リックスの半導体洗浄装置量産へ どのような洗浄装置なのか?なぜ需要が高まっているのか?

この記事で分かること

  • どのような洗浄装置なのか:真空に近い減圧状態を利用し、積層された半導体の極小の隙間から空気を抜いて洗浄液を奥まで強制浸透・撹拌させる装置です。従来の噴射式では届かない微細部の汚れを、チップを傷めず確実に除去できるのが特徴です。
  • なぜ需要が高まっているのか:AI向けのHBMなど、チップを積み上げる3D実装の普及が背景にあります。積層により生じる数マイクロメートルの隙間は、従来のシャワー洗浄では液が届かず、不具合の原因となる汚れが残るため、高度な洗浄が不可欠です。
  • 強力な撹拌でもチップに悪影響がない理由:物理的な衝撃をぶつけるのではなく、圧力変動で液を動かすため、繊細な回路や接合部(バンプ)を傷めません。一点に負荷を集中させず、隙間の汚れだけを優しく効率的に浮かせることが可能なため、ダメージは極小です。

リックスの半導体洗浄装置量産へ

 リックスは2.5次元・3次元(2.5D/3D)実装技術に対応した、これまでにないフラックス洗浄装置の開発を発表しました。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC105IZ0Q6A310C2000000/

 リックスの新装置は、槽内の圧力を変化させて洗浄液を隙間まで浸透・撹拌させる「減圧機構」を備えています。これにより、複雑に積層された半導体の極小の隙間にある汚れ(フラックス)を、まさに洗濯機のように隅々まで洗い流すことが可能です。

フラックス洗浄装置とは何か

 フラックス洗浄装置とは、半導体や電子基板の製造工程で、ハンダ付けの際に使用される「フラックス(松脂などの洗浄助剤)」の残りカスを除去する装置のことです。

1. なぜ洗浄が必要なのか

 ハンダ付けをスムーズにするために塗布されるフラックスは、作業後に「残渣(ざんさ)」として残ります。これを放置すると、以下のような不具合が発生します。

  • 腐食: 時間とともに回路を腐食させ、断線の原因になる。
  • 絶縁不良: 湿気を吸って電気が漏れ、ショートを引き起こす。
  • 外観・検査不良: 汚れにより、後の検査工程でエラーが出る。

2. 洗浄の仕組み

 一般的には、以下の3つのステップで行われます。

  1. 洗浄: 専用の洗浄液(水系や準水系など)をスプレーで吹きかけたり、超音波を当てたりしてフラックスを溶かします。
  2. リンス(すすぎ): 純水などを用いて、汚れの混じった洗浄液を洗い流します。
  3. 乾燥: 温風や真空状態を利用して、水分を完全に取り除きます。

3. 先端半導体における課題

 最近のAI向け半導体などは、チップを何層にも積み重ねるため、チップ同士の間隔が数マイクロメートルという極めて狭い隙間になっています。

  • 従来の課題: スプレー(シャワー)を当てるだけでは、表面張力によって洗浄液が奥まで入り込まず、汚れが残ってしまう。
  • 最新の解決策: リックスなどが開発している装置のように、「減圧(真空に近い状態)」を利用して空気の壁を取り除き、洗浄液を強制的に隙間の奥まで浸透させる手法が注目されています。

 この洗浄工程は、製品の寿命や信頼性に直結する非常に重要なプロセスです。

ハンダ付けの際に残る松脂などの残留物(フラックス)を除去する装置です。放置すると腐食や絶縁不良の原因となるため、専用の洗浄液や純水で洗い流し、乾燥させます。先端半導体の微細な隙間の洗浄に不可欠な工程です。

新装置の特徴はなにか

 リックスが量産化する先端半導体向け洗浄装置の主な特徴は、従来の「シャワー方式」では不可能な微細領域を洗浄できる点にあります。

1. 減圧(真空)による浸透力の向上

 従来の装置は洗浄液を吹き付けるだけでしたが、新装置は槽内に減圧(真空に近い状態)にします。

  • 仕組み: チップ間の極小の隙間に入り込んだ「空気の壁」を減圧で抜き取り、そこに洗浄液を強制的に引き込みます。
  • 効果: 2.5D/3D実装における数マイクロメートルの隙間でも、洗浄液が奥まで到達します。

2. 強力な撹拌(かくはん)効果

 液を循環させるだけでなく、槽内の圧力を変動させることで液に動きを与えます。

  • 「洗濯機」の由来: まさに家庭用洗濯機のように、液を激しく動かして汚れを剥ぎ取ります。これにより、粘度の高いフラックス残渣も効率的に除去可能です。

3. チップの破損防止

 物理的なブラシや強い噴射圧に頼りすぎないため、繊細なバンプ(接合部)や積層された薄いチップを傷つけにくいという利点があります。


真空に近い減圧状態を作ることで、3D実装などの極小の隙間から空気を抜き、洗浄液を奥まで浸透・撹拌させるのが最大の特徴です。従来のシャワー式では届かない微細部の汚れを、チップを傷めず確実に除去します。

先端半導体洗浄装置の需要が高まっているのはなぜか

 先端半導体において洗浄装置の需要が急増している理由は、主に「構造の複雑化」「汚れによる不具合の影響増大」の2点に集約されます。

1. 3D積層構造(HBMなど)の普及

 現在のAI向け半導体では、チップを垂直に積み上げる「3D実装」や「2.5D実装」が主流です。

  • 極小の隙間: チップ間の隙間は数マイクロメートルと極めて狭く、従来の洗浄方法(シャワー等)では表面張力によって液が奥まで届かず、ハンダ付けの残渣(フラックス)が残ってしまいます。
  • 不具合の直結: 隙間に汚れが残ると、絶縁不良や腐食を引き起こし、高価な先端チップが丸ごと不良品になってしまうため、確実な洗浄が求められています。

2. 回路の微細化(2nm/3nmプロセス)

 回路線幅がナノ単位まで細くなると、目に見えないほど小さなゴミ(パーティクル)一つでも回路を塞ぎ、致命的な欠陥となります。

  • 「全工程の3割」が洗浄: 微細化が進むほど、エッチングや成膜のたびに洗浄が必要になり、製造工程全体に占める洗浄の回数が増加しています。
  • ダメージの回避: 線幅が細すぎて、従来の強い噴射では回路自体が壊れてしまうため、リックスの新装置のような「物理的な衝撃を抑えつつ、汚れだけを吸い出す」高度な技術が必要とされています。

AI用のHBMなど3D積層構造の普及により、極小の隙間の汚れを除去するニーズが急増しています。また、2nm等の微細化に伴い、わずかな塵も致命的な欠陥となるため、高精度で低ダメージな洗浄装置が不可欠となっています。

強力な撹拌でチップに影響しないのか

 「強力な撹拌」と聞くとチップへのダメージが心配になりますが、リックスの新装置はむしろ「チップに優しい」設計になっています。

 従来の装置と異なり、物理的な衝撃で汚れを飛ばすのではなく、「圧力の力」を主役にしているからです。

1. 物理的な「叩き」がない

 従来のシャワー方式やジェット方式は、洗浄液を勢いよくぶつける「物理的な衝撃」で汚れを落とします。これでは微細化した回路や繊細なバンプ(接合部)を壊すリスクがありました。

 新装置は、槽全体の圧力を変化させることで液を動かすため、チップ一点に強い衝撃が加わることがありません。

2. キャビテーション(気泡の破裂)の抑制

 超音波洗浄などで問題になるのが、気泡が弾ける際の衝撃(キャビテーション)によるチップの微細な欠け(ダメージ)です。

 リックスの「減圧(真空)洗浄」は、あらかじめ隙間の空気を抜いてから液を満たし、緩やかに圧力を変動させて撹拌するため、破壊的な気泡の発生を抑えつつ、隅々の汚れだけを浮かせることができます。

3. ダメージレスな撹拌技術

リックスは長年、流体制御技術(液体の動きを操る技術)を培ってきました。

  • ソフトな流動: 液全体を効率よく循環させながらも、チップ表面の層(境界層)だけを優しく揺らすような撹拌を実現しています。
  • 均一な力: 圧力を利用するため、積層されたチップの表側も裏側も、均等に力が分散されます。

強い噴射をぶつけるのではなく、真空状態と圧力変動を利用して液を隅々まで動かすため、チップ一点に過度な負荷がかかりません。繊細な回路や接合部を傷めず、隙間の汚れだけを効率的に浮かせることが可能です。


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