ASMPT、TCボンダー装置のシェア拡大 TCボンダーとは何か?

この記事で分かること

TCボンダーとは

熱と圧力を同時に加えてチップを接合する装置です。チップの反りを抑えつつ微細な端子を高精度に接続できるため、AI用メモリ(HBM)のようにチップを多層に積み上げる高度な製品の製造に不可欠な存在です。

受注拡大の理由

HBM4(第6世代)にいち早く対応した高い技術力が最大の要因です。また、特定の装置メーカーへの依存を嫌う顧客によるサプライヤー多様化の動きや、韓国勢の競合他社間での紛争も追い風となっています。

チップの反りを抑える仕組み

高精度センサーでチップの歪みをリアルタイム検知し、ヘッドの圧力や角度を微調整する動的補正機能を備えています。また、接合部のみを瞬時に熱制御することで、熱膨張による反りを最小限に抑え平坦性を維持します。

ASMPT、TCボンダー装置のシェア拡大

 半導体パッケージング装置大手のASMPTが、第6世代高帯域幅メモリ「HBM4」向けに熱圧着(TCボンダー: Thermal Compression Bonding)装置の受注を相次いで獲得していることが報じられています。

 これまで韓国のハンミ半導体(Hanmi Semiconductor)が事実上の独占状態であったHBM向けボンダー市場において、急速にシェアを拡大しています。

TCボンダーとは何か

 TCボンダー(Thermal Compression Bonder)とは、半導体の製造工程(後工程)において、チップを基板や別のチップに接続するための装置です。

 「熱(Thermal)」「圧力(Compression)」を同時に加えることで、金属(主にハンダバンプ)を溶融・接合させ、電気的に接続(ボンディング)を行います。

なぜTCボンダーが必要なのか

 従来の主流は、チップを載せてからオーブン(リフロー炉)で一気に加熱する「リフロー方式」でした。しかし、近年の高度な半導体では以下の理由からTCボンダーが不可欠になっています。

  1. 薄型化への対応: チップが非常に薄くなると、リフロー炉の熱でチップが反ってしまい、接続不良が起きます。TCボンダーはヘッドでチップを抑え込みながら加熱するため、反りを強制的に抑えることができます。
  2. 端子の高密度化: チップの接続端子(バンプ)の間隔が狭くなると、リフロー方式では隣同士のハンダがくっついてショートするリスクが高まります。TCボンダーはピンポイントで位置合わせと加熱を行うため、微細な接続に適しています。
  3. 多層積層(HBMなど): 高帯域幅メモリ(HBM)のように、チップを何枚も垂直に積み上げる構造では、各層を正確に、かつ平坦に積み上げる必要があり、TCボンダーの精度が求められます。

主な仕組みとプロセス

 TCボンダーの動作は、一般的に以下のステップで行われます。

  • ピック&プレース: ボンディングヘッドがウェハから個別のチップを吸着し、基板上の正確な位置に運びます。
  • アライメント: カメラを使用して、チップのバンプと基板のパッドをミクロン単位の精度で位置合わせします。
  • 熱圧着: ヘッドが下降し、チップを押し付けながら加熱します。ヘッドに内蔵されたヒーターが急速に昇温し(パルスヒート)、ハンダを溶かして接合します。
  • 冷却・保持: ハンダが固まるまで圧力を保持したまま冷却し、ヘッドを離します。

現在の市場とトレンド

 前述の通り、AIサーバー向けのHBM(高帯域幅メモリ)の需要爆発により、TCボンダーは「最も重要な製造装置」の一つとなっています。

  • 先端技術への移行: HBM3EやHBM4といった次世代メモリでは、さらにチップ間の隙間を埋めるアンダーフィル材を同時に流し込む「NCF(Non-Conductive Film)」方式のTCBが主流となっています。
  • 競合メーカー: シンガポールのASMPT、韓国のハンミ半導体などが世界シェアを競っています。

 今後、さらに高密度化が進むと「ハイブリッド・ボンディング(ハンダを介さず銅同士を直接接合する技術)」へ移行すると予測されていますが、コストや技術的難易度のバランスから、当面はTCボンダーが主役の座を維持すると見られています。

TCボンダーは、「熱」と「圧力」を同時に加えてチップを接合する装置です。チップの反りを抑えながら微細な端子を高精度に接続できるため、AI向けメモリ(HBM)のようなチップを多層に積み上げる高度な製品の製造に不可欠です。

Non-Conductive Film方式とは何か

 NCF(Non-Conductive Film:非導電性フィルム)方式とは、半導体チップを積層する際、チップの間にあらかじめ絶縁性の接着フィルムを挟み込み、熱と圧力をかけて接合する工法です。

 主にHBM(高帯域幅メモリ)の製造において、サムスン電子やマイクロンなどが採用している重要な技術です。

NCF方式の仕組み

  1. フィルムの貼付: ウェハの状態、あるいは個別のチップ(ダイ)の裏面に、ハンダバンプを覆うようにNCFを貼り付けます。
  2. 積層と熱圧着(TCB): チップを積み重ね、TCボンダーで加熱・加圧します。
  3. 接合: 熱によってフィルムが軟らかくなり、チップ間のバンプがフィルムを突き破って下のパッドと接合されます。同時に、フィルムがチップ間の隙間を完全に埋めて硬化し、絶縁と固定を同時に行います。

主なメリット

  • 薄型・多層化に強い: チップが非常に薄くなっても、フィルムが物理的な支えとなるため、チップの「反り」を抑えながら均一に積み上げることができます。
  • ショートの防止: 端子間が非常に狭い(ファインピッチ)場合でも、絶縁フィルムがバンプの間を埋めているため、ハンダが横に広がって隣と接触するのを防げます。
  • プロセスの簡素化: 接合と同時に隙間を埋める(アンダーフィル)作業が終わるため、後から樹脂を流し込む必要がなく、多層化が進んでも工程の難易度が上がりにくいのが特徴です。

競合技術との違い

 HBM市場では、このNCF方式と、SKハイニックスが推進するMR-MUF方式(チップを積んだ後に隙間に樹脂を流し込む方式)が激しくシェアを争っています。

 HBM4のような16段を超える超多層化においては、いかにフィルムを薄く、かつ気泡なく貼り付けるかがNCF方式の大きな技術的挑戦となっています。

NCF方式とは、チップ間に絶縁性フィルムを挟み、熱と圧力をかけて接合する工法です。加熱時にバンプがフィルムを突き破って接続され、同時にフィルムが隙間を埋めて固定します。チップの反りを抑えられるため、HBMなどの高度な多層積層に適しています。

なぜASMPTの受注が拡大しているのか

 ASMPTの受注が急拡大している背景には、単なる需要増だけでなく、「技術的優位性」「地政学・サプライチェーンの戦略」「競合他社の状況」という3つの決定的な要因があります。

1. HBM4に向けた技術的リード

 HBM4(第6世代)では、チップを16段積層するなど、これまで以上に高度な積層技術が求められます。

  • 16段積層への対応: ASMPTのTCボンダーは、16段積層で課題となる「積層高さの制限」と「チップの反り」を抑える精度が非常に高いと評価されています。2025年のCESでは、同社装置を用いた16段HBM4のサンプルが公開されるなど、次世代規格への適応で先行しました。
  • フラックスレス(Fluxless)技術: 従来の接合で必要だった洗浄工程を省く「フラックスレス」対応を進めており、端子間隔が10μmレベルまで狭まるHBM4において、残留物による不良を防ぎ、歩留まりを向上させる解決策として注目されています。

2. サプライチェーンの多様化(マルチソース化)

 これまで、HBMの最大手であるSKハイニックスは、韓国のハンミ半導体から装置を独占的に調達していました。しかし、以下の理由からASMPTへの発注を急拡大させています。

  • 特定メーカー依存の脱却: 需要が爆発する中、1社依存は供給不足のリスクを伴います。SKハイニックスは、安定調達のために「第2、第3の供給源」を求めており、グローバル展開しているASMPTがその筆頭に選ばれました。
  • 韓国サプライヤー間の紛争: 韓国国内の競合(ハンミ半導体とハンファ・セミテック)が激しい特許紛争を繰り広げており、この紛争に巻き込まれるリスクを避けるために、中立的な立場にあるシンガポールのASMPTへの発注が加速したという側面もあります。

3. コストパフォーマンスとOSATへの強み

  • 樹脂効率とコスト削減: ASMPTは樹脂の使用効率を100%に近づける新技術を導入しており、高価な材料の無駄を省きたいメーカーのニーズに合致しています。
  • OSAT(後工程受託業者)との深い関係: ASMPTはもともと、台湾のASEなどのOSAT企業に対して圧倒的なシェアを持っていました。現在、大手半導体メーカーがHBMの後工程をOSATに委託する動きを強めているため、既に信頼関係のあるASMPTの装置が自然と選ばれる流れができています。

 「次世代(HBM4)にいち早く対応できる高い技術力」を持ちつつ、「韓国勢の紛争や供給リスクを避けたい顧客の受け皿」として、絶好のポジションを確立したことが、現在の受注独走につながっています。

ASMPTの受注拡大は、HBM4(第6世代)にいち早く対応した高い技術力が最大の要因です。また、特定の装置メーカーへの依存を嫌う顧客によるサプライヤー多様化の動きや、競合他社間の紛争も追い風となっています。

ASMPTの装置はどのようにチップの反りを抑えているのか

 ASMPTの装置がチップの反りを抑え、精密な積層を実現している背景には、主に3つのメカニズムがあります。

1. リアルタイム・アクティブコンペンセーション(動的補正)

 ボンディングヘッドに搭載された高精度センサーが、加熱中のチップの歪みをリアルタイムで検知します。チップが熱で反ろうとする力を計算し、ヘッドの押し込み圧力や角度をミクロン単位で微調整することで、チップを常に水平かつ平坦に保ちます。

2. パルスヒート(急速昇温・冷却)制御

 ASMPTのTCボンダーは、接合時だけ一瞬で温度を上げ、その後すぐに冷却する「パルスヒート」方式を高度に制御しています。

  • 局所加熱: チップ全体をダラダラと加熱せず、接合部にのみ熱を集中させることで、チップ全体が熱膨張して反り返る時間を最小限に抑えます。
  • セラミックヒーター: 熱応答性の高いセラミックヒーターを採用しており、狙った温度プロファイルを極めて正確に再現します。

3. 真空吸着と圧力プロファイルの最適化

 ボンディングヘッドの下面(チップを掴む面)には、チップを平坦に矯正するための精密な真空吸着機構が備わっています。

  • フラットネス維持: 非常に薄いチップでも、ヘッドに吸着された時点で物理的にまっすぐ矯正されます。
  • 多段階加圧: 接合の瞬間に一気に圧力をかけるのではなく、樹脂(NCF)の流動性やハンダの溶融状態に合わせて圧力を段階的に変化させ、内部応力が残らないように工夫されています。

 これらの技術が組み合わさることで、HBM4のような「極薄のチップを16段も積み重ねる」という、少しの歪みも許されない極限の作業を可能にしています。

ASMPTの装置は、高精度センサーでチップの歪みをリアルタイム検知し、ヘッドの圧力や角度を微調整する動的補正機能を備えています。また、接合部のみを瞬時に熱制御する技術により、熱による膨張と反りを最小限に抑え、極薄チップの平坦な積層を実現しています。

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