オムロンの電子部品事業分社化 どのような事業なのか?なぜ分社化を検討しているのか?

この記事で分かること

  • 電子部品事業の製品:リレー、スイッチ、センサーを中心に、幅広い電子部品を製造しています。自動車や家電製品、産業機器などに使われる、電気回路の開閉や、人、光、圧力などの検知を行う部品を提供しています。
  • 分社化の理由:電子部品事業を分社化することで、事業の自律性を高め、市場変化に素早く対応し、競争激化への対応や持続的な成長を目指しています。
  • オムロンが注力する事業:主要な収益源である工場の自動化を担う制御機器事業と、家庭用医療機器で世界首位のヘルスケア事業に経営資源を集中させるものと見られます。

オムロンの電子部品事業分社化

 オムロンは、祖業である電子部品事業(デバイス&モジュールソリューションズビジネス)の分社化に向けた検討を開始したと発表しました。

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この分社化は、2026年4月1日を目途に実施される予定です。

どのような電子部品を製造しているのか

 オムロンが製造している電子部品は多岐にわたりますが、主に以下の3つのカテゴリーに分類されます。

1. リレー(Relay)

 オムロンの電子部品事業の中心であり、創業以来の主力製品です。リレーは、小さな電流で大きな電流をON/OFFするスイッチの役割を果たす電子部品です。

  • 種類: パワーリレー、信号用リレー、車載用リレー、産業用リレーなど
  • 用途:
    • EV(電気自動車)充電器: EVの充電時間を短縮するために高出力化が進む中、低発熱で高電流に対応するパワーリレーを提供しています。
    • 制御盤: 産業用ロボットや製造ラインの制御システムで、安全かつ効率的な動作を実現するために使用されます。
    • 家電製品: 冷蔵庫やエアコンなどのON/OFF制御。

2. スイッチ(Switch)

 リレーと同様に、電気回路のON/OFFを切り替える重要な部品です。小型で高精度なものが多く、さまざまな機器に組み込まれています。

  • 種類: マイクロスイッチ、タクタイルスイッチ、検出スイッチ、押ボタンスイッチ、車載用スイッチなど
  • 用途:
    • 自動車: 車載用スイッチは、電動シートやドアの開閉、カーナビのボタンなど、自動車の様々な機能に使われています。
    • ゲーム機器: ゲーム機の操作ボタンなど、正確な動作が求められる部分に採用されています。
    • 家電製品: 電子レンジや炊飯器のドアの開閉検知など。

3. センサー(Sensor)

 物体の状態や環境の変化を検知し、電気信号に変換する部品です。オムロンは、多種多様な高機能センサーを開発しています。

  • 種類:
    • 人感センサー: 人の有無や動きを検知する非接触温度センサーなど。
    • フォト・マイクロセンサー: 光の遮断を利用して物体の通過などを検知するセンサー。
    • 感震センサー: 地震の揺れを感知し、ガスメーターなどを遮断して二次災害を防ぐためのセンサー。
    • 圧力センサー、流量センサー: ガスや液体の圧力や流量を測定。

 オムロンは、これらのコア技術である「リレー」「スイッチ」「センサー」を組み合わせ、顧客のニーズに合わせたモジュールやソリューションとして提供することで、EVやエネルギー、社会インフラなど、さまざまな産業の発展に貢献しています。

オムロンは、創業以来の祖業であるリレー、スイッチ、センサーを中心に、幅広い電子部品を製造しています。自動車や家電製品、産業機器などに使われる、電気回路の開閉や、人、光、圧力などの検知を行う部品を提供しています。

分社化を行う理由は何か

 オムロンが電子部品事業を分社化する主な理由は、競争激化への対応と収益性向上です。


分社化の具体的な目的

 この分社化は、激しい市場の変化に迅速に対応し、事業の競争力を強化するために行われます。主な目的は以下の3つです。

1. 意思決定の迅速化

 電子部品事業を独立させることで、親会社の組織に縛られず、事業独自の意思決定を迅速に行えるようになります。これにより、市場や顧客のニーズの変化に素早く対応し、新たな製品開発や投資を加速させることができます。

2. 事業の自律性向上

 分社化によって、電子部品事業は独立した事業体として、より自律的な経営が可能になります。特にEV向け部品の不振などにより採算性が悪化している現状を打開し、事業を再び成長軌道に乗せる狙いがあります。

3. 外部連携の強化

 独立した事業体となることで、他社との提携やM&Aなど、より柔軟な外部連携がしやすくなります。これにより、技術やノウハウを組み合わせ、新たな価値を創出する可能性が広がります。


 これらの目的を通じて、オムロンは電子部品事業の収益力と持続的な成長を確保することを目指しています。

オムロンは、競争激化に対応し収益性を高めるため、祖業の電子部品事業を分社化します。これにより、意思決定を迅速化し、事業の自律性を高めることで、市場変化に素早く対応し、持続的な成長を目指します。

分社後オムロン本体は何に力を入れるのか

 電子部品事業の分社化後、オムロン本体は残りの主力事業である制御機器事業ヘルスケア事業に注力していくと考えられます。


制御機器事業(IA事業)

 工場の自動化(FA)を支えるこの事業は、オムロンの最大の収益源です。今後は、以下のような分野にさらに力を入れる方針です。

  • 「i-Automation!」戦略の推進: AIやロボット技術を組み込んだFAシステムを高度化し、データ活用による生産性向上や品質管理の最適化を目指します。製造現場の課題解決に貢献するソリューション提供を強化する見込みです。
  • 構造改革の継続: 競合との価格競争が激化する中で、効率的な生産体制を構築し、収益性を向上させるための改革を引き続き推進します。

ヘルスケア事業

 家庭用電子血圧計で世界シェアNo.1を誇るこの事業は、さらなる成長の柱として期待されています。

  • 「Going for ZERO」ビジョン: 脳・心血管疾患の発症をゼロにするという壮大な目標「ゼロイベント」の実現を目指しています。
  • サービス事業の強化: デバイス販売だけでなく、健康データに基づいた予防医療サービスや、医療機関との連携ソリューションを強化し、事業の多角化を進めていきます。

 オムロンは、長期ビジョン「Shaping the Future 2030」に基づき、これら主軸事業を通じて「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会の実現」「健康寿命の延伸」といった社会課題の解決に貢献していく方針です。今回の分社化は、これらの成長戦略にリソースを集中させるための経営判断と言えます。

分社後、オムロン本体は、主要な収益源である工場の自動化を担う制御機器事業と、家庭用医療機器で世界首位のヘルスケア事業に経営資源を集中させます。これにより、事業の成長と収益性の向上を加速させる方針です。

制御機器事業の内容は

 オムロンの制御機器事業とは、FA(ファクトリーオートメーション)を担う事業のことです。FAとは、工場における生産工程の自動化を図るシステムのことで、具体的には以下のような製品や技術を提供しています。

  • 制御機器: 工場の生産ラインや設備の動きを制御する中枢的な役割を果たすプログラマブルコントローラ(PLC)などが代表的です。
  • センサー: 物体の有無や位置、色、形などを検知するセンサーは、生産ラインの「目」として重要な役割を担います。
  • ロボット: 搬送や組み立て、検査などを行う産業用ロボット。
  • 安全機器: 工場で働く作業員の安全を確保するための機器。

 これらの製品や技術を組み合わせて、製造業の生産性向上、品質安定、人手不足の解消などを実現するソリューションを提供しています。

 オムロンは長年培ってきたこれらの技術力と、幅広い製品ラインナップで、日本の製造業の自動化を牽引するリーディングカンパニーの一つとなっています。近年では、AIやIoTといった最新技術を取り入れ、さらに高度な「スマートファクトリー」の実現にも取り組んでいます。

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