この記事で分かること
- どんな企業が減産しているのか:三菱ケミカル(茨城・岡山)や三井化学(千葉・大阪)が今週から相次いで減産を開始しました。旭化成も岡山で三菱と共同運営する設備を減産したほか、出光興産は設備停止の可能性を取引先に通知し警戒を強めています。
- サプライチェーン維持の方法:政府は国家備蓄の単独放出を検討し、不足するナフサの緊急供給を図ります。並行して中東に依存しない北米やASEANからの代替調達を外交・物流面で支援。中長期では廃プラ活用等の原料転換を進め、供給網を強化します。
エチレン減産に対する政府の対応
中東情勢の緊迫化(イランによる攻撃等)を受け、国内の化学メーカーが相次いでエチレンの減産に踏み切っています。
https://jp.reuters.com/markets/commodities/7RYRMSX4MROZNICQLA5472GH6Q-2026-03-12/
これに対し、赤沢亮正経済産業大臣はサプライチェーン(供給網)の維持に向けた緊急対策を講じる構えです。
なぜエチレンが減産されるのか
エチレンが減産されている主な理由は、中東情勢の緊迫化に伴う原料「ナフサ」の深刻な調達難です。
2026年2月末から始まった米・イスラエル軍によるイラン攻撃を受け、中東情勢悪化によりホルムズ海峡が事実上封鎖され、原油由来の原料「ナフサ」の輸入が滞っています。三菱ケミカル等は原料枯渇による設備停止を避けるため、稼働率を下げて在庫を温存する減産対応を開始しました。
詳しい背景
- 物流網の遮断: ホルムズ海峡の通航船舶数が激減したことで、日本が輸入するナフサの大部分を占める中東からの供給がストップしています。
- 製油所の操業停止: UAEなどの主要な製油所がイランの報復攻撃を受け、生産自体が停止しているケースも報じられています。
- リスク回避: ナフサが完全に底をついてプラントが緊急停止(トリップ)すると、再稼働に多大なコストと時間がかかります。それを防ぐため、今のうちに稼働を絞って「細く長く」生産を続ける判断をしています。
この減産が続くと、プラスチック容器や自動車部品、さらには半導体製造用の化学品など、幅広い産業への影響が懸念されます。

中東情勢の緊迫化でホルムズ海峡の物流が停滞し、原料のナフサ(粗製ガソリン)の調達が困難になったためです。三菱ケミカル等は原料の完全な枯渇による設備停止を避けるため、稼働率を下げて在庫を温存しています。
どんな企業が減産を発表しているのか
現在、中東情勢の悪化を受けて、国内の主要な化学メーカーが相次いでエチレンの減産や設備停止の可能性を発表しています。
三菱ケミカル(茨城・岡山)、三井化学(千葉・大阪)、旭化成(岡山)が稼働率を下げて減産を開始しました。出光興産も千葉・山口の設備停止の可能性を顧客に通知済み。原料ナフサの枯渇によるプラント停止を防ぐための緊急措置です。
各社の詳細
- 三菱ケミカル: 3月6日から茨城事業所、12日には旭化成と共同運営する岡山県の拠点で減産を開始。
- 三井化学: 3月10日から千葉県市原市と大阪府高石市の2基で減産。
- 旭化成: 三菱ケミカルと共同運営する岡山県倉敷市(水島地区)の設備で減産。
- 出光興産: 千葉県と山口県のエチレン生産設備について、完全停止の可能性がある旨を取引先に通知。
赤沢経産相は、これら基礎素材の供給網を維持するため、国家備蓄の放出も視野に対応を急いでいます。

三菱ケミカル、三井化学、旭化成が減産を表明しています。三菱は茨城と岡山の拠点で、三井は千葉と大阪の計2基で今週から稼働率を下げました。旭化成も岡山で三菱と共同運営する設備を減産し、在庫温存を急いでいます。
どんな製品へ影響があるのか
エチレンは「石油化学の王様」と呼ばれ、あらゆる産業の基礎原料となるため、影響は極めて広範囲に及びます。
自動車の樹脂部品、家電の筐体、食品包装(フィルム・容器)、合成繊維など身近なプラスチック製品全般に及びます。また、半導体製造に不可欠な洗浄剤やレジスト原料、封止材の供給不足や価格高騰も懸念されます。
具体的な影響が懸念される製品群
- 自動車産業:
- バンパー、内装材、エンジン周辺の樹脂部品。
- タイヤの合成ゴム(エチレン誘導品のブタジエン等を使用)。
- 生活用品・食品:
- レジ袋、ペットボトル(PET樹脂)、食品トレイ、ラップ。
- 合成繊維(ポリエステル衣料など)。
- ハイテク・エネルギー分野:
- 半導体・電子部品: 洗浄用の高純度化学品、基板の封止材(エポキシ樹脂等)、レジスト材料。
- 蓄電池: 電気自動車(EV)用リチウムイオン電池の電解液やセパレーター。
- 建設資材:
- 水道管(塩化ビニル)、断熱材、塗料。
現在は各社、在庫を温存しながら稼働していますが、中東情勢がさらに長期化すれば、これらの製品の価格上昇や納期遅延につながるリスクがあります。

自動車のバンパーや内装、タイヤ等の部材に加え、食品容器、衣料用合成繊維、住宅用配管など生活全般に及びます。特に半導体製造用のレジストや封止材、洗浄剤の原料不足による供給停滞や価格高騰が強く懸念されます
政府の供給網確保の方法とは
政府は赤沢経済産業大臣を本部長とする「エネルギー対策本部」を設置し、供給網の寸断を防ぐため、以下の3つの柱で対策を進めています。
短期的には国家備蓄の機動的な放出を検討し、供給不足を補います。並行して中東以外のASEANや北米からのナフサ代替調達を支援し、中長期では石化産業の構造改革や、リサイクル素材への転換による脱中東依存を加速させます。
具体的な施策
- 石油備蓄の機動的活用:状況が悪化した場合、国際エネルギー機関(IEA)との連携に加え、日本の判断による「国家備蓄の単独放出」も排除しない姿勢を示し、国内市場への原料供給を維持します。
- 調達ルートの多角化支援:ホルムズ海峡の影響を受けない北米産シェールガス由来の原料や、東南アジア諸国からのナフサ調達を強化するため、物流コストの補助や外交交渉を進めます。
- 産業構造の強靭化:エチレンセンターの集約・効率化を支援し、少ない原料で安定供給できる体制を構築します。また、廃プラスチックを原料とする「ケミカルリサイクル」への投資を加速させ、原油への依存度そのものを低減させます。

政府は国家備蓄の単独放出を検討し、不足するナフサの緊急供給を図ります。並行して中東に依存しない北米やASEANからの代替調達を外交・物流面で支援。中長期では廃プラ活用等の原料転換を進め、供給網の強靭化を急ぎます。

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