清水化学工業の酸素供給膜による排水処理 どのような特徴があるのか?平膜を使用する理由は?

この記事で分かること

  • 従来の排水処理方法:空気を吹き込み(曝気)、酸素を好む微生物に水中の汚れを分解させる活性汚泥法が主流です。汚れを食べ増殖した微生物(汚泥)を沈殿槽で分離し、上澄み液を放流します。シンプルですが、曝気に多大な電力が必要です。
  • 積水化学の新技術の特徴:空気を泡立てず独自の平膜(シート状の膜)を通じて微生物へ直接酸素を届ける点です。送風圧を抑えて電力を75%削減し、さらに微生物の自己分解を促すことで汚泥発生量も65%抑制します。
  • 平たい膜を使用する理由:中空糸膜(糸状)に比べてゴミが絡まりにくく目詰まりしにくいのが利点です。さらに、膜表面に増えすぎた微生物を剥がしやすいため、酸素供給の安定性とメンテナンス性において非常に優れています。

清水化学工業の酸素供給膜による排水処理

 積水化学工業が開発した革新的な排水処理技術は「酸素供給膜(MABR:Membrane Aerated Biofilm Reactor)」という技術を活用したもので、従来の排水処理の常識を覆す画期的なシステムです。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC214WI0R20C26A1000000/

 この技術の核心は、「空気を泡として送るのをやめ、膜から直接酸素を吸わせる」という発想の転換にあります。

従来の排水処理の処理方法は

 従来の排水処理の主流である「活性汚泥法(かっせいおでいほう)」は、「大量の微生物(汚泥)に汚れを食べさせ、その微生物を沈めてキレイな水を取り出す」という仕組みです。

 100年以上前に開発された技術ですが、今でも世界中の下水処理場や工場で使われています。いかのような4ステップで行われている。


1. 活性汚泥法の4つのステップ

① 曝気槽(ばっきそう)

 ここが心臓部です。排水の中に、酸素を好む微生物の塊(活性汚泥)を投入し、底から空気をブクブクと送り込みます(曝気)。

  • 微生物の働き: 酸素を得た微生物が、水中の有機物(汚れ)をエサとして食べて分解します。
  • 混合: 空気の泡で水をかき混ぜ、微生物と汚れが効率よく出会うようにします。
② 沈殿池(ちんでんち)

 汚れを食べた微生物は重くなり、塊(フロック)を作ります。この水を沈殿池に送り、ゆっくり流すと、微生物の塊が底に沈んでいきます。

  • 上澄み液: 汚れが取り除かれたキレイな水が上に残ります。
  • 沈殿汚泥: 底に溜まったのが微生物の塊です。
③ 汚泥の循環(返送汚泥)

 沈んだ微生物の塊は、まだ元気に汚れを食べる能力を持っています。そのため、一部を再び「①曝気槽」に戻して再利用します。

④ 消毒・放流

 上澄みの水を消毒し、河川や海へと流します。増えすぎて余った微生物(余剰汚泥)は、脱水して処分されます。


 積水化学のMABR技術は、この「空気を送る無駄」と「沈める工程」をショートカットできるため、電力量75%減という驚異的な効率化が可能になるのです。

 活性汚泥法は「生き物」を扱う技術なので、水温や汚れの種類によって微生物の管理がとても難しいという側面もあります。

活性汚泥法は、空気を吹き込み(曝気)、酸素を好む微生物に水中の汚れを分解させる方式です。汚れを食べ増殖した微生物(汚泥)を沈殿槽で分離し、上澄み液を放流します。シンプルですが、曝気に多大な電力が必要です。

積水化学工業の技術の特徴は何か

 積水化学工業が開発した技術(平膜型MABR)の最大の特徴は、「独自の平膜構造」によって、酸素供給の効率とメンテナンス性を極限まで高めた点にあります。

1. 圧倒的な省エネ(電力75%削減)

 従来の「泡で酸素を送る」方法ではなく、「膜の表面から微生物に直接酸素を届ける」仕組みです。

  • 空気を強く圧縮して送り込む必要がないため、ブロワー(送風機)の消費電力を劇的に抑えられます。
  • 酸素が水に逃げず、微生物がダイレクトに吸収するため、無駄がありません。

2. 汚泥(ゴミ)の発生を65%削減

 膜の表面に微生物が「生物膜(バイオフィルム)」として定着し、自己分解が進みやすいため、処理後に残る汚泥(産業廃棄物になる微生物の死骸など)の量が大幅に減ります。 これにより、廃棄物処理コストも削減可能です。

3. 独自の「平膜」による高効率・高耐久

 他社の多くが「中空糸膜(細い糸状)」を採用する中、積水化学は独自の「平膜(シート状)」を採用しています。

  • 目詰まりしにくい: 平らな形状のため、汚れが付着しにくく洗浄しやすいのがメリットです。
  • 高い酸素透過性: 酸素を効率よく通しながらも、膜としての強度を両立させています。

「電気を使わず」「ゴミを出さず」「詰まりにくい」という、運用コストとメンテナンス性の両面で従来の常識を覆した技術といえます。

 この技術は、既存の処理施設を壊さずに「膜ユニット」を沈めるだけで導入できる点も大きな強みです。

最大の特長は、空気を泡立てず独自の平膜(シート状の膜)を通じて微生物へ直接酸素を届ける点です。送風圧を抑えて電力を75%削減し、さらに微生物の自己分解を促すことで汚泥発生量も65%抑制します。

膜から酸素を届けられる理由は何か

 膜から酸素を直接届けられる理由は、膜の素材に「気体は通すが液体は通さない」という特殊な性質(疎水性・多孔質)があるためです。具体的には、以下のメカニズムで酸素を供給しています。

1. 濃度勾配による「拡散」

 膜の内側に空気を送り込むと、膜を隔てて「酸素が濃い側(膜の内部)」と「酸素が薄い側(微生物がいる外部)」が生まれます。すると、酸素分子は自然に濃い方から薄い方へ移動しようとする性質(拡散)があるため、エネルギーを使わずに膜を通り抜けていきます。

2. 微生物が膜に「直接」住んでいる

 ここが最大のポイントです。積水化学の膜の表面には、酸素を欲しがる微生物が「生物膜(バイオフィルム)」としてびっしり張り付いています。

  • 従来: 酸素を一度「水」に溶かしてから微生物に届ける必要があった(効率が悪い)。
  • 本技術: 膜を通り抜けた酸素を、表面に待機している微生物がダイレクトに吸い込むため、水に溶かすロスがありません。

3. 水圧に負けない「圧力のバランス」

 通常、深い水槽の底で泡を出そうとすると強い空気圧が必要ですが、この技術では膜の内側の気圧を外側の水圧とバランスさせるだけで、酸素をじわじわと染み出させることができます。


 従来法が「水の中に酸素のつぶを投げ込んで、微生物が拾うのを待つ」スタイルだとすれば、積水化学の技術は「微生物の家の壁(膜)から、常に新鮮な酸素が染み出している」ような状態です。

「気体は通すが液体の侵入は防ぐ」特殊な疎水性膜を使用しているからです。膜の内側に空気を流すと、酸素分子が膜を透過し、表面に付着した微生物へ直接届きます。水に溶かすロスがないため、極めて効率的です。

平膜が優れている理由は何か

 積水化学が採用している「平膜(シート状の膜)」が、他社で多い「中空糸膜(ストロー状の細い膜)」よりも優れている理由は、主に「詰まりにくさ」「酸素供給の安定性」にあります。


1. 汚れが溜まりにくい(耐閉塞性)

 中空糸膜は細い糸が束になっているため、糸の間に髪の毛やゴミが絡まりやすく、一度詰まると洗浄が困難です。

 対して平膜は、文字通り「平らな板状」です。隙間にゴミが挟まりにくい構造のため、メンテナンスの頻度を劇的に減らすことができます。

2. 生物膜の厚さをコントロールしやすい

 MABRでは、膜の表面に微生物が育ちすぎて「膜が厚くなりすぎる」と、酸素が届かなくなり効率が落ちます。

  • 平膜: 表面が平らなので、下から気泡を送るなどの軽い「揺らし」で、古くなった微生物をペリペリと剥がし落とすことが容易です。
  • 中空糸膜: 糸が密集しているため、内側の古い微生物を剥がすのが難しく、性能が低下しやすい欠点があります。

3. 高密度な酸素供給と耐久性

 積水化学の平膜は、薄いシート状でありながら高い強度を持っています。広い面積で均一に酸素を染み出させることができるため、ムラなく効率的に排水を浄化できます。また、糸のように絡まって断線するリスクが低いため、長期間安定して稼働できます。


 中空糸膜が「細いストローの束」なら、平膜は「広い壁」です。「ゴミが絡まず、掃除がしやすく、長持ちする」という実用面でのメリットが、平膜を選んでいる最大の理由です。

平らなシート状のため、中空糸膜(糸状)に比べてゴミが絡まりにくく目詰まりしにくいのが利点です。さらに、膜表面に増えすぎた微生物を剥がしやすいため、酸素供給の安定性とメンテナンス性において非常に優れています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました