国産AIの基盤モデルを開発する新会社設立 どのような開発を行うのか?

この記事で分かること

  • 日本AI基盤モデル開発の内容:ソフトバンクやNECが主導する1兆パラメーター規模の国産LLM構築に加え、ホンダやソニーの知見を活かした「フィジカルAI」の開発が核心です。自動運転やロボット、センサー等の実機制御に特化した基盤を目指します。
  • 合同で設立した理由:巨額の計算リソース投資と電力負荷を分散し、各社が持つ「現実世界のデータ」を統合するためです。経済安全保障の観点からデータ主権を確保しつつ、開発から製品実装までを国内勢で垂直統合する狙いがあります。日本AI基盤モデル開発の内容

国産AIの基盤モデルを開発する新会社設立

ソフトバンク、NEC、ホンダ、ソニーが中核となり、国産AIの基盤モデルを開発する新会社「日本AI基盤モデル開発」の設立が報じられました。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1207B0S6A410C2000000/

 米中勢が先行する生成AI分野において、経済安全保障やデータ主権の観点から「日の丸AI」による巻き返しを図る狙いがあります。

どんな開発を行うのか

 新会社の「日本AI基盤モデル開発」では、単なるテキストベースのAI(LLM)にとどまらず、「実社会(物理空間)で動くAI」に主眼を置いた開発が進められます。

1. フィジカルAI(Physical AI)の開発

 今回の連合の最大の目玉です。画面の中だけで完結するAIではなく、日本の強みであるハードウェアと融合させ、「考えて動く」能力の構築を目指します。

  • ホンダ: 自動運転車やパーソナルモビリティの制御、自律走行ロボットへの応用。
  • ソニー: 画像センサー技術と組み合わせた高度な認識機能や、エンタメロボットの進化。
  • NEC: 生体認証や映像解析と連動した、社会インフラ管理AIの高度化。

2. 産業特化型・高信頼LLMの構築

 OpenAIなどの汎用モデルとは一線を画し、日本企業の業務や専門データに最適化されたモデルを開発します。

  • 機密保持: 日本国内のデータセンター(ソフトバンク・NEC等)で処理を完結させ、データ主権を確保。
  • 専門性: 製造業、医療、インフラ管理など、特定の産業分野で正確な判断ができるよう、PFN(Preferred Networks)等の技術者が協力してチューニングを行います。
  • 日本語の精緻化: ニュアンスや文化を理解した、より自然でミスの少ない日本語処理。

3. 計算基盤と垂直統合の開発

 AIを効率的に動かすための「ハードウェアとの最適化」も重要な開発項目です。

  • 先端半導体の活用: 開発したAI基盤を、Rapidusが手がける2nm世代の先端半導体や、AI専用チップに最適化(ハードとソフトの垂直統合)。
  • 計算リソースの効率化: ソフトバンクやNECが保有する国内最大級のGPU基盤を活用し、学習・推論の低消費電力化を図ります。

新会社は、日本語に精通した産業特化型モデルに加え、自動運転やロボットを制御する「フィジカルAI」の開発を中核に据える。国内企業の現場データと先端計算基盤を融合し、ハード・ソフト両面での最適化を追求する。

なぜ合同で設立したのか

 単一企業での開発が困難なほど、現在のAI開発には「巨額の投資」と「多様なデータ」が必要だからです。あえて合同で設立した主な理由は以下の4点に集約されます。

1. 莫大な計算リソースと投資の分散

 最新のAI(基盤モデル)の学習には、数千億〜数兆円規模の計算基盤(GPU等)と莫大な電力が必要です。

  • リスク分散: 1社で全てを負担するにはリスクが大きすぎるため、企業連合を組むことで投資効率を最大化します。
  • 政府支援の呼び水: 連合を組むことで「国家プロジェクト」としての側面が強まり、政府からの巨額補助金(約1兆円規模)を引き出しやすくなります。

2. 「フィジカルデータ」の共有と統合

 ネット上の言語データだけでは、ロボットや車を動かすAIは作れません。

  • 現場データの補完: ホンダの走行データ、ソニーのセンサー・画像データ、NECの社会インフラデータなど、各社が持つ「現実世界の生きたデータ」を持ち寄ることで、海外勢が持たない強みを作ります。

3. 経済安全保障とデータ主権

 海外製のAIに依存し続けると、日本の機密情報や産業データが国外に流出するリスクがあります。

  • 国産の囲い込み: 日本独自の法規制や商習慣、日本語の微細なニュアンスに対応した「安全な基盤」を共同で守る狙いがあります。

4. 垂直統合による社会実装

 開発したAIをどこで使うか(出口戦略)が重要です。

  • エコシステムの構築: ソフトバンク・NECが通信と計算基盤を担い、ホンダ・ソニーが製品(車やデバイス)へ実装するという、開発から出口までの「垂直統合」国内勢だけで完結させるためです。

 この動きは、かつての日の丸半導体が抱えていた「開発しても使いこなす産業がバラバラ」という課題を、初期段階から連合を組むことで克服しようとする戦略的な試みと言えます。

巨額の計算コストと電力消費を分担し、各社の「現場データ」を統合して海外勢に対抗するため。経済安全保障を背景に、通信・計算基盤・製品実装を垂直統合し、日本独自の強みを持つ産業AI基盤の早期確立を目指す。

それぞれの企業の役割はなにか

 新会社「日本AI基盤モデル開発」における各社の役割は、大きく「開発・基盤提供」「社会実装・活用」の2グループに分かれています。主要4社を中心とした具体的な役割分担は以下の通りです。

1. 開発・インフラ担当(ソフトバンク、NEC)

 主にAIの「脳」にあたるモデルそのものの構築と、それを動かすための巨大な「計算資源」を提供します。

  • ソフトバンク: 国産最大級のGPU計算基盤(データセンター)の提供。
    • 傘下のエンジニアによる1兆パラメーター規模の基盤モデル開発。
    • 新会社の社長もソフトバンクのAI開発主導メンバーが務めるなど、運営を牽引。
  • NEC:
    • 長年培ったAI技術(cotomi等)の知見投入。
    • 高い信頼性が求められる産業・公共分野向け基盤モデルの構築。

2. 実装・アプリケーション担当(ホンダ、ソニー)

 開発されたAIを、日本が世界で勝負できる「実製品(ハードウェア)」や「サービス」に組み込む役割です。

  • ホンダ:
    • 自動運転、二足歩行ロボット、空飛ぶクルマ(eVTOL)などのモビリティ制御への実装。
    • 現実空間での移動データをAI学習にフィードバック。
  • ソニーグループ:
    • ゲームや映画などのエンタメ領域でのコンテンツ生成。
    • 自社の画像センサー技術とAIを融合させた、高度な認識システムの開発。
    • 次世代半導体設計におけるAI活用。

3. その他の参画企業(出口・ユーザー層)

 開発された国産AIを自社の業務やサービスにいち早く取り入れ、実用性を高める役割です。

  • 金融(三菱UFJ・三井住友・みずほ): 安全性が求められる金融実務や資産運用への活用。
  • 日本製鉄: 製造現場のDX、材料開発(マテリアルズ・インフォマティクス)への応用。
  • PFN(Preferred Networks): 最先端の深層学習技術の提供と開発協力。

ソフトバンクとNECが計算基盤の提供と1兆パラメーター規模のモデル開発を主導。ホンダとソニーは開発成果を自動運転やロボット、センサー、エンタメ等の実製品へ実装し、物理空間で機能する次世代AIを確立する。

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