SCREEN、アメリカでの研究開発拠点設立 なぜアメリカに研究所を作るのか?

この記事で分かること

1. どんな研究を行うのか

次世代の2nm世代以降に向け、IBM等と連携しHigh-NA EUV露光に対応した超精密洗浄や、3D実装(後工程)向けの接合前処理・熱処理技術を開発します。微細化に伴うパターン倒壊防止や新材料対応が主眼です。

2. フォトレジスト除去とは何か

回路パターンを転写する役割を終えた不要な感光剤(レジスト)を剥離・清浄する工程です。プラズマで燃やす「アッシング」と薬品で溶かす「ウェット洗浄」を組み合わせ、1ナノの残渣も残さず表面を浄化します。

3. なぜアメリカに研究所を作るのか

最先端の2nm開発が進むニューヨーク州の拠点で、IBMや主要顧客と最新設備を共有し、開発を加速するためです。米国の半導体製造強化(CHIPS法)の流れに乗り、次世代の標準技術を現場で確立する狙いがあります。

SCREEN、アメリカでの研究開発拠点設立

SCREENは、半導体製造装置事業の競争力強化を目的に、海外初となる研究開発拠点を設立しました。

 2025年12月に設立、順次投資を開始し、先端半導体プロセスの微細化とエコシステムへの参画を目指しています。

どんな研究を行うのか

 SCREENが新拠点(ATCA)で行う研究は、単なる「装置の改良」にとどまらず、2nm世代以降の最先端プロセス次世代パッケージングの実現に向けた、非常に難易度の高い領域に集中しています。具体的には、以下の4つの主要テーマが中心となります。

1. 次世代EUVリソグラフィー向け洗浄技術

 IBMとの共同研究が核となります。特に、今後導入されるHigh-NA EUV露光装置(高開口数EUV)に対応した洗浄プロセスを開発します。

  • 微細化への対応: 回路線幅が極めて細くなるため、従来の洗浄方法ではパターンが倒れたり(パターン倒壊)、汚れが落ちきらなかったりします。これらを防ぐ、物理力を極限まで制御した洗浄技術を研究します。
  • フォトレジスト除去: 新しいEUVレジスト(メタルレジストなど)に対応した、残留物ゼロの剥離技術を確立します。

2. 「選択的エッチング」と「成膜前処理」

 微細化が限界に近い2nm世代では、狙った層だけを精密に削る、あるいは特定の場所にだけ膜を張る技術が不可欠です。

  • ウェットエッチングの精密制御: 化学液を用いて、ナノ単位で膜厚をコントロールするプロセスを開発します。
  • 表面改質: 膜を張る直前のウェーハ表面を原子レベルで整え、密着性や電気的特性を最大化する「前処理」の研究を行います。

3. アドバンスドパッケージング(後工程)

 チップを積み重ねたり、複数のチップを1つにまとめたりする「2.5D/3D実装」技術に注力します。

  • TSV(シリコン貫通電極)内の洗浄: 深く細い穴の中にある微細なゴミを取り除く技術。
  • ハイブリッドボンディング前処理: チップ同士を直接接合する際、接合面に一分子の汚れも許されないため、超高純度な洗浄と表面活性化が必要となります。
  • パネルレベルパッケージング: 大型基板を用いた製造プロセスでの、反りや歪みに対応した処理技術。

4. 熱処理(アニール)プロセスの高度化

 SCREENが得意とする熱処理装置についても、研究対象に含まれます。

  • 極短時間熱処理: ナノ秒単位で表面だけを加熱し、不純物を活性化させつつ、熱によるデバイスへのダメージを最小限に抑える技術(レーザーアニールなど)の最適化を行います。

 単に「装置を売る」ためではなく、「次世代半導体がどう作られるべきか」というルール作りから参画するのが、この拠点の真の目的です。

次世代の2nm世代以降の微細化に対応するため、IBMや大手デバイスメーカーと連携し、High-NA EUV露光に対応した超精密洗浄技術や、3D実装(後工程)向けの接合前処理・熱処理プロセスの研究開発を行います。

なぜアメリカに研究所を作るのか

 SCREENが日本国内(彦根や洛西)だけでなく、あえて米国ニューヨーク州に巨額を投じて拠点を設けるのには、「最先端の現場」と「地政学」という2つの大きな理由があります。

1. 「2nmの聖地」で開発を加速するため

 拠点を置く「Albany NanoTech Complex」は、世界で最も早く2nm世代の技術開発が進んでいる場所の一つです。

  • IBMとの密接な連携: SCREENはIBMと次世代プロセスの共同開発契約を結んでいます。彼らのすぐ隣に陣取ることで、開発中のデバイスに合わせた洗浄・熱処理技術を、数年先の量産化を待たずに同時並行で作り込めます。
  • 超高額な設備の共有: 次世代の露光装置(High-NA EUVなど)は1台数百億円もするため、自社だけで持つのは困難です。世界トップクラスの設備が揃うこの施設内にいれば、それらの装置と自社機を組み合わせてすぐにテストができます。

2. 「米国の半導体回帰」に対応するため

 現在、米国はCHIPS法などを通じて、最先端半導体の製造を自国内に戻そうとしています。

  • 主要顧客が米国へ集中: インテルやサムスン、TSMCが米国に巨大工場を建設しており、主要顧客の技術者と「現地で、リアルタイムに」協力体制を築くことが受注競争に直結します。
  • エコシステムへの参画: 装置メーカーが「単なるサプライヤー」ではなく、米国の国家的な開発プロジェクトの一員として組み込まれることで、将来の標準技術(デファクトスタンダード)を自社に有利な形で進められるメリットがあります。

 「世界一のスピードで開発を進めるために、最先端の装置とパートナーが集まるニューヨークに行く必要があった」ということです。

 日本の拠点で要素技術を磨き、米国の拠点で「世界基準の最先端」に合わせるという、2段構えの戦略をとっています。

最先端の2nm世代開発が集結するニューヨーク州の拠点で、IBMなどのパートナーや最新設備(High-NA EUV)と直接連携し、開発サイクルを加速するためです。米国の製造強化の流れに乗り、次世代の標準技術を顧客の近くで確立する狙いがあります。

Albany NanoTech Complexとは何か

 「Albany NanoTech Complex(オールバニ・ナノテック・コンプレックス)」は、ニューヨーク州立大学(SUNY)のキャンパス内に位置する、世界最大級かつ最先端の半導体研究開発拠点です。

 単なる大学の施設ではなく、政府・企業・アカデミアが一体となった「半導体エコシステムの中心地」として知られています。


主な特徴と役割

1. 世界最先端の設備(300mmウェーハ対応)

 商用工場と同等の本格的なクリーンルーム(約1.4万平方メートル以上)を備えています。

  • High-NA EUV露光装置: ASML製の次世代露光装置が導入されるなど、数年先の量産技術をテストできる環境が整っています。
  • 一気通貫の開発: 設計から成膜、露光、エッチング、洗浄、パッケージングまで、半導体製造の全工程を一つの拠点で行えます。
2. 「競合他社」が共に研究する場

 インテル、サムスン、TSMC、IBM、マイクロン、そしてSCREENや東京エレクトロンといった主要プレイヤーが、同じ屋根の下で研究を行っています。

  • 産官学連携: ニューヨーク州政府が巨額の資金を投じ、民間企業とリスクを共有しながら次世代技術を開発するモデル(NY CREATES)によって運営されています。
3. 「2nm世代」開発の聖地

 IBMが2021年に「世界初の2nmチップ」を発表したのもこの場所です。現在は「2nmの先(1.4nm〜)」を見据えた開発が進められており、ここで採用された手法が世界標準(デファクトスタンダード)になる影響力を持っています。


 半導体は微細化が限界に近づき、1社だけで開発するにはコストもリスクも高くなりすぎました。

 Albany NanoTechは、「高価な設備をシェアし、業界全体で次世代の『作り方』を決める場所」として、米国が半導体覇権を取り戻すための戦略拠点(NSTC:国立半導体技術センターの中核候補)となっています。

 SCREENなどの装置メーカーにとって、ここに拠点を置くことは「世界最高峰の顧客や装置と、24時間365日いつでも連携できる権利」を得ることに等しいと言えます。

ニューヨーク州立大学内に位置する、世界最大級の公的半導体研究開発拠点です。IBMや主要装置メーカーが集結し、次世代の2nm世代High-NA EUVを用いた開発が行われており、米国半導体戦略の中核を担う「世界最先端の共用ラボ」としての役割を果たしています。

フォトレジスト除去はどんな工程か

 フォトレジスト除去(剥離)は、回路パターンを転写する役割を終えた不要なレジスト膜(感光剤)をウェーハ表面から完全に取り除く工程です。

 半導体製造では「成膜→露光→現像→エッチング」というサイクルを何度も繰り返しますが、エッチングが終わった後、次の工程に進む前にレジストをきれいに掃除する必要があります。


主な手法:ドライとウェットの組み合わせ

 現在の先端プロセスでは、主に以下の2段階で除去が行われます。

1. アッシング(灰化 / ドライ除去)

 酸素プラズマなどを用いて、レジスト(有機物)を化学反応によって燃焼させ、ガスとして飛ばす方法です。

  • 仕組み: O2(酸素)プラズマがレジストの炭素と反応し、CO2(二酸化炭素)やH2O(水蒸気)となって揮発します。
  • 特徴: 多くのレジストを素早く除去できますが、表面にわずかな残渣(灰)が残ることがあります。

2. ウェット洗浄(剥離液による除去)

 アッシングで取りきれなかった残渣や、エッチング時に変質した「硬化層」を化学薬品(剥離液)で溶かして洗い流します。

  • 仕組み: 硫酸と過酸化水素の混合液(SPM)や、専用の有機剥離液を使用します。
  • 特徴: 微細な溝の中まで薬品が入り込み、原子レベルで表面を清浄にします。

2nm世代における課題とSCREENの役割

デバイスの微細化が進むと、この除去工程が非常に難しくなります。

  • パターン倒壊の防止: 洗浄後の乾燥時に、表面張力で繊細な回路パターンが倒れてしまうのを防ぐ技術(乾燥技術)が求められます。
  • 新材料への対応: EUV露光で使われる「メタルレジスト(金属を含むレジスト)」は、従来の酸素プラズマだけでは落としにくいため、ATCAなどの拠点で新しい化学薬品や処理手法が研究されています。
  • ダメージレス: 回路そのものを削ることなく、レジストだけを選択的に、かつ1ナノの残りもなく除去する精度が追求されています。

 SCREENはこの「ウェット洗浄」の分野で世界シェア1位の技術を持っており、薬品の配合や物理的な洗浄力の制御を極めることで、次世代半導体の歩留まり向上を支えています。

回路パターンを転写する役割を終えた感光剤(レジスト)を、ウェーハ表面から完全に取り除く工程です。プラズマで燃やす「アッシング」と薬品で溶かす「ウェット洗浄」を組み合わせ、原子レベルで残渣を除去します。

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