策を話し合いやすくなると考えがち。しかし実際には自身の価値観や好むに合う情報により多く触れ、都合の悪い情報を無視してしまうため、分極化がなくなるわけではない。
自分とは違う意見にも耳を傾けて、落としどころを見つけることが重要となる。
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