この記事で分かること
- 高騰の理由:最大生産国の中国が環境規制により生産能力の上限に達し、世界的に供給が停滞していることが主因です。これに加え、脱炭素化に伴うEVや太陽光発電向けの需要急増、さらに高騰する銅の代替需要が価格を押し上げています。
- 銅代替としての利用法:導電性に劣るものの、軽いという特性を活かし、配線を太くして性能を補いつつ、低コストで軽量な代替品として送電・配電線、車内配線(ワイヤーハーネス)等の分野で活用されています。
- 今後の見通し:2026年前半は供給不足や投資資金の流入により、3,000ドルを超える高値圏での推移が続く見通しです。後半以降、インドネシア等の増産で一時的な調整も予想されますが、EV等の脱炭素需要が底堅く、中長期的には高止まりする可能性が高いとみられています。
アルミ市場の高騰
アルミニウムの国際指標であるロンドン金属取引所(LME)の価格が、1トンあたり3,000ドルの節目を突破しています。
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-01-02/T88NYYKJH6V400?srnd=jp-companies
今回の価格上昇は、単一の理由ではなく「供給への不安」と「需要の構造変化」が重なった結果と言え、この動きは、製造業や建設業など幅広い産業に影響を与える重要な局面です。
高騰の理由は何か
アルミニウム価格が1トンあたり3,000ドルを突破した主な理由は、一言で言えば「構造的な供給不足」への懸念が現実味を帯びてきたことにあります。
2026年に入り、市場が特に敏感に反応している具体的な要因は以下の4点です。
1. 中国の生産上限(供給の壁)
世界最大のアルミ生産国である中国が、政府の掲げる「年間生産能力4,500万トン」の上限にほぼ達しました。
- 増産停止: これ以上の大幅な増産が見込めないため、世界の供給源が頭打ちになっています。
- 輸出抑制: 中国国内での供給を優先するため、アルミ製品の輸出が減少(2025年11月には前年比約9%減)し、国際市場での品不足感に拍車をかけています。
2. 世界的な製錬所の閉鎖・停止
電力コストの上昇や地政学的リスクにより、中国以外の主要な製錬所でも供給が絞られています。
- モザンビーク: 主要な「Mozal製錬所」が電力契約の問題で2026年3月までに維持管理状態(休止)に入ることが決定しました。
- その他: オーストラリアのアルミナ精製所の閉鎖や、アイスランドなどでのエネルギーコスト増による減産が続いています。
3. 「銅」の代わりとしての需要急増
銅の価格が歴史的な高値圏にあるため、電気導電性に優れたアルミが「銅の代替品」として注目されています。
- データセンターとEV: AIブームに伴うデータセンター建設や電気自動車(EV)の普及により、配線や部品としてのアルミ需要が一段と強まっています。
4. 2026年から本格化する「環境規制」
欧州(EU)炭素国境調整措置(CBAM)が2026年から本格的なフェーズに入ります。
- グリーン・コスト: 製造過程でCO2を多く排出するアルミは、この規制によるコスト増を織り込み始めています。
- スクラップ争奪戦: リサイクルアルミ(再生材)の価値が上がり、原料となるスクラップの輸出制限なども価格を押し上げる要因となっています。
今回の3,000ドル突破は、単なる一時的なニュースではなく、「安く大量に供給される時代」の終わりを象徴しているとも言えます。
ただ、一方でインドネシアでの大規模な増産プロジェクトが2026年後半から稼働する予定もあり、年後半には供給不足が少し和らぐという予測も出ています。

最大生産国の中国が環境規制により生産能力の上限に達し、世界的に供給が停滞していることが主因です。これに加え、脱炭素化に伴うEVや太陽光発電向けの需要急増、さらに高騰する銅の代替需要が価格を押し上げています。
銅の代わりではどのように使用されるのか
アルミは「電気の通りやすさ(導電率)」では銅に劣りますが、「軽さ」と「安さ」という圧倒的なメリットを活かし、これまで銅が独占していた領域を次々と置き換えています。主な使用例と、どのように代替されているかをまとめました。
1. 電線・配電システム(軽量化とコスト削減)
最も代替が進んでいる分野です。
- 架空送電線: 送電塔の間の長い電線は、現在ほぼ100%がアルミ線です。軽い(銅の約1/3)ため、電柱や鉄塔への負荷を減らし、建設コストを大幅に抑えられます。
- ビル・工場の幹線: 最近では「アルミ導体ケーブル」が普及しています。銅と同じ電気を流すにはアルミの方が太くなりますが、それでも重量は半分近くになるため、作業員の負担軽減や工事のスピードアップに繋がります。
2. 自動車(EVの航続距離アップ)
電気自動車(EV)では、銅からアルミへの切り替えが加速しています。
- ワイヤーハーネス: 車内を張り巡らされる配線(ワイヤーハーネス)をアルミ化することで、車体重量を数キロ〜数十キロ単位で削減し、燃費や航続距離を向上させています。
- バスバー: バッテリー内の高電流を流す板(バスバー)も、銅からアルミ合金への置き換えが進んでいます。
3. 空調機器(エアコンの熱交換器)
大手エアコンメーカー(ダイキン工業など)を中心に、熱交換器のフィンや配管を銅からアルミへ変更する動きが本格化しています。
- 技術革新: かつてはアルミだと腐食しやすい問題がありましたが、表面処理技術の向上により、耐久性を確保したまま「安くて軽い」エアコンが製造可能になりました。
銅とアルミの比較まとめ
| 特徴 | 銅 (Copper) | アルミニウム (Aluminum) |
| 導電性 | ◎(極めて高い) | △(銅の約60%) |
| 重さ | ×(重い) | ◎(軽い、銅の約1/3) |
| 価格 | ×(高い・変動激しい) | ○(銅の約1/3〜1/4) |
| 施工性 | ○(曲げに強く細い) | △(太くなる、接続に技術が必要) |
今後のポイント
銅の価格が高騰を続ける中、「太くなってもいいから、軽くて安いアルミを使おう」という設計思想が、世界中のエンジニアの間で定着しつつあります。

アルミは銅より電気を通しにくいですが、「重さが銅の3分の1」「価格が数分の1」という利点があります。そのため、配線を太くして性能を補いつつ、低コストで軽量な代替品として送電・配電線、車内配線(ワイヤーハーネス)等の分野で活用されています。
中国以外の主要な製錬所でも供給が絞られる理由は
中国以外の製錬所で供給が絞られている理由は、主に「エネルギーコストの暴騰」と「電力争奪戦」、そして「老朽化やトラブル」という3つの深刻な問題が重なっているためです。特に2026年現在、以下の要因が供給を強く圧迫しています。
1. 「AIデータセンター」との電力争奪戦
アルミ製錬は「電気の缶詰」と呼ばれるほど膨大な電力を消費します。今、世界各地で製錬所がAIデータセンターとの電力確保競争に負けています。
- 価格競争: データセンター(GAFAなど)は高い電気料金を支払う能力がありますが、利益率の低いアルミ製錬所は高騰した電気代を払いきれず、長期の電力契約を更新できずに停止に追い込まれています。
2. エネルギー価格の高止まりと供給不安
- 欧州の苦境: ウクライナ情勢以降、欧州では天然ガスや電気料金が高止まりしています。これにより、フランスやドイツなどの主要製錬所は赤字を避けるために操業停止や減産を継続しています。
- アイスランドの停止: 地熱発電が盛んなアイスランドでも、2025年末から設備のトラブルや電力不足により、一部の主要ラインが停止しています。
3. モザンビーク「モザル製錬所」の休止
アフリカ最大級のアルミ製錬所であるモザル(Mozal)が、電力契約の難航と不透明な情勢から、2026年3月までに「維持管理状態(事実上の操業停止)」に入ることが確定しました。
- これにより年間約56万トンの供給が失われる見込みで、これが3,000ドル突破の決定的な引き金の一つとなりました。
4. 環境規制(CBAM)への対応コスト
2026年からEUで本格導入される「炭素国境調整措置(CBAM)」により、石炭火力発電を使っている古い製錬所は、高い炭素税を課されることになります。
- 採算が合わなくなった古い設備の閉鎖が進んでおり、クリーンなエネルギーへの転換が間に合っていない地域で供給が絞られています。
まとめ:なぜ今、深刻なのか
かつては「電気が安い場所」へ製錬所を移せば解決しましたが、今は世界中で「クリーンで安い電気」の奪い合いが起きています。中国が生産上限に達した今、中国以外での供給ダウンを補う手段が極めて限られていることが、現在の高騰の正体です。

欧米を中心とした製錬所では、高止まりする電気代や天然ガス価格が採算を圧迫し、操業停止や減産が続いています。さらに、膨大な電力を消費するAIデータセンターとの電力確保競争や、脱炭素規制への対応コスト増、主要拠点での設備トラブルが重なり、中国以外の供給網も極めてタイトな状況です。
今後の見通しはどうか
アルミ相場の今後の見通しは、短期的には「高止まり」、中長期的には「供給回復による緩やかな下落」という予測が主流です。
1. 短期(2026年前半):3,000ドル前後の高止まり
当面は、極めてタイトな需給バランスが価格を下支えします。
- 強材料: 中国の減産継続や、アフリカの主要製錬所(モザルなど)の停止による供給不安が解消されないため、3,000ドルを大きく割り込む要因が乏しい状況です。
- 心理的節目: 3,000ドルが「抵抗線(超えにくい壁)」から「支持線(下支えするライン)」に変わるかが焦点となります。
2. 中期(2026年後半):インドネシア増産による調整
2026年後半からは、需給逼迫が緩和に向かう可能性があります。
- インドネシアの台頭: 中国に代わる新たな供給源として、インドネシアの大規模製錬プロジェクト(アダロ・グループなど)が本格稼働し始めます。
- 価格予測: 一部の金融機関(ゴールドマン・サックス等)は、この供給増を背景に、2026年末には2,400〜2,700ドル程度まで調整が入ると予測しています。
3. 長期(2027年〜):需要構造の変化
長期的には、価格は再び上昇基調に戻るという見方が強いです。
- グリーン・アルミの時代: 脱炭素コストを反映した「高価格帯」が定着します。特にEVや太陽光発電向けの需要は2030年に向けて拡大し続けるため、供給が追いつかず、再び3,000ドルを目指す展開が予想されます。

2026年前半は供給不足や投資資金の流入により、3,000ドルを超える高値圏での推移が続く見通しです。後半以降、インドネシア等の増産で一時的な調整も予想されますが、EV等の脱炭素需要が底堅く、中長期的には高止まりする可能性が高いとみられています。

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