この記事で分かること
1. セラミックインターポーザとは
半導体チップと樹脂基板の間で配線を中継するセラミック製基板です。シリコンに近い熱膨張率と高い剛性・放熱性を兼ね備え、チップの大型化や高密度化に伴う熱による反り、および接続不良を防ぐ役割を果たします。
2. 主な問題点
焼成(焼き固める工程)時の収縮による寸法管理が難しいため製造コストが高く、表面の微細な凹凸によって数μm単位の超微細配線の形成に限界があります。また、材質特有の「脆さ」による割れやすさも課題です。
3. 主な用途
莫大な発熱と大面積化により樹脂基板では歪みが生じる、生成AI・データセンター向けの高性能AIアクセラレータやサーバー用CPU、次世代の光電融合通信モジュール、高い信頼性が求められる車載半導体に使われます。
日本特殊陶業とNTKセラミックのセラミックインターポーザ
AIの普及や5G/6G通信の進展に伴い、半導体パッケージングは「チップレット(異種チップの集積)」や大面積化・高密度化が急速に進んでいます。
日本特殊陶業とNTKセラミックは、セラミック特有の「高強度」「高熱伝導率」「低熱膨張」という強みを活かした、次世代の後工程ソリューションが提示しています。
セラミックインターポーザとは何か
セラミックインターポーザとは、半導体パッケージの内部において、「シリコンチップ(ダイ)」と「メインのプリント配線基板(マザーボード等)」の間に入り、両者を電気的・物理的に中継(インターポーズ)するセラミック製の接続基板のことです。
近年主流となっている、複数のチップを1つのパッケージにまとめる「チップレット(異種チップ集積)」や、高性能なAIアクセラレータ、サーバー向けCPUなどで特に重要な役割を果たしています。
なぜインターポーザーが必要なのか?
従来の半導体は、1つのシリコンチップ上にすべての回路を詰め込んでいましたが、製造コストの増大や微細化の限界(ムーアの法則の鈍化)により、役割ごとの小さなチップ(演算用、メモリ用など)を組み合わせるチップレット技術へと移行しています。
しかし、ここで2つの大きなギャップが生まれます。
- 配線の密度(ピッチ)のギャップ
- シリコンチップ側の接続端子は数マイクロメートル(μm)単位と極めて微細ですが、マザーボードや有機サブストレート(樹脂基板)側の端子は数百μm単位と粗いため、直接繋ぐことができません。インターポーザーがその間で「配線の橋渡し(ピッチ変換)」を行います。
- 熱膨張率のギャップ(最重要)
- シリコン(チップ)と樹脂(有機基板)は、熱を加えたときの膨張率(熱膨張係数:CTE)が大きく異なります。
- チップが発熱すると、樹脂基板だけが大きく伸びようとするため、基板が反ってしまい、チップと基板を繋ぐ微細なハンダ(バンプ)が引きちぎれてしまいます。
「セラミック」であることのメリット
これまでインターポーザーには、半導体プロセスをそのまま流用できるシリコン(Si)が多く使われてきました(シリコンインターポーザー)。しかし、コストが非常に高いという欠点があります。
そこで、樹脂よりも優れ、シリコンに匹敵する特性を持つ材料としてセラミック(アルミナや窒化アルミニウムなど)が注目されています。
① 熱膨張率(CTE)がシリコンに近い
セラミックの熱膨張率はシリコンに非常に近いため、AIチップなどの超高発熱デバイスが駆動しても、パッケージ内部で「反り(歪み)」がほとんど発生しません。これにより、接続部の破断を防ぎ、高い信頼性を保てます。
② 高い剛性(変形しにくさ)
樹脂基板に比べて極めて硬く、曲がりにくいため、パッケージ全体が大型化(例:75mm〜100mm角以上)しても、平坦さを維持できます。
③ 優れた放熱性(窒化アルミニウムなど)
特に窒化アルミニウム(AlN)などのセラミックは熱伝導率が非常に高いため、チップから発生した莫大な熱を効率よく下の基板やヒートシンクへ逃がすことができます。
④ 低コスト化と多層化の両立
セラミックの製造では、粘土のような「グリーンシート」に穴をあけ、金属を埋め込んで重ねて焼く(同時焼成技術)ため、シリコンに比べて大型の基板を比較的安価に製造でき、さらに内部に何層もの配線(多層配線)を埋め込むことが得意です。
競合技術(ガラスコア基板など)との違い
現在、半導体パッケージ市場では、従来の「有機(樹脂)」の限界を超えるため、インターポーザーやコア基板の素材を巡る開発競争が激化しています。
| 特性 | セラミック | シリコン(Si) | ガラス(Glass) | 有機(樹脂) |
|---|---|---|---|---|
| 熱膨張率(Siへの近さ) | 極めて近い(優秀) | 同一(最適) | 近い(優秀) | 遠い(課題あり) |
| 剛性(反りにくさ) | 極めて高い | 高い | 高い | 低い(大面積化で反る) |
| 熱伝導性(放熱性) | 高い(特にAlNは優秀) | 普通 | 低い(熱がこもりやすい) | 極めて低い |
| 大面積化・コスト | 得意・中コスト | 苦手・高コスト | 得意・中コスト(開発中) | 得意・低コスト |
- セラミック: 長年電子部品で使われてきた実績(信頼性)があり、「壊れにくさ(高強度)」「放熱性」「シリコンに近い熱膨張」をすべてバランスよく満たす現実的な選択肢として、Niterra(日本特殊陶業)などのメーカーが次世代AIチップ向けに提案を強めています。
- シリコン(2.5D実装): 性能は最高ですが、ウェハサイズに縛られるため大面積化が難しく、最も高コストです。
- ガラス(ガラスコア基板): 現在インテルなどが注力しており、平坦性や微細配線に優れますが、脆さ(割れやすさ)や放熱性に課題を残します。

セラミックインターポーザとは、半導体チップと樹脂基板の間で配線を中継するセラミック製接続基板です。シリコンに近い熱膨張率と高い剛性・放熱性を持ち、大型化したAIチップ等の熱による反りや接続不良を防ぎます。
セラミックインターポーザの問題点は何か
セラミックインターポーザは非常に優れた物理特性を持つ一方で、実用化・普及に向けたいくつかの課題(問題点)も抱えています。主にコスト、微細化の限界、そして脆さ(脆性)の3点に集約されます。
1. 製造コストと量産性の課題
セラミック基板は、材料を混ぜてシート状にし、金属を印刷して高温で焼き固める(焼成)というプロセスを踏みます。
- 焼き縮みによる寸法変化: セラミックは焼成時に約15〜20%ほど「収縮」します。この収縮を完全にコントロールするのは難しく、大面積化するほど寸法にわずかなズレ(公差)が生じやすくなり、歩留まり(良品率)が低下してコストが跳ね上がります。
- 製造プロセスの長さ: 高温での焼成や、その後の精密な研磨加工が必要なため、従来の有機樹脂基板(ビルドアップ基板)に比べて製造サイクルが長く、大量生産時のコスト競争力で劣ります。
2. 微細配線(高密度化)の限界
AIチップの接続には、数マイクロメートル(μm)レベルの極めて微細な配線(L/S:ライン&スペース)が求められます。
- 表面の凹凸(粗度): セラミックは結晶粒の集まりであるため、シリコンやガラスに比べて表面にわずかな凹凸があります。表面が荒いと、その上に超微細な回路パターンを焼き付けることが難しくなります。
- ビア(穴)の高密度化: 基板を上下に貫通する電極(ビア)のサイズやピッチを縮小する限界が、シリコンやガラスよりも高めです(前述のSEMISOL展示でもビアサイズはφ100μm、ピッチ0.15mmであり、シリコンの数μmレベルにはまだ及びません)。
3. 「割れ」や「欠け」の物理的リスク(脆性)
有機樹脂基板は柔軟性(しなり)があるため衝撃に強いですが、セラミックは「焼き物」であるため、本質的に脆(もろ)いという性質があります。
- ハンドリング時の破損: パッケージの組み立て工程(実装工程)や搬送時に、強い衝撃や局所的な応力がかかると、クラック(ひび割れ)や欠けが発生しやすくなります。
- 大面積化・薄型化とのトレードオフ: 性能を高めるために「広く、薄く」作ろうとするほど、この割れやすさのプロセスコントロールが極めて難しくなります。
4. 重量の問題
セラミックは樹脂に比べて密度が高く重いため、スマートフォンなどのモバイル機器への採用には向きません(基本的には据え置きのデータセンター用サーバーやAIアクセラレータが主用途になります)。
セラミックインターポーザは、「シリコンよりは安いが、有機樹脂やガラスよりは高い」「シリコンより配線は粗いが、放熱性と強度は抜群に高い」という位置づけにあります。
現在インテルなどが猛烈に開発を進めているガラスコア基板(平坦性が高く、微細化が得意だが、熱に弱く割れやすい)や、実績のあるシリコンインターポーザ(高性能だが超高コスト)との間で、どれだけ「コストを抑えつつ表面を平滑にできるか」が、今後の市場シェア獲得に向けたブレイクスルーの鍵を握っています。

セラミックインターポーザは、焼成時の収縮による寸法管理の難しさから製造コストが高く、表面の凹凸により数μm単位の超微細配線形成に限界があります。また、材質特有の「脆さ」による割れやすさも課題です。
セラミックインターポーザはどんな用途に利用されるのか
セラミックインターポーザは、その「優れた放熱性」「高い剛性(反りにくさ)」「シリコンに近い熱膨張率」という強みを活かし、主に超高発熱、大面積、そして極めて高い信頼性が求められるハイエンド領域(データセンターやインフラ、過酷な環境)で利用されます。
スマートフォンなどの薄型・軽量・使い捨て型のモバイル機器ではなく、以下のような「重厚長大」かつ最先端のシステムが主な用途です。
1. 生成AI・データセンター用 AIアクセラレータ
- 概要: NVIDIAの「Blackwell」やAMDの「Instinct」シリーズに代表される、巨大なAI学習・推論用プロセッサです。
- なぜ必要か: 最新のAIチップは、巨大な演算用ロジックチップの周囲に、HBM(広帯域メモリ)と呼ばれるメモリを複数個並べて、1つの巨大なパッケージに集積(チップレット)しています。
- 莫大な消費電力(1チップあたり1000W超)によって発生する「超高熱」を逃がし、熱変化によるパッケージ全体の「反り」を力学的に抑え込むために、強固で熱に強いセラミックインターポーザが理想的な基盤となります。
2. ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)用次世代CPU/GPU
- 概要: 科学技術計算、気象予測、金融シミュレーションなどを行うスーパーコンピュータや、企業の基幹サーバー向けプロセッサです。
- なぜ必要か: パッケージサイズが75mm〜100mm角以上に大型化するため、従来の樹脂(有機)基板では製造時や稼働時の熱でどうしても基板が歪んでしまいます。セラミックの「変形しにくさ」が大面積パッケージの安定動作を支えます。
3. 光電融合(CPO:Co-Packaged Optics)通信モジュール
- 概要: AIデータセンター内のデータ爆発に対応するため、電気信号ではなく「光」でチップ間を通信させる次世代の光通信技術です(光トランシーバーチップをロジックチップのすぐ近くに同居させる実装)。
- なぜ必要か: 光通信では精密なレーザー光の「軸合わせ」が必要なため、基板が熱で1ミリミクロンでも歪むと通信エラーになります。熱膨張がシリコンとほぼ同じで寸法が極めて安定しているセラミックは、光学部品を精密に固定する土台として最適です。また、日本特殊陶業が展示した「透光性セラミック」は光を透過させるため、光信号を基板の裏表にシームレスに通すような新しい設計にも応用されます。
4. 車載用パワー半導体・自動運転(AD/ADAS)ECU
- 概要: 電気自動車(EV)のモーターを制御するインバーター(SiC/GaNパワー半導体)や、自動運転を司る高性能な中央制御コンピューターです。
- なぜ必要か: 車載電子部品には、マイナス40℃からプラス150℃を超えるような激しい温度サイクルと、長年使い続けても壊れない圧倒的な「長期信頼性」が求められます。樹脂基板のように経年劣化で剥離したり、熱疲労でハンダがクラック(ひび割れ)したりするリスクが極めて低いため、安全性が第一の車載インフラ領域でセラミックが選ばれます。
セラミックインターポーザの主要な使い道を一言で表すと、「シリコン製(Siインターポーザ)ではコストが高すぎて巨大化も難しいが、樹脂製(有機基板)では熱と反りに耐えられない」という、最先端AI・インフラの限界領域を埋めるパーツとして活用されています。

生成AIやデータセンター向けの高性能AIアクセラレータ、サーバー用CPUに採用されます。莫大な発熱と大面積化により樹脂基板では歪んでしまう領域や、高い熱安定性が求められる次世代光通信、車載半導体が主用途です。

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