この記事で分かること
- Instinct MI440Xとは:2026年時点における世界最高峰のメモリ性能と推論スピードを持つAIチップです。特に、メモリ容量と帯域幅の広さはNVIDIAの次世代機「Rubin」に対抗する最大の武器となっています。
- 演算速度向上の方法:2nmプロセスによる回路の微細化で演算器を増量し、FP4などの軽量データ形式に最適化することで計算効率を極限まで高めました。
- MI440Xの構成要素:メモリボトルネックを解消する「HBM4」、AI計算に特化した「CDNA Next」コア、画像等の処理を専門に行う「Multimedia I/O Die」、そしてGPU間を繋ぐ高速接続規格「UALink」で構成されます。
AMDの企業データセンター向け新型チップ
AMDは「CES 2026」にて、次世代AIアクセラレータ「Instinct MI400」シリーズのラインナップとして、Instinct MI440Xを正式に発表しました。
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-01-06/T8FB7LT96OSI00?srnd=jp-technology
MI440Xは、企業が自社専用のデータセンターで大規模なAIを運用するために最適化された、2026年のフラッグシップモデルの一つです。NVIDIAが同時期に展開する「Blackwell」や次世代の「Rubin」アーキテクチャに対抗する強力な製品となります。
MI440Xの特徴は何か
AMD Instinct MI440Xは、2026年1月に開催された「CES 2026」にて発表された、AMDの次世代AIアーキテクチャ「CDNA Next」を採用したフラッグシップモデルです。
これまでのモデルから劇的な進化を遂げており、主な特徴は以下の3点にまとめられます。
1. 次世代メモリ「HBM4」の初採用
最大の特徴は、メモリ規格が「HBM3e」から「HBM4」へと世代交代したことです。
- メモリ容量: 1枚のGPUで288GB(一部構成ではさらに大容量)という、前世代(MI325Xの256GB)を凌ぐ容量を実現しました。
- 転送速度(帯域幅): メモリ帯域幅は毎秒19.6TBに達し、MI350シリーズと比較しても約2.5倍という驚異的なスピードでデータを処理します。
2. 「2nmプロセス」と圧倒的な演算性能
台湾TSMCの最先端2nmプロセス技術(または改良型3nm)を採用しています。
- 演算性能の向上: 前々世代のMI300シリーズと比較して、AI推論性能が最大で35倍向上したと謳われています。
- 新データ形式「FP4 / FP6」への対応: より軽量で効率的な計算フォーマットに対応したことで、電力消費を抑えつつ、LLM(大規模言語モデル)の推論を極めて高速に行えるようになりました。
3. スケールアップ技術「UALink」への対応
数千、数万個のGPUを連携させて巨大なAIシステムを作るための新しい接続規格「UALink」に対応しました。
- これにより、従来のInfinity Fabricの制限を超えた、より大規模なスーパーコンピュータ級のAIクラスタを構築することが容易になりました。NVIDIAのNVLinkに対抗する強力なオープン規格としての役割を担います。

2026年時点における世界最高峰のメモリ性能と推論スピードを持つAIチップです。特に、メモリ容量と帯域幅の広さはNVIDIAの次世代機「Rubin」に対抗する最大の武器となっており、Llama 4クラスのさらに巨大化した次世代AIの学習・推論に最適化されています。
どのように演算速度を向上させているのか
AMD Instinct MI440Xが、前世代から飛躍的に演算速度を向上させている理由は、主に「計算効率の最適化」と「最新の微細化技術」にあります。具体的には、以下の4つの技術的アプローチが組み合わされています。
1. 新データ形式「FP4 / FP6」へのネイティブ対応
AIの計算(推論)において、データの精度をあえて下げることで速度を上げる手法があります。MI440Xが採用するCDNA Next(CDNA 5)アーキテクチャでは、非常に軽量なFP4(4ビット浮動小数点)やFP6という形式をハードウェアレベルで高速処理できるようになりました。
- メリット: 従来のFP16やFP8よりもデータ量が圧倒的に少ないため、同じ時間内により多くの計算をこなせます。
2. TSMC 2nm プロセスによる高密度化
世界最先端の2nm製造プロセスを採用しています。
- 回路の微細化: チップ上のトランジスタをより小さく、高密度に配置することで、同じ面積でも演算ユニット(CU)の数を大幅に増やしました。
- クロック向上: 回路が小さくなることで、より高い周波数(スピード)で動作させることが可能になり、1秒あたりの計算回数が増加しました。
3. メモリボトルネックの解消(HBM4)
どれだけ演算器が速くても、データが届かなければ待ち時間が発生します。MI440Xは次世代のHBM4を搭載し、毎秒19.6TBという驚異的な転送速度を実現しました。
- 計算への即時供給: 巨大なデータを一瞬で演算コアに送り込めるため、演算器が休むことなくフル稼働できます。
4. 演算精度の「特化型」設計
MI400シリーズには、科学計算用(MI430X)とAI用(MI440X/MI455X)の異なるモデルがあります。
- MI440XはAIに特化: 科学計算に必要な超高精度な回路(FP64など)をあえて削減し、その分AIに特化した演算コア(Matrix Core)を大量に詰め込んでいます。これにより、AIワークロードにおける「1チップあたりの実効性能」を最大化しています。

2nmプロセスによる回路の微細化で演算器を増量し、FP4などの軽量データ形式に最適化することで計算効率を極限まで高めました。さらに次世代メモリHBM4でデータの供給速度を上げ、演算の待ち時間を排除しています。
メモリにはどこのメーカーの物が使用されているのか
AMD Instinct MI440Xのメモリ(HBM4)については、特定の1社に依存せず、サムスン電子(Samsung)を筆頭とした複数の主要メモリメーカーから供給を受けています。
1. サムスン電子 (Samsung Electronics)
MI400シリーズにおけるメインサプライヤーとしての地位を固めています。
- AMDとサムスンは、MI350シリーズ(HBM3e)の頃から強固な協力関係にあり、MI440Xに搭載される次世代の12層HBM4においても、サムスンが主要な供給源となっています。
- 特に、OpenAI向けの次世代AIインフラ構築に向けた大規模な契約において、サムスン製メモリの採用が報じられています。
2. SKハイニックス (SK hynix)
世界的なHBMシェアのトップであり、AMDに対しても供給を行っています。
- NVIDIAへの供給が優先される傾向にありますが、SKハイニックスも2025年末から2026年にかけてHBM4の量産体制を整えており、AMDのMI400シリーズ向けにも高品質なスタックを提供しています。
3. マイクロン (Micron Technology)
アメリカのマイクロンも重要なパートナーの一社です。
- マイクロンはHBM3eにおいて非常に優れた電力効率を実現しており、MI400シリーズの特定のラインナップにおいて、電力効率を重視するモデル向けに採用されています。
メモリメーカー間の「勢力図」の変化
これまで「NVIDIA × SKハイニックス」という連合が非常に強力でしたが、MI440Xが登場した2026年時点では、「AMD × サムスン」という協力体制が一段と強化されています。
これは、以下の理由によります:
- 安定供給の確保: 爆発的な需要に対応するため、AMDは複数の供給網(マルチソース)を確保する必要がある。
- カスタマイズ性: HBM4からは、メモリと演算チップをより密接に統合する「カスタマイズHBM」の重要性が増しており、ファウンドリ(受託製造)能力も持つサムスンとの連携が有利に働いている

主にサムスン電子がメインサプライヤーを務めており、そこにSKハイニックスとマイクロンが加わるマルチサプライヤー体制です。特にサムスンとは次世代AIインフラ構築に向けて密接な協力関係を築いています。
MI440Xのメモリ以外の構成要素の特徴は何か
MI440Xは、メモリ(HBM4)以外にも、最新の半導体技術を結集させた「チップレット構造」が特徴です。主な構成要素は以下の4点に分けられます。
1. CDNA Next (CDNA 5) アーキテクチャ
演算を司る「脳」の部分です。前世代から設計が刷新されました。
- XCD (Accelerated Compute Dies): 演算コアが詰まったダイです。MI440Xではこれまでの倍近い数のコアが統合され、特にAI推論に特化した設計になっています。
- 新演算ユニット: FP4/FP6といった超低精度演算を高速に処理する専用回路が大幅に強化されています。
2. Multimedia I/O Die (MID) 【新要素】
MI400シリーズから新たに導入された、通信とメディア処理を担う独立したダイです。
- 役割: 映像や音声のデコード(解析)を行うエンジンを演算コアから切り離し、専用のダイにまとめました。
- メリット: これにより、メインの演算コアがAI計算だけに集中できるため、システム全体の処理効率が向上しています。また、画像生成やビデオ解析AIでの処理速度が劇的に上がっています。
3. 次世代インターコネクト「UALink」
GPU同士を結ぶ「高速道路」のような接続規格です。
- オープン規格: NVIDIAの「NVLink」に対抗する、業界標準の新しい高速通信技術を採用しました。
- 拡張性: 最大規模の構成では、数千台のGPUを一つの巨大な計算機として連携させることが可能で、データの転送待ち(ボトルネック)を最小限に抑えています。
4. 統合プラットフォーム「Helios (ヘリオス)」
MI440Xを搭載するサーバー・ラック全体の構成要素です。
- CPU: 次世代のサーバー向けCPU EPYC “Venice” (Zen 6) と組み合わされます。
- 冷却システム: 演算能力の向上に伴う発熱を抑えるため、高度な液冷(リキッドクーリング)システムが標準的な構成として組み込まれています。
MI440Xという一つの製品は、「ロジック(CDNA 5ベースの演算コア)」と「メモリ(HBM4)」が、「チップレット技術」によって一つにまとめられたものです。
- CDNA 5(ロジック): データの「処理速度」や「計算精度」を決める。
- HBM4(メモリ): データの「保管容量」や「供給スピード」を決める。

AI計算に特化した「CDNA Next」コア、画像等の処理を専門に行う「Multimedia I/O Die」、そしてGPU間を繋ぐ高速接続規格「UALink」で構成されます。これらが液冷システムと統合され、圧倒的な性能を実現しています。

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