東亞合成の水素ステーション

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この記事で分かること

1. 水素ステーションの貯蓄と補給の仕組み

水素を圧縮機で超高圧に濃縮し、頑丈な蓄圧器(タンク)に貯蓄します。車への補給時は、充填時の熱上昇を防ぐためマイナス40℃に冷却しながらディスペンサーで送り込み、約3分での急速充填を可能にしています。

2. 水素タンクの安全対策

弾丸を跳ね返す頑丈な炭素繊維タンクを採用し、万一の漏洩時はセンサーが検知して瞬時に弁を遮断します。最も軽い水素の特性を活かして溜めずに上空へ逃がす設計や、火災時に圧力を逃がす安全弁も備えています。

3. 東亞合成の水素ステーションの特徴

自社工場とパイプラインで直結した日本初の製造・供給一体型施設です。トラック輸送が不要なため、輸送費や移動時のCO2排出が完全にゼロで、安価な供給を実現。四国初の定置式で、地域のシンボルでもあります。

東亞合成の水素ステーション

 東亞合成は2026年7月7日、徳島県とトヨタ自動車が協働で実施する国内初の「水素エンジン ハイブリッド車」による公道での技術実証に、特別協力として参画することを発表しました。

 自社の「水素ステーション徳島」をこの実証車両の燃料供給拠点として提供します。

 隣接する同社徳島工場で製造した水素を直接供給するため、エネルギーをその土地で作り、その土地で消費する「地産地消型」の水素サプライチェーンの構築と、運輸部門の脱炭素化に貢献することを目指しています。

 前回は、水素エンジンハイブリッド車や実証実験の内容に関する記事でしたが、今回は東亞合成の役割に関する記事となります。

東亞合成の役割は何か

 東亞合成がこの実証実験で果たしている役割は、単に場所を提供するだけでなく、「水素の『製造』から『補給』までをノーコスト・ゼロカーボンで繋ぐ、エネルギーの供給源そのもの」です。

 具体的には、以下の3つの重要な役割を担っています。

1. クリーンな自社製水素の「無償提供」

 東亞合成の徳島工場(食塩電解工場)では、製品を作るプロセスでクリーンな水素が大量に発生します(副生水素)。

 今回の実証実験では、この純度99.99%以上の高純度な水素を、実証車両(トヨタ・ハイエース)の燃料として安定供給しています。

2. 「製造・供給直結型」インフラの提供

 2024年に開所した同社の「水素ステーション徳島」を、車両の専用補給基地として全面提供しています。

  このステーションは、隣接する自社工場からパイプラインで直接水素が送られてくる「オンサイト型」と呼ばれる施設です。一般的なステーションのように、別の場所からトラックで水素を運んでくる必要がありません。

3. 脱炭素のボトルネックを解消する「ビジネスモデルの検証」

 水素モビリティの最大の課題は、運搬コストと、トラック輸送時に出るCO2です。東亞合成が参画することで、以下の検証が可能になります。

  • 輸送費ゼロ: パイプラインのため、運搬コストがかからず水素を安価に提供できる。
  • 輸送CO2ゼロ: 運ぶ段階でのCO2排出が完全にゼロになる。

 「地元(自社工場)で作り、地元(ステーション)で入れ、地元(徳島)の公道を走る」という、究極の地産地消型サプライチェーンが、実際のビジネスの現場(ホテルや大学の日常業務)で問題なく回るかをトヨタや徳島県と共に証明することが、東亞合成の最大の役割です。

徳島工場で製造した水素を、パイプラインで直結した自社の「水素ステーション徳島」から実証車両へ直接供給する役割を担います。これにより、エネルギーの「地産地消サプライチェーン」の検証に貢献しています。

水素ステーションはどのように水素の貯蓄と補給をするのか

 水素ステーションは、気体でかさばる水素を「ものすごい圧力で小さく縮めて貯め、一気に車に流し込む」ことで、ガソリン車並みの短時間(約3分)での補給を実現しています。

 一般的なオンサイト型(敷地内で水素を用意するタイプ)のステーションの仕組みは、以下ような流れになっています。

具体的な貯蓄と補給のプロセス

1.水素を集める(受け入れ・製造):最初のステップ。

 工場からパイプラインで直接送られてきたり(東亞合成などのケース)、専用のトラックで運ばれてきたりした水素をステーション内に集めます。この時点ではまだ圧力が低く、スカスカな状態です。

2.ギュッと縮める(圧縮機):高圧化。

 たくさんの水素を車に詰め込めるよう、「圧縮機(コンプレッサー)」という機械を使って、一般的な大気圧の約800倍という超高圧までギュウギュウに圧縮します。

3.頑丈なタンクに貯める(蓄圧器):貯蓄。

 圧縮した水素は、「蓄圧器」と呼ばれる特殊な超高圧炭素繊維などを使った極めて頑丈なタンクに貯蔵(貯蓄)されます。ここにパンパンにエネルギーを溜めておくことで、車が来たときにすぐ補給できます。

4.冷やして車に入れる(プレクーラー & ディスペンサー):補給・充填。

 車に補給する直前、水素を「プレクーラー(冷却器)」マイナス40℃程度まで急速冷却します。冷やされた水素は、計量器がついた「ディスペンサー(充填機)」のノズルを通って、車のタンクへ一気に送り込まれます。

 スプレー缶をずっと使っていると缶が冷たくなるのとは逆に、気体は狭い場所に一気に押し込めると猛烈に熱くなる(断熱圧縮)性質があります。車のタンクが熱で壊れないよう、あらかじめ冷やしてから補給しているのです。

水素を圧縮機で超高圧に濃縮し、頑丈な蓄圧器(タンク)に貯蓄します。車への補給時は、充填時の熱上昇を防ぐためマイナス40℃に冷却しながらディスペンサーで送り込み、約3分での急速充填を可能にしています。

水素を扱う上でどんな安全対策が使用されるのか

 水素は「漏れたら爆発するのではないか」というイメージを持たれがちですが、実用化にあたっては「漏らさない」「万一漏れても検知して止める」「溜めずに逃がす」という3段階の厳しい安全対策が、ステーションと車の双方に施されています。

1. 弾丸も跳ね返す超頑丈なタンク

 自動車の水素タンは、プラスチックやアルミのライナー(内殻)の周りを、強靭な炭素繊維(カーボンファイバー)で何重にも強固に巻き上げた構造になっています。

 このタンクは、以下のような過酷な試験をすべてクリアしています。

  • 高所からの落下試験や、数万回もの充填・放出の繰り返し試験
  • 銃で撃ち抜く試験(破裂せず穴が開くだけ)
  • 火災を想定した焚き火試験

2. センサーによる「瞬時の自動遮断」

 車やステーションの各所には、わずかな水素漏れも見逃さない高感度の「水素センサー」が配置されています。

 もし衝突事故などで配管が傷つき、水素が漏れたことを検知すると、主栓にある電磁弁が100分の数秒という超高速でピタッと閉まり、タンクからの水素供給を根元から遮断します。

3. 「溜めずに逃がす」設計(水素の特性の活用)

 水素はあらゆる物質の中で最も軽く、空気の約14分の1の軽さしかありません。そのため、宇宙空間に向かって秒速20メートルという猛烈なスピードで真上に拡散していく性質があります。

  • : 万一漏れても車内にこもらないよう、床下や風通しの良い場所に配管を通しています。
  • ステーション: 屋根をあえて完全に密閉せず、上部に水素が溜まらない開放的な構造にしています。ガソリンのように足元に溜まって燃え広がるリスクがありません。

4. 火災時の「安全弁(PRD)」

 万が一、車が激しい火災に巻き込まれた場合、タンクが熱で破裂するのを防ぐため、「安全弁(圧力開放装置)」が作えられています。

 一定の高温(約110℃)を検知すると弁が自動で溶け、タンク内の水素を上空に向けて一気に安全に放出(シューーッと逃がす)ことで、大爆発を防ぐ仕組みです。

 このように、ガソリン車と同等、あるいはそれ以上に厳重な「何重もの安全網」が敷かれているため、公道や街中でも安心して運用できるようになっています。

弾丸を跳ね返す頑丈な炭素繊維タンクを採用し、万一の漏洩時はセンサーが検知して瞬時に弁を遮断します。最も軽い水素の特性を活かして溜めずに上空へ逃がす設計や、火災時に圧力を逃がす安全弁も備えています。

東亞合成の水素ステーションの特徴は何か

 東亞合成の「水素ステーション徳島」には、他の一般的な水素ステーションとは異なる革新的な特徴が3つあります。

1. 日本初の「製造・供給直結型」

 最大の強みは、東亞合成の徳島工場(食塩電解工場)に隣接し、パイプラインで直結している点です。

 工場で作られた高純度な水素がそのままステーションへ送られる仕組みになっており、このような「製造と供給の一体型施設」は日本初の試みです。

2. 輸送コストとCO2が「完全にゼロ」

 通常のステーションはトラック(トレーラー)で水素を運びますが、ここはパイプライン供給のため、運ぶための輸送費やトラックが出す排気ガスが一切発生しません。

  • 環境負荷ゼロ:運ぶプロセスでも脱炭素を徹底。
  • 価格の安さ:輸送費がかからない分、水素の販売価格が全国的にもトップクラスに安く抑えられています。

3. 四国初の定置式 & 街のランドマーク

 四国で初めて設置された本格的な固定式の水素ステーションです。建築デザインにもこだわっており、未来の水素社会をイメージした「半透明の雲のような巨大なモニュメント」が設置されています。夜間には美しくライトアップされ、地域の環境啓めいのシンボル(ランドマーク)にもなっています。

自社工場とパイプラインで直結した日本初の製造・供給一体型施設です。トラック輸送が不要なため、輸送費や移動時のCO2排出が完全にゼロで、安価な供給を実現。四国初の定置式で、地域のシンボルでもあります。

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