この記事で分かること
- Ifo期待指数とは:ドイツの企業約9,000社の幹部に「6ヶ月後の景気見通し」をアンケート調査し、数値化した指標です。景気の先行指標として世界的に注目されています。
- なぜ予想に反し低下したのか:サービス部門の景況感が大幅に悪化したことが主因です。製造業は改善したものの、物流や観光業の不振、さらにトランプ政権下の米中・米欧間の地政学的緊張や関税リスクへの根強い不安が、経営者の見通しを慎重にさせました。
- なぜ製造業の回復が遅れたのか:高止まりするエネルギー価格や人件費が競争力を削ぎ、米国の関税リスクや中国との競争激化が輸出に影を落としています。具体的には、EV需要低迷のフォルクスワーゲンや、コスト高で国内生産を縮小するBASFなどが苦境に立たされています。
ドイツのIfo期待指数、市場予想に反し低下
2026年1月26日に発表されたドイツのIfo期待指数(将来の景気見通し)は、市場の予想に反して低下し、ドイツ経済の先行きの不透明さを改めて浮き彫りにしました。
景況感全体を示す総合指数は横ばいでしたが、中身を見ると「現状はわずかに改善、将来(期待)は悪化」という、足踏み状態が鮮明になっており、ユーロ圏全体の成長見通しにも慎重な見方が出ています
Ifo期待指数とは何か
Ifo(イフォ)期待指数は、ドイツの景気の先行きを占う上で「世界で最も注目される先行指標」の一つです。
ドイツ国内の約9,000社の企業幹部に対し、「これから6ヶ月後の景気はどうなると思いますか?」とアンケートを取って数値化したものです。
1. 誰が発表しているのか
ドイツのミュンヘンにあるIfo経済研究所という、権威ある民間組織が毎月発表しています。
ドイツは欧州最大の経済大国であるため、この指数の良し悪しは欧州全体の景気判断、ひいてはユーロの相場にも大きな影響を与えます。
2. 指数の構成(3つの指標)
Ifo景況感指数は、実は3つの数字で構成されており、今回のニュースで注目された「期待指数」はその一部です。
| 指数名 | 内容 | 重要性 |
| 現況指数 | 「今のビジネス状況はどうですか?」という回答を数値化。 | 現在の立ち位置を確認する。 |
| 期待指数 | 「6ヶ月後はどうなっていると思いますか?」という回答。 | 最も重要。 企業の投資や雇用の先行指標になる。 |
| 景況感指数(総合) | 上記2つを組み合わせた、今のドイツ経済の「体温」。 | ニュースで「Ifo指数」と言えば通常これを指す。 |
3. なぜ「期待指数」が重要なのか
ビジネスにおいて、企業のトップが「半年後はもっと悪くなる」と考えていれば、当然新しい設備の導入や求人を控えます。
- 期待指数が下がる: 企業が守りに入る → 数ヶ月後に実際のGDPや生産が落ち込む可能性が高い。
- 期待指数が上がる: 企業が攻め始める → 数ヶ月後に景気が上向くサイン。
このように、実際の統計データ(GDPなど)が出る前に「企業の心理」をキャッチできるため、「景気のバックミラーではなく、フロントガラス(前方)を見る指標」と言われています。
4. 今回の「予想外の低下」の意味
市場(アナリストたち)は、「そろそろ底を打って回復するだろう」と予測していましたが、結果はさらに下がってしまいました。
これは、現場の経営者たちが「政府の対策や世界経済の回復が、自分たちの商売に恩恵をもたらすまでには、まだ相当な時間がかかる(あるいはさらに悪化する)」と、プロの予想以上に悲観的になっていることを示しています。

ドイツの企業約9,000社の幹部に「6ヶ月後の景気見通し」をアンケート調査し、数値化した指標です。景気の先行指標として世界的に注目され、企業の投資や雇用意欲を反映するため、欧州経済の先行きを占う「鏡」とされています。
なぜ予想外の低下になったのか
2026年1月26日に発表されたIfo期待指数が「予想外の低下(89.5)」となった主な理由は、サービス部門の急激なマインド悪化と、地政学・通商リスクによる根強い不透明感にあります。
市場は、製造業の回復を背景に指数全体が上昇すると予測していましたが、以下の3つの要因がその期待に冷や水を浴びせました。
1. サービス部門の想定以上の冷え込み
今回の指数の押し下げ要因の主役はサービス業です。
- 内需の弱さ: 観光や物流セクターで景況感が悪化しました。インフレは落ち着きつつあるものの、将来への不安から消費者が財布の紐を締めており、サービス業者の先行き見通しを慎重にさせています。
- 雇用への懸念: サービス業での雇用指数が低下しており、これがさらなる消費意欲の減退を招くという悪循環が懸念されています。
2. 「関税リスク」と地政学的な不確実性
世界的な貿易環境の変化、特に米国の関税政策を巡る不透明感が、ドイツ企業の心理を直撃しています。
- トランプ・リスク: 米国による関税導入が一時的に回避されたという報道もありましたが、企業の現場では「いつ状況が変わるかわからない」という警戒感が解けておらず、これが半年後の見通し(期待指数)を重くしています。
3. 製造業の「回復の遅れ」
製造業の現況指数自体はわずかに改善したものの、期待指数を押し上げるほどのパワーはありませんでした。
- 受注の伸び悩み: 新規受注が依然として低水準で、生産計画を縮小する企業が依然として多いことが、期待指数の足を引っ張りました。
「工場(製造業)は少し良くなったものの、サービス業が予想以上に元気がないうえに、関税などの国際問題がの懸念から、企業のトップたちはまだ『半年後は明るい』とは言えない状況だった」というのが実態です。

サービス部門の景況感が大幅に悪化したことが主因です。製造業は改善したものの、物流や観光業の不振、さらにトランプ政権下の米中・米欧間の地政学的緊張や関税リスクへの根強い不安が、経営者の見通しを慎重にさせました。
製造業の回復の遅れの理由と具体的な企業例は
2026年1月現在のドイツ製造業において、回復が予想より遅れている主な理由は、「構造的なコスト高」と「外需の不確実性」が企業の投資意欲を削いでいるためです。
1. 回復が遅れている主な理由
- エネルギーコストと競争力低下: ロシア産ガスへの依存脱却後、エネルギー価格は高止まりしています。これにより、化学や鉄鋼などのエネルギー集約型産業が中国などの競合他社に対して価格競争力を失っています。
- 米国の関税リスク: トランプ政権による関税政策(特に自動車や鉄鋼への25%関税)への懸念が強く、輸出主導の製造業は将来の利益見通しを立てられずにいます。
- 構造的転換の遅れ: 自動車産業におけるEV化や、産業全体のデジタル化への対応が、煩雑な規制(官僚主義)や労働力不足によって他国より遅れています。
- 財政出動のタイムラグ: 政府が発表したインフラ・防衛投資(約5,000億ユーロ規模)の執行が遅れており、実際の受注として企業に届いていません。
2. 具体的な企業例と現状
| 企業名 | 業種 | 現状と苦戦の理由 |
| フォルクスワーゲン (VW) | 自動車 | EV需要の伸び悩みと中国メーカーとの激しい競争により、国内工場の閉鎖や人員削減を検討するほどの苦境にあります。 |
| BASF | 化学 | エネルギー価格の高騰により、ドイツ国内での生産維持が困難に。投資の軸足を米国や中国へ移す「脱ドイツ」の動きが鮮明です。 |
| ティッセンクルップ | 鉄鋼 | 鉄鋼部門の需要低迷に加え、脱炭素化(グリーンスチール)への巨額投資負担が重くのしかかり、再編の真っ只中にあります。 |
| シーメンス | 産業機器 | インフラ部門は底堅いものの、製造業向けのデジタル工場部門において、顧客企業の設備投資見合わせ(期待指数の低下)の影響を受けています。 |
「エネルギーが高い」「関税が怖い」「変化が速すぎる」という三重苦により、かつてドイツ経済を牽引した名門企業たちが軒並み「守り」の姿勢に入っていることが、期待指数の低下を招いています。

高止まりするエネルギー価格や人件費が競争力を削ぎ、米国の関税リスクや中国との競争激化が輸出に影を落としています。具体的には、EV需要低迷のフォルクスワーゲンや、コスト高で国内生産を縮小するBASFなどが苦境に立たされています。

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