パッケージ基板:はんだによるマスリフロー法

この記事で分かること

接続方法

主な接続方法は、はんだを一括溶融する「マスリフロー」、熱と圧力で個片接合する「熱圧着(TCB)」、振動を用いる「超音波」、銅電極同士を直接接合する最先端の「ハイブリッドボンディング」の4つです。

形成方法

主な形成方法は、最先端の微細ピッチに適した「めっき法」、メタルマスクを使い低コストで大量生産する「ペースト印刷法」、均一なはんだの微小球を電極へ一括配置する「マイクロボール搭載法」の主に3つです。

はんだの必要性

低温で溶けるため熱ダメージを防ぎ、軟らかさでチップと基板の熱膨張差を吸収します。また溶融時の表面張力で位置ズレを自動補正する特性(セルフアライメント)や、優れた電気・熱伝導性を持つため必要です。

パッケージ基板:はんだによるマスリフロー法

 パッケージ基板とは、半導体チップ(ダイ)を載せ、マザーボードなどのメイン基板に接続するための中継基板のことです。半導体チップは非常に微細な端子を持ち、そのまま一般的なプリント基板(PCB)に直接実装することは極めて困難です。

 そこでチップとマザーボードの間に介在し、電気信号を橋渡しする役割を持つのがパッケージ基板です。

 従来の半導体の微細化による性能向上が限界に近づく中、半導体の先端パッケージング技術じゃビルドアップ多層構造による高密度・微細配線が求められ、半導体性能向上の新たな競争軸となっています。

 前回はワイヤーボンディングの際に使用される装置やワイヤーの素材の違いに関する記事でしたが、今回はフリップチップでの接続方法やはんだによる接続に関する記事となります。

フリップチップボンディングにはどのような接続方法があるのか

 フリップチップボンディングは、チップ表面に形成した電極(バンプ)を基板や別のチップに反転(フリップ)させて直接接続する技術です。

 電極の微細化(ファインピッチ化)や熱ストレスの許容量、生産コストなどに応じて、主に以下の4つの接続方法(プロセス方式)が使い分けられています。

1. マスリフロー(MR: Mass Reflow)方式

 はんだバンプが形成されたチップを基板に整列・搭載(マウント)した後、リフロー炉を通過させて一括加熱し、はんだを溶融させて接合する方法です。

  • 特徴: 多数のチップを同時に一括処理できるため、スループット(生産性)が非常に高いのがメリットです。
  • プロセス: チップマウント → リフロー(はんだ溶融) → アンダーフィル(封止樹脂)の注入・硬化。
  • 限界: ピッチ幅が狭くなると(約100μm以下)、隣り合うバンプ同士が接触してショート(ブリッジ)するリスクや、熱反りによる接続不良のリスクが高まります。

2. 熱圧着(TCB: Thermal Compression Bonding)方式

 加熱・加圧機能を備えたボンディングヘッドを用い、チップを1個ずつ基板に押し付けながら、熱と圧力によって短時間ではんだ(主にCuピラー+はんだキャップ)を溶融・接合する方法です。

  • 特徴: 圧力をかけながら熱を加えるため、チップの反りを矯正しつつ、微細なピッチ(〜数10μm)での正確な位置決め接合が可能です。
  • 主なプロセス派生:
    • NCP(Non-Conductive Paste)方式: 基板にあらかじめ液状樹脂を塗布した状態で熱圧着。
    • NCF(Non-Conductive Film)方式: チップまたはウェハ側にフィルム状の樹脂を貼付した状態で熱圧着(近年の高層HBM積層で主流)。
  • 限界: 個片ごとに加熱・冷却のサイクル(サーマルプロファイル)を通すため、MR方式に比べてスループットが低くなります。

3. 超音波(US: Ultrasonic)方式

 常温または比較的低い温度(100〜150℃)の環境下で、チップに荷重をかけつつ横方向の超音波振動を印加し、接合面の金属原子を相互拡散(固相接合)させる方法です。

  • 特徴: 金(Au)バンプ同士、あるいは金バンプとアルミ/銅パッドの接合に多く用いられます。はんだを溶融させる必要がないため、熱ダメージを嫌うデバイスに適しています。
  • 用途: SAWフィルタ、CMOSイメージセンサ、液晶ドライバ(COG: Chip on Glass)など。
  • 限界: 超音波振動をチップ全体に均一に伝える必要があるため、バンプ数が極めて多い大型チップや、3Dマルチチップ積層には不向きです。

4. ハイブリッドボンディング(Cu-Cu直接接合)

 次世代の高密度パッケージングを牽引する極微細接続技術です。これまでの「突起状のバンプ」を介さず、平坦化されたチップ表面の銅(Cu)電極と、その周囲の層間絶縁膜(SiO2 や SiCN など)を直接接合します。

  • 特徴: バンプの高さ(ループ)やはんだの濡れ広がりを考慮する必要がないため、接続ピッチを1μm以下〜数μmレベルまで極小化できます。配線長が最短になるため、寄生容量・抵抗が激減し、電気特性が劇的に向上します。
  • プロセス: 常温環境のクリーンルーム内で絶縁膜同士を親水性接合(分子間力)させた後、熱処理(〜300℃)を行うことでCuを熱膨張・拡散させて一体化させます。
  • 用途: ハイエンドのAIプロセッサ、3D IC積層、次世代HBM(HBM4以降)。

各接続方式の比較

接続方式主なバンプ・電極材質代表的な接続ピッチ幅主なメリット主な用途
MR (マスリフロー)はんだ100μm以上高スループット、低コスト一般的なロジック、メモリ
TCB (熱圧着)銅ピラー + はんだ10〜100μmチップ反り制御、微細化対応HBM(現状)、ハイエンドSoC
US (超音波)金 (Au)30〜80μm低温プロセス、熱ダメージ最小SAWフィルタ、イメージセンサ
ハイブリッドなし (Cu直接接合)10μm以下(サブミクロン可)究極の超高密度、薄型化、低遅延次世代HBM4、最先端3D積層

主な接続方法は、はんだを一括溶融する「マスリフロー」、熱と圧力で個片接合する「熱圧着(TCB)」、振動を用いる「超音波」、バンプを排して銅電極同士を直接接合する最先端の「ハイブリッドボンディング」の4つです。

はんだバンプはどのように形成するのか

 ウエハ上に「はんだバンプ」を形成するプロセスは、バンプの大きさや間隔(ピッチ)に応じて、主に以下の3つの手法が使い分けられています。

1. めっき法(Electroplating)

 現在、高性能プロセッサなどの最先端・微細ピッチ(ピッチ100μm以下)において最も主流な方法です。

  • プロセス:
    1. ウエハ表面に電気を流すための薄い金属膜(シード層)をスパッタリングで形成。
    2. フォトレジスト(感光性樹脂)を塗布し、露光・現像してバンプを作りたい部分に穴(開口部)をあける。
    3. 電気めっき液に浸し、まず土台となる銅(Cuピラー)を析出させ、その上に「はんだ(Sn-Agなど)」を連続してめっき。
    4. レジストを剥離し、不要なシード層をエッチングで除去。
    5. 熱を加えてはんだを溶融させ、球状に丸める(リフロー)。
  • 強み: 非常に高密度で微細な接続(〜数10μmピッチ)に対応可能。

2. ペースト印刷法(Stencil Printing)

 比較的大きめのピッチ(100〜150μm以上)で、コストを抑えて大量生産したい場合に適した方法です。

  • プロセス:
    1. ウエハ上に、バンプの位置に合わせて穴が開いたメタルマスク(ステンシル)を重ねる。
    2. クリーム状のはんだ(はんだペースト)をマスクの上に載せ、ヘラ(スキージ)で押し込むようにして穴を埋める。
    3. マスクを取り外すと、ウエハ上にはんだペーストが柱状に残る。
    4. リフロー炉で熱をかけ、はんだを溶融・球状化させる。
  • 強み: 装置や工程がシンプルでスループットが高く、製造コストが安い。
  • 課題: マスクの穴のサイズやペーストの粘度に限界があるため、微細化すると隣同士が繋がり(ブリッジ)やすくなります。

3. マイクロボール搭載法(Micro Ball Placement)

 あらかじめサイズが均一にコントロールされた「微細なはんだの球(マイクロボール)」をウエハ上に直接並べる方法です。

  • プロセス:
    1. ウエハの電極に、接着剤と洗浄の役割を持つ「フラックス」を塗布。
    2. 数万〜数十万個のマイクロボールを、専用の吸着ヘッドや精密な整列マスクを用いてすべての電極へ一括で載せる。
    3. リフロー炉で熱をかけて電極に接合させる。
  • 強み: はんだの組成や体積が完全に均一なため、高さのバラつき(コプラナリティ)が非常に少なくなります。

技術のトレンド

 現在の先端半導体(AI半導体や2.5Dパッケージなど)では、純粋なはんだだけのバンプではなく、背が高くても隣と接触しにくい「Cu(銅)ピラー+はんだキャップ」という構造が主流です。

 この構造を精密に作れるのは「1. めっき法」のみであるため、微細化の進展とともにめっき技術の重要性が一段と高まっています。

主な形成方法は、最先端の微細ピッチに適した「めっき法」、メタルマスクを使い低コストで大量生産する「ペースト印刷法」、均一なはんだの微小球を電極へ一括配置する「マイクロボール搭載法」の主に3つです。

なぜはんだが必要なのか

 フリップチップボンディングをはじめ、半導体実装において「はんだ」がこれほど広く使われているのは、「低い温度で溶ける」「軟らかい」「溶けると丸まる」という、他の金属にはないユニークな物理的特性を持っているからです。

1. 低温で接合できる(熱ダメージの防止)

 シリコンチップや有機基板(プリント配線板)は熱に弱く、高温にさらされると反りや回路の破壊が起きます。

  • 銅(融点:約1,085℃)や金(融点:約1,064℃)を溶かして接合するのは不可能ですが、半導体で主流の無鉛はんだ(Sn-Ag-Cu系など)は220℃前後という低い温度で溶けるため、周辺材料を傷めずに強固な金属結合を作ることができます。

2. 熱膨張の差を吸収する(クッション役割)

 半導体パッケージは、温度変化によって伸縮します。

  • シリコンチップ: 温まってもあまり伸びない(熱膨張率が小さい)
  • 有機基板: 温まるとよく伸びる(熱膨張率が大きい)

 この両者がガチガチに固定されていると、界面に猛烈なストレスがかかって割れてしまいます。はんだは金属としては比較的軟らかく柔軟に変形できる(応力緩和性がある)ため、この伸縮差をクッションのように吸収し、断線を防いでいます。

3. 位置ズレを自動補正する(セルフアライメント効果)

 マスリフロー方式などでチップを基板に載せる際、わずかに位置がズレていても、はんだが溶けると表面張力(球状に丸まろうとする力)が働きます。 

 この力によって、チップが正しい電極位置へと自然に引っ張られ、ピタッと中央に収まります。これにより、製造時の多少のズレが許容され、量産性が劇的に向上します。

4. 確実な電気・熱の通り道を確保する

 はんだは溶ける際、相手側の金属(銅など)の表面に馴染んで(濡れ性)、境界に「界面合金層」を作ります。

 これにより、接着剤のように単に面でくっつくのとは異なり、原子レベルで一体化するため、極めて低い電気抵抗と高い熱伝導性を実現できます。

最近のトレンド:なぜ「はんだレス」も研究されているのか?

 非常に優秀なはんだですが、電極の間隔(ピッチ)が10〜20μm以下になると、溶けたはんだが横に広がって隣とショートする限界を迎えます。

 そのため、最先端のAI半導体などでは、はんだを使わずに銅同士を直接くっつける「ハイブリッドボンディング(Cu-Cu接合)」への移行が進んでいます。

低温で溶けるため熱ダメージを防ぎ、軟らかさでチップと基板の熱膨張差を吸収します。また溶融時の表面張力で位置ズレを自動補正する特性(セルフアライメント)や、優れた電気・熱伝導性を持つため必要です。

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