3分要約
オードーリータンはテクノロジーの進歩をどう考えているのか
恐怖を感じている人も多いが、希望のほうが大きいと感じている。デジタル化によって誰もが自分の視点で世界に貢献できるようになっており、ソーシャルイノベーションによってデジタル民主主義やソーシャルイノベーションを実現するためにはテクノロジーが欠かせない。
台湾で具体的にどんなことを目指しているのか
1.デジタル民主主義
政府の決定をオープンにし、市民の参加を促したり要望を聞くことで、より良い民主主義の実現を目指している。
2.ソーシャルイノベーション
社会問題を個々で解決するのではなく、みんなで解決しようとしている。みんなが助け合えるような環境を作り出すような仕組み造りを行っている。
3.オープンガバメント
政府の情報をオープンにし市民の疑問にこ耐える仕組み造り。データを民間が活用すれば公務員の労力を削減しつつ良い問題解決を行うことも可能になる。
多様な価値観を持つ人々の意見を取り入れることで、社会問題に認識をしやすく、スピード感を持って解決できるようになる。
デジタル社会で発信者に求められることは
3つのFが重要で政府の情報発信でも重視している。
・Fast(速さ)
・Fair(公平さ)
・Fun(楽しさ)
コロナ禍においても、3つのFによってフェイクニュースが広まることを防ぐことができたため、報道を制限することなく経済の発展と公衆衛生の両立が可能となった。
市民の側に必要なものはなにか
一部の人が決断を下していると偏りや偏見があっても気づきにくい。多くの人の声を聴くためには多様性を尊重する姿勢と教養やスキルを基にした素養を持つことが重要。
オードーリー・タンはテクノロジーの進歩には希望が多いと信じている
テクノロジーの進化で社会はより一層変わっていく。見えないテクノロジーが働き方や生き方を変えているのことで不安を持つ人もいるが、筆者は希望のほうが多いと信じている。
台湾ではソーシャルイノベーションが活発になり、立場や場所を超えて様々な考えを持つ人がともに目的を達成していくことで、新しい社会の構築がすごい勢いで進んでいるが、これもテクノロジーが可能にしたこと。
台湾のオード―リータンの語りを編集し記した本になっており、テクノロジーやそれをどう政治や社会に生かしていくべきかなどの考えを知ることができる本になっている。
ITは機械同士をデジタルは人同士をつなぐもので、全く別物である
ITとデジタルについては全く別のものと考えている。
IT:機会と機械をつなぐもの
デジタル:人と人をつなぐもの
デジタルは人と人をつなぐためにあるもので、人間同士のコミュニケーションを促進することができるもの。
デジタルで起こった大きな変化は誰もが自分の視点で世界に貢献できるようになったこと。それまではメディアを通じてでしか情報を発信できなかったものが、SNSなど誰もがメディアの一員になれるようになった。
筆者も自身がメディアであることを意識し、職務での情報はすべてオープンソースとして公開している。
政治の決定をオープンにし、市民の参加を促すデジタル民主主義を目指している
筆者らが台湾で推進しているのはデジタル民主主義。政府の決定をオープンにし、市民の参加を促したり要望を聞くことでより良い民主主義の実現を目指している。
そのためのオープンガバメント(開かれた政府)のためには次のような段階での実現を目指している。
1.オープンデータ:政府の試料やデータの公開
2.市民参加:公開された資料やデータへの市民の意見を問いかける
3.説明責任:政府が市民の疑問に回答する
4.インクルージョン:3段階目で忘れられた人がいないかを探す
台湾ではコロナ禍でマスクがどこにあるかを見ることのできるマスクマップを民間が作り出した。このとき政府はマスクの在庫を公開しただけで、実際のアプリは民間の手で作られた。
データの公開は民間側で利用できるデータが増えるだけでなく、公務員が何度も重複して回答する時間と労力を節約できるメリットもある。
民主的な手法が広まるためには3つのFが重要
台湾はコロナに対し権威的ではなく、民主的な手法で防疫に成功してきた。そのカギとなったのが3つのF。
・Fast(速さ)
・Fair(公平さ)
・Fun(楽しさ)
3つのFの利用で経済の発展と公衆衛生の両立、報道の自由の制限なしでのフェイクインフォメーションの抑制が可能となった。
インターネットによってFastに情報が集まり、大量の情報が集まることで多様性を持ちFairになり、評価だけが参考にされることでFunな状態となる。この3つがあるから人々はプラットフォームにおける相互評価を人々が信頼するようになっている。
市民が素養を持ち、意見を表明する場があれば、社会問題を解決できる
社会の多様性を尊重しながら、デジタルを取り入れるには普段の生活の中で培った教養やスキル、たしなみなどの素養が欠かせない。素養があることで新しい技術が出てきたときにその技術が助けになるのか、害があるものなのか判断することができるようになる。
社会全体に素養がなく、少数の人間だけで決断がされる状況では、決断する人々に悪意や偏見があっても自分たちで気づくことは困難。
多くの人が素養を持ち、意見を表明できる環境(仕組みや言論の自由)があれば社会問題の討論を迅速に行い、スピーディに結論を得ることができる。
台湾ではハッカソンと呼ばれるエンジニアやデザイナー向けのイベントが年に一度行われている。ハッカソンはハック+マラソンを組み合わせた造語で、一定期間で開発作業を行うイベントのこと。社会問題などの解決を目指すことが多くその結果を大勢でシャアすることも可能になる。
ハッカソンに限らず、デジタルの世界ではある出来事の解決法のシェアは容易になり、国境がなくなっていく。
多様な人々が協力するには価値観のつながりが重要になる
筆者がデジタル担当大臣として入閣した際のミッションの一つとして、ソーシャルイノベーションを課している。
ソーシャルイノベーションとは従来とは異なる創造的な解決法で社会問題を解決するもの。政府の支援で社会問題に解決する際に個々で戦うのではなく、助け合えるように支援することが筆者の目指すソーシャルイノベーション。
ソーシャルイノベーションの実施には皆の社会参加が不可欠だが、多様な価値観をもつ人々を結びつけることは難しい。多様な視点や異なる能力を持つ人が協力しなければ、社会化問題の一部分の改善しかできず、全体を改善することは出来ない。
多様な価値観を持つ人々が協力するはに共通の価値観のつながりを提供することが重要で、価値観のつながりでソーシャルイノベーションを促進することができる。
共通の価値観を共有するには以下のようなことが必要になる。
・これまで見たことのないものを受け入れる姿勢を持つ
・価値観を通じて相手を知り、それぞれの価値観を尊重し共有する
・客観的な事実を理解しあい、共有する
政府が情報をオープンにすることでイノベーションが促進される
台湾では投票以外の市民の声の届く機会を設ける仕組みの検討も進んでいる。Joinというプラットフォームではメールアドレスと電話番号さえあれば政策に対する意見を投稿でき、60日以内に5000人以上の賛同が集まれば、政府が対応することになっている。
提案以外にも政府の政策について予算。進度といった情報を公開する機能もあり、政策がしっかりと実行に移されているかを監督することができるようになっている。
政府が何をしようとしているか、何をしてきたかなど情報をオープンにすることはソーシャルイノベーションには欠かせず、オープンにするほど市民と政府が近づき、イノベーションが促進される。
フェイクニュース対策の専門チームが用意されている
台湾でもフェイクインフォメーション、特に故意にねつ造された偽情報は問題視されている。台湾政府はフェイクインフォメーションが故意、危害、虚偽の3つの条件がそろった時にすぐに対応することになっている。
フェイクインフォメーションと確認されると60分以内に正しい情報を発信する。発信する情報は 「2・2・2」の原則で見出しが20字以内、写真や図は2つ以内、本文は200字以内とされている。また内容にユーモアがあると情報が伝わりやすく、共有する満足度も高くなるため、対応にあたる専門チームを用意している。
世界中の連携が求められる中で、多くの人が意見をいえる仕組みが重要
コロナ禍によって他国との往来を完全に絶つことは不可能であり、世界の連携が未来を作っていくことを多くの人が強く感じている。
現在注目を集めているSDGsも世界中で連携して対応している課題になり、世界の人々が共通の価値感を形成するきっかけになっており、全ての項目での目標達成が必要になる。
目標の達成には一人一人の素養が欠かせず、SDGsの基本概念をよく理解することが必要不可欠。一部の専門家が理解している状況ではなく、社会の一人一人が理解しあえることが重要。
政策に対する意見を誰でもできるためにも、オープンガバメントの普及を進めていくことがより一層重要になっている。
コメント